11月7日(木)病棟にいる時に整形外科医に相談された。患者さんは、前日に入院した80歳代後半の男性だった。
6年前に右大腿骨転子部骨折の手術を地域の基幹病院整形外科で受けている。現在は隣町の施設に入所しているが、右股関節から大腿近位部の痛みと腫脹があり、当院の整形外科に紹介された。(基幹病院は受け入れ困難だったのだろう)
X線・CTで確認すると、骨や手術の問題ではなく、筋肉内の出血があった。心房細動の病名でワーファリンが処方されていて、PT-INRが5.04と明らかに効き過ぎだった。
四肢に皮下出血が散在しているが、右股関節~大腿近位に出血したのは術後で金属が入っているためだろう。整形外科で入院となった、ビタミンK静注で治療して後は血腫の吸収を待つしかない。
入院時の心電図が洞調律だったので、疑問に思ったらしい。心房細動がなければ抗凝固薬は不要になる。
心電図は洞調律で、1°房室ブロックがあり、ウェンケバッハ型の2°房室ブロックも見られた。一瞬感染房室ブロックかと思ったが違った。ただQRSが抜けるところのP波がはっきりしない。
生理検査室で心電図を長めに記録してもらうことにした。その日は洞調律で1°房室ブロックだけだった。心電図モニターを装着して経過をみることにした。
循環器に詳しい内科の先生に相談すると、発作性心房細動なのかもしれないが、心房細動の診断自体正しいんですかねえ、ということだった。
施設入所前にされた診断なのだろう。腎機能は正常で今どきワーファリンというのは、随分以前からの処方がそのままになって、DOACへの切り替えがなされていなかったのだろう。施設で頻回に血液検査をするとは思えないので、今回のような過量で出血が生じてしまって危険なのだった。
心エコーで診て、左房内血栓の有無と左房の拡張があるか確認するようにということだった(当院は心エコーは週1回外部の検査技師施行)。左房の拡張があれば慢性的な心房細動を示唆する。
出血のコントロールがついてからになるが、発作性心房細動で抗凝固薬継続が必要な時は、エドキサバン(リクシアナ®)15mg/日でどうかという。