タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

不妊治療が保険適応でどう変わるのか

2022-02-25 20:45:33 | 不妊症
妊娠中でも新型コロナに感染する妊婦さんが増えてきました。
予防接種は是非、受けてくださいね。
もちろんご主人や同居の家族の方もです。
予防接種を受けると赤ちゃんに抗体が移行するので、赤ちゃんにもメリットが有りますからね。

さて上の写真は、丹波篠山市の一般不妊治療の助成制度の書類です。
正式なものは市のホームページからダウンロードしてください。
一般不妊治療費助成事業のお知らせ|丹波篠山市
所得制限は有りますが、毎年5万円まで助成されます。
そもそも一般不妊治療は、それほど費用がかかりませんからね。

この制度は、私が市と交渉して導入していただいたものです。
不妊かな?と思ったら、まずは一般不妊治療から始めるものだからです。
その入り口を少しでも躊躇しないようにという思いからです。
これは他の市町村には無い制度なのですよ。

そして特定不妊治療(体外受精や顕微授精)の助成は、以前から兵庫県と丹波篠山市の両方から受けられます。


さらにこの4月から、特定不妊治療の多くが保険適応されるというニュースはご存知ですよね?
例えば体外受精なら4200点になるようです。1点が10円で計算されますから42,000円ということです。
この3割が自己負担ですから、体外受精そのものは12,600円というわけです。
すごく安いですね、と思われるでしょう。

ですがそれだけではありません。
毎日の注射の薬代や手技料などが必要です。この注射などが今回保険適応となったのは大きなメリットです。
ただし採卵の費用は別で、1個なら2400点、5個までなら3600点、
胚培養も別に1個なら4500点、5個までなら6000点、
そして胚移植も別で、新鮮胚なら7500点、凍結胚なら12000点、
その凍結胚も保存料金が別に1個なら5000点、5個までなら7000点などとなっていますよ。
頭で計算できなくなってきましたね。
結局いくらかかるのでしょうか?

20年以上前に私が開業した頃は、飛行機に乗ってアメリカまで受けに行かれる女性も居られたのですよ。
1回受けるのに数百万円はかかりました。
それを考えると、この20年で様変わりしたものです。
それでも高いと感じられるでしょうけれど、おそらく世界で一番安いのです。

この4月から特定不妊治療だけでなく、一般不妊治療でも変更が有ります。
これまで一般不妊治療の人工授精が唯一、自由診療だったのですが、保険適応となるようです。
1820点になるようです。その3割ですから5,460円ですね。
タマル産の不妊外来では18,000円ですから平均的な額ですよ。
それでも保険適応になっていないと消費税がかかり、19,800円かかっているので、ちょっと受け易くなりますね。

これが概要ですが、直前になって変更されることはよく有りますから決定ではないのです。
これからどうなるかと言えば、おそらく一般不妊治療は思惑に反して受ける人が少なくなるかもしれません。
いきなり特定不妊治療を受けたくなるかもしれませんからね。
ですがその内容の違いをよく理解しておいた方が良いですよ。
お産で言うなら、普通に産むか、陣痛促進剤を使って産むか、帝王切開して産むのか、というくらいの違いです。

世の中の女性に、希望されるなら、是非その手に赤ちゃんを抱かせてあげたいと願うものです。


産婦人科医の簡単な増やし方

2022-02-18 20:36:15 | 産科
表は、少し前に厚生省が発表している、産婦人科医師数の充足度を示した指標なのです。
計算方法は複雑ですから、数値が多い方が充足と見ます。
東京や大阪が上位で、兵庫県も9番目ですから、産婦人科医師数は多い方と考えられます。
もっとも他の県に比べれば、という意味で、全国的に不足感は有るのですよ。


もう少し詳しく見れば、兵庫県内でも神戸(北区や西区)・三田や丹波、淡路、阪神は充足気味で、
播磨東、但馬、播磨姫路が低いことが分かりますね。
ただし三田は市民病院がもうすぐ無くなるのが決定しているので、変化することでしょう。

まとめると丹波は全国的に産婦人科医師数は多い方だということです。
他の市町村、例えば兵庫県でも北の方や西の方では、医療過疎地ということですよ。
だから丹波では、あまり産婦人科医療が危機的な状況にある、ということが理解されないのでしょうね。

今は医学部を卒業後、地方に勤務する条件で入学できる地域枠というのが有ります。
もし純粋に医師になって地域を背負いたいというのであれば利用すると良いのです。
ところが最近は卒業後に地方の産婦人科になる条件で、奨学金がたくさん貰える制度ができたのですって。
それほど産婦人科医には誰もなりたくないということなのでしょうね。

みなさんも産婦人科医の悪口ばかり言っていないで、自分でなってみられると良いでしょう。
ハードルは下がっていますからね。

改善策はすごく簡単です。
医療事故が起きても、産婦人科医個人を訴えるのではなく、産科医療補償制度を利用すれば良いのです。
注射器で空気を注射するなどという異常行為をするのでなく、
真摯に、通常の医療を行って、結果が不幸なことになったとしても、それは医療の限界なのですよ。
もしそれが外国でのことなら、何も問題視されないのです。
日本という世界一安全な医療を提供している国だからこそ、
医師が訴えられるのです。
だから医師を訴えるなんてしないよ、と一言言えば、産婦人科医になったり、続けたいという人は増えるのです。

それができないのでしょうけれど。


お産は病気ですか

2022-02-04 20:55:14 | 産科
Fortune comes in at the merry gate.
(笑う門には福来たる)
英語でも門、なのですよ。
笑いの絶えない家は、想像するだけで楽しくなりますね。
赤ちゃんを産むのに、理屈なんて要らないのです。

たった今、タマル産では赤ちゃんが生まれたところなので、ブログの更新が遅くなりそうです。
これからまた診察に行かないといけませんよ。
スルッと生まれたのですが、癒着胎盤という病気で、産後に処置が必要になりました。
お産って、病気ではないと言われますが、急に病気になってしまうことが有るのです。
そして一瞬で対応していかないと危険なことになるのですからね。

今週生まれた別の赤ちゃんですが、後方後頭位と言って、逆回転して生まれてきました。
臍の緒が首に巻いていると、顎が上がって、おでこから生まれるのです。
すると逆回転してしまうのですね。
そんな時は時間がかかって、時々帝王切開になることも有ります。
だから普通のお産かと思いきや、異常分娩だったということもよく有るのです。

そのお母さんは、救急車での入院でした。
以前、私が市長に提案して実現したのですが、
今は核家族も多く、ご主人が仕事の間に破水でもすると入院する方法が無いのです。
タクシーで十分とも思いましたが、夜間は走っていませんし、
地方では運転手が慣れていないので、乗せてくれないのです。
介護タクシーは、お産のお母さんは乗せられないことになっているそうですからね。
それで事前に登録しておくと、救急車で入院できるのです。
ちょっとサイレンの音にびっくりされるかもしれませんけれどね。

赤ちゃんは時々流産したり、死産したりすることも有ります。
一番リスクが高いのが、陣痛の時ですよね。
だから陣痛も病気だと捉えてもよいのです。
世の男性は、お産は普通に生まれて当たり前と思っているでしょうけれど。

丹波篠山市には、残念ながら、お産に対して改善するよう提言をする人が、誰一人として居ません。
それで数年前に市に対して、いくつか提言してきたのです。
入院タクシーもその1つです。
他にも一般不妊治療の助成制度や、
不育症の治療の助成制度、
妊婦健診費の助成制度の増額、
産後の分娩手当の新設、
助産所開設への反対(これには多額の費用が発生します)、
などです。
今ではかなりの部分で実現できたことに、喜んでいますよ。

あと実現できていないことは、高次医療施設との連携でしょうか。
医療機関というものは、大学対抗意識が強くて、なかなか他大学の医師との連携がうまくいかないのですよ。
兵庫県では神戸大学、京大、兵庫医大、岡山大学や鳥取大学など、テリトリー争いが有るのですからね。
お隣の小児科の前部長は、タマル産で生まれた赤ちゃんは観ないと公言されています。
今の部長は、診療所でなくて、全員病院で産めば良いと言われます。
産婦人科の新しい部長も、診療所を蔑視されていますからね。教授の子息だからでしょうね。

笑う門には福来る、みんなが仲良くできれば良いのですが。