横綱朝青龍引退のニュースが飛び交っているが、私としては大変に喜んでいる。人の不幸を喜ぶとはけしからんと言われるかもしれないが、私は、朝青龍という人は「相撲界にはふさわしくない人」と思って来たので、日本相撲界のためにこの引退を歓迎しているのである。
スポーツは、「より早く、より高く、より強く」を競う競技であるので、その中の格闘技では強くなくてはならない。しかし、それが人間の競技である以上、強さとともに「人としての美学」が貫かれなければならない。特に相撲道には、日本伝来の武士道にも見られる「敗者に対する思いやり」などという高い精神性が求められる。単に強ければよいというものではないのである。
中でも横綱という最高地位にある者には、高い人間性と品格が求められる。そのような面で、朝青龍には過去数々の問題点が指摘され続けてきた。そして今回の事件は、それに止めを刺すものであっただろう。
暴行事件以前に、横綱が本場所中の明け方まで、泥酔するまで飲み歩いていること自体、許さるべきではなかろう。それでも強いから翌日の相撲も勝ったのであろうが、全国の相撲ファンは「二日酔いの土俵入りと本割り相撲」を見せられていたのだ。加えて、暴行事件を身内間の問題に見せかけようとしたり、示談に持ち込んで隠蔽しようとした気配も見られ、到底相撲道とか武士道とかの精神に耐えうるものではない。
朝青龍という人は、日本独特の美学を併せ持つ相撲道より、強さとともに悪役などを必要とするショーの世界に身を置くべきではなかったか。
いずれにせよ相撲界から退場したことは喜ばしいことであったと思っている。