タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

他力本願

2012-11-20 21:39:25 | 不妊症

今日退院になった赤ちゃん2人とお父さんたちファミリーです。
もちろん生まれた時の写真ですよ。
鳥でさえ、生まれて初めて見た人を親と思い込むのですから、
まして人間は、初めての接触が重要であることに違いありません。

この1週間で、不妊外来で妊娠反応が陽性になった方は2人です。
1人は38歳だったと思います。
以前はなるべく35歳までに妊娠するようにとお話していましたが、
最近では35歳以上の方が多く受診されています。

どんな医学領域でもそうですが、
すべてにおいて最先端の治療をするということはできません。
ですから自分のできる範囲の治療を施し、
できないことは他の医療機関に紹介するというネットワークが重要なのです。

以前タマル産では体外受精を行っていたのに、今ではしていません。
とくにこのARTという分野なのですが、浅く広くという領域ではないのです。
ですから年に数回は都会で研修しなければなりません。
丹波圏でもそれだけ需要があれば、続けたかもしれないのですが、
この部分は先輩方の力を借りる事にした、という訳です。

今週、この事が奏功した方が居られましたので報告いたしましょう。
不妊のために外来を受診されると、まず1ヶ月かけて検査をします。
その中の卵管の通過性を診る検査の通気テストで、
両方の卵管が詰まっていると分かったのです。

そこで神戸の不妊治療専門の診療所で、
卵管の詰まりを治す、卵管鏡下に卵管を拡げる処置を受けていただき、
すぐに通過性が良好となられました。
もちろん、卵管の詰まり具合には程度差があり、
処置を受けても治らないような、溜水腫という状態もありますから、
一概に保存的な方法で治るとも限りません。
運が良かっただけとも言えます。

この処置は30万だったかかかるのですが、保険が適用され、
しかも高額医療の適応で自己負担は10万円もいかないのです。
処理後の卵管通気テストの再検査でも良好な通過性が認められましたから、
今後は保存的な治療を引き続き、受けていただくことになります。

ちょっと今日は他力本願的な話題をお届けしました。
ところで他力本願とはどういう意味かご存知ですか?
それは他人まかせ、という意味ではないのですよ。
仏教用語ですから、仏様におまかせするという意味でしょう。
今風に言えば、人間の力の及ばない、
神様の力をお借りするということですね。
とくに精子と卵子が結びつく世界は、いくら科学的に証明しようとしても、
人智では計り知れない、という風にも考えることができるでしょう?

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カンチョー!

2012-11-19 20:42:30 | 産科

先週、外来に来てくれたお姉ちゃんお兄ちゃんたちです。
こうしてみると、赤ちゃんの時の面影もありますよ。

ところで皆さんはお産の時に浣腸を受けましたか?
そんなこと、もう忘れてしまいましたね。
あるいは導尿を受けましたか?
導尿というのは、管を入れて膀胱に溜まった尿を排泄することです。

陣痛が始まって入院すると、おそらくどこの病院でも浣腸されるのです。
でも、これって本当に必要なのでしょうか?
私は何でも自分で実践してみないと納得できない方ですから、
タマル産を開業した時から、浣腸は一切していないのです。
だいたい浣腸はなぜするかというと、
お産の時にウンチが出ると、外陰部が不潔になるためでしょう。
そうでなくとも、どこの助産師さんも、お産の時は外陰部を熱心に洗浄します。
タマル産では洗浄もそれほど熱心に行いません。
もしくはまったくしないこともあります。

もう1つ浣腸する理由は、便が溜まっていると、
お産の時に腸が傷ついてしまうと説明されているからです。
ですが、タマル産では何千人という方のお産を援助してきましたが、
お産で便が邪魔になったこともありませんし、
便で赤ちゃんがウンチまみれになるなんてこともありませんでしたよ。
ということで、お産の時に浣腸なんてしないのです。

むかし私が京大病院で研修医をしていた頃、当時の若い助産婦さんたちは、
「浣腸がいいか、座薬がいいか」なんていう研究をしていました。
座薬というのはレシカルボン座薬と言って、これも浣腸みたいなものです。
浣腸は液体のもので、60ミリリットルくらいのものです。
レシカルボン座薬だと、チョロチョロ、チョロチョロと出るので、
かえって外陰が汚れてしまうんです。
ほら、そんなことしない方がよぽどマシなのです。

もう1つ、導尿の話です。
いつぞや、妊婦さんを神戸市の3次救急病院まで救急車に乗って搬送した時のこと、
ギリギリのところでお産に間に合って着いたのです。
さあお産、という時に、待ったをかけて、導尿されるのです。
もう生まれるというのに、そんなことしてる場合じゃないでしょ。
これも膀胱を空にしておかないと、お産が進まない、とか、
膀胱が傷つくとか思われているようです。
でも赤ちゃんが降りて来て、尿が溜まっていたら、自然に排尿してしまうものです。
もちろん事前にトイレには行っていただいているのです。

もう1つの理由として、お産の時に失禁してしまったことが、
トラウマになるというものです。
確かに最近のお母さんは、お産でもなるべく恥ずかしい思いをしたくないのです。
それは一理あるでしょう。
でも根本的なところは、ソフロロジー教室でも練習しているように、
リラックスして、心を解き放った方が、陣痛が楽に進むものなのですから、
この際、羞恥心は必要ありません。
ですからタマル産では、お産の時は部屋を暗くして、
なるべくご夫婦で産んでいただいているのですよ。

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悲しんでいる人に
愛という冠をかぶせると
その悲しみはすっとなくなります。
愛とは造化の箱なのです。

   レバレンド・ムーン

薄いシミと濃いシミ

2012-11-16 21:04:51 | 美容医療
お母さんと一緒に付いてくる子たちに、
夏はシャボン玉をあげていたのですが、秋になって紙風船かピロピロをあげています。
一応環境に配慮してと、子どもたちは現代のおもちゃに慣れきっているからです。
このお兄ちゃんは初めてのピロピロ体験を、喜んでくれたようです。

もう週末ですね。そして年末もせまってきました。
12月と1月はお産の予約が多いので、
今年は11月に早くも年末大掃除を始めました。
気が早いでしょ?来週にはクリスマス飾りもしないとね。

秋の週末ということで、シミの話を続けてみましょう。
秋になると、夏に日にやけた跡がシミになって気になるでしょう?
そこで美容皮膚科でのシミの取り方です。
家で塗る効果の薄いクリームとは違うのですよ。

まずは保険適応のあるものから。
今年から塗り薬で保険が通ったものに、ベセルナクリームというものがあります。
もともとは外陰部や肛門周囲の性感染症の1つ、
尖圭コンジローマという病気の治療に使われていたものです。
イボを取る作用があるのですね。
それをシミ治療に応用したのです。

作用機序は、シミの部分の皮膚のターンオーバーを速くすることです。
どんどん剥いていって、シミを剥がしてしまおうというものです。
ただ、1ヶ月丁寧に塗り続けて、1ヶ月休んで、また1ヶ月と、
少し根気のいる治療です。

保険は利きませんが、東大方式というものもあって、
顔全体にはハイドロキノンを、シミの部分にはトレチノインを使用するものです。
これも保存的という意味ではオススメで、
市販の訳の分からないものを使うのと違って、はっきりと効果が認められたものです。

ただし美容皮膚科まで来られる方は、その程度では満足されない方も多いのです。
そこで物理的な治療に入るのですが、
色のうすいシミと、濃いシミでは少し治療が異なります。
実は濃いシミの方がレーザー治療の良い適応になります。
それはレーザー光線が黒い色に反応するからで、
濃いシミには吸収されやすくて、治療効果も高いというわけです。

うすいシミは周りの正常の皮膚との境目が不明瞭なために、狙い撃ちが難しいのです。
ですから色の薄いシミの場合には、レーザーよりもまず光とRF治療がおすすめです。
治療回数は確かに5回とか10回とかかかります。
ですが、その分照射後に色素沈着が起こる可能性が低くなるからです。

どういうことかと言うと、レーザーはシミをよく剥がすのですが、
剥がれた後はピンク色の肌になります。
そこが徐々にまた黒っぽく色素沈着がおこってくるのです。
そしてしばらくして、また徐々に色が薄くなっていくという過程をたどるのです。
それに対して、光とRF治療というのは、シミは剥がす力は弱いのですが、
その分、照射後に色素沈着が起こることも少なくなります。

通常、光プラスRF治療は時間もかからないので、顔全体に照射します。
そして部分的にシミの濃いところだけを狙って、強い光で追加するのです。
その箇所だけ少し痛みがあるので、照射前に塗り薬か貼り薬の麻酔を使用します。
こうすることで、薄いシミには、まず光プラスRFをお試しあれ。
現在、患者さん以外にも職員2名が治療中なのです。
きれいになったら、写真をアップしますね。

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円錐の体積は?

2012-11-14 20:55:09 | 婦人科
初めての赤ちゃんでしたが、もう明日退院ですね。
安産で良かったです。
安産になるかどうかの一番の原因はへその緒が首に巻いているかどうか、
2番目が栄養が良すぎて赤ちゃんが大きくなり過ぎていないかどうか、
3番目は陣痛が始まる前に破水してしまわないか、
どうもこの3点に集約されるような気がします。

今日は子宮頸癌と妊娠のお話をしましょう。
子宮頸癌は若い人の病気で、20代、30代、40代の年齢の方になりやすいのです。
だから今、中学生の女子に、子宮頸癌を引き起こすパピローマウィルスの感染を予防する
予防接種がすすめられているのです。
始まってまだ数年ですから、これからどの程度発症率が下がってくるかは未知です。

最近も妊娠と関連した子宮頸癌の方を2人、診察しました。
1人は20代でしたか、他院で初期の子宮頸癌のために手術を受けられていました。
40代以降で赤ちゃんを産む必要がなくなると、子宮を全部取る手術をしますが、
20代、30代では子宮の頸部という出口に近い部分だけを取ります。
円錐形に切除するために円錐切除術と呼ばれます。
大きさはウズラの卵くらいのものです。

子宮の上半分は子宮体部と言うのですが、
ここはニワトリの卵ほどの大きさで、ここで妊娠しますから、
円錐手術後も妊娠は可能なわけです。

先ほどの方は円錐切除後に妊娠され、タマル産でその経過をみながら、
妊娠第5ヶ月になって、今度は子宮の出口を縛る手術をしました。

子宮の出口を切ってしまっているので、早産しやすいからです。
この縛った糸は予定日の1ヶ月ほど前に外来で簡単に抜くことができます。
そしてこの方は普通にお産することができました。

今回もう1人、不妊外来に掛かっている方が居られます。
1人目も不妊外来で治療して赤ちゃんを授かるところまで行きました。
今回は2人目です。
前回の妊娠の時に子宮頸癌検診で引っ掛かり、
がん検診の定期検診は地元の病院で受けるという、少しイビツなことをしていました。
そんな折、不妊外来で2人目の妊娠反応が陽性に出たのです。
と、喜びも束の間、地元の病院では子宮頸癌で手術が必要と出ました。
とりあえずは円錐切除術をすることになるでしょう。
以後はその結果次第ということです。

このように若い方ほど、そして妊娠を考えるような年齢の方であるほど、
子宮頸癌の健診は重要になってきます。
タマル産では開業時より全員の方に、妊娠すると子宮頸癌検診をしています。
今では当たり前となりましたが、以前はそうでもなかったのですよ。

最後に1つ付け加えるなら、赤ちゃんを産み終わってしまうと、
もう子宮頸癌検診を受けなくなってしまわれます。
ですが産んだ後も引き続いて、年に1回受けて欲しいのです。
長くても2年に1回は受けましょうね。
最近ようやく5年に1回、子宮頸癌の検診が無料になるチケットが
贈られてくるようになりましたから、
せめてその5年に1回でも、かなり有効だという統計が出ています。

これを機会に誕生日には検診です。
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きょうもこれから赤ちゃんが生まれます。
どうか安産でありますように。

妊娠の限界

2012-11-13 20:43:13 | 不妊症
確か3人目でしたね。安産でした。ブログの更新が遅くてもう退院されました。

お産の時に陣痛室から分娩室に移動しなくていいというだけで、
けっこう楽だと思います。
たまにお産が進まなくて、手術室で吸引分娩したり帝王切開になったりするために、
隣の部屋まで移動しないといけない方が居られます。
でもそれって、ほかの全ての病院はそうなんですけれど。
タマル産だけは、お産の時にLDRルームだから移動しなくていいのですね。

さて今日は火曜日です。
この1週間は、不妊外来の1人の方が初めて妊娠されました。
それも43歳でです。ただもう少しみないと順調に育つかどうか分かりません。
というのも、40歳を超えると流産になる確率の方が高いからです。
さらに不妊外来ではないのですが、
以前流産して、その後に妊娠された方も43歳で今週妊娠されました。

2人ともたまたま今週で、しかも43歳と限界に近い年齢ででした。
それは不妊外来では44歳くらいまでが妊娠できる限界と言われているからです。
よくテレビなんかでは50歳を過ぎて体外受精で妊娠した、
なんていう話がありますが、それってニュースになるほど珍しいということですよ。
普通はそんな年齢では妊娠しないのです。
世界中で、ものすごい数のカップルが不妊治療を受けているのに、です。
ですから今は「年齢」が一番の不妊の原因かもしれませんね。

さらに今回妊娠された方は子宮筋腫も持っておられます。
40代で妊娠するということは、3人に1人が子宮筋腫の問題もあるということです。
さらにはお産のトラブルも高くなりますし、
だいたい40代と言えば、妊娠していなくても脳卒中になることもありますからね。
タマル産では以前、49歳で妊娠された方も確かに居られますが、
それは例外と考えてください。
だいたいその方はオリンピックの世界チャンピオンでしたから。

以前ニュースになったこともある方でしたが、
40歳代後半で1人息子を亡くし、もう1人できないかと相談に来られた方も。
もちろん難しいことを説明しました。
うちの娘の同級生も中学3年で、同級生が気胸という病気で意識が戻らず、不治となられたそうです。
その友人も1人息子だそうです。

昔はお産での死産も多かったし、
生まれてからも5歳までに亡くなる率も高かったのです。
もちろんスペアーなんていう言い方は好まれないでしょうが、
たくさん子どもを産んでおけば、だれかが親である自分たちの面倒も
看てくれるかもしれませんよ。
高齢出産では、子どもが大きくなった時に自分が介護を受けるようになっているからです。
それでもあまりネガティブに考えないでください。
ただ早く子づくりをして欲しいというだけです。
最近は結婚しても、計画的に避妊しているという方も居られますから。
でもね、もっと自然にまかせる方がいいのかもしれませんよ。

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