なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

急性白血病

2020年02月29日 | Weblog

 金曜日の昼に医局のラウンジでお弁当(病院に入っている業者の)を食べていた。「ひるおび!」を見ていたが、最近は新型コロナウイルス感染症の話ばかりだった。

 救急当番の外科医から、「貧血の患者さんが紹介されてきたけど、白血球が37万と報告が来て、結果が全部出たら相談したい」と言われた。

 老人保健施設から82歳女性が紹介されてきていた。連絡では貧血とのみ言われて引き受けたらしい。後で診療情報提供書が来て、施設で行った血液検査の結果が記載されていた。

 Hb4.3万で確かに貧血だが、白血球数38万・芽球97%とある(血小板数5.1万)。もうそれだけで急性白血病確定だ。紹介目的には、入院加療のお願い(貧血、白血病疑い)とあった。

 バイタルは保っているが、当院の血液検査でも同様の末梢血像で、Dダイマー28.2とあり、DICに相当する。1年前に一過性意識低下で循環器科に入院していた。その時の末梢血ではHb10g/dlで軽度の貧血はあるが、白血球数・血小板数は正常域だった。CMLの急性転化ではなく、急性白血病そのものだった。

 これは即、血液内科に紹介するしかない。まずはがんセンターの血液内科に連絡して、受け入れできない時は、医療センターの血液内科に連絡してもらうよう伝えた。幸いにがんセンターで引き受けてもらえて、搬送となった。

 紹介自体も内科で対応すべきだったかもしれないが、新型コロナウイルス感染症関連の通達・マニュアル作成をするので忙しく、お願いしてしまった。感染管理ナースが何度も来る日だった。

 

 施設の嘱託医は昭和30年代の卒業なので、年齢は80歳代後半になる(大学病院にいた時にちょっとかかわった先生)。当院で白血病の治療ができると思ったのだろうか。施設としては、とりあえず病院に紹介すればいいという判断なのだろう。

 

 

 

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心不全の増悪

2020年02月28日 | Weblog

 昨夜の当直は外科医だった。受診数は少なかったが、深夜帯で午前1時・4時・6時に受診があったので、ほとんど寝られなかったようだ。

 午前1時に受診したのは69歳女性で、心不全の増悪だった。もともと循環器のクリニック(その後代替わり)に通院していたようだが、中断していた。

 1年前の夜に当院の救急外来を胸部不快感で受診した。当直は眼科医だったが、検査で心拡大・完全右脚ブロックを認めたが、明らかな(急を要する)ACS・心不全とはいえず、日中の循環器科外来を受診するよう指示していた。

 循環器科の外来を受診して、心エコーで大動脈弁閉鎖不全症(ARⅢ°)と診断されたが、1回受診しただけで中断している。

 今回は呼吸困難で、近所の方が連れて来た。娘と二人暮らしだが、事情があるらしい。酸素飽和度80%(室内気)で酸素吸入が開始された。

 胸部X線・CTで心拡大・胸水貯留・肺水腫を認めた。BNPが824(昨年も147と高値)と著明に増加していた。急性心不全(心不全の増悪)として、心臓血管センターのある専門病院に搬送していた(当院の循環器科は時間外対応なし)。

 心電図を確認すると、心拍数179/分の発作性頻拍(リズムはレギュラー)になっていた。脚ブロックの頻拍は気持ちが悪い。リズムの調整を行えば血行動態が改善して心不全症状が軽快するのだろう。

 

 当直明けの外科医は、昼に医局のラウンジで昼食をとっている時に居眠りをしていた。お疲れ様でした。

 

 

 

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血液培養の結果で迷う

2020年02月27日 | Weblog

 昨日AST会議で外科に入院中の78歳男性の血液培養の話が出た。1月から2月初めまで右胸水貯留で入院して、今週の月曜日に再入院していた。

 10年前に直腸癌手術(ストーマ造設)を大学病院で受けていた。3年前に尿閉で尿カテーテル留置となって、泌尿器科の外来に通院していた。

 1月に泌尿器科外来を受診した際に、発熱の精査していた。胸部X線・CTで右胸水貯留を認めた。泌尿器科医が外科でドレナージが必要と判断したのか、直腸癌との関連を考えたのか、外科に紹介されていた。

 ドレナージがなされて血性の混濁した胸水が吸引された。胸水の培養は陰性だった。細胞診も陰性。その後呼吸器科外来に来ている外部の先生(現在当院は呼吸器内科医不在)に相談して、結核菌PCR・MACのPCR・胸水中ADAが提出されて、抗酸菌感染は否定的だった。

 抗菌薬はセフトリアキソンで開始されて、その後メロペネムに変更されていた。胸水の減少、炎症反応の軽減があり、呼吸器内科医の指示で抗菌薬内服となっていた(オグサワ=AMPC/CVA+AMPC)。

 今回は血液培養2セット・喀痰培養・尿培養が提出されて、セフトリアキソンで開始された。血液培養2セットからStreptococcus haemolyticusが検出された。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の一種だが、肺炎・胸膜炎の菌としては?になる。といって、2セットから検出されると無視はできない。どこから出ているのだろうか。

 

 内科に紹介されていたらどうなったかというと、最初から膿胸疑いで呼吸器内科のある病院に紹介したと思う。自信がないから。

 

 

 

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通過障害

2020年02月26日 | Weblog

 先週の土曜日の日直の時に、90歳男性が食べたものが胸のあたりで詰まって苦しいという訴えで受診した。朝食はとっていて、昼過ぎに救急外来に来た。

 どのくらい前からか正確にはわからないが、以前から食べた時のつかえ感が出現して、その後軽快するという。常にでもなく、次第に進行しているわけでもない。

 嚥下自体には問題がないので、食道~胃の狭窄をきたす器質性病変があるのか、機能的な問題があるかになる。

 胸腹部単純CTで確認すると、胸部食道まで食物が詰まっていた。これでは確かに胸が詰まって苦しいという症状が出るだろう。

 内視鏡検査をしないとわからないが、三連休明けになる。どちらかというと機能性の問題かとは思った。たぶん時間経過とともに食物が落ちていくので、水分摂取で経過をみてもらうことにした。栄養剤(エンシュアリキッド)を出しておいた。連休明けの火曜日は上部消化管内視鏡検査がいっぱいで、空いていた水曜日に予約した。

 連休なので、翌日も同症状で受診する時は外来で点滴してくださいと記載しておいた。早く診る方がいい時は、火曜日に消化器科と相談とした。

 翌日の月曜日も受診して、日直の先生が入院にして、点滴を出してくれていた。火曜日に病棟に診に行くと、症状は軽快して、ポカリスエットとエンシュアリキッドを飲んでいた。

 消化器科医と相談して、もう1回CTで食物が残っているか診てからの方が、内視鏡検査の心構えが違うと言われた。食物が残っていれば、何からの処置が必要になる。

 CTを再検すると、食道内の食物は消失していた。緊急性や検査にあたっての処置も不要なので、予定日に内視鏡検査を受けてもらった(担当は外部のバイトの先生)。

 内視鏡検査では異常なしで、器質的疾患はなかった。機能的は問題になる。といって、アカラシアとはいえないようだ。

 とりあえず、食事を開始して経過をみることにした。最初に外来受診した時、通院している町の診療所でPPIが処方されていたので、モサプリドを追加で処方していた。

 モサプリドも胃は動かすが、食道を動かすことはない。食道だと六君子湯くらいしかない。食事摂取の具合をみて、対応を考えることにした。

 

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どこからの大腸菌?

2020年02月25日 | Weblog

 先週の土曜日に93歳男性が救急外来を受診した。3日前から食欲が低下して、腰痛が悪化していた。38℃の発熱があったが、本人も家族も気づかなかったそうだ。

 上気道症状はなく、腹痛もなかった。腰痛以外の関節痛もない。この年齢で高熱はインフルエンザ以外は細菌感染症なので、感染巣の検索をおこなった。

 血液検査では白血球7000だが(ふだんは5000くらい)、CRP 12.0と上昇していた。CK 3650・AST 114・LDH 315と筋原性酵素の上昇があった。両側大腿の把握痛が軽度にあるが、とにかく腰痛がひどい。

 意識は清明で、難聴はあるが会話は普通にできた。普段は年齢の割に元気らしい。

 腰痛は以前からあり、最近始まったものではない。発熱・腰痛だと化膿性脊椎炎になるが、確率は低いだろう。胸腹部単純CTでは肺炎像はなかった。肝胆道系も問題ないようだ。腰椎はL3-4とL4-5の椎間板が正常の1/3くらいになっている(放射線技師さんは椎間板がないと表現したが、なくはない)。腰椎の配列もL5でずれている。休日のMRIは頭部しか撮らないことになっているので、腰椎MRIを撮るとすれば連休明けになる。

 尿路感染症を疑ったが、尿混濁はなかった。前立腺肥大があり、前立腺炎も疑って血清PSAも測定したが、正常域で否定された。尿培養と血液培養2セットを提出して、抗菌薬を開始することにした。

 病棟に上がると、発熱が40℃となり、不穏を呈していた。昨年80歳代の高齢男性で、同様の高熱・炎症反応上昇・筋原性酵素上昇の症例が続いた。当初の抗菌薬には反応せず、数日経過をみて、ステロイドを開始すると著効を呈した。多発性筋炎ともいえず、何らかの筋炎としかいえなかった。

 この患者さんも同じかもしれないと考えた。三連休を抗菌薬(セフトリアキソン)だけというのも心もとない。抗菌薬に併用ならいいのではないかと判断して、プレドニン20mg/日(点滴静注)も使用した。翌朝には解熱した。

 その後に(翌日の日曜日の夕方)、病院から連絡が来て、血液培養からグラム陰性桿菌が検出されたという。菌血症による高熱と判明して、プレドニンは2日の使用で中止した。

 翌日から解熱して、食事摂取は完食となっていた。今日はベットの上にあぐらをかいて、電気シェーバーで髭を剃っていた。腰痛も軽快したようだ。炎症反応もCRP3.1と軽快して、CKも328まで低下していた。

 大腸菌だとやはり尿路感染疑いだが、尿混濁なしで尿培養陰性と出ている。どこからの大腸菌なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

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CareNeTV GMカンファランス2019

2020年02月24日 | Weblog

 毎年CareNeTVで千葉大総合診療科のGMカンファランスを見ていた。2019年のがなかなか出ないと思っていたが、やっと出た。生坂先生の症例は興味深い。(開催場所が確保が難しいという問題があったらしい)

 

CareNeTV
GMカンファランス2019
第1回 千葉大学からの3症例

症例1 28歳女性 頸部リンパ節腫脹

現病歴:来院3週間前から下顎部に、2週間前から後頚部に軽度の痛みを伴うしこりが出現した。症状の改善に乏しいため当科紹介受診となった。しこり以外の症状はない。
既往歴・服薬歴・家族歴:特記事項なし
職業:営業職でインドネシアに半年間出向し、1か月前に帰国
飼育歴:ペットなし
性交歴:1か月前に出会った新しい男性と2週間前から同棲開始。
身体所見:血圧110/68mmHg、脈拍72/分、体温36.2℃、呼吸数18/分
左顎下および左後頭部に直径約2cm弾性軟、可動性良好の軽度圧痛を伴うリンパ節腫脹を認める。その他の表在リンパ節腫脹はみられない。咽頭・口腔に異常なし。肝脾腫および皮疹なし。
追加の問診:インドネシア滞在時
-腹痛の現地人とのコンドームなしの性交渉あり
-野良猫との頻回の接触あり
-十分に加熱処理されていない豚肉と生の鶏肉の日常的な摂取あり
検査所見:特に異常なし
炎症反応陰性、肝機能障害なし

回答者の診断と生坂先生のコメント
・性感染症?
 梅毒はありうる
・猫ひっかき病?
 ひっかき傷が上肢では腋窩リンパ節、下肢では鼠径リンパ節、キスなどの濃厚接触では頸部リンパ節が腫脹。
 相当にリンパ節が痛い。
・菊池病?
 炎症が激しいのでリンパ節が痛い。発熱も。
・トキソプラズマ症?
 猫との接触から想起(鋭い)

特殊検査所見:
トキソプラズマIgM抗体(+)、IgG抗体(+)
EBV既感染、CMV未感染
HIV抗原抗体(-)
梅毒RPR(-)、TP抗体(-)
T-SPOT(ー)
抗核抗体(-)、抗SS-A抗体(-)
HBs抗原(-)、HCV抗体(-)

検査やり過ぎ?
STD疑いで一通り検査したそうだ

診断:後天性トキソプラズマ症
経過:
・網脈絡膜炎の所見がないこと確認し、無投薬で経過観察
・4週間後リンパ節腫脹は自然軽快した

後天性トキソプラズマ症
・Toxoplasma gondiiによる人獣共通感染症
・ヒトへの感染は猫の糞便に汚染された土や井戸水からオーシストを経口摂取、もしくは加熱不十分の肉や生ハム・ソーセージ内のシストを摂取
・全国的にみられるが、不完全な加熱処理お肉を摂取する食文化の欧州(特にフランス)や、衛生状態が悪い熱帯地域で多い
・すべての家畜に感染している可能性があるが、羊肉は最も危険
・8割は不顕性感染で、2割に発熱やリンパ節腫脹などの急性症状を呈するが、概して軽症
・原因不明の頸部リンパ節腫脹の15%が本症
・免疫機能正常な成人への治療は必要ないが、網脈絡膜炎などの臓器障害を認める場合は、アセチルスピラマイシンなどを投与
・妊娠可能年齢の女性の場合、先天性トキソプラズマ症を予防するために、感染から半年間は妊娠を避ける

Take Home Message
急性の軽症リンパ節炎はトキソプラズマを鑑別する 非特異的な軽度のリンパ節炎はトキソプラズマを考える)

 これまであまり気にしたことがないが、見逃していたのかもしれない

 

症例2 60歳男性 倦怠感、悪心、食欲不振(再現VTRあり)

主訴:倦怠感、悪心、食欲不振
現病歴:2日前野球を観戦して帰宅途中に、急に冷汗が出現して、便意を催した(下痢)。だるくなり、しゃがみこんでしまった。
 その後も倦怠感、悪心、食欲不振が続いている。
 近医を受診して、風邪薬とビタミン剤を服薬。
 既往歴:下垂体卒中、脂質異常症、胃食道逆流症。喫煙20本/日25年間。
内服薬:ヒドロコルチゾン10mg1錠分1・ロスバスタチン2.5mg1錠分1・ランソプラゾール15mg1錠分1、センノシド12mg2錠分1
身体診察:体温36.7℃、脈拍59/分(整)、血圧103/60mmHg、頭頚部、胸腹部、四肢に異常所見なし
検査結果:白血球12800、Hb 14.0g/dl、血小板16万、BUN 26、血清クレアチニン1.20、AST 426、ALT 75、LDH 1392、CK 1809、CK-MB 87.4、トロポニンI 51199pg/ml
診断:急性心筋梗塞(下壁)
治療:直ちにアスピリンを服用させ、PCIへ。
これだけでいいか?

追加検査:急性副腎不全の評価
コルチゾール22.5µg/dl(7/1~19.6)、ACTH 23.8pg/ml(7.2~63.3)

コルチゾール分泌
・コルチゾール分量:10~20mg/日
・ストレス時:最大300mg/日まで増加

ステロイドカバー
・発熱、ストレス時→補充量2~3倍
・内視鏡、動脈造影検査時→ヒドロコルチゾン100mg静注
・重症疾患、手術時→ヒドロコルチゾン100mgを8時間毎の静注

→この症例では、PCI前にヒドロコルチゾン100mgを静注した

いつAMIを疑うか
・急性発症の胸痛
・急性発症の悪心・嘔吐、腹痛、息切れ、上肢のしびれ、失神、不穏
→85歳以上の胸痛は半数のみ
→冷汗は常にキーワード

Take Home Message
心筋梗塞に伴う消化器症状(副交感神経症状)に便意(下痢)も含める(悪心・嘔吐だけじゃない)
副腎皮質ホルモン服用患者が病気になったらステロイドカバー

 

症例3 86歳女性 寝汗


主訴:寝汗
現病歴:2年前から食欲不振が出現し、10kgの体重減少がある。また、半年前から寝汗を自覚するようになり、毎日明け方5時頃に起きて上下下着とパジャマをすべて着替えている。かかりつけ医より紹介。
既往歴:61歳高血圧症、76歳発作性上室性頻拍(アブレーション治療)、89歳骨粗鬆症、83歳非結核性抗酸菌症(Mycobacterium avium)
内服薬:ニフェジピン20mg/日、オルメサルタン20mg/日、ビソプロロール0.625mg/日、ベラパミル120mg/日アルファカルシドール0.5µg/日、アルプラゾラム0.8mg/日
家族歴・嗜好歴:特記事項なし
身体所見:体温36.2℃、脈拍75/分、血圧125/60mmHg、慎重141.2cm、体重39.1kg、BMI19.6、甲状腺腫大なし、頸部リンパ節腫脹なし、呼吸音清、crackles聴取せず、心雑音なし、下腿浮腫なし
胸部CT:両側肺野に粒状影散布(3年と比して悪化なし
寝汗について問診:
「決まって毎朝5時頃に、寝汗で起きてしまうんです(その他の時間帯には出ない)」
「背中と太ももに絞れるほど汗が出ます」

会場から
・寝汗から、結核? 悪性リンパ腫?
・更年期障害(ホルモン)?紅潮 hot flush? 年齢が合わないが
・カルチノイド?
・薬剤?

生坂先生から ・発汗を来す薬剤:コリンエステラーゼ阻害薬、NSAIDs
・布団のかけ過ぎ、空調の問題、(猫が寄ってくる?)
・低血糖、インスリノーマ

太ももにしびれるほど汗が出るか?
そこで・・・
帰宅後、実際に汗をかいた衣服をしぼってもらうことに
→「下着が冷たくなるだけで絞れませんでした」
解釈モデル「寝汗をかいたから起きた」
→実際は、「早朝覚醒」うつ病?

うつ病の問診
M:気分の落ち込み→No
E:興味や喜びの喪失→No
A:食欲減退→Yes(体重減少も)
S:睡眠障害→No(自覚的には)
L:性欲低下
E:エネルギー(意欲)の低下→No
S:希死念慮→No
高齢者は感度7~8割と低い(通補は9割)

診断:仮面うつ病Masked depression
治療経過:セルトラリン25mg/日開始→「寝汗は出なくなりました」「朝は6時過ぎまでぐっすり眠れます」 

患者さんは軽快してからもうつ病による早朝覚醒とは認識していない。寝汗をかかなくなったので(寝汗に効く薬で?)、良く寝られるようになったと思っているそうだ。

 

発汗の分類
・生理的発汗
 ・温熱(体温調整)性
 ・味覚性
 ・精神性
・冷汗
・脂汗
・寝汗:器質的疾患を除外する必要があるが、高頻度疾患であるうつ病や不安障害を忘れてはならない

高齢者のうつ病
・典型的な抑うつ症状を示す人は1/3~1/4
・抑うつ症状の代わりに身体症状を訴える=仮面うつ病

肺MAC症の治療適応
[診断後すぐに治療すべき症例]
・線維空洞型
・血痰・喀血がある
・塗抹肺禁漁が多く気管支拡張病変が高度
・病変の範囲が一側肺の1/3をこえる
[これら以外は経過観察]
・定期フォロー(喀痰検査、画像)

 

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抗菌薬変更

2020年02月23日 | Weblog

 1月10日から14日まで70歳男性が発熱・背部痛で入院していた。内科の若い先生(専攻医)が金曜日の当直の時に入院させて、三連休だったので、連休明けの火曜日に相談された。

 大動脈瘤(大動脈弓部の鎖骨下動脈分岐のすぐ下)を認め、入院時に提出した血液培養2セットからMRSA(CA-MRSA)が検出されていた。感染性動脈瘤として心臓血管センターのある専門病院に救急搬送した。

 退院後の先々週に当院の外来に戻されていて、内科新患を診ていた内科の若い先生(別の専攻医)が対応した。

 診療情報提供書によると、大動脈瘤切迫破裂が疑われて、緊急でステントグラフト内挿術が施行された。抗菌薬はバンコマイシンが継続されていた。患者さんの退院希望もあり、血液培養陰性後約2週間くらいの投与でバンコマイシンは中止になった。退院時は抗菌薬内服が処方されていた。 

 内服薬はCEX(ケフレックス)だった。若い先生もこれでいいのかと思ったそうだが、後で相談するつもりで、とりあえず継続としていた(ふだんはすぐ相談してくるので、忙しかった?)。

 その日の午後に画面上で受診者のチェックをしていて、この患者さんが外来受診していたのに気付いた。翌日呼吸器外来に来ていた先生(大学病院感染症科の所属)に相談した。

 これはまずいでしょうということで、患者さんを呼び出して、抗菌薬を変更してもらった。選択された抗菌薬は、培養結果で感受性ありのST合剤とRFP(リファンピシン)併用だった。

 通院している糖尿病外来と呼吸器外来が同じ曜日なので、併診で経過みてもらえることになった。それにしても、なぜケフレックス。感染管理で大学病院から月1回来てもらっている先生は、そちらの病院にも行っているので、報告しておいた。

 

 

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糖尿病の講演会

2020年02月22日 | Weblog

 火曜日の市医師会学術講演会は糖尿病の講演で、糖尿病がテーマだと参加者はいつもより多い。

 講師は糖尿病専門医である内科開業医の先生だった(別の地区の医師会長)。県レベルの糖尿病講演会でも、教授の特別講演の前に症例提示をされたりしている。時々患者さんのやり取りがあり、穏やかな人格者として定評がある先生で、挨拶をするつもりだった。

 「糖尿病標準診療マニュアル 一般診療所・クリニック向け」や、「ADA(アメリカ糖尿病学会)/EASD(欧州糖尿病学会)のコンセンサス・レポート2018」を紹介されていた。先生ご自身の意見ははっきり言わなかったが、会場の循環器科医から、心臓病がある患者ではSGLT2阻害薬を最初に出しているがと質問されて、やはり第1選択はメトホルミンでと答えていた。

 当院の消化器科医が、講演者の大学同級生ということで、久しぶりに出席して話をしていた。ちょっと混ぜてもらって少しだけ話をしてきた。

 

 糖尿病薬の選択

1. 「糖尿病標準診療マニュアル 一般診療所・クリニック向け」は内容が実質11ページの簡単なものだ。

 ステップ1はメトホルミンで開始する(eGFR30以上で)。ステップ2でDPP4阻害薬を上乗せする。ステップ3でSU薬・SGLT2阻害薬・α-GI(α-グルコシダーゼ阻害薬)のどれかをさらに上乗せする。ステップ4で多剤併用・インスリン・GLP-1受容体作動薬となる。(各ステップで絶対的・相対的インスリン適応がなければ、という条件が入る)

2. 日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド」には、使用する順番についての記載はなく、医師が適切に選択となっている。製薬メーカーに配慮しているのだろう。

3.「ADA(アメリカ糖尿病学会)/EASD(欧州糖尿病学会)のコンセンサス・レポート2018」では、最初のステップはメトホルミンと包括的生活習慣改善から始まる。

 次のステップはDPP4阻害薬・GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬・チアゾリジン薬から選択する。その後はそれぞれの併用になって、最後にSU薬か基礎インスリンの追加になる。

 ASCVD(動脈硬化性心疾患)、HF(心不全)/CKD(慢性腎臓病)の既往がある場合は、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が推奨される(ASCVDはGLP-1受容体作動薬、HF/eGFRが適切なCKDはSGLT2阻害薬が優先)。

  第2選択でチアゾリジン薬という選択はないと思う。GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬の推奨は大規模臨床試験1つか2つだけが根拠になっている。

4. 「ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック」(中外医学社)では、第1選択はメトホルミンを使用する(禁忌がなければ)。第2選択はDPP4阻害薬かα-GIを使用する(第3選択は使用しなかった方)。第4選択でSU薬を最少量を併用する。

 SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬は、肥満している心血管病変がハイリスクな患者さんでは、第2選択として推奨される。

 併用療法は原則3剤までとして、3剤でもコントロール不良な場合はインスリンを導入する。

 糖尿病の医学書としてはベストセラーなので、影響力はそれなりにあるのだろうか。編著者の岩岡秀明先生の意見ではあるが。

 

 個人的には、第1選択がメトホルミンで第2選択がDPP4阻害薬にしているが、逆の場合もある。第3選択はSGLT2阻害薬かSU薬極少量といったところだ。肥満がある場合は、DPP4阻害薬をGLP-1受容体作動薬に切り替えることがある。チアゾリジンは新規処方はしていない。α-GIとグリニド薬はコンプライアンスを考慮して使用する場合もあるというくらい。

 インスリンは持効型インスリンを経口血糖降下薬に追加するBOT から開始している(最初から絶対的・相対的適応以外)。混合製剤朝夕2回打ちは以前から継続の患者さんのみで、新規導入はない。BOTかインスリン強化療法のどちらかになる。

 あまり独自の治療はしないで、普通の標準的な治療を心がければいいのだろう。

 

 

 

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神奈川県から転院

2020年02月21日 | Weblog

 火曜日に神奈川県の病院から87歳女性が転院してきた。はるばると介護タクシーでの移動で、いったいいくらかかるのだろうと(おいくら万円?)、病棟看護師さんと話していた。

 一人暮らしをしていたが、認知症が進行して、当地在住の息子さん(甥が養子になった)が引き取る予定になっていたそうだ。その矢先1月下旬に自宅で転倒して、頭部打撲・頭部切傷で入院してしまった。

 処置は大したことがなかったが、センサーマットを使用していたと看護情報に記載があった。動く気はあるが、足がついていかないので転倒してしまう。転院後もベット下に落ちてしまい、センサーマットでは間に合わないので、緩い体幹抑制が付いてしまった。

 リハビリ目的だが、介助で起立がやっとで、リハビリをしても実際の移動は車いすになる見込みだ。狭義のリハビリは歩行訓練であり、その対象にはならない。

 息子さんの奥さん(嫁)から、ここにはどのくらいいられるんですかと言われた。市内の療養型病床のある病院の名前を出して、転院できるかという。一部介助で食事はとれて、車いす移動可能となると療養型病床ではとってくれないので施設入所を目指すことになる。要するに在宅介護はない、ということだった。

 この方は胸部X線で両側肺(特に右肺)に空洞性病変があった。前医の喀痰検査では、喀痰抗酸菌塗抹陽性・結核菌PCR陰性・MACのPCR陽性(M.avium)とあった。画像を見ると、線維空洞型(混合型?)で予後が悪い病態だった。陳旧性肺結核病変に合併したのだろうか。

 こちらでも喀痰検査をしたいが、喀痰が出ない。炎症反応はまったく陰性。大学病院から呼吸器外来に来ている先生が抗酸菌に詳しいので相談することにした。

  

 紹介先の病院のホームページを見ると、紹介した先生のにこやかな顔写真が載っていた。リハビリ病院や施設も運営する医療機関だった。

 

 

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甲状腺機能低下症

2020年02月20日 | Weblog

 火曜日の当直は大学病院外科の若い先生(大学院生)だった。日中は外科新患の診察や救急対応をして、そのまま当直をするというバイトで来ている。

 火曜日は夕方救急搬入された87歳女性を入院させて、市医師会の講演会に向かった。講師は糖尿病専門医の開業医の先生(別の地区の医師会長)で、時々患者さんのやり取りがあってお世話になっている。挨拶をしておきたかった。

 自宅に帰って、CareNeTVを診ていると、当直の外科医から連絡が来た。息子と二人暮らしの85歳女性が低体温で救急搬入されたという。会話は可能で血圧はいいが、低体温・徐脈(洞徐脈40/分)で身体を温めていますという。入院させておきますと言われたので承諾した。その時は、介護の問題かなと思った。

 翌朝(水曜日)に病院に来て確認すると、血液検査で甲状腺機能が追加されていて、著しい甲状腺機能低下(TSH高値、FT3・FT4測定感度以下)だった。当直医がチラージンを1回内服させていた。

 患者さんはでっぷりとした体格で、確かに甲状腺機能低下という風貌をしていた。下腿に蜂窩織炎を来たして、両下腿の皮膚が白くなっているのは白癬症か。当直で頭部CTも検査していて、ある程度時間の経過した慢性硬膜下血腫(水腫に近い)もあった。

 体温は搬入時、通常の体温計では測定できないくらいだったが、36.1℃になっていた。洞性徐脈は搬入時よりは改善して、60/分だった。

 粘液水腫性昏睡にかなり近い病状のようだ。ACTH・コルチゾールを外注検査に出して、チラーヂン投与とステロイド(ヒドロコルチゾン)の投与を行うことにした。

 内科エマージェンシーといっていい例だ。住所は地域の基幹病院の近くだが、満床で救急の受け入れができなかったそうだ。病状的にはそちらが好ましいが、家庭環境と今後の対応を考慮すると当院向けの患者さんだ。

 

 

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