私はこのソチ五輪で、上村愛子と葛西紀明のメダル獲得を願っていた。そして上村が4位に終わったとき、その入賞はどんなに賞賛してもしきれるものではないと思ったが、「これで私のソチ五輪は80%終わった」と書いた。
残る20%は当然葛西にかける期待であるが、その数字が示すように、期待は大きいが葛西のメダルは無理であろうという気持ちもあったのだ。理由の多くは41歳という年齢にあったことは言うまでもない。
ところがそれは、大変に失礼な先入観であったのだ。この男は、本当に、真面目に、金メダルを狙っていたのである。世界ランク3位からすればメダルを狙うのは当然ではあるが、41歳という年齢は、真面目に金メダルを狙える年齢ではないと思っていた。そんな我々一般人の先入観は、この男には通じなかった。
銀メダルを手にしたインタビューで、「金でなくて残念だが、これでまた目標が残った。これからも金を目指して頑張る」と言っていた。
まだやるつもりなのだ。このソチ五輪に、真面目に、真剣に金メダルを目指しただけで驚いた私は、驚きを失うしか方途はない。
(写真は17日日経新聞より)