旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

まぼろしのヤシ酒「テュバ」を追って

2008-09-02 14:53:07 | 

 

 何度も書いてきたが私は旅先では、その地の酒をその地の料理で飲むことにしている。グアムに行けば、当然のことながら「チャモロ料理でテュバ(ヤシ酒)を飲もう」と思った。
 社員旅行用にチャーターした島巡り観光バスに乗り込むや、ケイコというガイド(現地に住む日本人のおばちゃん)に、「テュバを飲みたいので売っている場所を教えてください」と頼んだ。ところが、ケイコさんの答えは「ヤシ酒? そんなもの今は何処にも売っていませんよ。現地の人が自分が飲むために個人的に造っている人はいるでしょうが・・・」
 私は愕然として「地酒なんてそんなものか・・・」と諦めかけていたところ、再びケイコさんが「運転手のダニーさんがヤシ酒を造っているところを知っているので、島巡りの途中に立ち寄って買ってくれるそうです。実はグアムでは、バスの中で酒を飲んではいけないことになっている。しかしダニーさんは目をつぶるので、後方の席で、ポリさんに見つからないように飲んでくれ、とのことです。」と言う。
 私は歓声を上げ、ケイコさんとダニー青年に最敬礼した。ケイコさんはますますきれいに、運転するダニー・ボーイの後姿はたくましく大きく見えた。

 ところが(再び「ところが」であるが)、目指す集落や民家を次々と訪ねるも、なかなか見つからない。「ここなら・・・」というところは相手が不在だ。ついに目的のものを手にすることなく、バスは終点へ向かった。しかし私は満足した。ケイコさんは私の思いを察してくれて運転手に尋ねてくれて、それを聞いたダニー君は知る限りの先々を訪ね探してくれたのだ。

 やはり「ヤシ酒はまぼろしか・・・」と諦めかけていた。
 ところが(またまた「ところが」で恐縮だが)、ついにテュバを見つけた!
 その夜、チャモロ民芸のショーに向かうタクシーの運転手(ジェリー斎藤と名乗った)に、私が愚痴っぽくヤシ酒の無いことを嘆くと、「え? ヤシ酒ってテュバのことですか? それ飲ませる店ありますよ。ホテルオオクラのそばの『四川ラーメン』にありますよ」とのこと。
 われわれは、ショーもそこそこに店に駆けつけ、待望の酒を飲んだのである。何事も執念である。望みを捨ててはいけないのだ。

 しかもこの話はまだまだ続く。「ところが」がまだ出てくるのであるが。
                                          


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