シンポジウムのテーマの一つが、「日本酒は世界酒になりうるか」というものであった。外交官として世界をまたにかけて日本酒を宣伝しまくっている門司健次郎氏(酒サムライ、外務省文化交流部長)をはじめとして、作家のかざまりんぺい氏、飲料コンサルタントの友田晶子さん、酒サムライコーディネーター平出淑恵さんと、世界の酒を知り尽くした方々の討論会で、楽しい話で盛りだくさんであった。
日本酒は世界酒になれるか? その前に、世界酒とはどんな酒か、と思いながら討論を聞いたが、日本酒の現状を思う時、それはかなり遥かな未来の話だな・・・と思った。世界酒になるより、「日本の酒」になることの方が先決であろうから・・・
現在の世界酒といえば、ビールとせいぜいワインであろう。ビールは異論なく世界酒であろう。正確な統計は持ち合わせていないが、世界の酒の七割はビールではないか? それに次ぐのはワインであろうが、どのくらいのシェアーであろうか? シェアーというより、殆どの国で飲まれていることからすれば、ワインは世界酒といっていいのであろう。その背景には、フランスが国を挙げてワインを世界に広めた努力があったと言う。ワイン産業を自国だけでは維持できなかった歴史が、ワインを世界酒に押し上げたと言えるのであろう。
日本酒産業は、もはや国内だけでは維持できないのではないか? 日本人の飲む酒の七割近くはビール(ないしは第二、第三などの「ビールもどき」)であり、日本酒はシェアー5%に近づきつつある。5%を割ると、その商品は市場から抹殺されると言う説がある。かつてのフランスのように、国を挙げて世界に市場を求める時期かもしれない。
ただ、まさに正しくも、その前にまず「日本の国酒」たる地位を確立しよう、というのが論者の一致した意見であった。自国の酒として自信を持つことの出来ない酒を、世界に売り出すことは出来ないだろう。日本人の主食である米で造る酒に、日本人が「国酒」を意識するのはいつのことか?
さまざまなパーティで、ウィスキーの水割りで乾杯をしているような様では、日本酒の復権は遠い。和食と言い、純米酒を中心とした良質な日本酒といい、決して他国の酒に負けないと思うが・・・。