3週間前に、内科新患を診ていた先生(大学病院からバイト)から尿路感染症の88歳女性の入院治療を依頼された。
ふだんは神経内科外来にパーキンソン病で通院していた。処方はネオドパストン配合錠L300㎎分3、ゾニサミド100㎎分1。6月の神経内科外来では、家族に食欲不振が続くと言われて、頭部CT・胸腹部CTが行われていた。特に有意な所見はなかった。
内科受診の主訴も食欲不振・体動困難だった。3か月前から食事摂取量が低下して、1か月前からは室内をつたい歩きしていたのが、動けなくなったというものだった。期間も症状も、尿路感染症も含めて感染症のものではない。
白血球11000・CRP9.2と炎症反応の上昇を認めるが、尿検査所見で白血球20-29/HPFだったが、細菌(-)で尿路感染症とは言い難い。胸部X線・CTで明らかな肺炎像はなかったので、尿路感染症としたのだろう。尿培養・血液培養2セットを提出してくれていた。
左膝関節の手術を受けた既往があり、そこは特に問題がない。右膝関節にやや熱感があるように思えるが、関節炎とするほどではなかった。
年齢的に誤嚥性肺炎になってもおかしくない。気道感染疑いとして、セフトリアキソンで治療を開始して経過をみることにした。入院後、37℃台の発熱がだらだら続いて、炎症反応はほぼ横ばいだった。
尿培養、血液培養2セットは陰性だった。セフトリアキソンは1週間で中止した。手術していない右膝関節の熱感が入院時よりも少し目立つようにも思えたが、腫脹はなかった。左膝関節のX線は変形性の所見が目立って何とも言えない。
いつものNSAIDs(セレコックス)内服を開始すると、解熱して炎症反応も軽快した。関節炎でいいのだろうか。発熱・炎症反応上昇はいったん解決(ただしさらに経過を診る必要あり)とした。
問題は食欲不振だった。嚥下の問題かと思って、ST(聴覚言語療法士)さんに診てもらったが、嚥下には問題ありませんと言われた。確かに内服薬は問題なく飲めている。
なんだか気分の問題のようだなあ、と病棟看護師さんと話していた。印象としてはうつ状態だ。末梢からの点滴(アミノ酸+ビタミン剤のパレプラス使用)を継続して、栄養剤(エンシュアリキッド)が飲めないか、などとやっていた。
神経内科の処方を継続していたが、ゾニサミドが気になった。これはパーキンソン病の処方?、てんかんの処方?。
ゾニサミドは抗てんかん薬としては商品名エクセグラン(ジェネリックあり)で、通常200㎎分2で使用する。パーキンソン病薬としてはレボドパ賦活剤(レボドパ作用を増強・延長)のトレリーフで、通常1日1回25㎎で使用する。
この患者さんは、ネオドパストン300mg/日がずっと処方されていて、昨年9月にゾニサミド100㎎が追加処方されている。その時のカルテ記載は「右側の固縮・振戦が目立つ」とのみあった。処方にそれほどの根拠もないようだ(何となく処方?)。
ゾニサミドの副作用は、無気力・自発性低下、精神活動緩慢化、抑うつ、食欲不振だった。簡単に言うと、「元気が出ない」(東北大学てんかん科・中里信和先生)。今の患者さんの状態そのものになる。ゾニサミドをやめてみると、食欲が出てきて、若干活気があるように見える。
今日は新型コロナウイルス感染症(軽症)の2名が退院した。今のところ入院依頼は来ていないが、着々と患者数が増えていて、老人介護施設での発症もある。来週は入院依頼が来そうだ。