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旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

歌いつがれた日本の心・美しい言葉⑰ … 『冬景色』 

2012-12-08 10:26:10 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

   さ霧消ゆる湊江(みなとえ)の 
   舟に白し、朝の霜。
 ただ水鳥の声はして 
   いまだ覚(さ)めず、岸の家。

 烏(からす)啼(な)きて木に高く、
   人は畑(はた)に 麦を踏む。
 げに小春日ののどけしや、
   かえり咲きの花も見ゆ

 嵐(あらし)吹きて雲は落ち、
    時雨(しぐれ)降りて日は暮れぬ。
 若し燈火(ともしび)の漏れ来ずば、
   それと分(わ)じ野辺の里

       (講談社文庫『日本の唱歌(中)』より)

 懐かしい文部省唱歌である。文部省唱歌というだけで作詞家も作曲家も不詳とされている。こんな美しい歌をいったい誰が作ったのだろうか? この歌を歌うと、小学生のころの教室が目に浮かび、キチンと並んで一生懸命歌ったことを思い出す。
 『日本の唱歌(中)』は、「初冬の田園の朝・昼・夜の景色を簡潔に述べたもの。第一節は湖畔、第二節は山畑、第三節は村落の景を歌っている」(同書46頁)と解説している。これほど懐かしい日本の情景を表現している歌があろうか。第三節など、故郷の情景を懐かしみ涙を誘われる歌詞である。

 曲もきれいだが、それだけにきれいに歌うには苦労したことも覚えている。前掲書も指摘しているが、「シ」の音(「ド」の半音下)を正確に出すのが難しい。つまり、第一節一行目の「みなとえの」の「レミレシソ」が「レミレラソ」になり、続く「ふねに」の「ソシレ」が「ソドレ」となってしまう。「シ」という半音をきれいに出して歌うように注意されたことを思い出す。
 「四七(よな)抜き」の日本調では、まさに「七(な)」に当たる「シ」は抜かれていたので、難しかったのであろうが、七音階の西洋の歌を広めていった歌の一つであったのであろう。
 歌詞の方も、古き良き日本の情景を、半音「シ」の微妙な表現に負けず劣らず、絶妙な言葉で言い尽くしているといえるだろう。

 

 

 


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