旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

掛川里山栗焼酎「自ら」について

2014-11-21 15:07:23 | 


 スローライフ学会の「さんか・さろん」で、『栗焼酎づくり奮闘記』という講演を聞いてきた。実に楽しい話であった。講師の長谷川八重さんはスローライフ掛川に属し、生涯学習活動などをつづけながら、地域の人々と地元の里山に実る栗を使って栗焼酎を造って6年になるという。
 地元…里山…栗林…焼酎…と何とも言えない物語性がその底辺を流れる。できた焼酎を名づけて「自ら(みずから、おのずから)」と呼ぶ。二つの読み方を左右にふってあるのも面白い。

 世界に蒸留酒は数多いが、日本の焼酎はその多様性において群を抜く。焼酎は、4,5百年前、蒸留技術とともに南から伝わってきたに相違ないが、先ずは南端の沖縄では、中国伝来の黒麹とタイのくず米を主原料にして「泡盛」を造った。鹿児島に渡ると、米はとれないがイモが豊富なのでそれを主原料に、日本伝来の黄麹を使って「イモ焼酎」を、熊本に来ると球磨川流域に多くとれる米を主原料に「米焼酎」(球磨焼酎)をつくり、なお北上して大分、壱岐地方になると、そこに豊富な麦を使って「麦焼酎」を造った。日本人はその地の産物を使って多様な酒を造ってきたのだ。
 時移り所変わって、山陽道から東海道を進むと掛川という街があり、そこには未だ里山が残り栗林が広がっていた。土地の人たちは里山を守り育て、その贈り物で酒を造った。これまた、多様な日本食文化の一つの姿というべきであろう。
 因みに、原材料は米・米麹・栗であり、今年は、米120キロと主原料の栗200キロで500本の焼酎を造った。栗の採取には30人ぐらいの有志が参加するそうで、里山に広がる栗林で栗を拾い、皮をむきに奮闘する姿が目に浮かぶ。
 ほのかに栗の甘みがただよい、マイルドで何の抵抗もなく飲めるやさしい焼酎である。都会の、特に女性に喜ばれる酒ではないか。

    
     栗焼酎「自ら」と長谷川八重さん


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