なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

ビスホスホネート抵抗性高カルシウム血症

2022年06月30日 | Weblog

 5月の連休明けに当院に転院してきた有棘細胞癌の74歳男性は、併発症として高カルシウム血症があった。

 先方の病院では、入院時に高カルシウム血症を認めて、ゾレドロン酸水和物4mg(ゾメタ)の点滴静注を行って軽快していた。入院後の食欲不振がそれで改善した。

 当院転院時は血清カルシウム12.6mg/dl(低アルブミン血症があり、補正で14.1mg/dl)と高値を認めた。ゾレドロン酸を点滴静注したが、1週間後も13.1mg/dlと低下しなかった。

 1週間に1回ゾレドロン酸の点滴静注を行っても、まったく効果がなかった。13mg/dl台が続いた。

 これはどうもビスホスホネート(ゾレドロン酸)抵抗性高カルシウム血症で、デノスマブ(ランマーク皮下注120mg)を使用しないと、と思っているうちに、ついに16.0mg/dlまで上昇した。あわててランマークを取り寄せてすぐに投与した。

 慢性的に経過しているせいか、明らかな意識障害はないようにみえた。ふだんから静かに過ごしていて、話しかけると普通に答えてくれるが、さすがに軽度の意識障害はあったのだろう。

 ランマークは47550円で、2日分の入院日をかけただけあって?、13.9mg/dl・12.7mg/dl・12.3mg/dlと低下してきた。しかしまだ高値だ。

 固形癌骨転移だと4週間に1回120mg皮下注で、負荷投与(第1・8・15日に投与)はできない。ランマークの副作用は低カルシウム血症だが、到底低下症になるようにはみえない。再度上昇に転じたら困ってしまう。

 原発巣の左環指の腫瘍を大学病院皮膚科で切除することになり、いったん大学病院転院となった。出血のコントロールのための処置だが、入院中の左上腕の転移巣が表面に潰瘍面を形成してきて、そこからの出血もある。

 緩和照射も考慮しているようだが、長期には入院できない大学病院なので、短期間で戻って来ることになりそうだ。

 

 今回のデノスマブ(ランマーク皮下注120mg)は当方としは初めて使用した。退職した外科医が以前に使用したことがあり、電子カルテ上には商品名は登録されていた(臨時使用で使用分だけ購入)。

 

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頭蓋内出血

2022年06月29日 | Weblog

 月曜日の午後に施設から意識障害の82歳男性が救急搬入された。救急当番は大学病院からバイトで来ている総合診療医だった。

 施設にショートステイしていたが、自宅に帰る前から微熱と反応の低下があった。週末そのまま自宅に戻ったが、傾眠傾向となってきた。月曜日に施設にデイサービスで言った時は意識状態3桁(JCS100、痛み刺激で払いのける)になっていた。

 外来は当院の神経内科外来に通院している。処方が1か月分ずつなので、調整が必要な患者さんと思われていたのだろう。脳梗塞後遺症で抗血小板薬(プレタール)が、さらに抗凝固薬(エリキュース)も処方されていた。(直近の心電図では心房細動はないが発作性?)

 

 発熱があり、肺炎が疑われたが、胸部CTで明らかな肺炎像はなかった。そもそも酸素飽和度は97%(室内気)と正常域だった。

 病変は頭部にあり、頭部CTで頭蓋内出血を認めた。健側を圧排していて、脳室内にも出血が回っていた。地域の基幹病院脳外科に救急搬送となった。

 

 診療情報提供書には硬膜下血腫と記載されていたが、この出血は何だろうか。凸レンズ様に見えるので硬膜外出血になる?。クモ膜下出血に見えるところもある。

 外傷性であり、血液サラサラ2剤で出血しやすかったのは間違いないが。

 

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膀胱内落下直後の尿管結石

2022年06月28日 | Weblog

 先週末は内科の当番だった。日曜日はバイトで来ている大学病院小児外科の先生で、連絡は来なかったが、熱中症で救急搬入された熱中症の91歳女性を入院させていた。

 月曜日の午前8時20分ころに連絡が来て、入院させていましたのでよろしくお願いします、ということだった。もっと早くに病院を出ていいことになっているが、ずいぶんぎりぎりまで病院にいてもらったことになる。

 あとで画面で確認すると、救急搬入や発熱外来を含めて10名くらいの外来受診をそれぞれ適切に対応されていた。91歳女性は前日からの点滴を継続していたが、すっかり元気になっていた。食事も完食で、午後には息子さんが迎えに来て退院となった。

 

 日曜日に尿管結石の81歳男性が受診していた。前夜から左側腹部痛があったが様子をみていた。受診した時にも痛みは軽減したが残っていた。

 受診時に体温37.2℃で、外科医はまず尿管結石・閉塞性腎盂腎炎疑いと判断していた。最悪のケースを想定して診ていたことになる。微熱は、その日気温が高く、また痛みで寝られなかった関係もあるかもしれない。

 腹部エコーで左水腎症があるのを確認して、腹部CT検査をしていた。左尿管結石は膀胱内に落ち込んでいたが、左水腎症が残っていて、膀胱に落下した直後の像らしい。(その後、水腎症も軽快していくだろう)

 血液検査で炎症反応の上昇はなく、尿所見も軽度血尿はあったが、尿路感染症というほどの所見はなかった。そのまま治癒するものと判断されて、帰宅となっていた。

 

 他には5歳小児の肘内障も受診していたが、きちんとX線で骨折などがないことを確認してから整復していた。当院にここ数年バイトに来ている、おそらく大学院生の先生と思われるが、丁寧な対応をされるなあと思った。

 

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声がかすれるかぜ

2022年06月27日 | Weblog

 今年度も感染管理の院内勉強会を2回開催しなければならない。昨年度は、経費節約のため外部講師を呼ばずに、当方が簡単な講演をした。今年も自前で行うことになる。

 昨年は1回目が細菌学と抗菌薬のごく基本的な話、2回目が新型コロナウイルス感染症のこれまでの整理と最近の話だった。

 コロナの話は忽那先生のYahoo newsをまとめただけだが、スライドに忽那先生の顔写真を入れたら、かなりウケていた(ゆるキャラ?)。

第22回 新型コロナ感染症~臨床の最前線 | Humony International

 本来は講演に呼びたい先生の著書などををわかりやすく説明する、というこの方式だと、ネタに困らない。細菌学の話では、「感じる細菌学×抗菌薬」染方史郎著(じほう)を使用した。

 今年の1回目は、「かぜの診かた、発熱の診かた」として、岸田直樹先生の本と山本舜悟先生の本を参考にして話をすることにした。(おふたりの顔写真もスライドに入れたが、たぶん忽那先生のような爆笑にはならないと思う)

 

 両方の本に詳しく記載されていないかぜがある。急性喉頭炎つまり「声がかすれるかぜ」だ。先週も「声がかすれるかぜ」にかかった患者さんがきた。

 61歳女性で、高血圧症・気管支喘息で通院している。当方が診る前から安定剤と睡眠薬を継続している方で、いわゆる心気症に相当する。

 もう症状は軽快消失していて、こんなことがあったいう話をしていった。いつも気になる症状を2つ3つ話して帰る。

 2週間くらい前に咳が続いて、声がかすれて、ひどい時は声が出ないくらいだった。発熱はなかったそうだが、胸が詰まる感じ(chest tightness)もしたという。持病の喘息も影響を受けたのかもしれない。

 耳鼻咽喉科クリニックを受診して喉頭鏡の検査を受けていた。説明内容は正確に覚えていないようで、症状が続いたら喘息で通院している内科で相談して、と言われたそうだ。1週間ちょっとの経過で症状は軽快していた。

 

 当方も最近はないが、この「声がかすれるかぜ」に年に1回かかることがあった。ひどいと本当に声が出なくなる。しゃべらないのが一番いいが、そうもいかない。消化器科医も以前このタイプのかぜにかかって、筆談で外来をしていた(休めないのです)。

 発熱も伴った時に、呼吸が苦しいわけではないが、killer sore throatも気になって赤十字病院の耳鼻咽喉科を受診したことがある。喉頭鏡で診てもらって、声帯が白っぽくなっているといわれた。抗菌薬と抗炎症薬が処方されたが、たぶんウイルス感染で、細菌感染ではない。

 急性喉頭炎は内科より耳鼻咽喉科の範疇になるのだろう。通常のかぜよりも症状は長い傾向があり、1週間以上続くようだ。耳鼻咽喉科クリニックのホームページにわかりやすく記載しているところがある(喉頭鏡の所見がある)。

 

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貧血で骨髄穿刺

2022年06月26日 | Weblog

 慢性硬膜下水腫で入院している77歳男性は、五苓散内服で改善している。それに伴って動きも良くなり、発語も出て元気になったが、認知症の症状が目立つようになった。

 発熱して急性細菌性前立腺炎として治療を行った。血清PSAが一時的な高値となって、炎症改善とともに正常域になるという教科書的な経過を呈した。

 この患者さんは貧血の問題もあった。Hbが8g/dl台(MCV100~102)で、白血球数は2000台だった(感染症時は6000まで上昇)。血小板数は正常下限くらい。

 白血球分画では単球増加があり、11.0~27.0%で推移している。これは有意なのだろう。芽球や骨髄球はなかった。血清鉄は低値で血清フェリチンは増加している。血清ビタミンB12や甲状腺ホルモンは正常域だった。

 

 Hb値は同程度で悪化はしていないが、骨髄検査をした方がよいと判断した。あるとすれば骨髄異形成症候群(MDS)で、単球性の疾患も疑われる。他の仕事が忙しくて、先延ばしになっていたが、木曜日に骨髄穿刺を行った。

 認知症で騒ぐのではないかと病棟の看護師さんたちが集まって来ていたが、案外拒否もなく消毒も含めて5分で終了した。

 外注検査なので結果が来るまで2週間くらいはかかる。MDSだとしても、血液内科に紹介して本格的な治療にはならないが、診断はつけておきたい。

 骨髄穿刺は一昨年に2件あったが、自治医大出身の若い先生がいたので、一緒に付いてやってもらった。昨年はなかったので、自分で行ったのは4~5年ぶりかもしれない。

 

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COVID-19で発熱遷延

2022年06月25日 | Weblog

 今週の月曜日に、COVID-19のクラスターが発生した施設に入所中の69歳男性が入院した。その日で発症13日目だった。

 濃厚接触者として新型コロナの検査を受けて陽性と判明した。検査時点では無症状だったが、翌日から発熱があった。高熱が2日続いてから微熱から平熱になっていた。

 その後10日目から微熱が出て、12日目に38℃の発熱があったために、入院依頼となった。咳など呼吸器症状はなく、酸素飽和度は正常域だった。

 入院時の胸部CTで両側下肺野背側に淡く陰影があるようにも見えるが、重力の問題で肺内水分を描出しただけのようだ。血液検査で白血球6400・CRP1.2と、COVID-19 として悪化しるようでもなく、細菌感染を併発したようでもない。

 COVID-19では中等症までは細菌感染併発に対する抗菌薬は不要とされている(岡秀昭先生)。しかし知的障害者で嚥下の問題もあり、抗菌薬を入れて経過をみることにした。

 ステロイド使用をどうするかと思った。糖尿病で当院消化器科の外来に通院していた。DPP4阻害薬とSGLT2阻害薬の合剤で、HbA1cは6.5%だった。

 入院後も38℃台の発熱が続き、3日目の水曜日にデキサメサゾン4mg/日を点滴静注した(6mgではなく、ちょっと腰が引けた量になった)。

 木曜日に呼吸器外来に来てもらってる先生に相談した。大学病院の感染症内科に所属していて、COVID-19 を多数診療している先生だ。

 肺炎ではなく、COVID-19のウイルス消失後も、感染による全身の炎症が遷延しているのでしょう、といわれた。患者さんは小柄なので(40kg弱)、デキサメサゾンは4mg/日でもいいでしょうという。

 COVID-19 で定番のデキサメサゾン6mg/日10日間ではなく、4mg/日を5日間・2mg/日を5日間の10日間使用で行きましょう、ということになった。血糖が上昇するので、インスリン併用で対応する。

 デキサメサゾンを2日間入れた金曜日には、微熱から平熱程度になった。入院後食事摂取が進まなかったが、やっと食べられるようになった。

 

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肺癌脳転移・けいれん

2022年06月24日 | Weblog

 木曜日の午後に、けいれん発作の76歳男性が救急搬入された。6月初めに肺癌の緩和ケアで地域の基幹病院呼吸器内科から紹介されていた。

 

 5月中旬に市内の内科医院で行った胸部X線に右肺腫瘍が描出された。基幹病院に紹介されたが、肺癌自体の進展もあるが、肝転移を認めた。

 全身状態から治療は困難と判断されて、緩和ケアの方針となった。といっても癌性で困っているわけではない。処方は鎮咳薬・去痰薬・便秘薬のみだった。

 6月7日に当院内科外来を受診した。CTで肝臓全体に転移があり、健側の左肺にも転移があった。できるだけ自宅で過ごしたいという希望で、2週間おきに外来で診ていくことになった。

 

 搬入時に発熱を認めた。左上下肢が確かにけいれんしていたが、会話は可能だった。悪寒・戦慄かとも思ったが、片側だけなのでやはりけいれんらしい。

 短時間でけいれんが治まり、採血・点滴をしているとまた生じて、短時間で治まった。肺癌脳転移が疑われた。基幹病院で行った画像に頭部CT・MRIはなかった。

 当院を受診した時に頭部CTを撮影すればよかったが、神経症状はなかった。すぐに頭部CTを行うと、右大脳(頭頂葉)に転移巣と周囲の脳浮腫を認めたが。肺癌脳転移による焦点発作だった。

 救急室に戻るとまた左半身のけいれんが始まった(意識はあり、会話はできる)。二次性全般化する可能性がある。ジアゼパム5mg注を、高齢なので2.5mgだけ注入すると、けいれんは治まった。閉眼してしまい、何度か呼びかけると開眼した。ジアゼパム追加はやめた。

 ジアゼパムの効果はすぐに切れるので、イーケプラ500mgを点滴静注した。さらに500mgを追加するつもりだったが、けいれんは起きなかった。イーケプラ500mgを1日2回点滴静注して、けいれん時に追加することにした。それでも治まらなければ、ミダゾラムを使用する。

 紹介されて外来を受診した時よりさらに衰弱している。家族にはいったん入院すると、退院はできなくなると説明した。もともとできるだけ自宅で過ごして、自宅でみれなくなったら入院の方針だったので、予定通りではある。

 

 その日はてんかんの講演会があったので、帰りに会場のホテルの向かった。地域の基幹病院には、脳外科と脳神経内科にてんかん専門医がいらして、そのおふたりが講演した。対面での講演会出席は久しぶりだった。

 

 

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濃厚接触者の発熱

2022年06月23日 | Weblog

 昨日、感染管理ナースから連絡がきた。COVID-19のクラスターが発生している施設(知的障害者施設)に入所している75歳男性のことだった。

 施設入所者50名のうち、感染していないのは3名だけで、この患者さんはそのうちの一人だった。(感染者は職員を含めて50名以上)

 尿閉で尿カテーテルが留置されている。前夜から高熱があり、一度嘔吐した時に黒色の胃液が出た。ふだん診ている内科医院を受診していた。

 コロナの抗原定性検査は陰性で、内科医院から地域の基幹病院に紹介された。コロナの検査は陰性だったが、濃厚接触者になる。尿路感染症に対する抗菌薬(レボフロキサシン)とPPI(ランソプラゾール)が5日分処方されて、帰された。

 

 内科医院では、さらに午後から当院に紹介してきた。病院管理者をされている先生が診て、尿路感染症として入院の手配をしようとした。

 すると、一般病棟では入院はちょっとということで、地域包括ケア病棟に入院依頼がいった。そこの看護師長さんは、病棟として損なことでも引き受けれくれる方だった。

 しかし濃厚接触者で大丈夫でしょうか、と感染管理ナースに相談したのだった。抗原定性だけだったので、院内でできる迅速PCR検査を追加することにした(保健所のPCR検査より感度は落ちる)。

 結果は陰性だった。患者さんを診ると、困った様子はなかった。その日は嘔吐していない。水分もとれる。

 COVID-19に罹患していなければ、濃厚接触者でも感染病棟には入れられない(陰圧の部署の個室管理でも、感染していない患者を感染病棟に一緒にしたと非難される)。一般病棟で注意して診ればいいだけだが、可能ならば外来で治療したい。

 患者さん本人も入院はしたくない様子で、付いてきた職員もぜひ入院ということでもなかった。外来でというと、帰れるよ、よかったね~と言っていた。同じ施設からCOVID-19に罹患した入所者が先々週から数人入院しているが、病院の環境に慣れないで不穏になったりしている。

 その日は外来治療として、翌日の病状を診て決めることにした。処方された薬は1日分内服していたが、外来でセフトリアキソン1gの点滴静注と500mlの点滴をした。

 今朝施設から連絡がきて、解熱して食事もとれるという話だった。そのまま基幹病院の処方を継続してもらって、5日分では足りないので、週明けに追加処方を取りに来てもらうことにした。

 

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セフトリアキソンで解熱

2022年06月22日 | Weblog

 火曜日に、内科医院から尿路感染症疑いの85歳女性が紹介されてきた。急性腎盂腎炎としても、発熱外来扱いになる。家族といっしょに乗ってきた車まで行って、新型コロナの抗原定性検査を提出した。

 コロナ陰性を確認して、内科新患担当の内科の若い先生に回した。入院は3名のみ診ているので、担当患者さんを増やしてもらうことにした。

 

 午後になって確認すると、内科で入院になっていた。血液検査は白血球10600・CRP11.8と炎症反応が上昇していた。肺炎像はなかった。

 尿検査では沈査で赤血球>100/HPF・白血球1-4/HPF・細菌(+)と、想定した結果ではなかった。内科の若い先生は、尿路感染症の所見として合わないとしていた。

 尿路感染症として、尿培養(導尿)と血液培養2セットが提出された。肉眼的血尿があるので、尿路系悪性腫瘍疑いで翌日に腹部造影CTが予定された(入院時は単純CTのみで、腎嚢胞以外有意な異常はない)。

 さらに発熱、尿潜血・尿蛋白陽性と炎症反応上昇を来す疾患として、顕微鏡的多発血管炎などの発症を疑って、ANCAも提出していた。対応としては完璧だった。

 入院後、セフトリアキソンで治療を開始して、あっさり解熱軽快していた。結果的には、単に尿路感染症(急性腎盂腎炎)ということになるのかもしれない。

 

 市内の知的障害者施設でCOVID-19のクラスターが発生して、保健所依頼のPCR検査を毎日多数行っている。その施設だけで、50名以上になるそうだ。(罹患していない入所者が3名のみ)

 職員が罹患して休んでいるために、他の施設から職員が応援に入っている(さまざまな施設を複数運営している)。すると、応援に来た職員の本来の施設にも広がってしまい、複数の施設で感染者が出るようになった。

 感染者全員は入院させられないので、保健所の指導を受けて、無症状や軽症者は施設内でみているそうだ。また罹患した障害者を診る施設が遠方になるがあるそうで、そこに入所する前の外来アセスメント(胸部CTと血液検査)を依頼されている。

 

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膵癌だった

2022年06月21日 | Weblog

 月曜日の午後に85歳女性が救急搬入された。一人暮らしの方で、ケアマネージャーがいっしょについて来ていた。

 数日前から飲食ができなくなったという。ケアマネージャーの話では、家にエアコンはなく、室内の気温がかなり上昇して「むあ~っと」していたという。

 大学病院からバイトで来ている総合診療医が対応して、血液・尿検査と胸部X線を行っていた。腎前性と思われる腎機能障害があり、尿は混濁して炎症反応が上昇していた。

 入院治療依頼の連絡が来たが、「熱中症・脱水症で、尿路感染症もあります」ということだった。今どきの、ありがちな病像と思って救急室に行った。

 末梢静脈が虚脱の問題もあるが、もともと見えにくい方だった。尿培養と血液培養2セットを提出したが、血液培養は動脈血でだすしかなかった。

 尿路系の異常(腫瘍・結石の有無、尿路系拡張の有無)を見るためもあり、胸腹部CTを追加した。すると、膵尾部にかなりの腫瘍が描出された。膵癌だった。あとで追加した腫瘍マーカーはCEAは7.3で微増だが、CA19-9が>12000と希釈しても測定困難なくらいに著増していた。

 胃体上部にも腫瘤に見えるところがある。胃癌もあるのかもしれない。腹水はなく、単純CTなので確定はできないが、明らかな肝転移はなかった。

 とりあえずは、点滴と抗菌薬投与で経過をみるが、食事摂取できるかどうかわからない。このまま最期まで入院になってしまう可能性もあった。

 独身の方で、来てくれる身寄りは甥だけだった。その甥に病状を説明したが、自分のこれまでの病気や、現在かかりつけの病院を頻回に受診していることを熱心に話していた。患者さんに関しては、病院にお任せするのでよろしく、ということだった。

 

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