なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

ゾニサミドは「元気が出ない」

2020年07月31日 | Weblog

 3週間前に、内科新患を診ていた先生(大学病院からバイト)から尿路感染症の88歳女性の入院治療を依頼された。

 ふだんは神経内科外来にパーキンソン病で通院していた。処方はネオドパストン配合錠L300㎎分3、ゾニサミド100㎎分1。6月の神経内科外来では、家族に食欲不振が続くと言われて、頭部CT・胸腹部CTが行われていた。特に有意な所見はなかった。

 内科受診の主訴も食欲不振・体動困難だった。3か月前から食事摂取量が低下して、1か月前からは室内をつたい歩きしていたのが、動けなくなったというものだった。期間も症状も、尿路感染症も含めて感染症のものではない。

 白血球11000・CRP9.2と炎症反応の上昇を認めるが、尿検査所見で白血球20-29/HPFだったが、細菌(-)で尿路感染症とは言い難い。胸部X線・CTで明らかな肺炎像はなかったので、尿路感染症としたのだろう。尿培養・血液培養2セットを提出してくれていた。

 左膝関節の手術を受けた既往があり、そこは特に問題がない。右膝関節にやや熱感があるように思えるが、関節炎とするほどではなかった。

 

 年齢的に誤嚥性肺炎になってもおかしくない。気道感染疑いとして、セフトリアキソンで治療を開始して経過をみることにした。入院後、37℃台の発熱がだらだら続いて、炎症反応はほぼ横ばいだった。

 尿培養、血液培養2セットは陰性だった。セフトリアキソンは1週間で中止した。手術していない右膝関節の熱感が入院時よりも少し目立つようにも思えたが、腫脹はなかった。左膝関節のX線は変形性の所見が目立って何とも言えない。

 いつものNSAIDs(セレコックス)内服を開始すると、解熱して炎症反応も軽快した。関節炎でいいのだろうか。発熱・炎症反応上昇はいったん解決(ただしさらに経過を診る必要あり)とした。

 

 問題は食欲不振だった。嚥下の問題かと思って、ST(聴覚言語療法士)さんに診てもらったが、嚥下には問題ありませんと言われた。確かに内服薬は問題なく飲めている。

 なんだか気分の問題のようだなあ、と病棟看護師さんと話していた。印象としてはうつ状態だ。末梢からの点滴(アミノ酸+ビタミン剤のパレプラス使用)を継続して、栄養剤(エンシュアリキッド)が飲めないか、などとやっていた。

 神経内科の処方を継続していたが、ゾニサミドが気になった。これはパーキンソン病の処方?、てんかんの処方?。

 ゾニサミドは抗てんかん薬としては商品名エクセグラン(ジェネリックあり)で、通常200㎎分2で使用する。パーキンソン病薬としてはレボドパ賦活剤(レボドパ作用を増強・延長)のトレリーフで、通常1日1回25㎎で使用する。

 この患者さんは、ネオドパストン300mg/日がずっと処方されていて、昨年9月にゾニサミド100㎎が追加処方されている。その時のカルテ記載は「右側の固縮・振戦が目立つ」とのみあった。処方にそれほどの根拠もないようだ(何となく処方?)。

 ゾニサミドの副作用は、無気力・自発性低下、精神活動緩慢化、抑うつ、食欲不振だった。簡単に言うと、「元気が出ない」(東北大学てんかん科・中里信和先生)。今の患者さんの状態そのものになる。ゾニサミドをやめてみると、食欲が出てきて、若干活気があるように見える。

ねころんで読めるてんかん診療: 発作ゼロ・副作用ゼロ・不安ゼロ!

 

 今日は新型コロナウイルス感染症(軽症)の2名が退院した。今のところ入院依頼は来ていないが、着々と患者数が増えていて、老人介護施設での発症もある。来週は入院依頼が来そうだ。

 

 

 

 

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わかりやすい尿管結石

2020年07月30日 | Weblog

 昨日の午前3時過ぎに76歳男性が左側腹部痛で救急外来を受診した。当直は外科医(大学病院からのバイト)だった。

 受診時は症状が軽減していた。腹部エコーで左水腎症を認めなかったが、症状からは尿管結石が疑われた。診療が始まってから外来を再受診するように指示して、ロキソプロフェンの内服薬を処方した。

 患者さんは糖尿病・高血圧症で通院していて、たまたまその日が予約日だった。診察前に予定されていた血液・尿検査が行われていて、普段は陰性の尿潜血が(2+)だった。HbA1は6.6%と血糖コントロールは良好だった。

 診察した時は左側腹部の違和感があり、左CVA叩打痛が軽度に陽性だった。これまで4回尿管結石になっていて、最後は10年くらい前だったという。

 腹部単純CTで確認すると、左尿管結石が描出された。内臓脂肪が多いので、単純CTでも読影が容易だが、冠状断で左腎臓からの尿管がきれいに映っていて、誰が見てもわかるように結石がある。尿管の拡張がなく、左水腎症も呈していないのが不思議だったが、結石が小さいので尿が流れているのだろうか。

 

 結石の大きさからは自然排石が期待されるので、疼痛時のジクロフェナク座薬を処方して経過をみることにした。

 中外医学社から尿管結石の本(訳本)が出ていたが、まだ購入していなかった。尿管結石は研修医の時から診ているが、ちゃんと調べたことはないのだった(専門の医学書もあまり見ないが)。

世界一やさしい!  尿路結石の本

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脳出血のMRI像

2020年07月29日 | Weblog

 月曜日の夕方にめまい・ふらつきの80歳女性がクリニックから紹介されてきた。救急当番は内科の若い先生だった。

 当院の神経内科にパーキンソン病・糖尿病・高血圧症で通院していた。その日は午前11時から友人たちとカラオケをしていたそうだ。12時ごろに歌おうとして起立したところ、ふらつきを感じた(歩行はできる)。その後午後3時までカラオケをしていたが、ふらつきが続いたので、友人といっしょにクリニックを受診した。

 脳梗塞疑いとして当院にそのまま救急搬送になった。意識は清明。ふだんから上肢の振戦はあるが、ふらつくことはなかったという。

 脳梗塞疑いとして頭部MRIを行うと、脳梗塞ではなく、脳出血(右被殻出血)だった。改めて頭部CTで確認すると、普通にだれが見てもわかる脳出血が描出された。

 

 午後5時に診療材料委員会をしている時に若い先生から連絡が来て、脳出血の患者さんをどこの病院に送りましょうかという。まず地域の基幹病院脳外科に連絡して、受け入れできなければ他の2病院に連絡するように伝えた。(診療材料委員会では院内にある個人防護具PPEの在庫をチェックしていた)

 救急室に行くと、診療情報提供書を書いていた。基幹病院で受け入れ可能という。若い先生はその日はそのまま当直だったので、ちょっとのんびりした雰囲気だった。先方は待っているので、急いで救急車を呼んで搬送してもらった。

 

 脳出血は頭部CTで診断がつくので、通常は頭部MRIまでは行わないで脳外科のある病院に搬送になる。今回はMRIから行ったので、超急性期脳出血のMRI像が描出された。

 左から、拡散強調画像で高信号FLAIR像で高信号T1強調画像で軽度低信号(水より少し高い)T2強調画像で中等度の高信号(水よりは低い)になる。(「ユキティの「なぜ?」からはじめる救急MRI」熊坂由紀子著 MEDICAL VIEWによる)

 頭部CTでわかりにくい微量~少量のくも膜下出血は頭部MRIのFLAIR画像で診る。脳出血でもFLAIR画像でみれば、わかりやすい。拡散強調だけだと脳梗塞と勘違いしてしまいかねない。

 後で頭痛があったか確認すると、頭重感程度だがふだんはない頭痛あったのだった。頭痛があれば脳梗塞ではなく、脳出血疑いになる。

 

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退院基準

2020年07月28日 | Weblog

 県内で新型コロナウイルス感染症患者が数名ずつ出ている。当院には今日も軽症の入院依頼があった。患者さんは35歳男性で、濃厚接触歴はなかった。(住所は当院の診療圏外)

 10日前に発熱・倦怠感があった。下痢もあって、近医で整腸剤を処方されていた。発症3日目には解熱して、倦怠感・下痢も治まった。ところが、5日目から嗅覚障害が出現した。子供のうんちの臭いがわからなかったという。

 受診したクリニックに電話で相談したところ、新型コロナウイルスのPCR検査をするよう保健所に依頼された。8日目にPCR検査が行われて、翌日陽性と判明した。

 発症10日目に当院に入院したことになる。一昨日には嗅覚障害も消失して、特に症状はなかった。病室で話を訊くと、小さいこどもがいるので早く退院したい、と言われた。そうはいっても、濃厚接触者として今日家族のPCR検査が行われている。その結果もみないと決められない。

 有症状者の退院基準は、「発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合、退院可能とする」になる。症状軽快というのは、「解熱剤を使用せずに解熱しており、呼吸器症状が改善傾向である場合をいう」なので、すでに症状軽快後72時間以上は経過している。(PCR検査をする場合は、「症状軽快後24時間経過した後、24時間以上間隔をあけ、2回のPCR検査で陰性を確認できれば、退院可能」になる)

 期間計算のイメージ図には、発症日から10日経過して、その後に症状が軽快した場合しか載っていない。10日経過する前に症状が軽快した場合はどうするのか。10日目で退院にしていいのだろうか。

 あまり早く帰しても問題になりそうなので、本日症状軽快として、3日後に退院にすることにした。本人もそれくらいならいいという。

 やりすぎかもしれないが、入院の場合は胸部CTと血液検査をすることにしている。なにしろ第1例目が、入院後すぐに酸素飽和度が低下して、そのまま大学病院に救急搬送・人工呼吸器管理になった。ちょうど発症から7日目の症例だった。(無事に退院された)

 今回は呼吸器症状は目立たないが、胸部CTでは胸膜下に淡い陰影がわずかにあるように見える。7日から10日目に重症化が始まるので、時期的に大丈夫だとは思う。血液検査は正常域だった(白血球数の正常下限は意味があるかもしれない)。

 

 当院は、このくらいの一定の日数が経過して退院するまで預かるという程度の入院が向いている。症状や酸素飽和度を確認するという病院機能は行うが、実質的にはホテル〇〇(病院名)?。

 軽症ばかりではなく、酸素吸入を要するような中等症まで対応することにはなっている。そうなると7日から10日目の重症化を見極めることになり、ひやひやしながら診ることになる。重症化した時は大学病院に搬送していいことになっているので、その点では安心しているが。

 

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今どきの心配

2020年07月27日 | Weblog

 4連休だったが、入院は少なかった。初日に当方が86歳男性の誤嚥性肺炎を入院させたが、2日目に1歳半の下痢の小児(その前から小児科外来で診ていた)、最終日の日曜日に下行結腸憩室炎の78歳女性が入院になっただけだった。

 よくこれだけの入院で済んだものと思う。これまでだと10名くらいの入院にはなっていた。コロナが怖くて他の病気にもなれない?。

 連休2日目に、救急隊から発熱・呼吸困難を呈する91歳男性の救急搬入依頼があった。2週間前から発熱・呼吸困難(まだ酸素飽和度は保っていたのだろう)があり、クリニックで往診していた。点滴もしていたようだ。(500mlの点滴ボトルに抗菌薬を混合して入れる先生だった)

 その日呼吸状態が悪化して救急要請となった。救急車内に搬入した段階で心肺停止となって、心肺蘇生をしながらの病院搬入だった。

 気管挿管・人工呼吸を行って、一時的に心拍再開もあったが、またすぐに脈拍触知不能となっていた。結局心肺蘇生が中止されて、死亡確認に至った。

 Autopsy imaging(AI)として頭部CT・胸腹部CTが施行された。頭部CTは特に異常なし。胸部CTで両側肺背側に胸水貯留と浸潤影(無気肺)を認めた。

 内科日直は消化器科医だったが、新型コロナウイルス感染症が心配になって、感染管理ナース(ICN、正確にはCNIC)にコロナウイルスのPCR検査をするべきかどうかと連絡が入った。(今日、そのICNから聞いた)

 ICNとしては、するかどうかは決められない。先生の判断で決めてくださいというしかなかった。PCR係の当方に連絡が来なかったところをみると、とりあえず誰かに訊いてみたかったということかもしれない。

 画像を確認したが、両側肺背側に誤嚥性肺炎を来して、2週間の経過でくすぶった感じで遷延して随伴胸水を伴ってきたものと見える。画像だけでは決められないが、通常の誤嚥性肺炎でいいかと思う。

 当地域では新型コロナウイルス感染症の発症がなく、超高齢者で自宅から出られない患者さんであり、状況的には考えにくい。

 コロナウイルス感染症だった場合は、救急室をいったん閉鎖して少なくとも2~3時間は開けっ放しにして風邪通しを行う。できる範囲で消毒作業になるが、どこまでやるべきか相当もめることになる。

 

 日曜日の日直は神経内科医だったので、腹痛の患者さんは外来看護師さんが気を利かして外科の日直医に回したのだろう(外科で診てもらってくれと言ったのかもしれないが)。下行結腸憩室の憩室に炎症像を認めて、外科の当番医が主治医で入院になっていた。

 

 

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後大脳動脈領域

2020年07月26日 | Weblog

 2週間前、内科の若い先生が当直だった時に、次の日の早朝に80歳男性がめまい・ふらつきで受診した。頭部MRIで右後大脳動脈領域に新規の脳梗塞巣を認めた。患者さんは半盲を意識していなかったようだ。(ちょうど出勤してきた神経内科医に引き継いて入院)

 2日前に畑仕事の後に、頭重感とめまいが発症した。糖尿病・高血圧症で通院しているクリニックを受診したところ、熱中症と言われて点滴を受けたそうだ。(点滴をしても症状は変わらなかった)

 翌日もふらついていて、嘔気・嘔吐もあった。2日後の早朝に受診した時は、ふらつくというが歩行はできた。意識は清明で麻痺はなかった。

 頭部MRIの所見は、脳血管支配の後大脳動脈領域にきれいに一致する分布をしている。この領域の脳梗塞はふだんあまり見ないので印象に残った。

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著明な胸水貯留

2020年07月25日 | Weblog

 水曜日の午後に、動けなくなったという訴えで80歳男性が救急搬入された。1か月前から食欲不振が続いていたそうだ。救急当番の外科医が対応して、まずCT検査が終わったところで相談された。

 経過は急性ではなく亜急性から慢性のようだ。発熱はなかった。CTで左胸腔内に胸水貯留があり、ほとんど胸腔内に充満していた。左肺は全体が無気肺となってつぶれている。肺内の病変は腫瘤も含めて判読できない(肺癌を示唆する腫瘤はないととるべきか)。

 血液検査の結果が出て、白血球4600・CRP3.6と炎症反応は軽度だった。通常の肺炎・胸膜炎や膿胸らしくない。経過からみて肺癌による癌性胸膜炎、あるいは結核性胸膜炎が疑われる。

 腫瘍マーカーも提出していて、CEAが3.5でCA19-9が1917と著明に増加していた。CTからは胆道系・膵・大腸に腫瘤(癌)は指摘できない。肺腺癌?。

 当院内科では手に余るので、地域の基幹病院呼吸器内科に救急搬送を依頼してくださいと伝えた。連休前でどうかと思ったが、受け入れてもらえて助かった。

 

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久しぶりにCOVID-19入院

2020年07月24日 | Weblog

 連休初日の昨日は、内科日直で病院に出ていた。受診数は少ないが、バラエティに富んだ受診だった。

 80歳男性。汎血球減少症でがんセンター血液内科に紹介したが、予定された骨髄検査を受けたくないといっていた。Hbが6g/dl弱となって輸血を予定したが、なだめすかして骨髄検査を受けてもらった後にしたため、連休中の輸血になってしまった。

 

 90歳男性。一昨日にお昼前後の3時間暑い中で屋外作業をして大汗をかいた。その後、嘔気とめまいがして食事摂取できなかった。昨日は当番医を受診して、熱中症として紹介された。自分で歩いてきていて、もともとのCKDが脱水による軽度悪化があったが、筋原性酵素上昇はなかった。外来で点滴を2本すると症状軽快したので、入院にはしなかった。

 

 51歳女性。先週末に鼻閉で耳鼻科クリニックを受診して、蓄膿症(副鼻腔炎)の診断で抗菌薬(アモキシシリン)が処方された。その後、両側耳介後部が腫れて再受診した。今度は抗菌薬が変更された(セフジニルとクラリスロマイシンがダブルで処方)。耳介後部の発疹が広がり、全身に発疹が出た。38℃の発熱もあった。

 副鼻腔炎の治療(抗菌薬)が必要かどうかみるために、副鼻腔CTを行った。案外副鼻腔に炎症所見はなかった。抗菌薬は不要だ。ちょうど院内に皮膚科医がいるのを見つけたので診てもらった。

 発疹は体幹部を中心に四肢にも小紅斑が散在していて、その周囲の発赤が数cm広がっている。中毒疹と表現されるそうで、薬疹とは断言できないそうだ。ステロイドを使用するほどではないということで、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)で経過をみることになった。

 

 24歳女性。高校生のころに非てんかん性けいれん発作で何度か救急搬入されていた。その後来なくなっていたが、今年の5月に久しぶりで救急搬入された。昨日は職場で意識消失ということで搬入された。心因性とわかっているので、小声で呼びかけるとうっすら目を開けて小声で答えてくれた。これまでなかったリストカットが3か所あった。

 点滴とアタラックスPの点滴静注をして経過をみると、気持ちが落ち着いたようだ。なかなか連絡がつかなかった母親が夕方やっと来院した。帰宅していいと伝えて、中断している精神医療センターへの通院を勧めた。

 本人も精神科の中ではそこが気に入っている。「担当医は突き放すというわけではないと思うけど」と前置きして、「後は〇〇ちゃん次第だよ、と言われる」と教えてくれた(そう言われても、自分ではどうしようもない)。通院して自分の気持ちを話せるだけでもいいのだろう。受診までのつなぎに、いつものリーゼをお守りとして少し持たせた(母親管理で1回分ずつ手渡す)。

 

 13歳女性。前兆を伴う片頭痛で小児科を受診していた。スマトリプタンとアセトアミノフェンが処方されていたが、母親はまずアセトアミノフェンを内服するものと思っていたそうだ。嘔気があって食事も水分も取れないというので、点滴をして(なぜか片頭痛に効くらしい)プリンペラン静注もした。本人の点滴はしてもいいが、注射(スマトリプタン皮下注)はいやだ?という。内服させようとしたが、嘔気があって飲めないと言っているうちに、寝てしまった。点滴が終わることには落ち着いていたので、頭痛が続けば自宅でスマトリプタンを内服してもらうことにした。

 

 86歳男性。一昨日に誤嚥性肺炎が軽快して入所している施設(介護老人保健施設)に戻っていた。また高熱が出て、救急車で戻ってきた。右肺炎があり、再入院となった。脳梗塞後遺症・嚥下障害・繰り返す誤嚥性肺炎で、胃瘻造設がなされている。経管栄養の継続で肺炎を繰り返す時は、高カロリー輸液にして胃瘻は内服薬注入のみとするしかない。

 

 保健所から、新型コロナウイルス感染症のPCR検査依頼もあった。午後になって、前日のPCR検査(当院ではない)で陽性と判明したCOVID-19の25歳女性を入院させてほしいという依頼がきた。

 発熱が1日だけあり、その後嗅覚障害が続いて、PCR検査を受けていた。感染者との濃厚接触歴はない。お笑い芸人森三中の黒沢さんのようだな、と思った。患者さんの全身状態は良好で問題はなかった。胸部CTで肺炎像はない。

 発症からの日数では感染性はほとんどなくなっていると思う。高齢者との同居もあり、まず入院という県の指示なので、短期間当院で預かることになる。(当院は軽症から中等症までの担当)

 PCR検査も入院も首都圏と比べれば、当地はまだまだのんびりしたものではある。それでも今の感染者増加の状況からは、今後入院依頼はまた来るだろう。

 

 

 

 

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急性腎盂腎炎のはずが

2020年07月23日 | Weblog

 腎臓内科医(大学病院から4か月交代で来ている)が当直の時に、発熱の75歳女性を入院させていた。肺炎像はなく、尿混濁を認めたことから急性腎盂腎炎としていた。

 内科当番だった内科の若い先生が担当となって、入院時から投与されたセフトリアキソンを継続していた。尿所見は改善して(WBC50-99/HPFから1-4/HPFで細菌は陰性化)いた。

 ところが発熱が続いて、白血球11100・CRP16.5が白血球9900・CRP12.0と、軽減しているといえばしているが微妙な値だった。

 入院時の尿培養は、グラム染色でグラム陽性球菌(+)・グラム陰性桿菌(+)で培養では黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出された。尿培養の黄色ブドウ球菌検出は、コンタミでなければ、菌血症からの尿に出たことになる。

 血液培養セット提出(入院時に提出されなかったので、セフトリアキソン投与中)を提出したり、心エコー検査を追加したりしていた。血液培養は陰性で、心エコー(経胸壁)で明らかな疣贅はなかった。

 

 2週間経過した今週の月曜日に相談された。前に尿路感染症と思っていたら、リウマチ性多発筋痛症(PMR)という高齢女性がいたので、今回はどうでしょうかと言われた。

 病室に患者さんを診に行った。関節痛・筋肉痛はなく、関節炎・筋炎ではない。結晶誘発性関節炎(偽痛風)が併発したのでもない。リウマチ性は多発筋痛症らしくはない。

 入院時に肝機能検査は正常域だったが、抗菌薬開始後に軽度の障害(AST 46・ALT 67・LDH 187・ALP 345・γ-GTP 60)を来していた。セフトリアキソンの薬剤熱を疑って、休止して経過をみてもらうことにした。

 セフトリアキソンをやめた日に一時的に39℃になったが、その後は36~37℃前半で経過している。連休になるので、やめた2日後に血液検査を行った。白血球8800・CRP9.9と悪化はしていない。

 1日抗菌薬を中止して、翌日に血液培養2セットを提出した。造影CT検査を行ったが、肝膿瘍・腎膿瘍などの膿瘍性病変はなかった。少なくとも、CTでわかるような血管炎もない。(造影CTは入院させた腎臓内科医が責任を感じて?オーダーしていた)

 追加で検査してもらった血沈は116mm/時だった。多発性骨髄腫らしい血清蛋白像はなく、症状はPMRらしくない。何か疾患が隠れているようだが確定できない。

 若い先生は連休明けまでは抗菌薬なしで経過をみることにしていて、全身状態は悪くないので方針はそれでいいと思うが、さてどうなるか。

 

 

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たぶん緩徐進行1型糖尿病

2020年07月22日 | Weblog

 内科再来に、脳梗塞で神経内科に入院した82歳女性が入っていた。糖尿病の血糖コントロールの依頼だった。

 月曜日に、前日の夕方から右の視野がかけるという訴えで眼科を受診した。右下四半盲~半盲と診断されて、眼科から頭部MRI検査が出された。 

 拡散強調画像で高信号域が散在していた。左後大脳動脈領域(左後頭葉)の病変が一番大きいが、右中大脳動脈領域と別の左後大脳動脈領域にもラクナ梗塞があった。(MRAではむしろ右椎骨動脈・右後大脳動脈に低形成疑いがあった)

 眼科から神経内科に紹介されて、脳梗塞として入院となった。心電図では洞調律で心房細動はなかった(発作性は否定できず)。意識清明で麻痺はない。患者さんは元気だった。

 

 隣町の病院に糖尿病・高血圧症で通院していた。糖尿病はインスリン強化療法が行われていて、経口血糖降下薬の処方はなかった。入院後に同じインスリンで継続したが血糖が200mg/dl台で、入院時のHbA1cも9.1%と高かったことから、内科紹介になった。

 病室で患者さんにこれまでの経緯を訊いた。50歳代から予備軍といわれていて、その後糖尿病として治療が開始された。10年以上前に通院している町立病院から、大学病院の糖尿病科に紹介したいといわれたそうだ。

 大学病院では1型と言われて、インスリン強化療法が始まった。その後は地元の町立病院に通院している。経過と発症年齢からは緩徐進行1型糖尿病だろう。外注の血中Cペプチドと抗GAD抗体を提出して、確認することにした。

 1型の病名がついてしまうと、経口血糖降下薬はほとんど適応がない(SGLT2阻害薬のスーグラとフォシーガにはある)。実際はインスリン量の調整だけになる。

 持効型は町立病院ではレベミルを使用していて、入院後はインスリングラルギンBSを処方していた(薬局の持ち込み薬確認で同効薬として記載していた)。どちらも効果が24時間持続しないので、トレシーバに変更する(超速型のノボラピッドはそのまま使用)。

 

 視野障害で眼科を受診して、後頭葉の脳梗塞で神経内科に回されるというのはたまにある(数年に1回くらい?)。

 

 

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