旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

まぼろしのヤシ酒「テュバ」を追って(2)

2008-09-03 17:01:09 | 

 

 思いがけないジェリー斎藤氏の言葉に、われわれはショーの終わりもそこそこに、テュバを置いてあるという「四川ラーメン」なる店に向かった。
 昼間あんなに探して見つからなかったテュバが本当に飲めるのだろうか? 
 だいたい「四川ラーメン」という店名が怪しい。四川と言えば、あの四川料理の四川であろう。ラーメンとは日本料理で中国料理には無い。中国と日本をごっちゃ混ぜにしたような店に、グアムの本物の地酒が果たしてあるのか?・・・
 などと訳の分からないことを思いながら店に入り、とにかくテュバを頼むと、やや太り目のお姐さんが「は~い、テュバ2杯!」と言う調子でいとも簡単に運んできた。われわれはその白濁した液体のグラスを高くかざし
 「ケイコさんとダニーとジェリー、それにグアムに乾杯!」
とか言いながら、待望のテュバを飲んだ。
 酒というより果物のジュースに近いと思った。飲み口としては日本のドブロク、韓国のマックォリのようだ。明らかに違うのは匂いとあと口(飲んだ後のもどり香)。匂いは酢のような匂いでそれなりに強烈、味は生臭いがスィートだ。匂いに比しておいしいと感じた。一番の特徴は後に残る香りで、これは明らかにヤシの実の香りだ。昼間のツアーで立ち寄ったウマタックの岬で、マゼランが上陸したと言う美しい湾を眺めながら、みんなで食べたヤシの実の味だ。
 われわれは岬の出店で、店の人が斧で裂いた切り口にストローを入れて果汁を吸い、吸い終わった実を切り開いて中の果肉を食べた。この果肉は「果物というよりマグロのトロのようだ」というのが大方の感想であったが、それらの味がすべて凝縮されてテュバの中にあった。

 私は「四川ラーメン」のママさんに無理を頼み、商売用のテュバを小さなミルクのビンに分けてもらい、勇躍してホテルに帰り、翌日の全員食事会用にと冷蔵庫にしまったのであった。

 ところが(またまたまた「ところが」で、いささかうんざりしてきたが)、もっと大量の「本物のテュバ」を提供しようと言う人が現れたのである。(続きは次回)
                             


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