タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

人工授精の役割

2015-03-23 21:05:35 | 不妊症
写真のお父さん、一姫二太郎、なんてよく言いますね。
お姉ちゃんが上のほうが育てやすいとも。
今回は、うまくそうなりましたね。
ただ、我が家を見ていると、さてどうなのでしょうか。

月曜日なので、不妊治療の話題といたしましょう。

人工授精と体外受精、言葉の響きが似ているので、混同している方も居られるでしょう。
人工授精の「じゅ」は「授ける」です。それに対して体外受精の「じゅ」は「受ける」ですからね。
精子を授けるのと、卵が精子を受け入れる、の違いですね。

人工授精は、もっとも初歩的な治療で、保存的な治療の代表です。
体外受精は、最終手段で、費用も労力もかかる自由診療ですからね。

ところで、どこの不妊治療のクリニックが成績がいいのだろうと、
人工授精の成功率を調べようとしたとしても、それはできないのですよ。
なぜかと言うと、統一した評価基準が無いからです。
あえて基準を作るとすれば、
人工授精の1回目での妊娠率はどうで、4回目までの妊娠率はどうだ、年齢は合わせたか、
というような評価の仕方であれば、参考になるかもしれませんね。

成功率を良く見せようとすれば、施行する回数を少なくすれば高く出ますし、
6回以上と多く行えば、成功率は下がるのです。
だから成功率ばかりに意識を取られてはいけません。

また、人工授精をすれば、簡単に妊娠するかといえば、そんなことは有りません。
それは自然妊娠しにくいカップルに対して行いますから、
自然妊娠率の20%より少なくなります。
それでも不妊症のカップルであれば、0%に限りなく近いですから、
その真ん中の5~10%くらいの成功率があれば上等ということになるでしょう。

タマル産では、最近の流れである、年齢別治療法に移行していますから、
35歳未満の女性では人工授精の目安は6回、
40歳未満の女性では人工授精の目安は4回、
そして40歳超えの女性では2回を目安としています。
これは日産婦医会の提唱に倣っています。

ところで、今月のタマル産では、2人の女性が、この人工授精で妊娠されました。
常に数十人を治療していますから、毎月この程度であれば、良い治療成績なのです。
1人の女性は初めての人工授精ででした。
もう1人の女性は、6回目の人工授精で妊娠されたのです。
これでダメだったら、体外受精も考えましょうね、とお話していたところでした。

これも時代の流れなのですが、人工授精の回数は少なめにして、
どんどん体外受精に移る傾向が高まりつつあります。
私の患者さんでは、人工授精の7回目で妊娠した、という女性が2人居られましたが、
これからは、そういう方も少なくなるでしょう。
早期にARTと呼ばれる、体外受精などに移っていただくからです。

日本は世界一、人口当たりの不妊クリニックの数が多いですから、
どうしても体外受精をしないと利益が上げられない、という裏事情も有ります。
手間もかかりますが、費用もかかる、そして身体への負担も増大する、という構図です。
ですから、人工授精で妊娠するものなら、ずっと効率が良いのです。
でも、これも最近の女性の事情から、
年齢も高くなり、早く妊娠したい方が増えている、
不妊治療も1人、2人なので、高額の治療費を払える、
いつ終わるともしれない保存的な不妊治療を続けることに心が折れる、
など様々な理由で、治療を急がれるのです。

ですが、繰り返しますが、年齢に応じた人工授精の回数を守るならば、
これほど安上がりで、有効な方法は、ほかに無いのですよ。