タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

お乳が出なくたっていいんです

2015-03-04 21:11:52 | 産科
丹波市春日町の和寛(かずひろ)くん、1月31日生まれ。
「健康に伸び伸びと育ってください。
お産は想像をはるかに超えてたいへんでした。
人生初の入院でしたが、ホテルみたいでした。」

若い方は確かに入院なんてされたことが無いかもしれません。
私も入院なんて、小学校の時に虫垂炎で入院したきりです。
その時はサザエさんの本をいっぱい読んだ覚えがあります。
今の方はスマホで何か観ておられることも有りますよ。
ですがせっかくの入院ですから、入院生活を楽しんで、ゆったりした気持ちでいられるといいですね。

ところで産後には、よく乳腺炎を起こしますね。
退院して自分1人で授乳をしなくてはいけなくなって直ぐに起こす方が多いです。
ですが、何ヶ月も経ってから起こすことや、
ちょうど赤ちゃんが1歳近くで噛むようになった時も起こしやすいですね。

初めは乳汁うっ滞の状態なのですが、そこに感染すると化膿性乳腺炎という状態になります。
38度以上、39度くらいまで熱が出ることもしばしばです。
乳腺炎になったら連絡するようにお話しているはずなのですが、
熱が出ても赤ちゃんに授乳を続ける方が居られるのです。
乳汁が細菌でいっぱいですから、そんなことをすると今度は赤ちゃんが熱を出してしまって、
赤ちゃんが入院する羽目になってしまいます。

乳腺炎の熱は特徴的で、夜には39度ほど出るのですが、
朝には、ガンと下がってしまうのです。
だから治ったと考えるのですが、夜にはまた熱が出るのです。
それで朝にはあまり下がり過ぎないことが治った指標になるのですよ。

助産師さんというものは、乳腺炎になるとここぞとばかりに乳房マッサージをしたがるのですが、
熱が出てしまった後では、むしろ炎症部位はあまり揉まないで、安静にした方がいいのです。
こういう時は抗生剤などと乳管領域のマッサージだけでいいのです。
基底部は冷やした方がいいのです。

初めての赤ちゃんであればとくにそうですが、
ミルクをあげるのはよく思われなくて、自分のお乳で頑張る、という女性ばかりです。
でも足りなければ足してあげても問題はないのですよ。
それに薬という手も有ります。
ただしこの薬というのも嫌がられる方も多いのですが、
一応知識として知っておいてください。

ドグマチールという薬が有ります。
胃潰瘍や、うつ病、統合失調症などに使われる薬です。
産後のうつ病にもよく使われます。
産後には気が沈んでしまうものですが、そんな時はこの薬を使用することで、
気分も明るくなるし、乳汁分泌も促進されるのです。

他にはプリンペランという薬も有ります。
つわりのひどい方などにも使う、むかつきを止める薬です。

メルスモンという、ヒトの胎盤抽出ホルモンも有るのですが、
これはとても注意の要る薬ですからね。
血液製剤ですから、これを使用するとカルテも20年間保存する義務が有りますし、
同意書まで要る薬です。
これをもし打ったことの有る方は献血だって、できないのですよ。
よく宣伝で胎盤抽出ホルモンなんかが市販品として売っているでしょうが、
それはウシやウマだったりするのでしょう?ヒトのものはまさか売っていないでしょう。

これらとは逆に、死産した場合など、乳汁分泌を抑制する薬も有ります。
必要があれば、医師と相談してください。
ただしこちらは、血栓症などの重い副作用も有るので、注意が必要です。