なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

Dr.岡のプラチナレクチャー COVID-19特講ver.2

2020年05月31日 | Weblog

 前回から2か月経過して、新型コロナウイルスについてかなりのことがわかってきて、プラチナレクチャー特講もver.2になった。スライドをメモした。

CareNeTV
Dr.岡のプラチナレクチャー
COVID-19特講ver.2
(5月16日までの情報による)

新型コロナウイルス2019(COVID-19)
2020年5月現在指定感染症となっている

2020年4月7日
 都市部に緊急事態宣言が出された
4月16日
 全国に緊急事態宣言が出され
 現在、一部都道府県では延長(全国的に解除して、また発生してきた)

ウイルス学

コロナウイルス
・感冒の原因になる4種類+SARS・MERSが知られていた
・新しく見つかった7つ目のコロナウイルスである
SARS-CoV-2と命名され、このウイルスによる感染症がCOVID-19
・ACE2レセプターを介して感染

・L型とS型が確認されている
 -当初のウイルスはL型
 -現在:L型が7割、S型が3割
 -臨床的な違いは不明

臨床表現型は5つ
・表現型1:8割⇒軽症
・表現型2・3:軽度の肺炎
・表現型4:肺コンプライアンス低下せず
     :肺血栓症で重症化 
・表現型5:合併感染や肺障害により肺コンプライアンンスが低下⇒重症

疫学

2019年末中国武漢を発端に
中国各地、日本、韓国、イタリア
、イラン、欧州、米国など各地に感染拡大(2020年5月現在)
中国での発生は減少している
欧州、米国で大流行
WHOもパンデミックと認定

感染様式
 接触・飛沫感染により人から人へと感染
 
犬や猫からの感染
・否定できない
CDCの推奨
 感染者とペットとの接触を避ける

空気感染
 現時点では確認されていない
糞口感染や血液感染を介した感染
 可能性は低いと推定される

他人への感染
 8割の感染者は起こさない
 一部の患者が感染を拡大させる

密閉密集密接
 3密と呼ばれている閉鎖空間のクラスター感染が懸念されている
・クルーズ船・屋形船・ライブハウスなど集団感染の事例から
・家族内感染もリスク
 7~10%ほどとの報告

潜伏期は2~7日(平均4日)
 11.5日で97.5%発症
 最大14日を見積もる

感染性
・発症2~3日前からあることがわかってきた
・発症0.7日が最も感染性が高い
・発症6日以降での感染はなかったという報告
(人にうつすという点ではタチが悪い)

ウイルスの検出
 進行期よりも感染初期に上気道から⇒初期の方が感染性が高いかも

ウイルス量は1週間ほどで減少
 10日ほどで消失という報告も
 24~42日検出されたという報告も
 自検でも長期ウイルス陽性が続くよう

ウイルスPCRの検出の意義
必ずしも感染性があるというわけではない(ウイルスの生死に関係なく、遺伝子をみている)
・PCR定量とウイルスの感染性との相関ははっきりしない
・実際に、発症9日目以降にウイルス培養が陽性となった症例はなかった
・とくに呼吸器検体でPCR10の6乗コピー/mL未満だと感染性のあるウイルスは検出されない

PCR陰性による隔離介助
 医療資源の浪費につながる!
・・・ベットが空かないなど
 早急に見直されるべき

基本再生産数
 1.3-2.5
  
 麻疹は12-18
 SARSは3
 インフルエンザは1-2

2次感染は濃厚接触者の
・中国の報告で1~5%
・米国の報告で0.45%

臨床像
 80%は軽症にとどまる
 およそ半数で肺炎
 14%程度で重症化
 5%でショック・呼吸不全・多臓器不全

死亡率
・集中治療を要するような症例では5割
・平均的な死亡率は0.7~高くて2%
 イタリアで7.2%
・ただし80歳以上の高齢者では15%と高い
・死亡者の8割以上が65歳以上

死亡率の国による違い
・PCR件数を理由にする動きがあるが
 -必ずしも相関していない
・検査件数が少ない国で死亡率が低いところもある
 -年齢・合併・人種差・医療体制・貧困などさまざまな要因がある
 ⇒単純比較はできない
 ※イタリアでは
 ・平均年齢が高く
 ・2.7個の既往や合併症を有して
  いた
・今後、抗体保有率がわかると真の死亡率の推定につながるかも

無症候のウイルス保有率
 不明
・無症候陽性者10名/13名の報告
 -1週以内の症候性になるというものも
・日本におけるクルーズ船
 -17%でウイルスが陽性
 半数は診断時に無症状

妊婦 
・NYでのスクリーニング
 -無症状の妊婦14%ウイルスが陽性
・日本産婦人科医会
 -PCRのスクリーニングを推奨しない
 取り得る最も重要な対策
 ⇒無症状でも感染している妊婦がある一定の確率でいることを考がえて自分たちが感染防御を徹底して行うこと
   
臨床像
 死亡者の多くが高齢者
 以下の疾患を有している
 ・心疾患
 ・糖尿病
 ・肥満
 ・悪性腫瘍
 ・慢性腎臓病
 ・肝疾患
 喫煙もリスク因子
  
ACE阻害薬とARB
 重症化リスクによるという仮説も
 -ウイルスが感染するACEレセプターの増加のため?
 -明らかな関与は認められていない
 +中止による心疾患・腎不全増加⇒死亡率上昇の懸念
 中止は推奨されない

米国での療養施設での死亡率
 34%
 高齢者施設や病院内での脅威である

小児について  
 発症者や重症者は少ない
 10名の小児患者の経過では
 発症しても24時間以内の解熱し
 呼吸不全はなし

妊婦
 重症化や先天性感染のリスク
 →今のところ確認されていない
 ※羊水・新生児からのウイルス検出なし

臨床症状

血栓形成
 免役反応と血栓形成
 ウイルス感染に続いて引き起こされる⇒重症化や多彩な病態に関わっていることがわかってきた
※剖検例
 肺塞栓症が死因として高率に確認された

発熱
 初期
  2割で38℃未満の微熱
 そもそも4割ほどしか発熱しない
 肺炎があれば経過の赤で9割に発熱あり

呼吸器症状が主体
 咳81%息切れ31%
・加えて筋肉痛や倦怠感
・喀痰・鼻汁・咽頭痛 目立たない
・結膜炎も報告あり
消化器症状はまれに
・下痢13%・嘔吐10%・腹痛9%
・便からウイルスが排出される

初期には感冒と区別がつかない
接触歴がない場合
 経過が感冒より長いことで疑う

嗅覚や味覚の低下
 およそ34%にどちらか
 19%ではその両方
味覚・嗅覚消失
+発熱・持続する咳・疲労感・下痢・腹痛・食欲消失
の組み合わせで特異度86%(感度は低い)
イタリアの報告では64%で見られる
 嗅覚味覚だけの異常は3%だけ
ほかのウイルスでも認められる
 特異的ではない
でも、こういうときは診断に有用かも
・鼻汁がなく無臭がある場合
・ほかの症状と合わせて認められる場合

発疹
 まれに生じる所見
 ・紅斑・蕁麻疹様・水痘様とさまざま
 ・四肢末端にしもやけのような発疹も COVID toe

血小板減少性紫斑病の報告もある
欧米で川崎病様症状の患者の増加も指摘されている

重症化のパターン
 発症から7日くらいの経過で症状が増悪
 5日くらいで息切れが出現して数日のうちにARDSになる
肺炎の回復には2週間程度
 重症なら3~6週間要する
ARDSのリスク
 高齢・高血圧・糖尿病

心血管イベント
 呼吸不全の次に多い
 ICUの患者さんで、1/3に心筋障害を起こし、不整脈・ショックの合併

血栓塞栓症状
深部静脈血栓肺塞栓心筋梗塞四肢の塞栓など
・重症例において脳症脳梗塞⇒意識障害や錐体外路兆候も
 ギラン・バレー症候群の報告も

診断

血液検査
・WBC:90%で正常から低下
 リンパ球数が35%で低下
 *初期からWBC上昇しているとらしくない
・CRP:多くは上昇し5程度上がる
 *あまり高いとらしくないかもしれない
プロカルシトニンは6%でしか上昇しない⇒除外診断に有用な可能性

肝障害は35%
腎障害は初期にはまれ

LDHはたいてい上昇
*Dダイマー・WBC増加・リンパ球減少・フェリチン上昇と共に重症化のマーカーになりうる

抗リン脂質抗体の検出
 aPTTが延長する患者で高率(91%)に検出
 抗凝固療法は禁忌ではないのではないか?

画像診断 

胸部X線
・初期には異常をとらえにくい
・胸部X線異常
 発症から10日ほどがもっとも顕著になる=遅れる
・肺炎の疑いが残ればしっかりした感染予防策のもとで胸部CTを検討する

胸部CT
症状が顕在化する前やPCR陰性でも病変が検出されることがある
・ただし無症状者のCT異常陰影はほとんどで重篤にはならず、すべての症例で回復⇒無症状者へのCTは勧められない
・CTでのスクリーニングは米国・日本の放射線学会とも推奨していない

初期の典型例
 下葉優位に胸膜直下がスペアされた両側すりガラス陰影や斑状陰影

重症例では
 発症10日目ほどが最も悪く見える
 胸水、リンパ節腫脹、胸膜肥厚はまれな所見

ただし画像診断は
・初期には片側であったり
・進行するとARDSになったり
と非特異的

典型例は存在するけど除外は困難
 画像だけで判断しない
*胸部CTはPCR陽性例で感度97%・特異度25%(低い)
*ゆえに他のウイルス感染、ニューモシスチス肺炎、他の間質性肺炎との鑑別を要する

ウイルス学的検査

咽頭よりも鼻咽頭の方がウイルス量が多い
PCRは鼻咽頭スワブまたは喀痰で
*エアロゾル対策のもとで採取
スワブでの検体採取の方法
 少し頭部を後方にそらして目を閉じてもらう

気道検体が取れない場合 
 便も尿も検体になる
*誘発喀痰検査は感染対策の観点から行わない
検出率
 BAL(気管支肺胞洗浄)が最も優れ
・下気道>上気道=便
・尿は低い
*BALは感染予防から優先されない

唾液 
 1~2mLの採取
 鼻咽頭PCR陽性者の84.6%で検出
*感染暴露のリスクが少ない検体として期待

ウイルスは病初期でも多く検出
排出期間は
・軽症では10日程度
・重症度により8~37日検出

ウイルスの検出=感染性を有する、ではない
 感染は発症前から発症5日で多くは起こる
 発症6日以降の感染は認められていない(ウイルスの検出と関係なく)
ウイルス量と重症度は必ずしも相関しない
(治療効果、隔離解除で使用するのは?)

封じ込めのフェーズが過ぎた場合
その時の目標=重症者や死亡者を減らすこと
疫学調査の目的を除き、
・接触や暴露のない無症状者のウイルスPCR検査は行うべきではない

軽症者のPCR検査
 状況による
 例
・検査キャパシティ
・陽性者の隔離受け入れ態勢(ホテルなど)

検査閾値 流行状況にもよる
「IDSA」
・ICUレベルで原因が不明な重症肺炎や呼吸不全、発熱、上下気道症状を呈しており、14日以内に患者との濃厚接触、暴露歴がある者
・高齢者や慢性基礎疾患がある者
・医療従事者
「CDC」
・優先:入院患者・症状のある医療従事者
*無症状者は優先しない
「日本感染症学会」
・軽症者への検査を推奨していない

「IDSA」
診断のためのガイドライン
・臨床症状がある患者では積極的な検査を推奨
・しかし有病率が低い地域では
:入院する無症状者の検査は推奨していない
:しかし、免疫不全者では推奨
(本ガイドラインでは有病率10%を高い、2%未満を低いとしている)

ウイルスPCRの診断精度
 それほど高くないと考えられている
検査陰性で本疾患を否定できない
*陽性で確定しても有用な治療法は確率していない

リスク
・検査陰性により感染防御がおろそかになる
・検査をすることでかえって感染が拡大する
・患者集中による医療施設の疲弊
・一定数に生じるであろう偽陰性による混乱
・検査コストの問題
 などデメリットが大きい

明らかなウイルス肺炎像を呈しても
 初期のPCRは陰性
       ↓
 のちにPCRが陽性 となりうる

重症例で疑いが強い場合
 PCR検査は繰り返しても良いと考える
 気道検体を複数箇所採取してもよい
・1回目では51%しか陽性にならず
・3回目で11%陽性になる
*疑いが低ければ1回でよい

抗体検査
検出可能になるのは
・IgM抗体:12日目ほど
・IgG抗体:14日目ほど
早期診断には向かない
・初期の抗体検査の感度は低い
・ほかのコロナウイルスとの交差反応もある
*PCR検査陰性症例の最近と過去の既往を調べられる
抗体はある程度の感染防止効果が期待できる
 感染防止効果と持続期間の程度は不明

NG!
 市販の
・PCRキット 
・ウイルス抗原検査
 通常のPCRより感度が低いと推定されるため使用は推奨されない
ウイルス培養
 感染リスクから推奨されない

他のウイルスとの共感染の報告も
・1つ見つけて安心しない
・肺炎球菌との共感染も筆者は聞いている
・ただし、初期は純粋なウイルス性肺炎で細菌感染の合併率は低い
*いずれにしても&だからこそ
標準予防策は常に継続する姿勢が大切

治療
 
確立した有効な治療はない

試験管内の効果から期待されているもの
・ロピナビル+リトナビル
・ファビピラビル
・レムデシビル
・クロロキン
・トシリズマブ

診断未確定の軽症者の場合
 可能な限り自宅静養経過観察とする

有効な治療の確立している疾患を見逃さない
・マイコプラズマ
・細菌性肺炎
・ニューモシスチス肺炎 など
*軽症の肺炎は極力入院させず
可能な限り外来治療を行う方がよい

原因不明の肺炎の場合
初期から接触飛沫予防策のもとで
インフルエンザや市中肺炎として経験的治療開始
ウイルスPCRを待つ
⇒結果が陽性+症状が進行・重症化
⇒投薬を検討
:シクレゾニド
:ロピナビル・リトナビル
:ファビピラビル

喀痰培養が陰性&臨床経過から
 細菌感染の可能性が低い
⇒抗菌薬はいったん中止を検討

重症患者
おそらくサイトカインストーム微小血管障害血栓塞栓症が多いため予防的な凝固療法を行う
Dダイマーが6倍以上の上昇
⇒ヘパリン投与で死亡率を下げる
⇒血栓症が起きれば治療量に増量する
*予防的凝固療法 血栓症を予防しない
ICUでは57%で血栓症が発生
⇒早期からの治療量の抗凝固療法が必要かも

NSAIDs
 理論上で悪化のリスク
  裏打ちされた臨床試験はない
 対症療法
・アセトアミノフェンの処方が無難
*イブプロフェンを避けて
 腎障害や消化管出血のリスクを考えるとやめるほうがよい

2次細菌感染
 10%ほど
 重症化の際には院内肺炎に準じて抗菌薬投与を検討する
*インフルエンザのように
黄色ブドウ球菌やMRSAの感染が増えるのか?⇒不明

重症例
・ARDSに準じた呼吸管理
・さらには症例により可能な施設でECMOを
*ネーザルハイフロー
酸素マスクと同程度の感染リスク
⇒患者にマスクを使用して使用できる
*非侵襲的陽圧換気
マイルドなARDSだけに
厳重な感染予防策のもとで行うべき
*ネブライザーの使用も極力避ける

効果が期待される薬剤
主に
・ウイルスの侵入作用点を阻害するもの
・ウイルスのRNA複製を阻害するもの
・免疫反応を阻害するもの

1.ステロイド
シクレゾニド(吸入ステロイドの1つ)
 抗ウイルス活性があり期待される
*ほかの吸入ステロイドにはその効果はない
*ステロイドの全身投与は推奨されない
・効果が証明されていない
・MERSにおいてウイルスの排出が遷延したことも
IDSAガイドライン:臨床試験としての投与を除き推奨していない
・ステロイド投与してよい場合
:昇圧薬に抵抗するショック・喘息発作や投与継続が必要な病態

2.ロピナビル・リトナビル
抗ウイルス活性
-3キモトリプシン様プロテアーゼを阻害
・重症肺炎に対するRCT
 -生命予後の改善は期待できず
 -ウイルス量の減少も差はない
 -1日ほど改善が早い
 -消化器症状による中断が多かった
*IDSAガイドラインでも現時点では臨床研究としてしようするよう提案
*ほかのプロテアーゼ阻害薬(ダルナビル)も現在臨床試験が進行中
処方例 
 ロピナビル+リトナビル
 2錠1日2回 14日間
(薬剤相互作用に注意、HIV検査陰性を確認)

3.クロロキンやヒドロキシクロロキン
抗ウイルス活性 試験管内でウイルスの侵入を阻害
+サイトカインを抑制して免疫調整作用も
・抗ウイルス効果:クロロキン<ヒドロキシクロロキン
・アジスロマイシンとの併用
ウイルス量の減少や画像の改善が期待できるなど複数の報告あり(研究の質は低く、死亡率の差も不明)
・大規模な観察研究
人工呼吸回避・死亡リスクもへらさなかった
*RCTが待たれるが現時点で投与はためらわれる
*IDSAガイドラインでは臨床研究としてのみ使用と提案
・QT延長・低血糖に注意
QT延長のリスクからアジスロマイシンとルーチンに併用する必要はない
・クロロキンは腎機能での調整は不要
しかし薬剤相互作用にも注意
・妊婦には使用できるようである
・高用量のクロロキンは死亡率が高まり有害
処方例
ヒドロキシクロロキン
400㎎2回 初回
以降は200㎎を12時間ごと5~10日間

4.トシリズマブ
SARSやMERSからの推測
IL6などサイトカインの放出⇒重症化に関わる?
⇒IL6を阻害するトシリズマブに期待
・対象がないサンプルサイズの少ない観察研究で死亡率が低い報告
・明らかな感染症の増加は報告されていない
・アナフィラキシーや肝障害のリスクがある
*IDSAガイドラインでは臨床研究としての使用を提案

5.レムデシビル
ヌクレオチド抗ウイルス薬
エボラ・MERS・SARS/RS・Nipahウイルなど広域なRNAウイルスへの活性がある
・米国FDAは重症の入院例に緊急で承認
・追って本邦でも承認された
重症例53例への投与
:68%の改善と従来より低い13%の死亡率
相反した結果
米国でのRCT
 死亡率に差はないが、回復を早めるという結果
中国でのRCT
 死亡率・臨床症状・ウイルス量の減少ともに有意差なし
*現時点では有効性の期待できる薬剤ではあるが、劇的な効果はなさそう
副作用 
 肝障害・消化器症状・静脈炎
・腎障害患者への投与に懸念
 シクロデキストリンが添加されているから

6.リバビリン
抗ウイルス活性 RNAの複製を阻害
・試験管内のウイルス活性の比較では:レムデシベルやクロロキンより劣る

7.ファビピラビル
ウイルス複製を阻害 RNAポリメラーゼ阻害
・広くウイルスを抑制(新型インフルエンザ、エボラ、SFTSなど)
COVID-19にも有効な可能性
・ファビピラビル 中国の10症例の非ランダム化試験:ロピナビル・リトナビルよりウイルス消失と画像の改善が早かった
・Arbidol(効果が期待される中国の抗インフルエンザ薬)とのRCT
:中・重症例へのRCTで症状改善に有意差なし
:ただし中等症でファビピラビルで有意に症状を改善
・新型インフルエンザなどへ
国が認めた場合のみ使用できる薬剤
 明らかな催奇形性
 高尿酸血漿も生じやすい
・現時点では臨床試験として使用
・決して特効薬ではない
 予防投与なども日常診療として行うべきではない
処方例
 ファビピラビル
 1800mg1日2回初回
 以降は800mg1日2回

8.回復血清
期待されている
・4/5名で
 :3日以内に解熱
 :12日以内にARDS改善

9.その他
・BCG
 -結核以外に非特異的な免疫反応も引き起こす
 -現在予防の有効性について試験中
 -WHOは現時点でのBCG投与による予防を勧めていない
・VitaminCやIVIG(免疫グロブリン)
 -現時点で効果は不明
・インターフェロンβ
 -COVID-19への効果は不明
 -MERSへの試験管内と動物実験から効果がある可能性あり
・メシル酸カモスタット
 -試験管内でウイルス細胞侵入を阻害
 -投与量・投与法・治療や予防の効果は不明
・一部の線虫治療薬
 -試験管内で抗ウイルス効果がある
 -臨床効果・投与法は不明
*これらの薬剤で本来の適応への薬剤の供給不足が懸念される
 現時点では臨床試験目的でのみ使用するべき

予防

若年既往のない患者の死亡率は低い
高齢者や既往歴のある患者の死亡率が高いことから、医療関連の感染の懸念が大きい

医療従事者の感染死亡
・高齢に多い
・開業医・救急医に多い
・感染症専門医の死亡はいなかった
・診療支援に湖北省に入った医療従事者の感染者がいない

適切な感染予防策の遵守で感染は防げることを示唆

一律な患者へのPCRスクリーニングには反対

接触・飛沫感染予防策を行う
大切
流水またはアルコールの手指衛生
顔を極力触らない
咳エチケット

無症状者のマスク着用(市中)
感染の蔓延・十分な間隔がとれないなら⇒布や縫製したマスクの使用を推奨
*サージカルマスクの使用は推奨しない 医療従事者に温存するため

症状がある患者とそのケアをする者
 サージカルマスクを着用

エアロゾル発生の恐れがある場合
(採痰・気管内挿管・NPPV・気管支鏡実施・CPRなど)
N95マスク・フェイスシールドを着用
*ただし物品が充分でない場合
・N95マスクは必須ではなくサージカルマスクで代用可
・資源が枯渇すればUV照射による再利用もやむを得ない
・N95マスクをサージカルマスクやフェイスシールドで覆うのも可
*ウイルスは72時間しか生存できないと考えられる⇒1人に5枚のN95マスク
:5日間サイクルで毎日取り換え

個人防護具の枯渇に考慮
・ガウン
:撥水性であれば雨ガッパで代用
・ゴーグル・フェイスシールド
:アルコール消毒による再使用
*ただしN95のアルコール消毒は
機能を低下させる懸念あり!

確定/疑い患者の入院加療
・可能であれば陰圧個室
・難しい場合には個室隔離
*適切なPPEの着用(手袋・ガウン・マスク・フェイスシールド)アルコール手指衛生
*医療器具は専用とする
*シューズカバーや二十手袋は必要としない
*キャップも必須ではない

ウイルスの生存
・環境面:2~3日
・エアロゾル内:3時間ほど
*ただし感染性への影響は不明

症状のある感染者の様々な病院環境でウイルスが検出
しかし!
ルーチンな清掃の後では検出されない
高度接触面の清掃消毒が必要

濃厚接触者
 PCRの結果によらず14日間の健康観察
 発症者の隔離予防の解除
・臨床症状の消失
・2回の気道検体からのPCR陰性が目安か
もしくは
・軽快後、48時間後のPCR
・さらに12時間後のPCR陰性で退院
2020年5月1日付
厚生労働省は感染者の就業制限を
・PCR検査は必須ではない
・療養開始から14日で解除
証明書の提出は必要がないことを示している!

CDC
 検査によらず発症10日経過+3日以上の症状消失も隔離解除の目安に提案している
 早期に検査ベースから症状ベースの解除に移行されることを期待
 病床の不足と検査負荷の問題から

WHO
 軽快から2週間
 感染管理責任者と相談のこと

COVID-19は症状出現前から感染性がある
 医療従事者のユニバーサルマスクの実施が推奨
・ユニバーサルマスク
 患者さんを含めたすべての院内の人たちがマスクをすること

感染死亡者の対処について
 遺体を非透過性の納体袋に収容→袋を閉じて消毒
*遺族の面会
:適切に処理された納体袋に触れる場合 特別な対策は不要

ワクチン
有効なワクチンは現時点ではない
・現在、第1相臨床試験に含まれる候補2つ
-メッセンジャーRNAワクチン
-アデノウイルスベクターベースのワクチン
・初期ワクチンの利用可能推定時期
2021年の初めから中頃?

暴露後の薬剤による予防
今のところ効果の証明された薬剤はない
*試験管内で効果が期待できても
・有用性
・その投与量や投与期間
・副作用
 これらは不明

医療従事者の暴露対応について
・適切な感染予防策・PPEの着用
 -濃厚接触には該当しない
・感染者との接触(定義)
 -症状出現の2日前から隔離解除までの間に1m以内15以分上の接触
*濃厚接触者
 14日以内の就業制限と健康観察が望ましい
・その間に有症状となればPCR検査を

免疫について
再感染するのか
免疫がどのように得られるのか
⇒よくわかっていない

免役を担保する抗体価
 現時点では確立していない
 IgMは5日ほど・IgGは14日ほどで上昇⇒長期的な免疫反応のデータはない
*SARSでのデータ
感染後4ヵ月に抗体はピーク
~その後3年かけて低下する

再感染
 再びPCRが陽性の場合
-再感染か?
-偽陰性だったものが陽性化?
⇒区別できていない
・他のコロナウイルスやアカゲザルの実験の知見
-すぐに再感染は起きないのでは?と推定

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生理痛にPCR検査依頼

2020年05月30日 | Weblog

 昨日の夕方から「新型コロナウイルス感染症対策主要病院長会議」があり、院長から一緒に出席するように言われたので、前回に引き続き出てきた。

 実務者でないとわからないような質問をされた時の控え要員だった。後ろの方で議事進行を聴くだけだが、県内の病院の様子がわかるので興味深い。

 感染症指定病院と、協力病院で新型コロナウイルス感染者を入院で診てきたが、ここ1か月は県内で感染者が出ていない。感染者への対応は感染症指定病院だけに戻すが、急に感染者が増加した時のために、すぐにその2倍の病室を確保できる体制を維持したいという。(蔓延期はさらにその2倍以上を準備)そのためには、感染症指定病院で感染症用以外のベットも準備してほしいのと、協力病院でも少しベットを準備していてほしいということだった。

 

 6月中旬ごろからの当院の対応を決めるために、県内の病院の対応を調べるようにと言われていて、すでに感染管理ナースが調べていた。早いところでは、6月から面会禁止から面会制限(県内在住の家族のみ許可)で、中旬からとしている病院もあった。

 病院入り口での検温チェックも、それをやめる病院、サーモグラフィーに変更する病院、各診療科別にする病院、とそれぞれだ。県内では、面会制限と検温について、6月中旬から制限を緩めていくことになる。

 

 木曜日に保健所からPCR検査依頼がきたが、40歳女性で生理痛(月経困難症)だった。呼吸器症状や接触歴はない(そもそも県内では1か月発生なし)。いつもより頭痛・嘔気がひどく、一時的に37.5℃になったがその後は解熱している。適応はないなあと思いながら、保健所の指示なので型通り行った(陰性)。

 その後に、前日からの発熱・呼吸困難がある施設入所中の92歳女性のPCR検査依頼がきた。これはいつもの誤嚥性肺炎と判断されれる。PCR検査の適応はないだろう(今どきだから警戒はするが)。

 これまで保健所は適応を選んでPCR検査を依頼してきていた。まあ病院を経営している県医師会長のPCR依頼だと、適応がちょっと?でも、大人の事情として検査依頼してきたのもある。

 疑い例が減って、PCR検査の実績を出すために、適応が緩くなったのだろうか。

 

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肝膿瘍

2020年05月29日 | Weblog

 月曜日に69歳男性が発熱で救急搬入された。2-3日前から39℃の発熱があり、その日かかりつけの内科クリニックを受診して、胸部X線で肺炎はないといわれたそうだ(血液検査はその日には結果がでないのだろう)。

 抗菌薬(アベロックス)を処方された。解熱薬(アセトアミノフェン)を内服したが、40℃の発熱で動けなくなり、救急要請していた。救急当番だった内科の若い先生が対応した。

 昨年の10月にも高熱で地域の基幹病院を受診して、CTなどの検査を受けたが原因不明といわれたそうだ。外来治療で抗菌薬(レボフロキサシン)内服で3日で解熱していた。その後は特に症状はなかった。

 炎症反応上昇(白血球が6600で翌日11000、CRPが23.0で翌日27.9)があるが、肺炎像や尿混濁はなかった。腹部単純CTで嚢胞様の腫瘤像を認めた。肝膿瘍疑いとして造影すると、壁肥厚と周囲の炎症像を認めて肝膿瘍だった。腹部MRIでも(嚢胞感染も考慮してMRIも入れた)拡散強調画像で高信号域を認めた。

 抗菌薬投与で解熱と発熱を繰り返していたが、昨日からは解熱が続いている。このまま治療継続で軽快が見込める。通常の抗菌薬に反応しているので細菌性(化膿性)肝膿瘍になる。胆道系の異常や腸管の炎症から門脈系を介して膿瘍を来すような異常も認めないが。

 外来で血液培養2セットを提出しているが、まだ菌は出ない(おそらく出ないのだろう)昨年10月の原因不明の発熱も関連しているのだろうか。

 

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脳梗塞

2020年05月28日 | Weblog

 火曜日に、脳梗塞の91歳女性が地域の基幹病院から転院してきた。連休中に意識障害・左半身麻痺が出現して、救急搬入されていた。

 別の病院に心臓ペースメーカー植え込み術後で通院していた。心電図では心房細動を認める。徐脈性心房細動か洞不全症候群(徐脈頻脈症候群)になるが前者か。アスピリン(?)を内服していたそうだ。

 右中大脳動脈領域の出血性梗塞で、心原性脳塞栓症と思われるとあった。高齢で出血リスクが高いので抗凝固薬などは投与していません、末梢静脈からの輸液を続ける方針です、とあった。

 転院した日は呼びかけても反応がなかったが、その後開眼して麻痺していない方の手足を動かすようになった。発語もちょっとだけあるが、大抵は閉眼して寝ている時間が長い。

 送られてきたCT像は脳浮腫を来して脳室を圧迫していた。転院後に頭部CTを取り直すと、出血は吸収されて、脳室圧迫も軽快していた。バイタルは安定して、血液検査では問題になる点はない。

 前医からの方針に従えば、このまま末梢静脈からの点滴で経過をみることになる(ジリ貧になって看取りへ)。やるとすれば高カロリー輸液なので、当院でも家族にもう一度家族に確認をとることにした。(右内頚静脈は太くきれいに描出されるのでやればできる)

 前医の頭部CT(左)と当院の頭部CT(右)

 

 

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CRE

2020年05月27日 | Weblog

 火曜日に発熱・悪寒の57歳男性が救急搬入された。救急当番の外科医が対応して、尿混濁・炎症反応上昇を認めた。尿路感染症として内科の若い先生に入院治療が依頼された。

 前日から発熱が続いて、ふらついて動けなくなり、救急要請した。搬入時は血圧88/55・心拍数111/分でショックバイタルだった。発熱40.0℃。CT画像で尿路閉塞はなかった。血液培養2セット・尿培養が提出されて、抗菌薬(ゾシンPIPC/TAZ)で治療が開始された。

 この年齢で尿路感染症(急性腎盂腎炎)は通常ないと思うが、尿路系に問題があるようではない。PSAは正常域で、前立腺の明らかな腫大は指摘できない。

 翌日から解熱して、食事摂取は良好になった。治療的には問題がなかったが、培養結果に驚かされた。尿培養と血液培養2セットからEnterobacter aerogenesが検出されて、しかもカルバペネム耐性腸内細菌(CRE)だった。

 メロペネム(MEPM)のMIC<1μg/mLで問題ないが、イミペネム(IPM)のMICが>2μg/mLかつセフメタゾール(CMZ)のMICが>64μg/mLだった。(CREは、MEPMのMIC>2μg/mL、またはIPMのMICが>2μg/mLかつCMZのMICが>64μg/mL)

 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症は5類届出感染症になるので、保健所に届けた。保健所で菌株を取りに来て、遺伝子検査などが行われる。

 それにしても最近の入院歴もなく、院内感染(医療関連感染)の起炎菌であるEnteobacterが出た理由がわからない。ゾシンが効いて良かった。最初から個室管理だったのも良かった。

 保健所に届けるので、感染管理ナース(ICN、正しくはCNIC)が院長に報告書を提出した。院長(外科医)は、最初何を言っているのかピンとこなかったらしく、CREとあるので最初は「クレアチニンがどうした?」と思ったそうだ。

 

 

 パイロットの蛍光ペン「フリクションライト」のイエローを愛用していたが、黄色が濃すぎると思っていた。しばらく使用すると黄色が薄くなっていい感じになる。

 最近、フリクションライトにソフトカラーが出ているのに気付いた。それのソフトイエローはいい感じの淡い黄色(ちょっと黄土色っぽい)になる。塗った文字の見え方もいい。今後はこれを使用することにした(大量購入する)。

 

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後腹膜腫瘍

2020年05月26日 | Weblog

 今日は地域の基幹病院から2名の患者さんが転院してきた。

 1名は脳梗塞(出血性梗塞)の90歳女性で、5月連休明けの発症だった。経口摂取は困難で、意識障害が遷延していた。末梢の点滴で経過を診て下さいという依頼だった(これまでと同様のあっさりとした対応)。行うとすれば高カロリー輸液だが、家族にお話して相談してもらうことにした。

 もう1名は泌尿器科からの紹介で、後腹膜腫瘍の60歳代後半の女性だった。先週、腎尿管結石・閉塞性腎盂腎炎の患者さん2名を搬送した。ひとりは敗血症性ショックで集中治療が必要だったが、もう一人は尿管ステント挿入の処置後に戻される可能性もあり、その日の午後に泌尿器科医から電話が入ってドキッとした。

 内容は搬送した患者さんのことではなかった。後腹膜悪性腫瘍の患者さんがいて緩和ケアを行っているが、転院で診てもらえるかという問い合わせだった。これまで泌尿器科から悪性腫瘍での転院は(たぶん)なかった。

 医療用麻薬が点滴で入っているということだった。基幹病院の他科から緩和ケアの転院依頼はよくあるので普通に引き受けたが、電話口の様子では喜ばれたようだ。

 今年の3月に水腎症とそれに伴う痛みで、開業医から泌尿器科に紹介されていた。造影CTで右後腹膜に巨大な腫瘍があり、右尿管を巻き込んでいた(下大静脈も巻き込んでいる)。尿細胞診は陰性で、組織・細胞検査は困難のため、原発不明の悪性腫瘍として外来で経過をみていたようだ。

 今回は5月半ばに尿路感染症で他の病院に入院したが、腫瘍があることや尿道ドレナージを要するかもしれないことから、泌尿器科に転院となっていた。一時的に腎瘻造設をしていたが、その後は抜去している。

 癌性疼痛に対する治療としては、オキシコドン(オキファスト)持続皮下注が施行されていた。食事摂取もほとんどできていないが、点滴はしてなかったようだ。来てみると上腕に点滴できる静脈があり、病棟看護師さんは点滴できるじゃない、と言っていた。末梢の点滴とオキシコドンの持続静注で経過をみることにした。

 後腹膜腫瘍はこれまで診たことがない(はず)。患者さんの夫は昨年悪性リンパ腫で亡くなった患者さんの弟さんで、「お久しぶりです、今度は妻です」ということになった。(同院の腫瘍内科からの紹介だった)

 送られてきたCDに入っていたは3月のCT像のみで、それから2か月経過しているので、こちらでも明日CTで確認することにした。

 

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DUPAN-2

2020年05月25日 | Weblog

 内科再来を診ていると、内科新患を担当していた先生(大学病院からバイト)から91歳女性の入院をお願いしたいと連絡がきた。

 先週が初診だった。3週間前から食欲不振が続き、腹痛もあった。通院している町の病院を受診したが、特にどうするということもなかったらしい。紹介ではなく、直接当院に家族が連れてきていた。

 胸腹部単純CTで肝臓内に多発性の腫瘤があり、消化器癌の転移が疑われた。院内で測定したCEAが98.6(<5.0ng/ml)高値で、外注の腫瘍マーカーも含めて7種類を検査に出していた(腫瘍内科の医局から来ている)。

 NSAIDを1週間分処方して経過をみることにしていたが、症状は変わらず、今日は連れてきた家族がはっきりと入院を希望した(先週も入院希望だった)。(ロキソプロフェンのためか貧血が進行していた)

 

 患者さんは外来の処置室に横臥していて、普通に話はできる。夫はすでに死去して、お子さんはいないので、姪(弟の娘)が世話をしているそうだ。今日は弟と姪の娘が来ていた。ふたりを呼んで相談した。

 外注の腫瘍マーカーではDUPAN-2が著明に上昇して振り切れていた(≧1600U/ml)。膵癌・胆嚢癌のマーカーなので、そのまま信じれば膵癌か。CTでも膵臓の腫瘍が疑われるが、画像では確定しがたい。造影CTが必要になるが、家族はこれ以上の検査は希望しなかった。

 70歳くらいであれば、地域の基幹病院かがんセンターの紹介するが、家族も希望していないし、受診してもそちらで緩和ケアをということになる。

 とにかく当院入院で経過をみることにした。外来の診察室でDNARの書類を作成して、予後1~3か月だが1か月寄りであること、急変の可能性もあることを伝えた。点滴500ml2本でキープして、疼痛時はアセリオ(アセトアミノフェン)点滴静注を行う。アセリオの効果をみて、必要があれば塩酸モルヒネ持続点滴も考慮することにした。

 

 DUPAN-2が出始めのころに、膵癌でCA19-9 との比較をしたことがある。予想通り、CA19-9 のみ高値・DUPAN-2のみ高値・両者高値に3通りに分かれて、DUPAN-2の有用性(補完できる)が示された。懐かしい。

 

 

 

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新型コロナウイルスの抗原キット

2020年05月24日 | Weblog

 金曜日に臨床検査の技師長さんが、これば購入しますかと、パンフレットを持ってきた。富士レビオ株式会社が、SARSコロナウイルス抗原キット「エスプラインSARS-CoV-2」を2020年5月13日から発売していた。

 100テスト(キット)で希望販売価格60万円也。1キット6000円で、保険点数が600点(6000円)なので、購入価格で値引きした分だけが病院の収入になる(値引きしないかもしれない)。

 有効期間は製造後6か月なので、使用しなければ無駄になる。県内では4月末から新規の新型コロナウイルス感染者が出ていない。今後、様々なことが緩和されて、どのくらい新規の患者さんが出るのかわからないが。

 PCR法との比較データが載っている。臨床検体を用いた比較では、RT-PCR検査で陽性となった27例のうち10例(陽性一致率37%)が陽性になっていた。PCR検査の感度が6~7割なので、さらにそのうち4割弱しか陽性に出ない。(陰性一致率は100%近い)

 陽性率が低くても、感染していることを院内で判断できるのは大きいので、購入することになるだろう(院長決済)。

 

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心因性非てんかん性発作

2020年05月23日 | Weblog

 金曜日の夕方にけいれんの22歳女性が救急搬入された。搬入された時にはけいれんは治まっていたそうだ。両眼は半分開眼していて、少し舌を出していた。呼びかけても反応はない。救急隊の話では間代性けいれんが続いたらしい。

 救急当番の外科医(女性)はジアセパム5㎎を静注して、反応がないのでさらにジアゼパム5㎎を静注していた。本当のてんかん発作かどうかわからないので困ったようだ。

 というのは、この患者さんは5年前に何度かけいれん発作で救急搬入されていて、入院もしていた。いずれも2日くらいで退院になっている。記録では当方が担当したこともあるが、覚えていない。

 けいれん発作として救急搬入された時に、首を左右に振るので、これは神経学的にあり得ないと判断された。上肢を持ち上げて、顔の上で落とすと顔に当たらずゆっくり下ろす。顔を背ける動作もあり、眼を開けようとするとぎゅっと閉じてしまう。心因性非てんかん性発作Psychogenic non-epileptic seisure(PNES)と判断されていた。

 その後の救急搬入時は、異様な舞踏病的な不随意運動をして搬入されたこともある。当院としては、心因性として対処するようになっていった。7~8回くらい救急搬入されていたが、その後は搬入されていなかった。

 高校を卒業して、当地域にはいないのかと思っていた。医学書に心因性非てんかん性発作が出てくると、思い出す患者さんだった。

 外科医から診てほしいと言われて、救急室に診に行った。母親が来ていて、お久しぶりです、とお互いに言うことになった。母親も状況はわかっている。中央処置室のベットに移動して1時間くらい経過をみることにした。

 

 病室で誤嚥性肺炎で発熱した患者さん(94歳男性)の指示を出したり、内科の若い先生の担当している患者さんの相談に乗ったりしてから、診に行った。ベットにすわって母親と話をしていた。少し恥ずかしそうな笑顔もあった。以前からパーソナリティ障害のような雰囲気はなかった。

 県内の都市部にある店(チェーン店)でバイトをしていたそうだ。そこでもけいれん発作を起こして、大学病院に救急搬入されたこともある。精査の結果は異常を認めず、精神医療センターに紹介されていた。(患者さんの話によれば、カウンセリング?を受けていたという)昨年まで行っていたが、その後は行っていない。

 症状を繰り返すようなら、また受診してはどうかと勧めた。週末でもあり、安定剤を処方しますかと訊くと、ほしいという。ジアゼパム(2mg)2錠分2を3日分処方して帰宅とした。現在は当地の店でバイトをしているそうで、また当院に来ることになるかもしれない。

 

 

 

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S状結腸癌

2020年05月22日 | Weblog

 先週、地域の基幹病院腫瘍内科の先生から転院の依頼がきた。お久しぶりです、と始まったが、そういえば1年以上(2~3年?)やり取りがなかった。患者さんはS状結腸癌の70歳代前半の女性だった。

 4年前に腸閉塞で当院の救急外来を受診した。S状結腸癌と思われる腫瘤があり、左水腎症と肺に転移巣と判断される結節影を認めた。尿管を巻き込んでいて、泌尿器科医にも診てもらう必要があるのと、肺転移があればsatge4なので、腫瘍内科での化学療法になる。救急外来担当の外科医は、すぐに基幹病院に救急搬送していた。(そちらの泌尿器科を受診した既往があるらしい)

 外科で人工肛門造設が行われて(摘出は不可能)、その後は腫瘍内科で癌化学療法を受けていた。それなりに効果を上げてここまで経過していたが、現在は緩和ケアのみとなっていた。泌尿器科で右腎臓の腎瘻造設をしていた。 

 今回は4月初めに骨盤部の癌性疼痛で入院して緩和的な放射線治療を受けていた。家の中を歩いていた方だが、ADL低下ですぐには自宅に戻れないので、リハビリ目的の転院だった。

 今週の火曜日に転院となった。患者さんは案外元気で、来月初めに泌尿器科外来で腎瘻のカテーテル交換があるので、その日に当院を退院して受診できれば一番都合がいい。杖をついて立位はとれるが、筋力低下があり(骨転移があるが加重はまだ大丈夫とされていた)、リハビリをやってみないとわからないが、意欲は十分だった。

 送られてきた画像をみると、癌は後腹膜に浸潤して、両側の肺転移も増加していた。

 腫瘍内科の先生は、以前は当院にいらした。知識も技術もすごいものを持っていて、本当に何でもできる先生だった。ただなるべく省エネで済ませようというところに特徴(個性?)があった。

 コカ・コーラボトリングと伊藤園から、医療従事者の皆様にということで飲料の寄付が来ていた。

 

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