タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

妊娠中のカゼの治し方

2014-11-28 21:38:58 | 産科


丹波市氷上町の惺弥(せいや)くん、10月7日生まれ。
「周りのことを気遣える、広い心を持つ子に育ってください。
初めてのウォーターベッドでの出産、痛かったけれど楽に産めました。」

赤ちゃんも、お母さんも、上の子たちも、1ヶ月もせずにみんな風邪をひいたのですね。

もう11月も終わりですから、タマル産での妊婦さん用のインフルエンザワクチンも
まもなく終了します。まだの方はお急ぎください。あと4人分しか有りません。
非妊婦さん用のインフルエンザの予防接種は、一般内科でまだしばらく受けられるでしょうから、
機会をなくされた妊婦の方は、内科の先生と相談してください。

インフルエンザでなくても、急に寒くなると、皆さんよく風邪をひかれます。
政府としてはカゼ薬やビタミン剤は保険からはずしたいようで、
積極的に薬局やコンビニに誘導していますね。
それでも妊娠中は産婦人科で風邪薬を貰いたいという方も居られます。

普通の風邪に対しては、産婦人科では主に漢方薬を処方します。
風邪の初期と中期に飲むように。
あるいは長引く後期症状に対して、3つの段階で処方することが多いです。

風邪の初期症状に私が処方するのは葛根湯(かっこんとう)一点張りなのですが、
体力の無い女性には少し動悸がして、キツイかもしれません。
そんな女性には、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などもいいでしょう。
この初期に飲む薬は常備しておいた方がいいでしょうね。
夜中では診療所も開いていませんからね。
薬局でなら遅くても買えるかもしれませんが。

今年の風邪は、のどと鼻水の症状を訴えられる方が多いですね。
初期の症状も峠を越して中期の症状としては、鼻汁なのです。
ドロッとしたものでなく、サラッとした鼻汁なら、
分泌を抑制する小青竜湯(しょうせいりゅうとう)などがいいでしょう。
中期の症状はいろいろですから、多少バリエーションが有りますけれど。

後期症状でいつまでもしんどい場合など、体力回復の補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や、
カラ咳が続く場合の、麦門冬湯(ばくもんどうとう)などを常時置いています。
これなら妊婦さんでも問題なく内服できますね。

インフルエンザの場合は少し違いますよ。
日本産婦人科学会が、抗インフルエンザ薬をすすめているので、
これを処方してもらいたい場合は内科に行ってください。
本当はインフルエンザでさえ、漢方薬の方が同等か、よく効くとも言われているのに残念です。
最近は何でもガイドラインに書かれていないことは、お勧めしにくいのです。
ですが、家族になら漢方薬を処方しますよ。
インフルエンザの場合は高熱が出るので、
熱を下げる石膏(せっこう)の成分が入っているものがいいです。
普通の風邪の場合はむしろ身体に籠った熱を発散させるようにするところが違います。

高校生の娘は、私が処方する漢方薬がお気に入りで、
いつも1日で治ると友達に言うのだけれど、
学校の友達は漢方薬をバカにするそうです。
どうも小さいときから、みんな薬漬けにされているようですね。

私も不規則な生活でよく風邪をひくのですが、
1日で治す術をいくつか知っていますからね。
まあ、妊婦さん用ではないので、それはまた次回に。

妊娠中の背中の強い痛み

2014-11-26 21:59:14 | 産科


上の写真は篠山市西荘の智秋(ともあき)くん、10月27日生まれ。
「1人目より楽に産めました。
ご飯がすごくおいしかったです。」

お産で入院している時の方が楽ですよね。
ずっと入院していたい、と言われる方も。
でも、お父さんを1人にしておけませんからね。

ところで、妊娠していると、お腹が目立ってくるのは、妊娠5ヶ月くらいですね。
それというのも、それまでは骨盤腔の中に子宮が収まっていたからです。
骨盤から外に出て来ると、急に目立ってくるのですよ。

この頃に起こりやすい病気は何だと思われますか?
それは、腎盂炎なのです。
膀胱炎がひどくなったもの、と考えていいでしょう。
尿は腎臓で、血液を濾して、腎盂から尿管、膀胱へと流れていきます。
逆に細菌は、膀胱から腎盂の方へと逆行性に登って行きます。

腎盂炎は若い女性の病気ですが、
かなり背中が痛みます。
少し背中を叩けば、すごい痛みなので、すぐに診断がつきますよ。

さて、この腎盂炎なのですが、妊娠5ヶ月以降に起こることが多いのです。
もちろん妊娠していない若い女性でも、
性行為の後などに発症することも有ります。
昨日も、時間外に、この病気で紹介が有って診察をしましたよ。

妊娠中になる場合は、必ずと言っていいのですが、
右側の腎盂炎が多いのです。
理由は、子宮って、右に傾いているのですよ。
だから右側の尿管が直接圧迫されるのですね。
ちょうど、骨盤から出る辺りで、骨盤の角で圧迫されてしまうのです。
解剖学的にも、右卵巣静脈が尿管を圧迫しやすい一に有ります。
また妊娠中は女性ホルモンの影響で、尿管がたるむというのも原因の1つです。
それに対して、左側の尿管は、S状結腸という、肛門のすぐ上の大腸なのですが、
これが、尿管への圧迫の緩衝となっているというのも一因です。

妊娠中に腎盂炎や尿路結石になると、入院が必要なことが多いのです。
腎盂炎なら抗生物質の点滴で治りますが、
よく似た症状の尿路結石となると、尿管を拡張する薬を使いながら、
大量に点滴して、洗い流すようにするのですよ。
入院も、腎盂炎なら1週間ほどですが、尿路結石なら2、3週間にもなります。

お腹が大きくなったからと、喜んでばかりも居られませんね。

新しい男性不妊症治療の助成制度、ただし京都

2014-11-25 22:18:14 | 不妊症
福知山市の颯良(そら)くん、10月20日生まれ。
「優しく、強い子になってください。
1人目より楽に元気にお産ができました。
次も元気に、子供も一緒にお産がしたいです。」

そうですよ、最低3人以上は赤ちゃんを産んでくださいよ。
産めば産むほど楽になりますからね。

さて、連休開けなので、今日は不妊症の話題です。
裏日本の方は不妊外来を持っている所が少ないのか、
タマル産まで来院してくださる方も居られます。
福知山だと京都府になるので、京都府の助成制度というのが有るのですね。

京都の場合、不妊治療に要した保険診療と自由診療の自己負担分の一部が帰ってきます。
残念ながら、兵庫には一般不妊治療に対しての助成は有りません。
ただし、どちらも体外受精などの高度不妊治療に関しては、助成が有ります。
詳しくは福知山市のホームページを。
http://www.city.fukuchiyama.kyoto.jp/life/entries/001484.html
本人とご主人の両方に助成が有りますから、かなりお得ですね。
人工授精なんて、全額返ってくるのではないですか。

そして今年の10月から、さらに助成対象が増えたのですね。
男性不妊治療に対して、精巣内精子生検採取法(TESE)と
精巣上体内精子吸引法(MESA)が対象になったようです。
ただし特定不妊治療の指定医療機関である必要が有ります。
タマル産では無理です。少し遠方になりますよ。

だいたい男性が不妊症の原因になっている割合は、
単独の場合と夫婦両方の場合を含めて、50%ほどです。
その内訳は、精子を造る能力が低い、造精機能障害が90%に及びます。
精管が詰まっているなどは、むしろ少ないのです。

さらに造精能力が低い原因は残念ながら、
原因不明が60%です。
他には精索静脈瘤や染色体異常、
小さいときの停留精巣などですが、むしろ少数です。

その治療が精巣や精巣上体から精子を直接採取して、
体外受精の特殊な、顕微授精に使うのですよ。
その助成制度ができたということらしいですね。

この連休は、赤ちゃんが4人も生まれて、
さらに先ほどもう1人赤ちゃんが生まれていたので、
ブログの更新が遅れてしまいました。
フェイスブックはこちらhttps://www.facebook.com/tamarclinic

古き逆子の技術は去りて

2014-11-21 21:58:57 | 産科
写真は篠山市奥原山の碧志(あおし)くん、10月19日生まれ。
「明るく元気な子に育ってください。
1人目、2人目よりも速かったです。ご飯がとてもおいしかったです。」

そうです、赤ちゃんを産むごとに、楽に産めるようになりますからね。
赤ちゃんを産むことが、気持ちよくなってくるというのですよ。

さて、寒くなってきましたから、年末が近いという雰囲気になってきましたね。
そうなると1年のまとめが頭に浮かんできます。
毎年、年初に前年お統計をホームページに掲載しているのをご存知でしょうか?
不妊症の成績と、総分娩数に対する帝王切開の割合です。

ですからまだ今年の成績はまとまっていないのですが、
私自身の感覚として、最近帝王切開になられる方は、
多くが骨盤位(さかご)が原因かな、という感じです。
世界中で、この傾向が強まっているのです。
この理由と言われるものは、実は2000年のランセットという雑誌の論文なのです。
26カ国の2183人が対象の研究によるものなのですが、
この論文が示したものが、予定の骨盤位の経膣分娩より予定の帝王切開の方が安全だというものです。
この時から一気に世界中でさかごは帝王切開となったのですよ。

ということで、さかごが帝王切開というのはわずかこの十数年の歴史しかないのです。
しかもその後、この論文が間違っているという対抗論文がたくさん出て、
2006年には、熟練した医師の指導の下では、経膣分娩も帝王切開も、その予後は変わらないとされました。
でも少し遅かったですね、既に世界中で帝王切開する風潮になってしまったのですから。

今の若い産婦人科の先生は、さかごで生まれるところを見たこともないという先生も多いのですよ。
だからどちらがいいなんて言えませんね。
おそらく私なんかの世代が、この熟練した医師という世代なのです。
産婦人科に関して西日本一と言われた天理よろず相談所病院というところで学べたことは、
私にとっては良い経験でした。
4年間すべてのさかごの主治医をさせてもらったからです。
そしてすべてのさかごの赤ちゃんは経膣分娩だったのですからね。

ただし多くの古き良き時代の伝統工芸などと同じで、もはや伝承されなくなる技術のようです。
本当は、無傷で皆さんにも産ませてあげたいのですが、
希望する女性が居なくなった、というのが実際のところなのです。

*****

自然とは何でしょうか。
神様が私のために、
「ため」に生きる愛をもった息子、娘が生まれたときに、
「ため」になる万物として、プレゼントをしてくださった展示品です。
鳥の声ひとつ、一株の草さえも、
愛する息子、娘たちの
生活の美化のために造られた装飾品なのです。
道に転がっている岩も、
息子、娘が国を治める主人になることを知って、
その国の装飾品として造ったのです。

   レバレンド・ムーン



流産の管理が変わりました

2014-11-19 20:25:44 | 産科
篠山市郡家の怜央(れお)くん、10月17日生まれ。
「ライオンのように、強い子に育ってください。
楽なお産で良かったです。個室で快適に過ごせました。」

お姉ちゃんに弟くんが生まれましたね。
赤ちゃんの曾お婆ちゃんが、とてもかわいらしい女性です。
いつも赤ちゃんの写真を持ち歩いておられますからね。
4世代同居なんて、とてもすばらしいことです。

さて、2014年には産婦人科診療ガイドラインが改訂されました。
最近は何でもガイドラインです。
こうなれば医師は必要無いですね。
だってガイドラインに書いてある通りにすればいいのですから。
慣れ親しんだ方法で治療しても、それがガイドラインで推奨されていなければ、
結果が良ければいいのですが、結果が悪い時には問題になるのでしょうね。

まあそうひねくれずに、1つ変更点をお話してみましょう。
流産の時の対応について、です。

妊娠初期と思われる時期に、月経が2週間ほど遅れて、つわりも出て来ると、
もうそこで妊娠6週ということになります。
妊娠第2ヶ月の半ば、とも言います。
普通はこの時点で超音波検査をすると、子宮の中に胎のう、という袋と、
その袋の中に、数ミリの胎児が見えて、胎児の心臓が動いているところまで見えます。
ここまでいくとかなり期待できますね。

というのも、妊娠初期にはよく流産することが有るからです。
ですが、胎児の心拍が見えれば、もう流産することは少ないのですよ。

ところが妊娠初期に胎のうは見えるけれど、
その中に胎児がまだ見えない、ということもよく有ります。
そういう場合は2週間後に来院してください、とよく言うことにしています。
その理由は、胎のうが見えてから2週間経てば、最低でも妊娠6週の半ばにはなっていて、
100%、胎児の心拍が確認できるからです。
そこでもし心拍が確認できなければ、流産ということになります。

流産と診断がつけば、血液検査をして、入院する日を決めます。
それは流産手術をするためなのです。
数日後の朝に絶食で入院していただいて、昼に手術をして、
夕方に帰宅していただいています。
できることなら、退院後1週間ほど自宅で安静にしていただいています。
これがタマル産での、流産の場合の対応法なのです。

実際、産婦人科診療ガイドライン2012には、
上記のように、「子宮内容除去術が待機的管理に優る」と書いてあります。
待機的管理とは、妊娠初期に出血が有るような場合、ずっと1~3週間ほど入院していただいて、
自然に出血が止まってくるか、自然に流産となって流れてしまうかまで、入院を継続するというものです。
その代わりに、手術はしないというものです。

もちろん出血が多ければ、夜間や休みの日でも緊急に追加で、手術をしなければならないことも有ります。
なので、こういう待機的な管理よりは、日を決めて手術をしましょう、というものだったのです。
その方が医療者にも予定が立てやすいですし、
患者さんも仕事を休む都合も有るので便利です。
それに、待機的だと、出血が多くて、びっくりすることも有りますからね。

ところが、ガイドライン2014はどうなったかと言いますと、
「待機的管理(手術をしないで自然排出を待つ)」と、
「子宮内用除去術」は、同等な治療法(推奨A)とされたのです。
どちらでもいいという意味ですね。

だからこれからは、どちらの治療も説明して、選んでもらわなければならなくなりますね。