なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

AML

2017年09月30日 | Weblog

 金曜の夕方に地域の基幹病院から電話が来た。血液内科外来に来ている大学病院の先生だった。急性骨髄性白血病の88歳女性を紹介したいという話だった。

 白血病自体の治療適応はなく、貧血に対して外来で輸血を行ったが、今後の治療を当院に依頼したいという。予後1か月と、家族にも話はしているそうだ。当院で引き受けることにして、週明けの外来予約にしていた。

 今日家族から連絡が来て、39℃の発熱があって入院させてほしいという。何でも施設に入所しているが、もともと当地で独り暮らしをしていて、息子夫婦(ひとり息子)は遠方に住んでいる。

 来院して電子カルテを開くと、7月にうっ血性心不全で救急搬入された時に診た患者さんだった。心房細動などの不整脈はなく、明らかな弁膜症はない。心電図では胸部誘導でpoor r progressionがあり陳旧性心筋梗塞の可能性があるが、既往歴はなく確定はできなかった。

 半分ダメもとで基幹病院の循環器科に連絡すると、引き受けてくれた。その後いただいた返事によれば、ハンプ・ドパミンなどを使用して心不全は軽快したそうだ(低心拍出性心不全とのみ記載されていた)。それきりこの患者さんのことは忘れていた。

 循環器科の外来受診時に末梢血に異常があり(白血球数6万で芽球が80%)、血液内科外来に回されていた。骨髄検査はしていないようだが、急性骨髄性白血病と診断された。

 患者さんは案外元気にお話できたが、検査結果はDIC相当で重症だった。家族の希望もあるが、もう入院しかない病状。右肺炎を認めて、チエナムで治療を開始した。急変時はDNRの方針にした。

 心不全で搬入された時の血液検査を確認すると、白血球数3100・Hb10.3g/dl・血小板数12.9万で、白血球分画に異常はなかった。今らか思えは、汎血球減少が始まっていたことになる。

 

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嘔気で搬入

2017年09月29日 | Weblog

 71歳女性が嘔気で救急搬入された。救急隊の搬入依頼は「徐脈です」だった。徐脈といっても40台/分の洞性徐脈だった。血圧は正常で発熱もない。昨夜から嘔気が続いているが嘔吐はしていない。腹部違和感と軟便があった。診察では腹部は平坦・軟で圧痛ははっきりしない。当院は初診なので、資料はなかった。

 高血圧症・脂質異常症でクリニックに通院していて、甲状腺機能低下症で大学病院にも通院している。糖尿病はなかった。何度訊いても胸痛はない。通院している病院・医院で心電図はずっととっていないという。

 症状は腹部症状だが、徐脈のこともあり心疾患も疑った。心電図はⅠ・aVL・V5-6でST低下があった。ⅢのQRSが脚ブロック様の形態でST上昇様にも見える変化がある。迅速のトロポニンTは陰性で、心筋酵素は正常域だった。白血球数は9000と上昇しているが、CRPは陰性。 

 幻覚妄想で徘徊して警察に保護された認知症の高齢女性が午前中に受診していた。一人暮らしで親族が精神科病院を受診させようとしたが、内科で身体的に異常がないか診てもらって紹介状を持ってくるよういわれたそうだ。検査結果は問題がなく、診療情報提供書を記載していた。その他にも、地域の基幹病院からの紹介を2件受けたりしているうちに2時間が過ぎた(老衰の高齢者と治療適応のない高齢白血病)。

 救急室の戻って心電図を再検すると、V4-6のST低下が最初の心電図よりも目立った。T波の陰転化も伴っている。さらに30分して再検すると、ⅢでのST上昇様の所見が正常化していた。胸部誘導の変化は継続していた。

 腹部症状で受診する下壁心筋梗塞は徐脈になるが、この患者さんはそうなのか。糖尿病(この患者さんはない)の高齢女性は胸痛のない心筋梗塞をきたす。ACSかどうかわからないが、心臓血管センターのある病院に救急搬送した。夫には、「心臓は異常がないと言われるかもしれないが。異常ないと言われれば安心だから」などと、くどい言い訳のような説明をした。

 

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薬剤熱?

2017年09月28日 | Weblog

 65歳男性が日曜日に肺炎で入院していた。こともと肺気腫があり、呼吸器科外来(大学病院からの応援医師担当)に通院しているが、喫煙は続けていた。昨年肺炎で入院していて、喀痰培養からインフルエンザ桿菌が検出されていた。セフトリアキソンで軽快退院していた。

 受診2日前の金曜日から高熱があり、土曜日にも受診しているが、胸部単純X線で明らかな浸潤影はなかった(ように見えた)。再受診した時は日直医師が胸部CTも撮影して左上葉の浸潤影を認めた。今回はどうしても喀痰が出なかったので、起炎菌はわからない。尿中肺炎球菌抗原は陰性(肺炎球菌ワクチンは受けていなかった)。

 入院してまたセフトリアキソンで治療を開始した。入院後1日目2日目は解熱してたが、3日目からまた発熱が出現した。セフトリアキソンは1日2回に分けて投与していたが、昨日の朝までで中止して経過をみた。朝は解熱していた。血液検査は入院時の検査結果と比較して悪化はしていない。軽度の肝機能障害と好酸球増加があり、皮疹はないが、セフトリアキソンの副作用が疑われた。

 抗菌薬を何に変更するかと思ったが、結核の経過ではないと思われたので、レボフロキサシン点滴静注にした。抗菌薬は何を選ぶのが正解だったのだろうか。それにしても最初から吸入させるなどして、もっと喀痰培養にこだわるべきだった。

 「魁!!診断塾」医学書院を読んでいる。複数の先生方による対話形式で楽しく読めるが、とても診断できそうもない症例(一生会わなさそうな症例?)が続く。

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成人スチル病疑い~その後

2017年09月27日 | Weblog

 強皮症・ANCA陽性の72歳女性は、成人スチル病(仮診断)としてプレドニンで経過をみていた。プレドニン50mg/日にしてから、すぐに解熱して炎症反応も改善してきていた。今日(投与3週間弱)の検査では、炎症反応は陰性化した。

 何しろ臨床診断であり、ステロイドの治療なので大抵のリウマチ膠原病には効いてしまう(たぶんリンパ腫でも一時的には効く)。途中の検査で軽度上昇だった血清フェリチン値がちょっと上昇して、また下がるという経過だったのは合わない気がする。尿所見・腎機能はほぼ正常域なので、ANCA関連血管炎とは言い難いようだ。

 もともとの軽度糖尿病はステロイドで血糖が上昇した。DPP4阻害薬に超速効型インスリン3回毎食直前を追加して、まあまあの血糖になった。

 ここからはプレドニンを5mgずつ漸減して経過をみることになる。8月からの入院で、薬剤抵抗性の頻脈性心房細動で、心臓血管センターのある病院に2回行ったこともあり、入院生活がいやになったようだ。退院したくて、インスリン自己注射と血糖自己測定を一生懸命覚えていた。外来でみるステロイド量ではないが、外来治療に移行するしかないようだ。一人暮らしではあるが、検査技師の姪ごさんが頻繁にきてくれるので、その点は安心だ。

             

  昨日、他の町の救急隊から、15歳女性高校生がわけのわからないことを話している、という救急搬入依頼が来た。精神医療センターに連絡したところ、発熱(38℃台)があることから、精神科の問題ではないと言われたという。

 昨日までは異常なかったので、急性の発症だった。脳炎髄膜炎疑いだが、脳炎・脳症だろうか。地域の基幹病院にはまだ連絡していないということだった。当院のひとり神経内科では対応が難しいので、基幹病院の神経内科(専門医4名)に連絡するよう伝えた。その後は連絡が来なかったので受けてもらえたようだ。これは何だったのだろうか。まず受けて診察しろよ、ということだが、実力がないので無理はしないことにする。

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急性薬物中毒

2017年09月26日 | Weblog

 日曜日の朝に意識障害で救急搬入された80歳女性は、前夜に睡眠薬を大量に内服していた。日直の先生が外来で点滴を開始していて、連絡が来て診に行ったときには、呼びかけると開眼するくらいにはなっていた。入院で点滴を継続することにした。

 翌朝には開眼していて会話もできたが、嘔気があり、食事はとれなかった。翌々日の今日になって食事をとれるようになった。血液検査ではほとんど異常がなかった。

 この方は6月にも睡眠薬の大量服用で救急搬入されていた。自分に処方されたハルシオン30錠と夫がもらっているレンドルミン10錠を飲んだ。点滴だけで経過をみて、幸い問題なく回復した。その前に整形外科に入院した時も、電気コードで首を絞めようとする行為があり、早期退院になった既往がある(単に帰しただけだった)。

 精神科病院に連絡して、4日目に転院した。その後はそちらの病院にうつ病で通院している。抗うつ薬・安定薬・睡眠薬が処方されていた。睡眠薬は内科クリニックの時と同じハルシオン(のジェネリック)だった。4日前に受診して30日分の処方が出ていたので、26錠を内服していたことになる。ずっと夫が薬の管理をしていたが、自分で管理すると言われて、つい渡してしまい、また今回の大量服薬になった。

 今日夫と相談したが、今後は自分がきっちり管理するので、当院から自宅退院にしてほしいと言われた(また精神科病院の転院させてもらうことを考えていたが)。精神科病院に報告書を提出して、明後日退院の予定とした。

 確か前回の入院について、保険会社から問い合わせが来ていた。病名は急性薬物中毒として記載したが、何故そうなったのかというものだった。自殺企図だと保険が下りないということなのだろうか。

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扁桃周囲膿瘍

2017年09月25日 | Weblog

 昨日の救急外来に77歳女性が前日からの高熱と咽頭痛・嚥下痛で受診した。日直の先生(大学病院からの応援医師)が診て、肺炎・胸膜炎と判断していたらしい。過去に結核性胸膜炎の既往があり、陳旧性の陰影があった。

 入院依頼の連絡があり、院内で待機していたので、外来に診に行った。白血球数16500、CRP25.8と上昇していた。肺は陳旧性の変化と思われたので、むしろ尿路感染症(腎盂腎炎)かと思った。

 ベットサイドに行くと、施設職員が付いていて、もともと精神遅滞がある方だった。それでも普通に問診がとれて、症状は「喉が痛い」だった。唾液が口腔内にたまっていて、飲み込むと痛いという。口を開けてもらうと、うまく見えないが右の扁桃が腫れているようだ。右前頸部にも圧痛がある。

 いわゆるkiller sore throatが疑われた。朝も流動食を少しだけ食べていて、水分も痛みはあるが飲めたという。今々窒息するほどではないようだ。胸部CTが施行されていて、その一番上の画像に扁桃が腫大しているところが少し写っていた。

 念のため座位で頸部X線を見て、喉頭蓋炎はなかった。顔面~頸部CTを撮影すると、右の扁桃が腫脹していた。咽頭後壁にも及んでいるかもしれない。これは耳鼻咽喉科救急。

 日曜日の夜間だと、診てくれるのは大学病院しかない。大学病院に連絡して、耳鼻咽喉科の先生の繋いでもらった。幸いに受けてもらうことができて、救急搬送になった。患者さんに病状と大学病院に向かう旨を説明すると、「お世話なります。ありがとう。」と言われた(もごもごしていたが)。

 とにかく搬送を急いだので、単純CTだけにして、腫脹していることだけ確認した。頭頸部の画像は十分読影できないので、今日放射線科の先生に画像を診てもらいに行った(読影依頼にしてないかった)。すると、すでに大学病院耳鼻咽喉科の先生から、地域医療連携室を通じて連絡が来て、当院放射線科に画像読影の依頼が来ていたそうだ。画像はCTに入れて紹介状をいっしょに送っていたが、大学病院の放射線科で診てもらえないのだろうか。

 すみませんが、造影CTで精査をお願いします。

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肝膿瘍

2017年09月24日 | Weblog

 火曜日に87歳男性が熱源検索で内科クリニックから紹介されて、内科の若い先生が外来で担当した。紹介状には肝臓内に嚢胞様の構造があると記載があった。

 当院の検査技師さんの腹部エコーは上手だが、エコー上は嚢胞様の構造としか言えないものだった。腹部造影CTが行われて、肝膿瘍だった。胆嚢は正常に見える。アメーバということはないので、化膿性肝膿瘍なのだろう。CA19-9が570と上昇しているのは、胆汁うっ滞を反映しているのか、胆道系の癌があるのか。

 外科で入院になって、経皮ドレナージが行われた。抗菌薬投与で解熱はしている。胆汁細胞診で癌が出るだろうか。

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充填物

2017年09月23日 | Weblog

 木曜日の早朝に37歳女性が左側腹部痛で救急外来を受診した。当直医はベテランの外科医だった。腹部CTで左尿管結石があり、診断は確定した。ボルタレン座薬を使用して、経過をみるため入院になった。泌尿器科(非常勤)にコンサルトの方針になっている。

 胸腹部で撮影していたので、乳房にあるものが写っていた。最初あれっと思ったが、いわゆる豊胸術なのだった。放射線科の読影はどうなるのだろうと思ったが、「両側乳房に被包化された充填物を認める」、ときわめて客観的なレポートがされていた。こんな風に写るんだ、というだけの話。

 病院総合診療学会と思っていたが、病院総合診療医学会だった。この学会はプライマリケア連合学会ができる時に、参加をよしとしない病院総合診療医が別の学会をつくったという経緯らしい。当方も家庭医療や訪問診療にはさほど関心がなく、診断学の学会と認識して参加している。臨床診断学会の方がわかりやすい?。この学会名の検索でひっかかったらしく、ふだんより少しアクセスが増えていた。

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頸椎偽痛風Crowned dens syndrome

2017年09月22日 | Weblog

 86歳男性が昨日発熱で内科新患を受診していた(担当は大学病院からの応援医師)。高熱と悪寒があったが、その他には症状がなかった(と記載していた)。血液検査で白血球増加とCRP軽度上昇があったが、胸部X線で明らかな肺炎像はなく、尿検査も正常だった。感染巣不明として、クラビット500mg内服が処方された。

 夜になって悪寒戦慄?で救急要請したそうだ。当直医は整形外科の若い先生だった。胸腹部CTが追加されたが、やはり感染巣不明ということで、電話連絡が来た。昼にクラビットを内服していた。バイタルは発熱以外は問題ないので、点滴だけて経過をみて、翌朝に血液培養を提出することにした。

 今日ベットサイドに行って診察した。症状としては後頸部痛があった。痛みで可動域制限がある。意識は清明で、項部硬直ではあるが、髄膜炎ではなく、筋骨格系の症状と判断される。それにしても悪寒戦慄らしいので、予定通り血液培養2セットを提出した。

 その後頸部CTを行った。軸椎の歯突起周囲に石灰化があり、頚椎偽痛風のようだ。頸部痛はいつからと訊くと、ずっと前から?と言う。最近ではと訊いてもずっと前からと言う。手関節や膝関節には所見がなかった。

 6年前に禁煙していたが、それまで20本/日喫煙してた。胸部CTでLAAが軽度にあり、肺気腫ではある。ふだんから咳・痰は少しあるそうだが、ここ数日は増えていない。肺炎の浸潤影もないが、気道感染が契機になった可能性も否定できないので、週明けまではNSAID(セレコックス)に抗菌薬(セフトリアキソン)を併用して経過をみることにした。

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糖尿病の講演会~糖尿病医になった訳

2017年09月21日 | Weblog

 火曜日は市医師会規模の糖尿病の講演会があり、座長を頼まれた。市内に糖尿病専門医jはいないが、それぞれの病院・クリニックで糖尿病の診療をしているので割と参加者は多い。

 講師は大学病院の若い助教の先生だった。講演前に控え室でちょっとお話した。経歴を見ると、初期研修後に救急医療の後期研修医をされて、その後に糖尿病代謝科に入局されていた。救急をされていたんですね、と訊くと転身した経緯を話してくれた。

 救急医療の上司は1型糖尿病でCSIIで治療を受けていたが、周囲では糖尿病であることは知らなかったそうだ。その先生が道路上で低血糖になって意識消失して、車に轢かれて亡くなってしまった。よほど強い印象だったのだろう、その後糖尿病を専門にすることにしたのだった。

 研究テーマをお聞きすると、1型糖尿病と若年2型糖尿病の臨床と遺伝子を研究しているという。若年2型糖尿病とは、35歳未満の非肥満者の糖尿病だそうだ。若い助教や講師クラスの先生だと基礎的な自分の研究テーマを話されることが多いが、糖尿病全般にわたる分かりやすい講演だった。

 糖尿病で透析導入になるのは年間15000人で、足切断になるのは年間3000人。1型糖尿病を対象にしたDCCTで、血糖コントロール9.1%vs7.0%では、7.0%の方が細小血管障害を予防できる。糖尿病学会の目標は7%未満だが、達成しているのは半分くらい。EDIC studyで、1年で治療強化した群と2~3年で治療強化した群を比較しているが、早期から積極的な治療をした方が合併症が少ない。

 IGT(耐糖能障害)のうち、空腹時血糖が高いだけでは死亡率は増えないが、食後高血糖は死亡リスクが高い。脳卒中や心筋梗塞をきたした患者さんの中で、糖尿病は25%で、IGT(食後高血糖)は35~40%。つまり糖尿病よりもIGT(食後高血糖)の方が、大血管障害(脳梗塞・脳出血・心筋梗塞・狭心症)は多い。(治療目標には、空腹時血糖130mg/dl未満。食後血糖180mg/dl未満と小さく記載してある)

 ACCORD・ADVANCE・VADT試験では、治療強化群で2倍近く重症低血糖が増えて、心筋梗塞・脳梗塞が増えている。J-EDITでは、高齢2型糖尿病では低血糖を起こさばい中くらいの血糖コントロールを推奨している。高齢者のガイドラインではHbA1cの下限値が記載してある。

 つまり治療目標は、「慢性高血糖・食後高血糖を予防」して、「重症低血糖を避ける」ことにある。

 脂肪1Kgを燃焼するにはマイナス7200Kcal必要で、これはフルマラソン3回分にあたる。運動で痩せるのは大変ということ。また1日ご飯一口増やすと20Kcal×30日で1か月600Kcalになり(1年で7200Kcal)、1年で1Kg ・10年で10Kg体重が増える計算になる。運動療法は、急性運動効果として筋収縮によってグルコース取り込みは1日続き、慢性運動効果としてミトコンドリアは増加して筋線維の遅筋化が起こり、骨格筋のインスリン感受性が増加する。糖尿病患者では筋肉の糖取り込みが低下している。意図しない身体活動によるエネルギー消費率があり、やせている人は肥満の人より立って動いていて352±65Kcal/日よけいに消費している。立ってテレビを見るだけでも効果があるそうだ。

 食事療法は、一般的なカロリー制限の話をされた。講演後に糖質制限のことを訊いたら、それもありで山田悟先生の緩やかな糖質制限くらいがいいのではという。効果は人によるとも言われた。江部先生のスーパー糖質制限はと訊くと、あれはやり過ぎではというが、江部先生とは親しくさせてもらっているとも言われた(?)。

 治療は、インスリン抵抗性に効く薬(インスリンを分泌させない)、インスリン分泌不全に効く薬(インスリンを分泌させる)にわけて考える。インスリンを分泌させるのは、SU薬・グリニド・DPP4阻害薬。SU薬は12~24時間作用して、低血糖が非常に多い。高齢者には避ける。グリニドは3~5時間作用して低血糖は少ない。DPP4阻害薬は血糖依存性にインスリン分泌を促進する。GLP-1は2~5分でDPP4に分解されるがそれを阻害する。GLP-1受容体作動薬はインクレチン類似物質でDPP4で分解されない。

 ビグアナイドは肝の糖新生を抑制する。グリセオール・アミノ酸・乳酸からのブドウ糖産生のうち、乳酸からの産生を阻害するので乳酸アシドーシスが起こりやすい。ADA/EASDでは、禁忌がない限りメトホルミンを第1選択にしている。ピオグリタゾンは筋での糖利用を亢進する。巨大脂肪細胞を細かく分解する(肥満の元を造るかも)。効く人にはHbA1c1.5~2%下げる。水分貯留の副作用がある。SGLT2阻害薬は1日200~400Kcal排出する。高齢者では使い難い。

 質問として、第1第2選択はメトホルミンよDPP4阻害薬だが、第3選択は何がいいかと訊いた。メトホルミンとDPP4阻害薬は同率1位で、第3は私見ですがとことわって、αGIかSGLT2阻害薬でしょうという。DPP4阻害薬をGLP-1受容体作動薬に変更するか、インスリンの追加もある。DPP4阻害薬(主催メーカーで販売)と、αGIとグリニドの合剤を使うと合剤2種類で治療できるとも言われたが、毎食前は内服がめんどうだ。

 講演後の懇親会ではなく、軽食を出しながらの講演会なので、1時間ちょっとで終了した。座長料3万円。

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