歌番号 1137
詞書 十月ついたちの日、殿上のをのこともさかのにまかりて侍るともによはれて
詠人 清原元輔
原文 安幾毛末多 止遠久毛安良奴尓 以可天奈本 多知可部礼止毛 川計仁也良末之
和歌 あきもまた とほくもあらぬに いかてなほ たちかへれとも つけにやらまし
読下 秋もまたとほくもあらぬにいかて猶たちかへれともつけにやらまし
解釈 十月一日の今日、秋もまだ遠くに行っているわけでもだろうから、どうにかして、猶なお、立ち返れと、告げに遣りたいものです。
歌番号 1138
詞書 時雨を
詠人 よしのふ
原文 曽万也万尓 堂川个不利己曽 加美奈川幾 之久礼遠久多寸 久毛止奈利个礼
和歌 そまやまに たつけふりこそ かみなつき しくれをくたす くもとなりけれ
読下 そま山にたつけふりこそ神な月時雨をくたすくもとなりけれ
解釈 杣山に立つ煙こそは、神無月の時雨を降り下す、その雲となったのだな。
歌番号 1139
詞書 十月、しかの山こえしける人人
詠人 源したかふ
原文 名遠幾計者 武可之奈可良乃 也万奈礼止 志久留々己呂八 恵呂加者利个利
和歌 なをきけは むかしなからの やまなれと しくるるころは いろかはりけり
読下 名をきけは昔なからの山なれとしくるるころは色かはりけり
解釈 名前を聞けば、昔からの志賀の長等山ではあるが、時雨が降るころは紅葉して山の色合いが変わります。
歌番号 1140 拾遺抄記載
詞書 冬、おやのさうにあひて侍りける法師のもとにつかはしける
詠人 みつね
原文 毛美知者也 多毛止奈留良无 加美奈川幾 志久留々己止尓 恵呂乃万佐礼八
和歌 もみちはや たもとなるらむ かみなつき しくるることに いろのまされは
読下 もみちはやたもとなるらん神な月しくるることに色のまされは
解釈 紅葉する葉が袂にあるのでしょうか、神無月の時雨れるごとに色がさらに優るように、(悲しみを聞いて流す涙で袖が色変わりします。)
注意 詞書の季節感や内容と歌がかみ合わない不思議なものになっています。
歌番号 1141 拾遺抄記載
詞書 天暦御時、伊勢か家の集めしたりけれは、まゐらすとて
詠人 中務
原文 志久礼川々 布利尓之也止乃 己止乃者々 加幾安川武礼止 々末良左利个利
和歌 しくれつつ ふりにしやとの ことのはは かきあつむれと とまらさりけり
読下 しくれつつふりにしやとの言の葉はかきあつむれととまらさりけり
解釈 時雨の中、雨が降るその古びた私の屋敷で、家にある言の葉を書き集めて歌集としても、心に残るものはありませんでした。
注意 伊勢と中務とは親子関係で、母親の伊勢が詠った歌を歌集として提出せよとの勅に応じた時に歌集に付けた歌です。
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