タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

降圧療法の復習

2018-01-31 21:45:20 | 産科
今日もですね、つい先ほど赤ちゃんが生まれました。
けっこうたいへんだったのですよ。
こう言っては何ですが、他院では帝王切開になっていたことでしょう。
少なくとも、私の前の勤務先ではそうなるところでしたね。

写真は、今年生まれた赤ちゃんとお父さんです。
なるべくお父さんの顔は斜めから撮っているので分かりにくいでしょ?
職場に行ったら恥ずかしいでしょうから、遠慮して撮っているからです。

さて、今日は遅くなりましたが、月食の方に興味が行っていますか?
タマル産では、妊娠高血圧症候群の治療を復習しておきましょう。
最近の妊婦健診で、何人か居られるからです。

妊娠中に血圧が上がると、お母さんにとっては「しかん発作」という痙攣を起こすことが有ります。
産んで数日してから起こることも有るので、気を抜けませんね。
場合によっては脳出血する場合も有ります。
もちろんそんな場合は、若くても生命に関わりますから、血圧を上げすぎてはいけません。
あとは肺水腫と言って、肺に水が溜まったり、
ヘルプ症候群と言って、急激に肝臓や腎臓などが障害されたり。

胎児にとっては、胎盤の働きが悪いのが原因ですから、胎児の発育が遅れてきます。
最悪、子宮の中で亡くなってしまうことが有ります。
常位胎盤早期剥離になって、血流が途絶するからです。

それで、先日のブログで、一般的な高血圧の定義が変わり、治療のことを書いたのです。
それで妊娠中に使える薬は、カルシウム拮抗剤という降圧剤くらいだと。
ニカルジピン(ペルジピン)という名前で、欧米では一般的なのですが、ただし妊娠初期に飲んでいると、
奇形率が5%ほど上昇します。気にするお母さんも居られるかもしれませんね。
しかも、薬の説明書には、妊婦さんは飲んではいけない、と書いてあるのですよ。
日本ではむしろ、ヒドララジンという薬が使われます。
商品名で言うと、アプレゾリンという名前です。
飲み薬や点滴や注射で使えるので、調節しやすいのです。
タマル産では、この2系統の薬は常に置いています。

アプレゾリンはただし、脳出血が有れば使わずにカルシウム拮抗薬の方を使う、
という注意だけ覚えておかなくては。難しいですね。
あと、ジアゼパム(ホリゾン)という、しかん発作の予防兼治療薬とかも必要です。

血圧の上が160以上か、下が110以上が重症です。
お産の前には、上を140程度、下を90程度まで下げないといけません。
あまり下げすぎると、胎児への血流が悪くなるので、注意します。

でもね、一番の治療は、早く産んでしまうことです。
緊急の場合はもちろん帝王切開です。
本当を言うと、一般的な脊髄麻酔より、無痛分娩に使う硬膜外麻酔の方が、血圧が変動しないので良いのですが。
余裕が有れば、陣痛誘発剤を使用して、早めに産むのですよ。

と、元気そうな妊婦さんにお話しても、なかなか理解してもらえないのですよ。
心配するのはこちらばかりで、入院したくない、とダダをこねるお母さんも居られるのですからね。

さあ、そろそろ空を見上げてみましょうか。

NIPT検査が受けられる?

2018-01-29 21:32:56 | 産科
もうすぐ1月も終わりですね。
今月の予定日のお母さんは、皆さんもう産まれました。
一安心するのですよ、無事に産んでいただくと。
写真は、今月の初めに生まれた赤ちゃんとお父さんです。
生まれてすぐに赤ちゃんを抱っこすると、父性が芽生えるのですよね。

さて、今日の産婦人科関係のニュースですが、
NIPT検査をする施設を増やそう、というものでした。
もちろん報道される前から知っていたのですよ。
ニュースとして皆さんが知ったのは今日だった、ということです。

NIPT(ニプト)検査って、何だったでしょうか?
このブログでも何回もお話していますし、
昨年の済生会兵庫県病院での勉強会の記事を掲載したのですが、
その時の話題も、NIPT検査のお話でした。
それは、お母さんの血液検査だけで、胎児の染色体異常が分かってしまう、という検査のことです。

実は、その前からお母さんの血液検査だけで、胎児の染色体異常を見つける検査は有ったのです。
古くはお母さんの血液検査で、AFPという物質を測定していました。
AFPは、肝臓癌などでも上昇する腫瘍マーカーの1つですよ。
ですが、肝臓癌だけでなく、正常の人でも少しは上昇することも有り、
妊婦さんではさらに上昇するのです。
さらに胎児が染色体異常だと、上昇することが多い、というものです。

腫瘍マーカーの話はそれだけで、話が長くなるのですが、
ガンを発見するためのものではないのですね。
ガン患者さんで、たまたま上昇していたら、治療の参考にするとか、
再発の参考にはするのですが、信じ過ぎてはいけないのです。
これは乳がんでの遺伝子検査の時にもお話しました。
腫瘍マーカーは早期発見のために使うものではないのです。
だからスクリーニング検査には適さないのですよ。
でも人間ドックには組み込まれているので、やっかいですね。
遺伝子検査なら良いのですよ。それは確かな検査だからです。

それと同じように、妊婦さんにAFPという腫瘍マーカー検査をしたなら、
それが上昇していたからと言って、あまり参考にならないのですよ。
それにも関らず、高い値だと妊婦さんは不安になって、中絶したりしてしまうのです。
だからこんな検査はしてはいけないのですが、
以前は妊婦さんの希望によりされていたのですね。

その次の時代には、AFPと他2つのマーカーを組み合わせてトリプルマーカーという検査が横行しました。
AFP単独よりはましだろうと。
さらにその次には、クアトロマーカーと言って、4つの組み合わせで胎児の染色体異常を見つけようと努力されたのです。
ですが、結局はすべていい加減な検査ですから、やってはいけなかったのですよ。
検査してしまえば、その数値によってかえって不安になるからです。
真実はそれでは分からないからですね。

そしてそこに登場したのが、NIPT検査なのです。
お母さんの血液の中には、普通で考えると、胎児の成分は無いはずなのです。
胎盤で分離されていますからね。
ですがほんの少しだけ、胎児の成分が漏れ出ていることが分かっているのです。
その成分を分析して、例えば21番目の染色体だけが多いかどうかを調べるのです。
多ければ、ダウン症が疑われるのです。
かなりの確率で正確です。
ですがこれとて、100%ではないのですよ。

NIPTで疑われれば、さらに羊水穿刺という検査で、お母さんのお腹に針を刺して、
羊水を20ミリリットルほど採取して、胎児成分が浮いているのでそれを1ヶ月ほどかけて培養するのです。
これがうまくいけば、初めて確定するのです。
これなら100%です。
では初めから羊水穿刺をすれば良いのですが、
羊水穿刺はそれだけで、流産してしまうことが有るのです。
それに時間もかかるし、結果が判明する頃には、お腹はかなり大きくなっていて、
中絶なんかしようと思えば、お産しないといけなくなるのです。

それで簡単に、血液検査のNIPTである程度予想をつけて、
確率の高そうな妊婦さんにだけ、羊水検査をするのがベストなわけです。
ところが今日のニュースでは、NIPTで予想が付けば、
それだけで羊水検査を受けずに中絶してしまうお母さんが90%以上居られるというものでした。

確かに高齢妊婦さんが増えましたから、希望されるお母さんは多いのです。
さらに高齢の妊婦さんにそういう検査が有るということを知らせずに、
生まれた赤ちゃんがダウン症だったなら、医師が裁判で負ける事例が出ているのです。
ですから裁判所は検査を勧めているようなものですね。
医の倫理などと医療機関が言っている場合ではないのが現状なのです。

結局は、お母さんになる女性が、決めるべきですね。
もちろんご主人も、そこまで知って決めるべきです。
ところが日本では、殆ど議論が進まないまま、実施されているのですね。
この検査は、今のところ一部の医療機関でしかできません。
丹波で言えば、済生会兵庫県病院やアドベンチスト病院が近いでしょう。
希望が有ればもちろん紹介します。

この検査できる施設をもっと増やそうというニュースでした。
私に言わせれば、すべての分娩施設でできるようにすれば良いと思うのですよ。
だって採血だけなのですから。
高次医療機関しか説明できないというものでもないでしょう。
むしろ健診している施設の方が適していると思います。
ただし基本的には受ける必要の無い検査だとは思っています。
ですが、それもごこれから親になるカップルが決めることですからね。

みなさんはどうお考えになられるでしょうか。

インフルエンザが警報レベルに達しました

2018-01-26 20:47:58 | 婦人科
お姉ちゃんが、生まれたばかりの赤ちゃんを見る表情が、可愛いでしょう?
今年の初めに生まれた赤ちゃんです。

その後も、今年は順調に偏りなく赤ちゃんが生まれてくれているので、ありがたいですよ。
産婦人科は急に忙しくなったり、逆に暇な期間が続いたりするので、スタッフの配置も難しいのです。

今夜は久しぶりに雪になりましたから、明日に妊婦健診予定の方は気をつけて来てくださいね。
この寒さで、今年はとくにインフルエンザが猛威を振るっているようですね。
昨日の報告によれば、この年明けからの3週目にして、
兵庫県の殆どにあたる16の健康福祉事務所の管内で警報レベルと、
前の週より急増しているのですから。
1つだけ、私たち丹波健康福祉事務所の管内は、注意報レベルなのですけれどね。
しかも過去5年でも、今年は飛び抜けていますから、みなさん注意してくださいよ。

昨年はインフルエンザの予防接種も、数が限られていたので、受けられなかった方も多いでしょう。
今になって、後悔されているのではないでしょうか。

現状は下のグラフのようになっています。
52週とは、年末のあたりのことで、
赤いラインの3週目のところが、最新のものですよ。
これが定点あたり30人を超えると、警報レベルなのですよ。


妊婦さんでも、最近は働かれている女性が増えましたね。
寒いと、お腹が張る、という妊婦さんも多いのですよ。
そんな時は、早く仕事から帰って、温かいお風呂にゆっくりと浸かって、
できれば食事の支度はご主人に手伝ってもらうか、簡単なものにすると良いですね。

もっと言えば、仕事は短時間にしてもらうとか、
思い切って長期に休むとか、
いっそ実家に帰ってゆっくりさせてもらうとかも考慮してください。

ただしね、そんな指導をすると、本人もご主人も怒られることが有るのですよ。
そんなに気軽に休めだなんて、言って欲しくない、というところなのでしょう。
でもね、赤ちゃんを産むのは一生に1回や2回です。
早産なんてしてしまったら、一生が後悔に終わることだって有るのですよ。
昨年も妊娠第7ヶ月だったかで生まれた赤ちゃんも居ましたよ。
救急車で済生会病院まで母体搬送したのですが、無事に生まれてくれたようです。

ちゃんと育ってくれているのか、とても心配になっています。
産婦人科医とは、常に心配ばかりしていないといけないのです。
みなさんには、少しでもリスクを下げていただきたいだけなのですよ。



卵巣がんの予後は悪いとも限りません

2018-01-24 22:02:31 | 婦人科
氷上町常楽の柊真(とうま)くん、11月27日生まれ。
「誠実で、判断力のある子に育ってください。
お産は感動。痛みとか全部忘れるくらい感動しました。
いろいろ相談しやすくて、安心して過ごせました。」

冬に生まれた子に、柊(ひいらぎ)という漢字の名を付けることが多いですね。
ひいらぎは、キリストの受難や復活を表しますからね。

京大の産科学婦人科学教室の教授は小西先生と言われて、
私が研修医の時に指導して頂いた先生だったのですが、
今回代わって教授に就かれた万代先生は、私の1年後輩です。
同じ時期に研究生活をしていたのですよね。
そしてその先生を指導されていたのが、越山先生と言われて、
私の1年上で、今は滋賀県立大学の教授です。
越山先生は、私の後に天理よろづに来られたので、同じコースを辿ってきたのですよ。
けっこう産婦人科の世界は、狭いのです。
その越山先生の論文を最近、紙面で見つけました。

卵巣癌には、解剖学的には2つのタイプが有るようです。
1つは袋状に、嚢胞という形で大きくなり、周りに広がりにくいタイプです。
もう1つのタイプは、卵巣や卵管の表面に出来て、周りに広がっていくタイプです。

卵巣に超音波検査で嚢胞を発見したら、定期的にフォローして、
急激に大きくならないか、いびつでないか、などをチェックしていくことで、
ガンの早期発見がある程度可能です。

それに対して、周りに広がっていくタイプは、早期発見が難しく、
発見された時は、ガンの4期であったりするのです。
それで、腫瘍マーカーや超音波が欠かせないという論文でした。
先生は、腫瘍研究室に居られたので、顕微鏡的な発想から考察されるのでしょうね。

私は当時、同じ産婦人科でも、免疫研究室に居たので、
むしろ目に見えないものが研究のテーマだったのです。
だから今だから言えるのは、卵巣癌を早期発見するには、画像診断では無理なのですよ。
やはり乳がんと同じく、ガンの遺伝子レベルで、血液や尿から診断すべきなのですね。
とくに早期発見が難かしい、乳がんと、膵臓がんと、卵巣がんは、
ミアテストと呼ばれる、マイクロRNAを検査することで分かる時代になっているのです。
ただまだコストがこなれていないので、一般的ではないのですけれど。

卵巣がんという病気は、抗がん剤によく反応する病気で、
かなり進行していても、治療によく反応することが多いのですよ。

塚口病院に居る時でしたが、
卵巣がんの50代くらいの女性が居られて、
進行していたので、ホスピスケアを受けられると言われて、
結局手術や化学療法を受けられなかったのですよ。
自分で転院され、それからわずか数ヶ月で亡くなられました。
今思うと、私の説得が十分でなかったのです。
治療さえしていただけていれば。

逆に、卵巣がんでの抗がん剤の治療で、死期を早められた若い30代の女性も居られました。
幼い娘さん2人を残されて往かれたのです。
どうしても治療が最善とも限らない場合も有るのです。
今でも思い出しますね。

そういう特殊な方々を除けば、卵巣がんは、たとえ進行していても治療はすべきですよ。
もちろんガンの種類によっては、治療しないといけないとも限りませんが。
みなさんもガン検診なんて、なかなか受けたくないと思われているでしょうが、
誰でもなる可能性の有る病気ですから、
1年に一度、子宮がん検診と兼ねて来院されると良いですね。
年度末ですからね。勇気を出して。

田舎では梅毒は大丈夫ですか

2018-01-22 21:41:32 | 婦人科
尼崎市栗山町の衣織(いおり)ちゃん、11月22日生まれ。
「衣を織る作業のように、何事も最後までやり遂げる子になってください。
上の子より大きく不安でしたが、落ち着いて産むことができ、楽でした。
リフレクソロジーが、とっても気持ち良かったです。」

尼崎からの里帰り分娩でしたね。
篠山からは尼崎に出る人が多いですよね。
私も逆コースですが。
都会も良いのですが、年を取ればまた帰ってきたくなるかもしれませんね。
小さい時に育った環境は、いつまでも影響しますものね。
先日、写真を間違えたので、お詫びして訂正致します。

さて、最近はニュースで、梅毒が急激に増えていると言われているでしょう?
どれくらい増えているのでしょうか。
ここ兵庫では、平成22年がたったの12人だったのに対して、
平成27年が89人、
平成28年が183人(うち女性41人)、
平成29年は10月までの途中経過で162人だったようです。
この5年で、急激に男女ともに増えているのですよ。

タマル産でも、昨年の夏くらいからは、1つでも性感染症を持っている女性には、
梅毒とエイズの検査も同時にするようになりました。
梅毒もエイズも血液検査なので、少し手がかかるでしょう?
それに、まず陽性にならないので、そこまで検査はしていなかったのです。
たいていはクラミジアと淋菌とトリコモナスと性器ヘルペスと言った、
よく有る性感染症で、しかも内診で分かるものしかしていませんでした。
ですが、こうも急増している状況では、見逃してはいけませんね。

梅毒のお話は何度かこのブログでも触れていますよね?
今日は、兵庫県から現状についてのアンケート調査が来たものですから、
こうして再度、お話しているのです。

若い女性の場合、妊婦健診に項目が有るので、妊婦さん全員に梅毒の検査するのです。
検査には2種類あって、両方陽性なら確定できるのです。
片方だけ陽性なら、以前感染した方で治療済みという場合が有ります。
実際、最近もそういう妊婦さんが居られました。
あるいは、生物的な偽陽性と言って、本当の梅毒でないことも有ります。

女性が感染すると、どうなるでしょうか?
感染して3週間ほどすると、陰部や口にしこりができて、
ソケイ部のリンパ節が腫れます。

いったん症状が治まった後に、3ヶ月ほどすると、手や足、全身に赤いブツブツが出ます。

そして3年ほどすると、全身に大きなできものができたり、心血管系や神経系に異常が出ます。
ただし血液検査で陽性になるのは、感染してから6週間後ですからね。

感染が急増している原因は、日本への中国人の旅行者が増えているからです。
旅行者が増えて喜んでばかりいてはいけないのです。
そしてここ丹波地方では、大阪圏に出て風俗業界で働く女性が増えていますね。
母子家庭の女性ではとくに多いです。
今はまだこちらでは少ないですが、遅れてこれから急増してくると思われます。

妊婦さんが感染していると、胎児にうつって、生まれた時から先天梅毒という症状が出ます。
生まれた時には症状が無くても、幼児期に出て来たりするのですよ。
難聴になったり、顔が変形したりします。

私は小児科医ではないので、その後の症状は知らないのですが、
天理で飛び込み出産が有って、その後にその母親が未治療の梅毒患者だったことが有ります。
このお産に関わった医師や助産師の複数が、ペニシリン治療をしたのです。
私は主治医ではなかったので、治療からは逃れましたけれど。

根本的な対策は、貧困対策かもしれませんね。
ですが裕福になったとしても、感染の危険からは逃れられないのでしょう。
やはり唯一の対策は、純潔教育しか無いのですよ。
結婚してからは不倫をしないということですね。