タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

分娩予約再開のお知らせ

2020-06-26 19:13:00 | つれづれ
クリニックの3階が私の自宅です。
毎晩当直しているとも言えますよ。
軟禁状態とも取れるのですが。
そのベランダに、イングリッシュローズのパットオースチンが咲きました。
デビットオースチンが、娘さんの名前を付けたその橙色のバラは、ひときわ目立つ存在です。
娘さんの名前を付けるなんて、よほどお気に入りなのでしょうね。
うちの娘も、一番気に入っていますよ。

さて、この2週間で、皆さんをとても不安に陥れてしまいましたね。
私もとても疲れましたよ。
本来丹波篠山市とは、連携し合ってこそ市民の皆さんの役に立てるはずなのですが、
次から次へと難題を押しつけられては、存亡の危機に陥っていたのですからね。

兵庫医大さんが分娩の取り扱いを中止されました。
これは全国的な流れで、医師が3人以上で、せめて300人以上の赤ちゃんが生まれなければ、存続はできないのは当然なのです。
一番の原因は少子化ですよ。

そこで市長が考えたのは、タマル産への援助ではなく、
新たに分娩施設である助産所を作ろうとされたのです。
都会で、異常が有れば10分で他院に搬送できるような所では開業できるかもしれません。
ですが地方では無理なのです。とくに丹波篠山のように、NICUから遠い所では。
医療関係者なら誰でも分かることなので、他の病院からは連携なんて、ことごとく断られたのです。

にも関わらず諦めきれずに、分娩だけタマル産に行って、健診から産後まですべて助産院でするのですって。
しかも多額の費用をかけて。
もしそんなことになっていたら、皆さんは納得できたでしょうか?
しかもニュージーランド方式ですよ。
ニュージーランドは世界一安全な日本と違って、
赤ちゃんの死亡率(周産期死亡率)は2倍も高く、
妊婦さんの死亡率に至っては3倍も高いのです。
世界一安全な日本の医療システムなのに、わざわざ他国のシステムを真似して大丈夫なのかな?

下のグラフでは、左下に行くほど安全な国で、右上に行くほど危険な国を示しています。
厚生省が全国の産婦人科医に配布した資料から取りました。
日本はダントツの左下、ニュージーは上の方ですね。


ニュージーでは医療費抑制政策も有り、
病院で産むと出産費用が50万円くらいかかるのですが、
助産所で産むと無料なのだそうです。
タダより安いものは無いですね。

もう1つのトリックですが、
近年の分娩での死亡原因は分娩時の出血ではなく、自殺だと市は言います。
だから助産師を増やして心のケアが必要なのだと。
ですがそれは間違いで、厚生省の発表によれば、わずか全体の8%しか無いのですよ。


それでも若者の自殺率をさらに下げるために、厚生省の指導により、
丹波地域では少し前から「養育支援ネット」というものを作って、
そこに地域の精神科ドクターも参加してもらい、
より早期に専門家に紹介するシステムができあがっているのです。
助産師が相談に乗って解決できるものではなく、いち早く専門家に依頼するのです。
私もすぐに紹介するようにしているのですからね。
前回の養育支援ネットの会合でも、市の保健師さんが、精神科につなぐのが難しいと話されていましたが、それこそが産婦人科医の仕事なのです。

話せば切りが有りませんが、病院の代わりに助産所を、というのは、あまりにも稚拙だと思われませんか?
しかも運営費を含めると、何億円もかかるのですよ。

6月18日に市長は市議会の予算委員会を強引に通して、設計料を通しました。
ですがタマル産が経営の危機に陥ると知って、安井博幸市議会議員さんたちが中心になり、
市民の心を動かしてくださり、わずか数日で市長に案件を取り下げてもらうことに成功し、
記者会見となった次第です。
議会で通ったものがひっくり返るなんて、市政が始まって以来の出来事だそうです。
市民の声が直接、市政を動かしたのですよ。
私は本当に感動で涙が出ました。

それでこの結果を受けて、本日よりもう一度、分娩予約を再開することに決定しました。
ご心配をおかけして、本当に申し訳ありませんでした。
実際のところ私も、もう無理だと観念していたのですからね。
このわずか2週間の間に、いろんな方々から励ましのお声をいただきました。
ここに感謝の気持ちを表わさせていただきます。

1995年の阪神淡路大震災の直前に、私は京大の森教授から兵庫県入りを指示されたのです。
ですがたとえ指示されていなくても、天の召命だと解っていました。
震災後すぐに10年ぶりに第3子を妊娠し、その年の10月に自宅のマンションの一室で、私1人の介助の元に出産しました。
念のために助産院の助産師さんにも健診をお願いして。
その子が今年、兵庫県で研修医を始めたのですからね。

私は本来、病院の医療介入の入ったお産より、自然なお産をむしろ応援したいのです。
タマル産もそのために開業したのですから。
ただしそのためには、密な関係を築いておかかなければなりません。
その時の助産師さんは、最近亡くなられたと孫娘さんから連絡を頂きましたよ。
愛された孫娘さんは看護師になられていて、タマル産で出産されたのも、天の導きでしょうか?















医師は食わねど高楊枝

2020-06-19 08:32:04 | つれづれ
写真は、宍粟市民病院に昨日訪れてきた時のものです。
今年からうちの3番目がここで研修医をしているのですよ。
面積と人口は丹波篠山市とほぼ同じなのですが、さらに少子化のスピードが速く、
この20年で出生数は半減しています。
今現在は市民病院に産婦人科は有るのですが、ここももうすぐ無くなるのでしょうね。

丹波篠山市には、「丹波篠山市の産科充実に向けての検討会」なるものが有るようです。
残念ながら、産科の未来の話にも関わらす、私にはその存在や内容すら知らされていないのですよ。
ようやく数日前に、医師会の小嶋副会長からその8回の内容を知らされました。

まず当初は「ささやま医療センターの産科充実に向けての検討会」だったのですよ。
丹波篠山市には、東の旧市街に兵庫医大、西の新興住宅地にタマル産が有ったわけです。
兵庫医大さんが分娩を取りやめると、東の住民が困るというものでしょう。
「このままでは丹波篠山市で産めない」という論調でしたね。
それで西の住民から徴収した税金を、東の兵庫医大に助成してきたのです。

そんなわけで、この検討会の参加者は、東の住民の声を代弁するためのものでした。
酒井市長は市民病院だと思われているので、当然存続をさせたいでしょう。
小西隆紀県議は、「3人の子を兵庫医大の池田先生に取りあげてもらって感謝している」と言われています。

他の委員は、「タマル産では体重管理の指導が厳しく、その厳しさを受け入れられない人が居た」とか、
「タマル産で出血などの理由で転院する必要がある場合、篠山から遠くの病院に行くことを想像すると怖い」だとか。
兵庫医大だって、本院に運ばれますよ。
要は、もともと兵庫医大大好きな人たちで、兵庫医大の分娩取り扱い中止を良しとしない人たちが集まって、
この春からはその会の名前も「丹波篠山市の産科充実に向けての検討会」に変わったのですが、
その実、西の住民やタマル産の意思を反映する参加者が居なかったわけです。
参加者のメンバーは市長が決められていて、タマル産の出席を頑なに拒否されて居られたので、
結果は初めから決まっているのですよ。

あるいは「兵庫医大ではなぜ医師2人も居るのにお産をできないか」といった、誰でも分かるようなレベルが分からない素人の人たちが討論してきたのですよ。
医師会からは「内科」の、副会長の小嶋先生です。
なぜタマル産の意見を吸い上げずに、また進行状況をタマル産に知らせなかったのでしょうか。
医師会の責任も重いですよ。

批判ばかりしていても始まらないので、これから市長に直接提言することにしました。
提言内容も公表しておきましょう。
1つ目は、すでに市議会が決定した助産所建設を白紙撤回。
助産所で産む人が何人居ますか?
今は産後ケア施設に計画は縮小されましたが、それでも利用者はまだ2人だそうです。
そのために何億円も出すのですか?

2つ目は、「丹波篠山市の産科充実に向けての検討会」のメンバー総入れ替え、
もしくはその会議自体中止を勧めます。
だって、産婦人科の事情に詳しい人が居ない中で、助産師1人の意向で私たち市民を翻弄しているのですよ。
私や田中先生を参加者に加えていただきたいのです。
それと西の新興住民の意見も反映していただきたいのです。

3つ目は、「医師は食わねど高楊枝」。
タマル産では今まで頑なに市からの助成を拒否してきたのです。
市民税を受け入れると、市の言いなりになることを懸念していたからです。
もっとも税金を貰っても言うことを聞かない病院も有りますけれど。
ですが少子化の今、これ以上の医療の合理化や人件費の削減だけでは対応しきれなくなったのも事実です。
兵庫医大だけではなく、岡本病院や西紀病院も救急を開設しているというだけで、
どちらも毎年多額の税金を受け入れているのですからね。
産婦人科は24時間、30分以内に緊急手術ができなければならないので、最も緊急度の高い施設です。
それを維持するためには、多額の経費がかかるのですよ。
兵庫医大が赤字なのは当たり前です。
ただし助成は新規のものは否定します。もし兵庫医大を削れるのであればその分で。
タマル産だけは黒字だと思っていましたか?
私など、スーパーでは赤いシールの貼った食材しか買いませんよ。

この3つが受け入れられれば、あと、5年、10年と、市民の皆さんの役に立ちたいと思っているのですよ。
昨日までは家族とも中止の方向で検討していたのですけれどね。
それで宍粟市まで出かけてきたというわけです。
体力がいつまで保つかでしょうけれど、
5年、10年後の市の出生数を考えてみましたか?
いくつもお産できる施設が本当に必要ですか?

それともう1つ、女性のために立ち上がっていただきました、
渡辺拓道市議、大西基雄市議、かんなん芳治市議、丹後政俊市議そして安井博幸市議には、たいへん感謝しています。
それにしても密室で会議するのではなく、公の場で討論してもらいたいものです。
そうすれば、現在、新規の分娩予約を停止しているのですが、再開できれば良いと考えています。






分娩取り扱い中止のお知らせ

2020-06-12 11:58:23 | つれづれ
上の写真は、今夏、初採れのキュウリです。
今年の目標は、スローライフですからね。
もう20年以上休みも無く、遠出したことも無く、
子供たちとゆっくり遊ぶことさえできませんでしたからね。
最近買った本で、「あやうく一生懸命生きるところだった」というタイトル本は、示唆が有りました。

それでもタマル産では今週もたくさんの赤ちゃんたちが生まれましたよ。
朝来市から通院されていたカップルは、「不妊症の時からお産までお世話になりました。」と感謝して頂きました。
いえいえ、まだまだこれから2人目、3人目とお付き合いは続くのです、とお答えしましたよ。
そう、タマル産の診療圏は広くて、丹波市や福知山市、豊岡市や朝来市、舞鶴市から通院されている方も多いですね。

ところで一昨日、突然、丹波篠山市の酒井市長がタマル産を訪ずれられました。
3月で兵庫医大さんが分娩の取り扱いをやめられたので、
これから末長く頑張ってくださいね、という励ましで来られたのだと思ったのですが、どうやら全く正反対の要件でしたよ。

兵庫医大の件では、私も抗議活動としてこのブログを一時閉鎖したのです。
それでも懲りずに今度は助産所を作って、お産までするという話でした。
予定通りだと扱い件数は100人以上ですって。
仮にうまくいっても、数人の間違いでしょう。
助産師を大勢雇用して、24時間、医師無しでお産できるのですか?
だいたいそんなにたくさんの助産師も集まらないでしょうし、予算も大甘ですよね。

今は昭和初期ではないのだから、必ずお産にはトラブルが伴うのです。
助産所を作るには嘱託医(しょくたいくい)というのを決めなければいけないのですが、
兵庫医大、三田市民、丹波医療センター、済生会病院にも断られて、
市長のコメントは、「甘く見ていた」と報道されていましたよ。

それで、この話はもう終わったのだと思っていたのです。
ところが市長の訪問は、助産所復活の話でしたよ。
タマル産ではもう20年以上も前から、ソフロロジー式分娩教育というものを取り入れて、
他院では無いほど、分娩までにたくさんの分娩前教育を行っているのです。
にも関わらず、市が分娩前教室を全て二重に開催するのだそうです。
タマル産では土曜日ですが、平日だったら参加者も少ないでしょう。

それどころか、その後のニュースで知ったのですが、妊婦健診もする予定なのだそうですよ。
新しく1億円を超える施設を建設して。
産後ケアという、産後に宿泊できる施設も兼ねているのですって。
昨年、一昨年にタマル産で宿泊型の産後ケアを利用されたのは、わずか7人と9人でしたよ。
このうちの何人の利用を想定されているのでしょうか。
24時間助産師が付き添って、食事も4食1週間出すのですよ。
わずか数人かもしれない、ひょっとすると利用者はゼロかもしれないのに、
建設だけで1億円超、それに助産師3人も新規に雇用するのだそうです。
運用費も高額になるでしょう。
医療機器まで想定しているのでしょうか。

そもそも産後ケア制度が導入された時にも、市とは一悶着あったのですよ。
篠山市は赤字だから、制度は作ったけれどなるべく使わないように、とクギを刺されたのです。
当時は患者さんが制度を利用したいと市に申し出ても、なかなか許可されませんでしたよ。
それが今ではタマル産が積み上げてきた事業を取り上げて、市がやるというのでしょう?

市の方針は、まずは母親学級から、次に妊婦健診も、あわよくば産科医が見つかればお産も、ということでしょう。
どうもタマル産の役割をいつまで経っても無視されているようですね。
前に兵庫医大さんが看護師不足で1年間お産をやめられた時期が有ったのですが、
この時もタマル産では人員を大幅に増員して対応したのです。
それが突然再開されて多数の職員に退職してしもらった事件も有りました。
今回もそうなるのでしょう。
兵庫医大の撤退によって、タマル産では人員を増員しているところですからね。

これら一連の問題はどこから発しているかと言うと、
酒井丹波篠山市長が中心となって、悪政を進められているのです。
My 助産師という聞こえの良い言葉を使って、税金の無駄遣い、
現在丹波篠山市で唯一の分娩施設であるタマル産の軽視は許せませんね。

早く家に帰りたいからお産はしないと言われた兵庫医大には毎年1億2千万円、
産後ケアが年間1件でも有るかどうかわからない施設とやらにこれまた1億2千万と運営費、
これらが無駄と感じているのは私だけでしょうか?

さすがに私も意欲が下がってしまったので、人生の後半はお産の取り扱いを中止して、スローライフと致しましょう。
ということで、来年度はお産の扱いを中止致します。








いよいよ出生率は1.36です

2020-06-05 21:54:48 | つれづれ
6月になりました。
タマル産の噴水回りには、昨秋に植え替えたバラの花が満開ですよ。
バラには無い青い花と、ピンクの小花のエリゲロンで縁取りして、イングリッシュガーデン風にしてみました。

さて、何度か遠隔診療のお話をしてきたのですが、
ようやく来週の月曜日から本格的に運用します。
https://www.tamar.jp/online
当面は月曜日だけの運用になりますが、将来的には他の曜日にも拡張するかもしれません。
月曜日の診察時間内の枠で、オンライン診療の予約を取ってください。

ただし受けられるのは、事前に診察の際に医師から許可された方だけになります。
つまり初診には対応していないということですよ。
例えばアフターピルをネットで処方してほしい、という欲求には答えられません。

できれば3ヶ月間以上、低容量ピルや漢方薬を処方されている方で、
症状が落ち着いている方に限ります。
それでも3ヶ月に1回は受診していただく必要が有ります。
値段は直接来院されるよりは、送料や手数料、通信環境構築費用などが上乗せされるので、
少し割高になりますが、遠方から通院されている方にはメリットが有るでしょう。

本来は内服薬は2週間で、外用薬は6日分までしか処方できないのですが、
なし崩しで長期間処方される病院も有りますからね。
そういう病院のカラクリは、高額薬の新薬などを処方して、薬価差で稼いでいるのです。
タマル産では、もともと安いジェネリック薬がほとんどで、良心的なのですけれどね。
しかも院内処方なので、患者さんには取りに行く手間も無いので二重の待ち時間は無いし、
院外処方より院内処方の方が薬局に払う費用が無く、安いのですよ。
それでも敢えて、患者さんの便宜に合わせて、オンライン診療も始めるのですからね。
何度もお話しているので、この話題はこれで。

今日のニュースでは、いよいよ出生率が1.36になったというのが重大です。
すっかり数字には慣れてしまって、驚かれないでしょうけれど、
このままでは日本は消滅してしまいますね。未来が無いということですよ。
今月号の市報でも、小学校では生徒数が少なくなって、
しかも先生も働き方改革で、クラブ活動ができなくなってきているという報告も有りました。

地方で対策を取るとすれば、どうすれば良いでしょうか。
1つ目は、高校を出て、どこに進学するかでしょう。
大学や専門学校は丹波篠山市には1つも有りませんね。
隣の丹波市には、看護学校が有りますよ。これだけでも若い女性を繋ぎ止められます。
以前、市長に直接提案したのですけれど、無理だと言われましたよ。
うちの子供たちも、5人とも大学に行かせましたが、他県、あるいは外国ですからね。
1人だけ兵庫県でした。

2つ目の対策は、大学を出て就職はどこでするかでしょう。
そのまま都会で就職してしまうのです。
地方の就職先は銀行か公務員だと、以前銀行員さんが話していましたが、
その銀行員も雲行きが怪しいですしね。

3つ目の対策は、うまく丹波篠山に残ったとして、若いうちに結婚できるかです。
幸せな家庭からしか、子供たちは成長しないのではないでしょうか。

4つ目の対策は、1人か2人赤ちゃんを産んだとして、3人目以降産む女性が少なくなっています。
結婚しても離婚するカップルが非常に多いのですよ。
このあたりに税金を投入するのが良いでしょうね。
もちろん削れるところとして、箱物への投資をやめるべきです。
それは箱物の最大のものである、病院誘致への投資をやめるべきでしょう。
コロナで判明したことですが、病院に行かなくてもなんとかなるのですよ。
病院を集いの場にする必要はなく、喫茶店さえもコロナの影響で必要なくなりましたからね。

薬だけなら電話でもらえば良いのです。若い人はオンラインで。