タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

陣痛促進剤による「利益」を考える会

2015-06-30 21:46:46 | 産科
丹波市春日町の彩花(あやか)ちゃん、5月28日生まれ。
「たくさんの笑顔に囲まれた人生を送ってください。
3人目ということもあり、リラックスして産めました。
どの方も丁寧にアドバイスしてくださり、はげみになりました。」

次は上の子たちと一緒に産みたいそうです。願いが叶いますように。
もうすぐ七夕ですからね。願い事は大切です。

今日は月末の火曜日なので、お産の話をいたしましょう。
それも陣痛促進剤、あるいは陣痛誘発剤と言われる薬についてです。
陣痛の無い妊婦さんに投与すると誘発剤、
陣痛は来たものの強くならなくて長引いた時に使用すると促進剤、と呼び名が変わります。

医療者側からすると、陣痛促進剤による被害を考える会、というのが有るので、
とても使いにくい薬です。
そんな本音は誰も言わないでしょうが、実際そうなのです。
けれども、この薬が有るからこそ、正常に生まれない赤ちゃんでも、
たくさんのお母さんが帝王切開にならずに、産むことができてきたのです。

どんな時に使用するかと言えば、
前期破水の時に使うことが多いのです。
破水すると24時間以内に産むことが要求されます。
24時間を過ぎて、赤ちゃんが感染症などになると、法廷で罪を問われますから。
諸外国では24時間経てば帝王切開と決まっています。
日本では48時間くらいまでなら今のところは許されているように思います。

その他に使用する場面と言えば、
へその緒が首に絡んでいる時です。
へその緒が絡んでいると、引っ張れて、回り具合もおかしくなりますし、
へその緒が圧迫されて低酸素状態になるので、陣痛が遠のくことが多いのです。
そんな時は、陣痛促進剤を使用すると、なんとか生まれるのです。

さかごの時も破水してしまう前に、子宮に入れる風船と一緒に使用し、
陣痛を誘発する方が安全に生まれます。
子宮の出口が開く前に破水してしまうと、
へその緒が脱出したりして、危険になるからです。

他には妊娠高血圧症候群などの病気で、早めに産まないといけない時にも、
陣痛誘発剤として使用します。
ただし血圧が上がりやすいので、ひどい場合は初めから帝王切開です。

促進剤を使用すると、たいていはうまく生まれてくれるのですが、
それでも生まれない時は、緊急で帝王切開になるのです。

近頃は、せっかく産ませてあげようとして陣痛促進剤を使用しても、
薬を使用してもうまく生まれなかったり、
もともと生まれにくいから使用するので、吸引分娩になることも多く、
そんな時は、早くに帝王切開しておいて欲しかったという妊婦さんが増えてきました。

医療者側も、無理をして文句を言われるより帝王切開しておいた方が、
文句も言われず、ましてや裁判沙汰になるようなことはないので、
気が楽なのでしょう。
こうして陣痛促進剤より、帝王切開の方が好まれてきているのが現状です。

ここでタマル産の方針を説明しておけば、
みなさんの期待とは逆に、無理をしてでも帝王切開をせずに、
無事に産ませてあげる方を好みます。
ネットでは、タマル産は切らないようだ、などと揶揄する意見も有るようですが。

次に使用方法を見てみましょう。
陣痛誘発剤には主に3種類有って、
飲み薬のPGEという薬は、初めに使う薬です。
というのは、PGEには子宮の出口を柔らかくさせる働きが有るからです。
出口がまだ硬いうちに使用すると、上から押されるは、下は出られないわで、
挟み撃ちになるからです。

次に使うのがPGFという、点滴で使う薬です。
この薬は、輸液ポンプで量を調節しながら時間ごとに上げていくので、
みなさんが思われるより、かなり安全に使用できます。
しっかりした陣痛が、徐々に来ます。

3つ目の薬はオキシトシンという点滴剤で、
陣痛の最後の方に使う薬です。
陣痛と陣痛の間を縮めるように、回数が多く張るようになるからです。

問題は、これらの薬は使用方法に従って、輸液ポンプを使いながら、
分娩監視装置を連続的に付けつつ行う、ということになっているのですが、
4割以上の施設でこれを守っていなかったという、日本医療機能評価機構の調査結果でした。
もちろんタマル産では、これらを遵守して使用していますから、ご安心を。

使用方法を守らない施設が有るがために、
先の被害を考える会などに、医療全体が悪者だと言われてしまうので、
医療者側にも大きな反省点は有りますね。
ただし原則として、医療者側は人に良かれと思ってしている医療で、
結果が願い事と違った、という理由だけで罰せられるのでは、
逃げ出したくもなるでしょうね。

ご意見は有りますか?

自己注射で精子が増えました

2015-06-29 21:15:09 | 不妊症
丹波市氷上町の佑歩(ゆうほ)ちゃん、5月27日生まれ。
「助け合い、支え合いながら人生を歩んでください。
無事に生まれた時は、涙が出ました。
小さな不安にも丁寧に応えていただいて、不安なく元気に過ごせました。」

お産がたいへんであればあるほど、生まれた時には感動するものです。
そういう意味では、陣痛を経験して、それを乗り越えるということは、
お母さんにとってはとてもメリットが有るのではないかと思うのですよ。
陣痛を経験することなく帝王切開になってしまうのは、もったいないと思いますね。
また、何日も陣痛に要したとしても、それを喜びと捉えられると、
人生にプラスに働くはずなのです。
捉え方ひとつなのです。

さて、月曜日なので、不妊症のお話ですね。
先週は、不妊症の定義がもうすぐ変わる予定であり、
結婚して避妊せずに1年経っても妊娠しなければ不妊症となりそうだとお話しました。

女性の初婚年齢も、ついに30歳を超えました。
ですから初めて赤ちゃんを産むのは、32歳ごろでしょうか。
2人産めば、34歳ごろで、これが限界になりそうですね。
というのも、女性は35歳を過ぎると急激に妊娠しにくくなるからです。
そして、こんな常識を知らない女性は、先進国では日本くらいだというお話を
2週間前にしたところでしたね。

今日はその続きで、
なかなか妊娠しないのには、
女性の年齢ばかりが原因とは限らず、
半分は男性側が原因だということです。
もちろん重なっている部分は有るのですよ。

そしてここのところ、男性不妊のお話ばかりしてきました。
今現在、男性不妊に対して、漢方薬を飲まれている方は多いです。
それに加えて、自己注射を始められた方が3人、居られます。
けっこうたいへんで、費用もかかりますよ。
それでも、女性の不妊治療に使う薬と同じで、使用料が少し違うだけです。
だからいくらたいへんと言っても、女性はよくする治療ですからね。

ようやく自己注射が保険適応となったので、
自宅に持って帰って、自分の好きな時間に注射できるのです。
注射は週に3回ですから、月水金とか火木土に注射すればいいです。
注射は2種類有り、1つはペン型になっているので、慣れれば簡単で痛くも有りません。
もう1種類は、まだキット化されていないので、
アンプルを自分で切って、注射器で吸って、
空気を抜いて、自分に注射するのですから、
少し敷居が高いですね。

それでも治療中の1人の男性なのですが、
治療を初めて1ヶ月とちょっと、
前回の検査では、1ミリリットル中に、200万匹しか居なかったのに、
1ヶ月と少し後には、2億匹まで増えていました。
実に100倍の濃度ですね。

治験では、3ヶ月後に、まったくの無精子症の男性でも、
その9割に改善が認められたものです。
なので、1ヶ月ではまだなんとも言えず、できれば最低3ヶ月、
次に6ヶ月と、気長に治療を続ける必要は有ります。

無獅子症の8割は精子の通り道の閉塞ではなく、
精子を造る機能が落ちているとされます。
そして機能低下の場合なら、その8割に医学的に効果が有ると分かっているのですから、
使わない手は有りませんね。





何が自然なお産でしょう

2015-06-26 21:04:30 | 産科
丹波市柏原町の菜巴(なのは)ちゃん、5月18日生まれ。
「出産前に菜の花畑を見て元気をもらいました。明るく元気に育ってください。
今回は薬を使ってのお産でしたが、家族と一緒に穏やかな気持ちで出産できました。
3人目もウォーターベッドで産みたいです。」

何人か赤ちゃんを産んでいただくと、とても近しく思えてきますね。
赤ちゃんを産んで、5年も10年もして再診されることも有りますが、
そんな時はとても懐かしく思い出されますよ。

先日から何度かお話してきたのですが、
周産期救急の初期対応、というテーマのもとに、分娩環境を改善しつつあります。
まずAEDを新しく買いました。
AEDは、最近いろんな施設などで、設置しているのを見る機会が有りますね。
四角い、ナップサックほどの大きさのものですが、
見たことは有っても、触れたことはないのではないでしょうか。

操作はどこのメーカーのものでもよく似たもので、
1、スイッチを入れる。
2、電極のパットを右胸と、左脇腹に貼る。
これは心電図なんかを付けたことが有れば簡単なのですが、そんなことは無いでしょうからね。
この時の注意点は、心電図やら、分娩監視装置やらを身体からはずしておくことなんです。
3、音声の案内に従って、スタートスイッチを押す、の3段階なんですよ。
電極を付けると、自動的に心電図が解析されて、指示が出されるのです。
ですが何度も復習しておかないと、いざという時に使えません。

他にはリザーバー付きの酸素マスクも買いました。
これは普通の鼻から吸う酸素や、口に当てるマスクと似ているのですが、
空気と混じらないので、高濃度の酸素が投与できるものです。
お母さんの救急自体では、役に立つものなんですよ。

それに鼻から入れる、エアウェイと言って、気道を確保する器具も買いました。
なんだ、今まで無かったのか、と思われるかもしれませんが、
普通の開業医さんでは、まず無いと思いますよ。
病院だって、すぐ近くには無いかもしれません。
少なくとも、私が今まで働いた病院では見たことが有りません。

ただし代用できるものは有ります。
酸素マスクの代わりに、気管挿管と言って、口から気管にチューブを挿入するのです。
手術の時の全身麻酔の時に使いますよ。
もちろんその緊急事態の現場に、麻酔科の先生が居れば可能なのでしょうが、
24時間、病院に麻酔科のドクターが居られる病院は、なかなか無いのです。
結局、誰もが行える手技で、簡単だけれど効果の高いものが、
緊急の用具としては優れているのですね。

いえいえ、こんなことを書こうと思っていたのではなくて、
点滴のことです。
私たちが研修医の頃は、全妊婦さんに太い針で、それは輸血ができるくらい太い針で、
お産の前に点滴をするのです。
そうすると、赤ちゃんが生まれたらすぐに子宮収縮剤の注射をするのにも楽だからです。
産後の出血が多くても、すぐに輸液を行えますから便利なのです。
研修医の点滴が上手になるために、という側面ももちろん有ります。

ただしデメリットも有るのです。
妊婦さんが陣痛で転げ回っている時に点滴なんか有ると、引っ張って抜きたくなるのじゃないですか?
だいたい分娩監視装置だって、うっとうしいかもしれませんね。

私は点滴や浣腸、剃毛、会陰切開など、
メリットも有るけれど、デメリットも有るという手技は、極力しないことにしたのです。
こうすることによって、メリットを享受できる女性の方がずっと多いのですから。
賛否両論が有ることでしょう。
ですが、タマル産では、なるべく自然なお産ができるようにお手伝いしているのですよ。
それを知った上で、来院していただけると嬉しいですね。













カンジダの飲み薬

2015-06-24 21:15:33 | 産科
篠山市糯ケ坪の玲生(れお)くん、5月15日生まれ。
「優しい子になってください。
お産は2時間もかからなかったので、びっくりしました。
入院中は静かで過ごしやすかったです。」

すごく安産なお母さんは居られますね。
とくに破水が先に起こった場合は、急速に進むことが有ります。
そうでなくても、陣痛の時間が短いお母さんは居られます。

陣痛の時間が短くて楽なのはいいのですが、
その代わりに、産後に子宮からの出血が多い弛緩出血になったり、
子宮の出口から出血する頸管裂傷でたくさん出血したりすることが有ります。
また赤ちゃんにも、頭血腫と言って、
骨盤との間でこすれることによって生じる、頭の骨の外側に出血が起こる確率が高まります。
こうなると1、2ヶ月の間、頭が腫れたようになって心配されますね。

先日も初産婦さんなのに、早いお産で出血が多いということが有ったばかりです。
安産過ぎるのもトラブルの原因となることが有るということです。

さて、今日は水曜日で、婦人科のお話でしたね。
カンジダ膣炎とか、カンジダ膣症とか言う病気はご存知ですね。
保険病名としては、カンジダ膣外陰炎と書かないと、削られてしまうのですよ。
本当に保険のルールというのは、馬鹿らしいところが有ります。
要は、カンジダというカビにかかって、かゆみが出るということですね。

妊娠中にはたびたび起こります。
妊娠していない時でも、抗生物質を飲んだ後とか、
糖尿病の場合とか、月経不順の女性や、
10代の女性などもよく来院されますね。

皮膚科や内科に行ってしまうと、外用薬を処方されることが多いのです。
そうすると外陰部は治るのですが、膣の中は治らないものだから、
いつまでも再発を繰り返すのです。
だから婦人科では、膣錠と塗り薬の両方を処方するのですね。

それでも再発を繰り返す方が居られるので、治療に難渋することが有ります。
そんな場合は、男性側にも外用薬を使ってもらうこともしてみます。

ですが、今回、画期的なことが起こったのです。
それは、内服薬の1つが、保険が通ったというお知らせです。
前から有った薬なのですが、
なかなか全身投与というのは、気が引けてしまいますね。
癌の末期の人だとか、口から喉にかけてのカンジダ症などでは、
今までも飲み薬として使われていたのですよ。
ですが、膣のカンジダには、飲み薬は保険適応は無かったのです。
それが今回初めて保険が通ったらしいのです。
ただ外国では、以前から飲み薬が第一選択薬として使われている国も有ったのです。
だから非常に楽しみにしているのですよ。

新薬が出ると、たいてい勉強会や学会などに出かけて、情報を得る必要が有るのですが、
忙しいとなかなか出かけられないのですよ。
そこで最近では、よくインターネットでの講演なんかが有るものですから、
これは重宝しているのです。
ちょうど明日、ネット中継が有るので、聴講する予定にしています。
これを聞いたら、薬を仕入れて、みなさんにも処方するつもりですからね。

これまでは年に数回繰り返す人の治療はたいへんだったのです。
薬を変えてみたりしても、すぐに再発してしまうのです。
でもこれからは、たった一度、内服するだけですからね。
そう、何日も飲むこともないのですよ。
だから再発を繰り返す女性に、まず使ってみようと思っています。

今日のところは、予告、ということです。
また来週にでも勉強したことをお披露目しますからね。

陸の孤島にならないように

2015-06-23 21:33:01 | 産科
大阪市東淀川区の そら ちゃん、5月14日生まれ。
「青い空のように、大きく広い心で育ってください。
陣痛はやっぱり辛かったけれど、みなさんのサポートで頑張れました。
綺麗な病室で、快適な入院でした。」

次もタマル産で産みたいです、と次も有るような感想でしたね。
みなさん、いっぱい赤ちゃんを産んで、まずは家庭から、
そして日本中を元気にしてくださいよ。

さて今日も火曜日なので、産科のお話ですね。
一昨日に日本産婦人科学会が、今後の行動計画を発表したのですよ。
そう来たか、という思いですが、みなさんにもお知らせしておきましょう。

産科医の減少と、高度化する医療の享受を希望する妊婦さんの期待に応えるために、
産科医の集約化を加速するそうです。
具体的には、総合周産期母子医療センターに20人以上の医師を、
地域医療センターに10人以上の医師を集めることを目標にするのです。

今や産婦人科の全体の医師に占める女性医師の割合は4割に達していますし、
若い年代の医師では5割を超えていますからね。
当直の多い産科では、集約化するのはやむを得ないのでしょう。

とすると、これからますます2極化していくのでしょう。
1つ目の極は、3次医療の産科施設です。
兵庫県で言うなら、総合周産期母子医療センターとは、
神戸大学、兵庫医大、中央市民病院、こども病院、今度合併する尼崎病院、などでしょうか。
地域医療センターは2次医療施設を指し、丹波圏と関係するなら、
済生会兵庫県病院あたりでしょうか。
そしてもう1極が、タマル産のような開業診療所プラス、1次、2次の病院と言えるでしょうか。

そう言えば、私の前勤務地の兵庫県立塚口病院は、
私が居た頃は3人体制だったのです。
それが今や10人ほどの体制になっていますし、
今回、県立尼崎病院と合併して、さらに拡大されるようです。
本来、何か有ればこちらの病院に紹介しても良いのですが、
宝塚がネックになりますから、神戸の病院の方が救急車で行きやすいですね。
最近では、ヘリコプターをチャーターするということまでできるようになりました。
ただ、まだ試したことは有りませんが。

確かに3次病院が確保されることは良いことです。
そして満床で断られるto
いうことが無ければさらに良いのです。
そうすれば一次施設でも安心してお産することができますからね。
ですが、本当に理想とする環境が整うのかどうかは、まだまだこれからの話で、未知数なのですよ。