タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

新生児にビタミンKは必要でしょうか

2021-03-26 21:00:56 | 産科
上の写真は、最近入られた若い調理師による、お昼ご飯です。
主に洋食担当ですが、センスが良いですよ。
和食担当の調理師さんも以前から居ますので、バラエティに富んだ食事が好評ですよ。

ところでこの春から、いくつか新しいことを計画していますが、その第1弾として、赤ちゃんへのビタミン投与のバージョンアップです。
タマル産でも以前は、生まれたばかりの赤ちゃんには敢えてビタミンKは与えていなかったのですが、
最近の研究では、与えた方が良いと言われています。

ビタミンというのは、自分では作れないけれど必要なもの、という意味ですからね。
大人なら野菜をいっぱい食べると、それだけでビタミンKは足りるのですが、
新生児ではお母さんのお乳からだけは不足しがちなわけです。
ビタミンKは、出血を止める時に役立つ凝固因子を作る時に必要なもので、不足すると出血しやすいのですね。

最近の産婦人科ガイドラインでは、出生後と退院時と生後1ヶ月の3回、ケーツー(K2)シロップを飲ませた方が良いとされています。
さらに胆道閉鎖症という病気を持っていると、腸からのビタミンの吸収が阻害されるので、もっと増やした方が良いとも言われ出し始めました。
生後1ヶ月までに3回ではなくて、生後3ヶ月までの毎週の13回投薬するというものです。
ただしビタミンというのは、ただたくさん摂れば良いというわけでもなく、
とくにKは、脂溶性ビタミンと言われ、過剰になると排出されにくいので、過剰症にも注意しないといけないのです。

そこでタマル産ではこの4月から、以前からの方針を転換して、生後13回法を採用することとしました。
それと胆道閉鎖症という病気を早期に発見する目的で、母子手帳に記載の有る、便の色をお母さんがチェックする検査の重要性を、退院指導で徹底するようにしましたからね。

タマル産では助産師も3人体制となり、以前にも増して指導が充実していますからね。
昨年の丹波篠山市との取り決めで、妊娠中から産後1ヶ月までの指導は、これまで通りタマル産に任せてもらって、
産後1ヶ月から1年の指導を市のマイ助産師が担当するということになりましたからね。

ただこの取り組みが、今月、丹波篠山市から一方的に破棄されたのには、正直参っていますよ。
詳しくは今月号の市報をご覧ください。

胚盤胞はエイリアンです

2021-03-19 20:43:58 | 不妊症
写真は、30年前の私の論文から取ったものです。
妊娠したマウスの子宮の中の電子顕微鏡写真なのですよね。
天理に居た4年間、毎日、仕事が終わってから、研究施設に残って、顕微鏡で観察していたのです。
朝は夜明け前から病院に行って、マウスを妊娠させては、標本を作成していたのです。
あの頃が懐かしいのですよ。

マウスの胚盤胞(T)が子宮内膜上皮(End)を剥がしながら、基底膜(BL)の下を横方向に潜り込んで行くところです。
胚盤胞とは、受精卵が育ったもののことなのですが、
エイリアンのように、子宮の防御膜を縦方向と横方向に剥がしながら潜り込むのです。
何も子宮が受け入れているわけではないのですよね。
侵食していく相手は卵管や腸の表面だって良いわけです、子宮外妊娠のようにね。
その後、また何もなかったかのように、子宮内膜は修復されていき、そこで胎児が育っていくのですよ。

なぜこんな話を思い出したかと言うと、今月号の「ママになりたい/胚移植」という書店に並ぶ雑誌に、特集記事が有ったからです。
ですが、最近は本屋さんがどんどん潰れていってしまっているので、あまり雑誌を読まれないかな?
ここに「着床のようす」という図解が有るのですが、ちょっと間違っているので、今、訂正しているというわけなのですよ。
30年前にちゃんと英文にしておけば、教科書に載っていたかもしれないですよ。

この雑誌には、もう1つ特集として、「不妊治療は保険適用化、ドクターたちは、体外受精の保険適用化に賛成なの?反対なの?」というのが有りました。
しかもアンケートの答えの1番目が私の意見でしたよ。
「高度医療は保険にすべきではない。医療の進展を阻害することになる」というものです。
もちろん助成費用を上げることには賛成なのですが、保険適用化には反対だという意味です。
みなさんのお産だって、保険適応になってしまうと、その範囲の中で安く仕上げないといけないので贅沢はできません。
そんな未来を想像してみたらすぐに分かることです。

他の先生では、ARTの適用も増えるので質が低下する、という意見も有りました。
だれでも安く受けられるとなると、本当の適応患者さん以外も受けることになるということでしょう。
そうなると少しでも安く仕上げるために高価なインキュベーターや培養液を使わなくなるので、という意味も有るのです。
それで結局は妊娠成功率が下がってしまう、ようするに、医療の進展を阻害することになると、元に戻るのです。

後は、人工授精なら保険にしても構わない、という意見は多かったですよ。
私もこれには賛成です。
高度不妊治療にしか助成が無いので、一般不妊治療の人工授精を跳ばしてしまうことになりますからね。



妊娠中の体重増加は気にし過ぎ?

2021-03-12 21:06:53 | 産科
昨日は孫娘と食事に行ったのですが、食事そっちのけで、デザートのアイスだけはペロッと食べていましたよ。
どうしても子どもの頃から 甘いもの好きになってしまいますね。
ちなみに上の写真は、 先週のタマル産での夜食のデザートです。
新しい厨房のスタッフが増えてさらにパワーアップしています。
産後くらいはデザートは許されますよね?

最近のニュースでは妊娠中の体重増加は、これまでより基準がゆるくなったというのですよ。
根拠は、日本の赤ちゃんの平均体重が軽くなっているからなのですって。
ネットでは、産婦人科医や助産師を非難する声でいっぱいです。
これまでの体重指導が厳しすぎたのだ、とね。

ですが、これにはトリックが有りますよ。
日本は世界一、新生児死亡が少ない国なのです。
妊娠22週からでも助かる生命が有るのですからね。
そうです、日本の赤ちゃんの平均体重は世界一軽くて当たり前なのです。
本来は同じ週数で比べないといけませんね。
37週から41週に生まれた赤ちゃんだけで比べるのです。
そうすれば何も日本人の赤ちゃんだけが小さいということはなくなるでしょう。
そもそも西洋人と東洋人の赤ちゃんの体重は、どちらが大きいかすぐに見当がつくでしょう。
それと日本人の女性は喫煙率が高いですから、体重も小さくなるのかもしれませんよ。

これを機会に、妊娠中の体重増加を、どうしてそれほど気にしなくてはならないか、という考察をしてみましょう。
ただ単に分娩時にたいへんだということだけでしょうか。
先週も、4人目の赤ちゃんでしたが、4キロ超えで、とってもたいへんなお産が有りましたよ。
最近の赤ちゃんは、小さいどころかとても大きくなったというのが私の印象ですよ。

大きな赤ちゃんを産むお母さんもまた、太られた分、産道が狭くなります。
狭い道を大きな赤ちゃんが通るものですから、産道裂傷が起きやすいし、
場合によっては、赤ちゃんの腕の神経が麻痺することも有るのですからね。
吸引分娩や緊急帝王切開の比率が上がるのも、うなづけますね。

それとは逆に、小さくて、2500グラム前後の赤ちゃんも、ときどき生まれます。
その場合も、実は原因は、お母さんの体重増加によるのですよ。
お母さんの体重が増えると、赤ちゃんの体重も増えるものだとばかり考えられるでしょうけれど、
逆に妊娠高血圧症候群の原因になって、胎盤の働きが悪くなって、赤ちゃんが育たなくなるのです。
そんな時は、予定日より早くに、胎盤が剥がれてしまう、常位胎盤早期剥離という病気になることも有るのですよ。
最近3人目を帝王切開で産まれたお母さんは、1人目の時は夜中に緊急で帝王切開をして、赤ちゃんの一命を取り留めることができました。
まさに奇跡的なことだったのですが。

産後に病棟を朝夕に回診しています。
ちょうど食事が終わった頃の時間帯なので、みなさんが好き嫌いしているのがよくわかるのです。
大きな赤ちゃんや逆に小さな赤ちゃんを産んだお母さんのお皿には、まず、緑のものが残っています。
きっと家でもそんな食事をされているのでしょうね。

日本の妊婦健診は、おそらく世界で一番良いのですよ。
無料で、ちゃんと分娩教育をしてもらえるのです。
そもそもアメリカなどは、健診もそこそこで、産後もその日に退院するのですからね。
母体死亡率なんか、日本よりずっと高いのです。
ですが残念なことに、ここ10年ほどで、日本が世界に誇る助産制度もすっかり崩壊してしまいましたね。
何でもかんでも帝王切開すれば良いという風潮です。
普通に産むための努力なんて、必要なくなってしまったも同然ですよ。
そうですね、妊娠中に好きなものを好きなだけ食べて、帝王切開すれば良いだけのことなのですから。




子育てするならやっぱり丹波篠山!

2021-03-05 20:16:18 | つれづれ
今月号の市報の特集が、「子育てするならやっぱり丹波篠山!」というものです。
読まれましたか?
このうちのいくつかが、タマル産からのアドバイスで実現したものなので、見ていきましょう。

1番目の、不妊治療費助成制度からです。
年度ごとなので、昨年の4月からこの3月末までの一般不妊治療費が助成の対象になります。
ただし3月末までに提出しないとタイムオーバーですから、もし5万円を超えていたら早く書類を提出してくださいよ。
まずは領収書を集めてタマル産の窓口に提出してください。
少し時間がかかるので後日の返却になりますから急いでください。
この助成のおかげで保険診療の3割負担分と、人工授精などの自由診療分の多くが返ってくるのではないですか。
人によってはまったく無料になるということも有るかもしれませんね。

この制度は京都では以前から有るのもですが、兵庫県では丹波篠山市が第1号ですよ。
ですが丹波市や豊岡市などの方も心配要りません。
この4月から、兵庫県全体でも不妊治療の「検査」部分に対して、助成制度が始まるようなのです。
これまでは高度不妊治療の「治療費」に対してだけだったのですが。
ただし保険診療の自己負担分は対象にならないということのようです。

ということは、タマル産で言うならば、精子不動化抗体や、甲状腺に対する抗TPO抗体くらいでしょうか。
高度不妊治療施設では、卵巣年齢のAMHなどになるのでしょうね。
でもAMHは検査しても意味が無いと最近は言われているようですよ。
要するに、兵庫県では丹波篠山市の助成制度が一番、ということになるのでしょう。
ですがこの1月から体外受精に対しての助成が増えたために、不妊治療を始めたというカップルは増えています。
何でもニュースになるとみなさん興味を持たれるようですよ。
お得、という言葉に弱いようです。

次に妊娠関係で、妊婦健康審査費用の助成が12万円に引き上げられていることです。
丹波市や三田市などはとても少なくて、自己負担が高いでしょう?
丹波篠山市は神戸市などと同様に、12万円なので、タマル産では自己負担が必要有りません。
これもタマル産からの提言によって実現しました。

さらに出産支援金支援事業です。
出産すると10万円もらえますね。ただしこれは分娩費用にほとんど消えてしまうので、お産の自己負担が無いというメリットになります。
それでも他の病院などで産む場合は、10万円では足らないのでしょう?

いつの間にか、タマル産が提言していた、3人目以降の赤ちゃんには、支援金を大幅に上げるべきだとしていたものが、実現していたのです。
すこやか赤ちゃん誕生祝い金、という制度で20万円に増額されましたよ。
でも100万円くらににしないとインパクトにはかけるでしょうね。
予算の縛りが有るというなら、1人目、2人目は我慢してもらって、3人目以降に重点的にすれば、同じ程度で済むことでしょう。
不妊のカップルに1人妊娠してもらうより、2人目産んだカップルに3人目を産んでもらう方が近道ですしね。
非難されてしまいそうですが、本当のことです。

他にも、新生児聴覚検査が無料になったり、産後の助成費も増額されたりしたのも、タマル産からの提言が有ってこそなのですよ。
もう1つ、お産応援119への登録制度というのも、足が無い妊婦さんに、救急車が送ってくれるというものですが、
さすがに救急車は呼びにくいようで、利用者は少ないそうです。
タクシーで十分だと思うのですよね。

そんなこんなで、子育てするならやっぱり丹波篠山!
他の市の方も羨ましがられていること間違いなし!