なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

両下肢脱力?

2022年07月09日 | Weblog

 火曜日の午前中は救急当番だった。午前1時で午後担当と代わるが、12時45分に救急要請が入った。(結果的に、午後は内科の別の先生が救急当番だったが、当方向きの患者さんだったかもしれない)

 温泉のホテルに日帰り入浴に来ていた54歳男性が、入浴後に両下肢の脱力があると訴えて、救急要請した。意識は清明で、雰囲気はなんというか、けろっとしている。

 住所は隣の市だが、当市内にある山間の温泉に、車を運転して週何回か日帰り入浴に来ているそうだ。その日はいつもより長く30分くらいの入浴だったという。

 救急隊から連絡を受けた時は、長い入浴によるのかもと、思っていた。最初は、そうだったのかもしれない。両上肢は普通に動かしている。下肢を動かしてというと、少し挙上するが、力が入らないという。(痛み刺激を急に入れようかと思ったがやめた)

 

 特にこちらから訊いていないが、自分からしゃべった。父親と二人暮らしだが、父親は市内の病院に入院している(両療養型病床)。自分は5年前から仕事をしていないという。自分の仕事のことや父親のことを相談したいが、相談できる人がいないと。

 急に両下肢に力が入らなくなって、いったいどうなってしまったのか、という感じではなく平然とした様子だった。脊髄疾患が起きたようではない。ソルラクト500mlを点滴して、少し改善してきたが(動かす気になった?)、翌日まで入院とした。血液検査は異常なかった。

 

 入院後は、点滴スタンドにつかまって、トイレまで行っていた。翌日病室に行くと、つかまらずにトイレまで行けるという。食事は完食だった。

 幻聴があるという話をした。人が何かしゃべっているという。いつから始まったかと尋ねると、3か月前からと答える。統合失調症が始まる年齢ではないし、自分から言うのも変だ。急に口をすぼめて赤ちゃん言葉で話すようになる、ともいう。

 前頭葉病変があってもと思って、頭部MRIを行おうとしたが、途中で興奮して中止になってしまった。頭部CTにして検査したが、異常はなかった。

 病棟の看護師さんからセクハラ行為があるので帰して下さいといわれた。救急室にいる時からあったらしい。誰も見ていないところでは(実際は離れたところから見ている)普通に歩いていますよ、ともいわれた。

 検査では異常ありませんでした、よかったですね、と伝えた。こちらが退院勧告をする前に、もう退院したいと言われた。

 温泉ホテルに車と靴を置いて来ていた。手術室で使っていた古いスリッパを提供して、タクシーを呼んで退院となった。会計は2万円ちょっとで、支払いができるかと思ったが、ちゃんと持ち合わせていた。

 

 看護師さんは、父親が入院している病院に連絡して、親戚の方の連絡先を聞いたそうだ。電話してこれまでの経緯を訊いていた。父親は経管栄養を受けているそうで、長期療養になるのだろう。

 この患者さん本人も、父親が入院している病院や地域の基幹病院の受付で倒れたりしていた。連絡を受けて(呼ばれて)病院に行っていたが、検査では異常がなく精神的なものだと思うという。かかわりを持ちたくないようだ。精神科病院に紹介状が出されたが、本人が捨ててしまっていた。(人格的なものだと精神科でもやりようはないが)

 

 翌日病棟に現れて、お世話になった看護師さんにお礼を言いたいと言ってきたそうだ。ちょうどその日は休みだった。連絡先を教えてくれと言われたが、個人情報は教えられませんと伝えて、帰ってもらったということだ。

 結局、詐病的なものとなるのだろう。急性期病棟は若い看護師さんが多いので(直接担当した看護師さんは中堅どころ)、ふだんの生活の中ではイベント的な状態だったか。

 

コメント
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