前回の「楽しみな七月」で書いたように、今月の主要行事としては「白馬Alps花三昧」に続いて月末28日(土)、29日(日)に、娘の主宰するオペラ公演『秘密の結婚』がある。
娘がオペラ企画・制作集団“ミャゴラトーリ”を立ち上げて数年になるが、娘がこの間一貫して追求したことが「何とかオペラの素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい」、「そのためにはどんな工夫が必要なのだろうか?」ということであった。
ご承知のようにオペラはイタリアに生まれ、当然イタリア語で演奏される。その後各国に広まるが当然のことながらそれぞれの国の言葉で演じられる。それでなくてもなじみの少ないオペラを意味の分からない外国語で聞かされては一層なじめない。と言って日本語に翻訳して演じると、それぞれの国の美しい言葉に合わせた曲の素晴らしさを損なう。また字幕スーパーを使うと聴衆の目はそちらに引き寄せられて折角の演技に目がいかない。オペラ――歌劇という以上は舞台にこそ目を惹きつけたい。
思い悩んだ娘…というよりミャゴラトーリが到達した手法は、アリアや重唱部分は当然ながら原語で演奏するが、会話の部分やつなぎの部分は日本語で演じて、物語りの理解を助けようとしたことだ。加えて登場人物の一人にストーリーをつなぐ役を持たせ、日本語で語り継がせる。つまり狂言回し的役割を持たせることで観衆の理解を助ける。
こうして昨年夏、ヤマハの支援も受けてドニゼッティの『愛の妙薬』を公演し、かなり好評であった。今回の『秘密の結婚』はその第2弾だ。題して「日本語台詞でつなぐ原語上演」。そのチラシには「美しいイタリア語の旋律を、日本語の台詞でつなぎます。イタリア語で歌っているのに自然に物語に入れるとご好評をいただいた演劇融合オペラ第2弾」とある。
それはさておき、このオペラは美しい。オペラとしてはあまり有名ではないが、作曲者チマローザは“ナポリのモーツァルト”といわれるだけ曲の美しさは抜群! 特に重唱の美しは比類ないのではないか。
それを、佐藤貴子、寺田宗永、沼生沙織、薮内俊弥、栗田真帆、大澤恒夫という実力派若手歌手が演じ、藤村はるかが女中役で話をつなぐ。期待して止まないものがある。