タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

ソフロロジーに加えてヨガも

2014-10-31 20:35:31 | 産科


一番上の写真は、篠山市東吹の奏多(かなた)ちゃん、9月23日生まれ。
「人の気持ちが分かる、思いやりのある子に育ってください。
決して楽なものではなかったけど、よい経験ができました。
とてもすごしやすく快適でした。」

さて今日は10月も最後となりましたので、
来月からの新メニューを紹介しましょう。

それはですね、タマル産でマタニティーヨガを始めることになりました、というご案内です。
講師はタマル産の看護スタッフなのですが、
現在も、丹波市の市町村から依頼を受けて講師をしている者です。
篠山の妊婦さんは、なかなか機会がないでしょうから、
タマル産でするのですよ。

とりあえず、参加人数なんかも分かりませんので、
第3か第4辺りの月曜日の、お昼の3時から4時というところです。
この11月は、第4月曜日の11月17日、お昼の3時集合です。
明日にでも、ホームページと外来で案内を開始することと致しましょう。

妊娠している方を対象としていますが、産後の方も興味が有れば、受けていただきましょうか。
妊娠初期の方は、つわりの間は受けられません。
よく教科書には妊娠第5ヶ月からと書いてありますが、
つわりが終われば大丈夫です。
それほど激しい動きが有るわけではないですからね。
むしろ呼吸法の練習と、瞑想のトレーニングです。それにおしゃべりかな。
タマル産で毎週行っている、ソフロロジーと通じますね。
それというのも、ソフロロジーはヨガと座禅を組み合わせたものだからですよ。

費用は無料ですが、その代わり急にお産で中断したりなどしても、お許しください。
とにかく、初めての試みなので、うまくいくかどうか分かりません。
お気軽に、覗いてみてください。
でも皆さん、昼間に仕事をされている方も多いですから、どうなのでしょう。
リクエスト等有れば、また教えてくださいな。

フェイスブックはこちら。ここ連日、赤ちゃんが生まれていますよ。
https://www.facebook.com/tamarclinic

子宮はチーズみたい

2014-10-29 20:46:52 | 婦人科


上の写真は篠山市宇土の愛実(あみ)ちゃん、9月23日生まれ。
「明るくまっすぐな子に育ってください。
お産は想像以上の痛さでした。みなさん気さくでいい方ばかりでした。」

途中入院することもありましたが、無事に予定日近くで生まれて良かったです。

今日、外来で質問されたのですが、確か月経周期の23日目頃だったと思います。
以前から月経が不規則で、基礎体温を付けていただいていたのでした。
出血が数日続くと言われるのです。
帯下も増えて来ているとのことでした。
基礎体温では、まだ低温期のままです。でも上がりかけているのです。

こんな時、皆さんは、ああ、排卵期出血だな、と思われるでしょうか。
もしくは出血性メトロパチーと呼びます。
学生時代に、メトロパチーなんていう言葉は効いたことが有りませんでした。
教科書にはチーズの絵が描いてあるのです。
トムとジェリーに出て来るような、ショートケーキの型をして、
プツプツと穴の開いたチーズです。
子宮もこんな風なんだ、という説明です。分かりますか?

卵巣から分泌される女性ホルモンには2種類有るのです。
1つは卵胞ホルモンとかエストロゲンとか言われるものです。
これが排卵期にたくさん分泌されると、脳に有る視床下部に働いて、
排卵を促して、卵巣から卵が排卵するのです。
そうすると卵巣の抜け殻からは、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。

ところがエストロゲンの分泌が悪いと、少量ずつしか分泌されないので、
なかなか排卵したいのです。
それでもエストロゲンが少しは分泌されているので、
子宮に働いて、子宮内膜は厚くなり、けっこう日数もかかるので、
先ほどのチーズのようにプツプツ穴の開いた子宮内膜になるのです。
これがポロポロと剥がれ落ちてくるので、少量ずつ出血するのです。
これが出血性メトロパチーなのです。

月経の時の出血の仕方とはまた違うのですよ。
メトロパチーの方は女性ホルモンがだらだらと出るから出血するのです。
これを破綻出血とも呼びます。
ネットでは俗に、排卵出血などと勝手に呼んでいますね。

それに対して、月経は、妊娠しなかったために、
女性ホルモンが一斉に出なくなるから起こるのです。
こちらは消退出血と分類します。
よくアフターピルを飲んだ後、数日から1週間後くらいに出血することが有りますが、
こういうのも消退出血です。
更年期頃によく不正性器出血が起こりますが、
それを止めるために、ホルモン剤を飲みますが、この時起こるのも消退出血です。

それで何だったかと言うと、女性の出血で一番多いのが、チーズの穴、
すなわち出血性メトロパチーで、
機序は破綻出血でした。これでチーズを思い出せば、もう忘れませんね。


NCPRは超ハードです。

2014-10-28 20:32:00 | 産科
丹波市春日町の美織(みおり)ちゃん、9月22日生まれ。
「健康で素直な子になってほしいです。
お産は相変わらず痛かったです。食事がとても楽しみでした。」

お母さんは3人姉妹なのですよ。
姉妹で何人も産まれています。
また次も、ということでした。



ところで今日はですね、とても疲れました。
というのも、お昼に全看護スタッフ集合で、
新生児蘇生法講習会(NCPR)をタマル産で受けたのです。
以前、私と助産師で他院に受けに行って様子を見てきたのですが、
今回は、講師に来て頂いて、行ったというわけですよ。
写真に写っている職員は今回初めて受けた者ですが、この他にも3人、計10人で。
講師は済生会吹田病院の小児科医、平(ひら)先生とNICUの助産師、村上さんです。

平先生は、皆さんもご存知かもしれません。
というのも、15年前にタマル産が柏原で開業した時に、
柏原日赤の小児科に、研修医として居られたのです。
当時は小児科の部長が足立先生で、2人で頑張っておられ、よくお世話になりました。
今は足立先生も福知山で開業されましたけれど。

そして当時に加えて今回も本当にお世話になりました。
3時間以上に渡って、みっちりとしごかれましたよ。

新生児蘇生法って、どんなものか少し覗いてみましょう。
まず皆さんは赤ちゃんは元気で生まれて当たり前と思われているでしょうが、
そんなことはなくて、世界中では年間に何百万人もの赤ちゃんがお産で亡くなっています。
もちろん世界では、分娩監視装置を付けながら生まれている赤ちゃんの方が少数派でしょうが、
たとえ監視装置を付けていても、水中生活から、この空気世界に
移行する時に適応できない赤ちゃんは時々居るのです。

生まれるほんの一瞬で、胎児循環と呼ばれる胎児の血行動態から、
赤ちゃんのそれへと変わるのです。
肺がそれまで閉じていたのに、突然開くのですよ。
心臓だって、静脈と動脈を混ぜていたのに、心臓の穴は閉まるし、
大動脈と肺動脈が動脈管という血管で結ばれていたのに、
これが数日で閉まって、動脈と静脈を完全に分けるようになるのですよ。
一番の変化は、お母さんからの栄養と酸素を、へその緒からもらっていたのに、
それが途切れてしまうのですからね。

生まれた赤ちゃんを放っておくと、だんだん色が悪くなったり、
いつまでも呼吸をしないことだって有るのです。
最初の呼吸を補助してあげるのが私たちの仕事なのです。
これを読んでいる人にはそんなことは無いでしょうが、
自宅で1人で産み落とす人も居るでしょう?

まずタオルで濡れた身体を拭ってあげます。
水分を取って体温が下がらないようにする、という意味も有りますが、
実際には、これだけで背中が延びて、呼吸の刺激になるのですよ。

弱々しい泣き声の赤ちゃんだったとしたら、
今度は足の裏を軽く叩いてみます。昔の時代の私たちの受けた教育なら、
けっこうパンパンと叩くのですよ。でも今は力は込めないのだそうです。
この時、背中も下から上にこするようにします。
これも弓状に反るようにです。
呼吸があえいでいるようなら、すぐに空気で、人工呼吸を始めます。

ここまでが30秒です。慣れれば簡単です。
でも初めてなら、まずできません。

ここで元気よく泣くならいいのです。
体重なんかを測ってお母さんに再び渡します。
生まれて30秒でも、心拍数が毎秒100以下であったり、呼吸がしんどそうなら、
迷わず人工呼吸です。ここでは酸素も使います。
これって私のように、麻酔科医なら当たり前のことなのですが、
助産師でさえ、また看護師ならあまりする機会がありませんからね。
この練習はすごく皆のためになったようですよ。

さらに次の蘇生法として、心臓マッサージを人工呼吸と併用するのです。
マッサージ3回に、人工呼吸を1回、この2秒を1クールとして、繰り返します。
言うは易し、行うは難し。みな真剣でしたよ。

これからは、年に2回の消防訓練の時にでも、毎回訓練を致しましょう。
いつもやっていないとできないものなのです。
ちなみに仮死で生まれた赤ちゃんには、これらの方法で99%、良好な成績となるのです。

タマル産の職員の皆様、それに講師の先生、NICUの助産師さん、みなさんご苦労さまでした。



低容量FSH長期漸増投与法って?

2014-10-27 21:35:23 | 不妊症
篠山市網掛の芽愛(めいな)ちゃん、9月20日生まれ。
「心の優しい、笑顔いっぱいの女の子に育ってください。
命の大切さを改めて実感できました。1人べやなので落ち着いて過ごせました。」

2人目なので、産むのは安産でしたね。

月曜日なので、不妊症の話題を1つ。
不妊外来に来られる女性は、初診の時にまず診察します。
超音波で骨盤の中を診ると、たくさんの卵胞で、卵巣が大きくなっていることが有ります。
そういう時は逆に子宮が縮んでいて、子宮と両側の卵巣2つ、
合わせて3つが同じような大きさになっているのです。
そういう女性は、多のう胞性卵巣症候群という病気なのです。

その前になぜ来院されるかと言えば、月経が不規則であるか、
なかなか妊娠しない不妊症なわけです。
多のう胞性卵巣症候群の女性は、生殖年齢の女性の5~8%の頻度ですから、多いですね。
不妊症のカップルは、10%ですから、そのうちのかなりの割合だと言えます。

以前は超音波の所見の他に、肥満や多毛と言われましたが、あまり特徴的では有りません。
2007年の新しい基準では、上に説明したように、
月経不順、超音波で特徴的な所見、それにもう1つ、血液検査です。
低温期に測定するのですが、下垂体ホルモンの1つ、LHというホルモンが、
もう1つの下垂体ホルモンの1つのFSHというものより、高くなるのが特徴的です。
これが上がれば上がるほど、治療にも反応しにくいし、
治療による副作用である、卵巣過剰刺激症候群というのにもなりやすいのです。
男性ホルモンも上昇することが多いので、多毛の原因となるのでしょう。

ちょっと専門的で難しい話になりました。
タマル産の不妊外来では、来院された最初の月の月経中に、
ダブルテストと呼んでいる下垂体前葉の負荷試験なるものをしています。
できればこれをするのがいいのです。
とてもよく分かるのですが、1時間もかかる検査だし、
費用も保険が利いても1万円ちょっとしますからね。
ですがとても重要な検査です。

治療には、肥満を伴う場合は、減量が効果的です。
薬ではクロミフェンという飲み薬を単独か、
ステロイドと併用が、プロラクチンを下げる薬と併用するか、
もしくは糖尿の薬と併用すると、さらに効果が有ります。
ですが、クロミフェンは数ヶ月しか効果が期待でいきないので、
ゴナドトロピン療法という注射剤で排卵させることの方がいいのです。
いきなり注射剤でも構いません。

ただし、多のう胞性卵巣症候群の女性では、
ゴナトトロピン療法をする時に気をつけることが1点有って、
少量ずつ、長めの期間で、連日投与することが重要です。
低容量FSH長期漸増投与法と言うのですよ。
そうでないと、たくさんの卵胞が大きくなって、
卵巣が10センチにもなり、腹水や胸水が溜まってしまうことが有ります。
これが卵巣過剰刺激症候群と呼ぶもののです。

もう1つ、副作用を避けるという意味では、
思い切って体外受精に進み、
過剰に卵巣を敢えて刺激し、たくさんの卵胞を育て、排卵はさせずに、
膣から卵を何十個と採ってきます。
それを精子と合わせて受精させ、数日育てた後に、
全部、凍結してしまうのですよ。
そして過剰刺激をしていない周期に、融解して、子宮に戻し、
ホルモン治療をすれば、うまく着床すれば妊娠に至るのです。
しかも、一度に少しずつ戻すなら、1回の採卵で1年分使えるかもしれません。

よく分かっている方には、今更な説明でしたか。
ですが、頭でっかちになる前に、治療をしていかなければなりません。
この文章を書いている間に、赤ちゃんが生まれました。
治療さえすれば、不妊症の殆どの方が妊娠されています。

帝王切開の麻酔

2014-10-24 21:33:11 | 産科
丹波市氷上町の瑞空(みく)ちゃん、9月20日生まれ。
「優しく、明るい子に育ってください。
みなさん優しくて、いい人ばかりでした。」

タマル産では初めてのお産でしたね。

タマル産では、帝王切開が少ないのは有名になりましたか?
両親学級のソフロロジークラスでは、毎回お話しているのですが、
初めて聞いたと、びっくりされる妊婦さんが多いのです。
今、世界では2、3人に1人が帝王切開で産んでいるということも知られていません。
日本人はむかしから我慢強く、お産なんかでねをあげないものです。
なので、帝王切開に抵抗の有る女性は多いのです。

そこが普通の人と、医療人との違いなのでしょうね。
医療者は、とにかく事故を起こしてはいけない、とそればかり思うのです。
妊婦さんがこうしたい、と思っても、許可されないことも多いですしね。
そんな人工的なお産がキライで、開業したのでした。

ただ、タマル産ではいくら帝王切開することが稀だと言っても、
20人に1人くらいは帝王切開になります。
その帝王切開も選択帝王切開と言って、予定ですることが2/3です。
たいていは骨盤位(さかご)です。
以前はさかごの赤ちゃんでも、殆ど産んでもらっていたのですが、
どうも時代が許さなくなってきましたからね。

1/3は夜中などに緊急で帝王切開になります。
タマル産では年に200人くらい生まれますから、
緊急の帝王切開というのは、年に4人くらいでしょうか。
そんなに多くはないのですよ。
ただし、大きい病院だと、200人生まれれば、
60人くらいは帝王切開でしょうから、話は違います。

緊急の帝王切開だと、1分1秒を争いますから、
帝王切開の仕方については詳しく話す時間が無いです。
手術の合併症なんかは、聞いても楽しくないでしょうから、
最近変わった、あるいは変わるポイントを2点だけお話しておきましょう。

まず脊髄麻酔に使う、麻酔の薬が変わりました。
商品名で言うと、0.3%ペルカミンS(ジブカイン)という薬から、
0.5%マーカイン(ブピパカイン)という薬に変わったのです。
それは神経毒性がより少ないという理由からなのです。
外国では以前からマーカインが使われていたのですが、
日本ではペルカミンの方がよく使われていたのです。

普通、帝王切開では盲腸などと同じで、脊髄麻酔なのですね。
背中に注射すれば、数分で効くのですから、緊急手術にもってこいなのです。
変更になったマーカインの方は、さらにすぐに効き、そしてすぐに醒めます。
だから手術中はよく効いているのですが、術後あっという間に痛みが来るという欠点は有ります。
追加で、痛み止めをしていかなければなりません。
それでも障害を来しにくい、という点ではいいのです。

脊髄麻酔だと、もう1つ困ったことが有ります。
脊髄に刺した針の穴から脊髄液が少しずつ漏れて、術後2、3日して立ち上がると、
頭がすごく痛くなるのですよ。
本当は早期離床と言って、術後は早く動き出した方が、早く治るのですが、
それを邪魔するのですから、やっかいです。
治療は、点滴をたくさん、急速にすることと、安静です。

頭痛の予防方法としては、なるべく細い針を使うのがいいのですが、
もう1つ、針の形状も問題になります。
普通の針は筒状の針を斜めに切ったものです。
これを円錐状に加工して、穴を横に開けると、少しましなのですね。
ちょっと高くつきますが、この針を在庫がなくなれば使ってみましょう。
だって、手術にいくらいいものを使っても、材料費が取れるわけではないのです。
糸など、いいものを使えば使うほど、損する仕組みですからね。

あと、妊娠高血圧症候群の妊婦さんで、胎盤が早期に剥がれてしまう、
常位胎盤早期剥離などでは、血圧が下がるので、脊髄麻酔はしにくいのです。
脊髄麻酔では、背中に注射後、数分で、血圧が急激に下がってきますからね。
こちらも予防的に大量の輸液をしたり、
赤ちゃんをお母さんの右側に押してずらしたりします。
左側の方が、胎児がお母さんの大静脈を圧迫するので、
結局、胎盤に渡る血液が減少してしまうのを防ぐのですよ。
それでも産科麻酔は、手術だけでなく、麻酔もハイリスクだ、ということですね。

麻酔直後は、血圧を頻繁に測定するのですが、
普通、麻酔科では5分毎に測定するのです。
これを2分毎にしばらく測定しないといけないとかで、裁判に負けていますね。
結果が悪いと、何でも言われますからね。
わずか数分、測定が遅れただけなのに。
問題はそんなところではなく、効き過ぎた、というところに有るのですが。
本当に医療は裁判に馴染まないのですが、
高額の弁護士報酬は、過剰となった弁護士さんたちの、儲けどころですからね。
最近は交通事故でも、弁護士特約が急増しているのでしょう?

話は変わりましたが、たかが麻酔ですが、
いろいろと奥は深いのです。
私は、実は産婦人科と美容皮膚科をやっていますが、
麻酔科の免許も持っているのですよ。
これは医師免許だけではできなくて、厚生労働省からの指定が必要なので、
持っている医師は少ないです。
麻酔ごとに100点、つまり千円が加算されるだけですが、
実は麻酔と術者が同一の場合は、それさえも取れません。
それでも免許の有る医師に麻酔してもらいたいところですね。

今日は裏のお話ばかりでしたか。