上田剛士先生の新著「胸壁症候群を「自信をもって」診療できる身体診察とエビデンス」(シーニュ社)を購入した。
上田先生の著書は大抵購入している。ただ大著である「ジェネラリストのための内科診断リファランス」は到底読みこなせないと思って購入していない。
上田先生の講義は、大阪の適々斎塾のセミナーで一度だけ受けたことがある。二枚目で服もおしゃれでかっこいい先生だった。NHKのドクターGにも出演されていた。
胸痛の鑑別では、まず急性冠症候群・大動脈解離・肺塞栓症などの致死的疾患を見落とさないことが重要になる。胸膜炎や帯状疱疹(特に皮疹の出る前の疼痛)はもよくある疾患だ。
ところが心臓や肺ではなく、たぶん胸壁由来ではないかと思われる胸痛を訴えられることがある。「心臓や肺ではありません」とはいえるが、では何かということがいえない。病名がつかないので、お互いにもやもやして終わる。
「胸壁症候群」は「胸壁(筋骨格系)疾患により胸痛を呈する疾患」で、プライマリケア領域では約25~50%を占める非常にコモンな疾患ということだ。
上田先生によると、「あなたは胸壁症候群です(その中の特定疾患)と断言することができて初めて、患者さんを納得・安心させることができるのです。」
6月23日(月)に高血圧症で通院している80歳代前半の男性が受診した。処方はARBとCa拮抗薬の合剤の1剤だけで、血圧は120/70台で安定している。治療前は血圧が170だったので、ご本人は血圧が安定して喜んでいる(治療自体はごく普通の治療だが)。
帰り際に、胸痛のことを話された。何か月かに1回、左前胸部が突然痛くなるそうだ。持続時間は一瞬というよりは長いが30秒くらいだった。1分は越えない。
労作時ではなく、じっとしている時で、上半身を右側にひねった時に起きるらしい。大胸筋のあたりだが、症状がない時は何ともない。表面(胸壁)に感じているようで、本人も心臓の症状とは思っていない。何でしょうね、という。
その日はたまたま胸部X線・心電図・血液尿検査を入れていたが、特に異常はない。胸壁の痛みと思っても、その症状で来られたら一応胸部X線・心電図をとるが、その点では手間が省けたことになる。
Precordial catch 症候群のように思われたが、「若年健康者に起こるのが典型的」と記載されている。この患者さんは動きがすばやく見た目は年齢より10歳以上も若々しいが、若年ではない。何らかの胸壁の痛みとだけ伝えた。
Precordial catch 症候群は、胸の筋肉に起こった「こむら返り」のようなものと説明しています、と記載されている。納得。