4月8日に記載した65歳女性のその後。両肩・両上腕・両大腿部痛と炎症反応上昇があり、リウマチ性多発筋痛症(PMR)として入院した。
両側の下腿痛もあるのが合わないなあ、とは思っていた。プレドニン15mg/日で治療を開始して、症状は軽減して、炎症反応も入院時よりは軽快していた。しかし1週間治療しても、症状・検査所見ともに反応が悪かった。
その後、顎跛行様の症状もあったことがわかって、巨細胞性動脈炎の疑いが出てきた。ただし頭痛はなく側頭動脈にまったく所見がない。プレドニン増量も考えたが、これは診断自体が間違っていると思われた。
感染症や腫瘍らしくはないので、リウマチ膠原病の範疇になる。外来でリウマチ膠原病が疑われた時に時々(数年に1回くらい)紹介させてもらっている、リウマチ膠原病外来のある総合病院の先生に電話で連絡して、転院させてもらうことにした。
どうなったかと思っていたが、返事が来ていた。それによると、血管炎症候群を疑って検査したところ、MPO-ANCA(P-ANCA)が強陽性でANCA関連血管炎と診断したそうだ。ということは顕微鏡的多発血管炎(MPA)だった。
しびれ(多発性単神経炎)・腎障害・皮膚症状(紫斑)もなく、まったく考えていなかった。紹介してよかった。
(4月8日の記載)
内科科外来(再来)を診ていると、市内のクリニックの先生(医師会長)から電話がきた。1か月前から発熱(微熱)が続く65歳女性を紹介したいという。貧血が進んでいるというのが気になった。
1時間ほどで来院して、患者さんは普通に診察室に入ってきた。発熱以外に症状のない不明熱だと診断が難しいと思ったが、そうではなかった。1か月前にかぜ症状(微熱+上気道症状)があり、その後から両下肢痛が出現した。両肩と両上腕も痛くなった。発熱は、平熱が35℃台だそうで、36.8~37.5℃の微熱だった。2~3日で症状が完成しているようだ。
蹲踞した姿勢からの立ち上がりがひどく、あまりやりたくない様子だったが、両手を持ってやってもらった。たしかにひどそうだ。両肩・両上腕・両大腿の把握痛があった。両下腿も痛いと言っていたが、把握痛ははっきりしない。頭痛はないといい、側頭動脈を触診しても異常はなかった。
これはリウマチ性多発筋痛症のようだ。検査では白血球数12700・CRP14.1・血沈(ぴったり)100mm/時と炎症反応が上昇していた。CKは正常域というより低下していた。血小板数60万で、Hb8.8g/dl・血清鉄低下(6)・血清フェリチン増加(323)と炎症を反映している。
夫と建築店(家の内装業)を営んでいて、重いものを運んでいたが、つらくてできなくなったという。外来治療でもいいが、安静の保てる入院治療を希望された。
想定外だったのは、HbA1c6.9%と軽度の糖尿病があったことだった。家族歴がないそうで、追加で検査した腫瘍マーカーは正常域でCTでも膵腫瘍はなかった。抗CCP抗体・抗核抗体の外注検査を提出して、血液培養2セットと心エコーを鑑別のために行った。
炎症が強い方と判断して、プレドニン15mg/日で治療を開始した。糖尿病薬はDPP4阻害薬を開始して、あとは血糖測定を行って追加することにした(けっこうなステロイド糖尿病が加わるはず)。