なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

続々とクリニックを継承

2019年03月31日 | Weblog

 昨日の日直の時に、施設入所中の93歳女性が心窩部痛と低酸素で救急搬入された。午前4時に心窩部痛が発症して、いったん軽快した後に午後6時半に心窩部痛が増悪したという話だった。腹部疾患とすれば低酸素が合わない。

 搬入時、心窩部に圧痛はなかった。心電図では頻脈性心房細動(110~130/分)を認めたが、有意なST変化とはいえない。下壁梗塞だと心窩部痛を訴えるが違うようだ。心窩部痛はなく、よくよく訊くと呼吸が苦しかったということらしい。胸部X線・CTで胸水貯留が目立ち、うっ血もある。有意な心雑音は聴取されない。

 処方されていたのは降圧薬(ベニジピン)と便秘薬だけで、ふだんは心房細動ではなく、今回発症したらしい。診断は頻脈性心房細動・心不全でいいのか。白血球数・CRPは陰性で、BNPが高値だった。血圧が140~150mmHgあるので、ラシックス1A静注の後、ハンプの点滴静脈注で経過をみることにした。

 循環器科の病棟に入院として、土日は当方が診て、週明けに循環器科に回す予定とした。(当院の循環器科は平日のみの対応で、夜間休日は対応していない)今朝病棟に行くと、心電図モニターは洞調律になっていた。発作性心房細動だったようだ。それにしても、この病棟は循環器科・神経内科・整形外科という組み合わせのという変な混合病棟だ。

 

 この患者さんを紹介してきたのでは、施設の嘱託医の内科クリニックの先生だが、継承する息子さん(三代目)だった。その後に心不全・肺炎の86歳男性を紹介してきたのも、だいぶ前にクリニックを継承した息子さん(二代目)だ。

 その後に肺炎の82歳女性を紹介してきたのは、また別の内科クリニックの息子さん(二代目)だった。お父さんの先生は、「息子は血液内科を専攻しているのでクリニックは継がないだろう、一代で終わるつもりだ」、と言っていたが、継承するようだ。現在は病院勤務と実家のクリニックの診療を半々でしていると聞いた。声は若かったが、声質と話し方(耳元で囁くような)がそっくりだった。

 もうひとつのクリニックも息子さん夫婦が建物を別に建てて、発展的な継承をする。当市内は継承ラッシュだ。

 

 

 

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GIST

2019年03月30日 | Weblog

 昨日は内科の当番だったが、連絡はなかった。今日は日直で病院に出ている。昨夜の救急外来受診を確認すると、外科で3名の入院があった。

 当直は若い循環器科の先生で、交通事故(車が横転)の救急搬入があり、当番の外科医が呼ばれた。その後高熱で受診した患者さんは外科外来管理ということで、腹痛で受診した患者さんは呼ばれた外科医が院内にいるということで、外科扱いになった。

 40℃の高熱で受診した66歳男性は、15年前に消化管間質腫瘍(GIST)で手術を受けた。病理では回腸由来の平滑筋肉腫と診断された。その後に再発して再手術困難のため経過観察となっている。この経過の長さが癌腫と違うところなのだろう。

 血液検査からは細菌感染と推定されるが、肺炎・尿路感染症は否定的で、感染巣は不明だった。入院後はセフトリアキソンで減熱しているので何とかなりそうだ。腹部CTを見ると、下腹部に巨大な腫瘍がある。

 歌手・俳優の萩原健一さんが消化管間質腫瘍で亡くなったと報道されていた。2011年からの闘病生活だそうで、やはり経過は長い。

 入院患者数が少なくなっていたが、今日の日直で内科4名が入院して、ちょうど30名になった。心不全・心不全+肺炎・肺炎・感染性腸炎で、80歳代と90歳代といずれも高齢者。そのまま病院に泊まって待機する。

 

 

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懐かしい顔

2019年03月29日 | Weblog

 昨日地域の基幹病院消化器内科から、胆管癌の89歳男性が転院してきた。一昨年の10月に閉塞性黄疸で受診して、胆管癌と診断された、手術や癌化学療法は希望されず、というか家族が本人には癌と告知しないよう希望した。総胆管に内視鏡的にメタリックステントを挿入して経過をみることになった。

 ここまでもったので、選択は正しかったのだろう。今月になって体重減少・倦怠感・食事摂取困難となって、同院消化器内科に入院した。内視鏡検査で十二指腸が癌の浸潤で強度の狭窄を来していた(内視鏡が通過できなかった)。家族と相談して、点滴で経過をみることになった。

 緩和ケア科への転科を勧められたが、癌告知をしていることが条件なので、それはできなかった。特別な治療もない状態で入院継続もできないので、当院紹介となった。(本人は気づいているようなので、ちょっと変な形になっているが)

 画像を入れたCDは送られて来なかったので、CTで確認すると、確かに胆管癌が十二腫脹に浸潤して内腔がほとんどなくなっていた。腹水もある。癌が壁外に進行しただけかもしれないが、ステントはきれいに開存している。

 以前はこの患者さんの住んでいる町の病院に勤務していて、外来に通院していた。当院に移動してからも、数名の患者さんがこちらの外来に通院してきたが、そのうちのひとりだった。高血圧症だけでわざわざ時間をかけて来るほどのこともないので、以前いた病院の先生に診てもらうように何度かお話して、紹介状を書いた。

 転院してきて、当方の顔をみて笑っていた。腹痛も時々あり、鎮痛薬を飲むと治まるそうだ。十二指腸は辛うじて通過するらしい。付いてきた息子夫婦も見覚えのある顔だった。どのくらいもつかわからないが、感染症併発だと急変の可能性があり、そうでなければ緩やかに進行悪化と伝えた。せっかく転院してきたので、なるべく長くもたせたいが、保障はできない。今日患者さんの弟さんが来院して、病棟にいるのを見て、親しげに声をかけられた。名前は忘れたが、これまた見覚えのある顔だった。

 ちなみに、紹介してきた消化器内科の若い先生は、当方が研修医だった時の先輩の先生の息子さんだ。最近は、○○先生の息子さんや娘さん、という若い先生方とかかわることが増えた。

 

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伝染性単核球症

2019年03月28日 | Weblog

 昨日1週間高熱が続く21歳女性が紹介されてきた。最初に受診した内科クリニックを2回受診したが症状が続いて、別のクリニックを受診して、そこからの紹介だった。

 1週間前に38℃以上の発熱が出現して、まず内科クリニックを受診した。咳が少しあるが、鼻汁・咽頭痛はなかった。内服の抗菌薬(フロモックス)が処方されていた。2回そのクリニックを受診したが、症状が続いて、今週の月曜日には別のクリニックを受診した。(そこは内科外科クリニックで先生はもと外科医)

 インフルエンザ迅速試験は陰性で、血液検査では白血球数5800・CRP0.65だった。何らかのウイルス感染と考えて、アセトアミノフェンのみ(と鎮咳剤)で経過をみることにしたが、食事摂取ができないのでその翌日には点滴をしていた。昨日も外来で点滴をしてからの紹介だった。

 症状は発熱と少しの咳のみだった。まず咽頭の発赤・白苔はなく、頸部リンパ節は触れない。胸部聴診も異常なかった。関節痛・筋肉痛もなく、蜂窩織炎の所見・浮腫もない。

 血液検査では白血球数6300・CRP0.5と微増のみで、リンパ球61%と増加していて異型リンパ球が6.0%出ていた。血小板数が11.3万と減少している。肝機能障害があり、AST 140ALT 91LDH 865だった(ALP・γ-GTP・ビリルビンは正常域)。 細菌感染症は否定な結果で、ウイルス感染症を示唆する結果だ。胸部X線は異常なし。

 21歳と年齢的にも伝染性単核球症、それもEBVが疑われる。それにしても咽頭と頸部リンパ節の所見がなさすぎる。EBVとCMVの外注検査を提出して結果待ちとした。念のためだが、血液培養2セットをとらせてもらった。

 外来でも入院でも可能と、本人と付いてきた母親に伝えた。母親は、「私も日中仕事があるので家で面倒をみれないよ」、ということで入院を希望された。1週間目でピークを過ぎていないと、あと1週間はかかると見込まれた。点滴500ml3本とアセトアミノフェン(定期内服+追加分)で経過をみることにした。

 今日は解熱傾向となり、昨日よりは少し元気になったように思える。点滴3本の効果か、自然経過でそろそろ軽快し始めたのかもしれない。昨日血清フェリチンも測定したら2374と上昇していた。この前何らかのウイルス感染(EBV・CMVは既感染)による血球増殖症候群疑いの男性がいたので、ちょっと気になる(へたに測定しなければよかった)。

 

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脳幹梗塞

2019年03月27日 | Weblog

 3日前の日曜日の夜間に、88歳女性が右不全片麻痺と構語障害で救急外来を受診した。当直は外科医(大学病院からのバイト)で、診察した時には症状は軽快していた。頭部CTは異常なしとされたが、一過性脳虚血発作か脳梗塞かということになるので、CTでは何ともいえない。

 症状が軽快したことから、反れ以上の検査を希望されなかったので、症状が出現したら再受診となった。他院から抗血小板薬(プラビックス)がすでに処方されていた(陳旧性ラクナ梗塞)。

 それから症状が出現しては軽快するという経過だっただそうだ、2日後の火曜日の朝には症状が固定して、救急搬入された。頭部CTでもすでに脳幹梗塞(左橋梗塞)を認めていて、頭部MRIの拡散強調画像で確定された。

 内科の若い先生が担当で入院になった。最初の受診が脳血管障害の専門病院だったら、どういう対応になったのだろうか。

 

 GSKのMRさんが新しい吸入薬(テリルジー100エリプタ)の宣伝をしていた。なんとICSとLABAとLAMA3剤の合剤になる。エリプタのラインナップが全部そろったことになる。ただICS(フルチカゾンフラン7カルボン酸)が100μgで対象はCOPDのみになる。ICS/LABAのレルベアの宣伝に来ていた時に、3剤の合剤はありますか、と訊いたことがある。欧米だといかにも作りそうだから。

 

 

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特発性器質化肺炎

2019年03月26日 | Weblog

 86歳男性が両側肺炎で入院していた。内科の若い先生(内科専攻医)が担当して、抗菌薬を投与したが反応しなかった。器質化肺炎が疑われて、呼吸器科外来に来てもらっている先生(他の専門病院から)に相談した。

 器質化肺炎として、プレドニン20mg/日投与するよう指示されて、みごとに解熱して炎症反応は著明に改善した。もともと患者さんは好例だが、肺炎像の割に元気だった。この辺は細菌性肺炎との違いなのかもしれない。

 相談した先生はステロイドを短期間使用して中止する先生だったので、プレドニン20mg/日を1週間の後は、10mg/日を1週間投与して中止と指示された。退院して呼吸器外来で経過をみてもらう予定だったが、退院前日から再度発熱して炎症反応も上昇した。

 相談されたので、プレドニン20mg/日を再開してもらった。またきれいに解熱して炎症反応も軽快した。プレドニン20mg/日なら外来通院でもいい量なので、そのまま呼吸器外来に回すことにした。

 胸膜直下に非区域性に広がる浸潤影が、いかにも特発性器質化肺炎(COP)らしい。COPと診断されてからの印象になるが。

 

 

 「特発性間質性肺炎の診断と治療の手引き 改訂第3版」によると、COPの自然寛解はまれであり、多くはステロイド治療が必要になる。治療は経験的に、経口プレドニゾロン0.5~1mg/Kg/日を1~2か月間投与の後に漸減する。

 特にステロイドを15mg/日以下に減量した場合、あるいは治療中止後1~3か月以内に再発することが多い。しかし再発しても治療の反応する。

 

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普通に帯状疱疹でした

2019年03月25日 | Weblog

 春分の日の症例が続くが、75歳女性が右下腹部痛を訴えて、救急外来を受診した。2日前からの症状で、最初は右季肋部痛・心窩部痛で始まり、痛みが下がってきたという。

 ふだんは糖尿病(HBA1c6.5%)・高血圧症で内科外来に通院していた。10年前に急性虫垂炎で虫垂切除術(腹腔鏡下手術)を受けた既往がある。右下腹部に圧痛があるが腹膜刺激症状はない。胆嚢結石があるかと思って腹部エコーを行ったが、特に所見はなかった。血液検査でも腹部CT(憩室炎疑い)でも異常はなく、アセトアミノフェンで経過をみることにした。

 よくあるパターンではあるが、その後同部に普通に帯状疱疹が出現して、今日皮膚科を受診した。皮膚科医としては、救急外来で行った血液検査で腎機能障害も肝機能障害もないのがすぐ確認できたので、ファムビルを通常量で処方した(そこだけ役に立った)。

 腹部所見に乏しいことから、ムダな検査をしないで、帯状疱疹が出現したらまたすぐ受診してくださいと言って、アセトアミノフェンを持たせて返すべきだった。患者さんも、痛み止めを下さいと言って受診していた。

 

 村川裕二先生の「循環器治療薬ファイル」第3版が出たので、早速amazonで購入した。自分では使わない薬もあり、扱えない循環器疾患が多いので、循環器科のスタンダードがわかるための本?になる。第2版は村川先生のサイン入りなので、そのまま保存する。

循環器治療薬ファイル  薬物治療のセンスを身につける  第3版

 

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めまい、頚椎偽痛風、糖尿病

2019年03月24日 | Weblog

 春分の日は日直をした後、病院に泊って待機するので残っていた。午後10時過ぎに、当直の外科医(全科当直)から連絡が来た。91歳女性がめまいで受診していた。意識清明でバイタルの異常もなく、頭部MRIでは異常がなかったが、血糖が480mg/dLと高値ということもあり、内科で入院させたいという。

 生食の点滴をゆっくり朝まで入れて、血糖はインスリンスケールで補正するよう、当面の入院時指示を出してくれていた。糖尿病で地元の町の病院に通院していて、数か月前からHbA1cが11%台と高値が続いていた。血液ガスもとっていが、問題なかった。

 めまいは起き上がった時に突然発症していて、回転性だった。難聴は以前からで変わりはない。翌朝には回転性はなくなり、ふわっとした違和感が残るくらいだった。その日の昼から食事を出したが、ちゃんと食べられた。BPPVと判断され、これに関しては数日経過をみて退院にできる。

 3日前の月曜日に後頚部痛でを当院の整形外科を受診していた。家族も来ていたので、詳しく話を聞いた。首が痛くで回せなくなり、微熱もあった。意識は清明だった。担当は大学病院からの応援医師(バイト)だったが、頸椎X線・CTの検査で軸椎(C2)の歯突起周囲に石灰化を認めて、頸椎偽痛風と診断した

 腎機能は問題ないので、NSAID投与の禁忌もないと思うが、プレドニンを処方していた。その後、後頚部痛は軽快してきている。特に既往歴糖尿病とは記載されていないので、糖尿病とは知らなかったようだ。もともとの血糖コントロール不良に、プレドニン内服が加わって、血糖がさらに上昇したものと判断された。プレドニンを中止して、NSAID(セレコックス)に変更した。

 糖尿病の治療は、DPP4阻害薬とSU薬少量で適切な処方だと思う。ただずっとHbA1cが11%台で、高齢なので高めでもよいと言われていたそうだ。可能ならもう少し無難に下げたい。家族に、「年齢的にはインスリンを追加するしかないが、1日1回なら打てますか」と訊くと、そのくらいならできるという。処方薬はそのままにして、持効型インスリン(トレシーバ)を少量を加えるBOTにした。

 

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確定はできない

2019年03月23日 | Weblog

 春分の日の内科日直の後、病院でフェントステープe-learningをしていた。慢性疼痛でフェントスを使用するには受講しなければならない。案外時間がかかったが、確認問題がちょっとひっかけ的で分かりにくい。

 88歳男性が先月初めに地域の基幹病院呼吸器内科から転院してきた。胸膜石灰化と職業歴から石綿肺は明らかだった。問題は大量に貯留した胸水。呼吸器内科では診断がつかず、大学病院呼吸外科に転院となった。胸膜生検の結果は、「石綿関連慢性線維性胸膜炎」とされて、戻されていた。

 要するに、「胸膜生検したものの、繊維化した組織しか検出されなかった」、ということを病名らしく表現した?。診療情報提供書には記載されていないが、家族の話では胸膜中皮腫が疑われるという話がされたそうだ。

 酸素吸入をしているので退院するには在宅酸素療法導入になるが、問題は著しい胸膜痛でフェントステープ5mg/日(4mg+1mg、経口モルヒネ換算150mg/日)を要するということだった。また奥さんとの二人暮らしで在宅介護は困難という問題もあった。

 そこで当院に治療継続を依頼されて、転院してきた。「急変する可能性については家族に話をしています」、とあった。まず思ったのは、やはりこれは中皮腫ではないか、ということだ。大学病院や専門医に逆らう気はないが、「中皮腫が疑われるが確定できない」、と記載してほしい。

 中皮腫疑いとしてフェントステープを使用していたが、確定していなければ慢性疼痛としての使用になる。そこでe-learningとなった。それと前後して胸部X線・CTを再検すると、左胸水は増悪して、胸膜と心膜が合わさって厚くなっている。心嚢液貯留も出現していた。心膜と接して右胸水貯留もあった。発熱はなく、炎症反応はごくごく軽度だった。

 臨床的にこれは腫瘍とさせてもらっていいのではないか。違うとしても対処が困難なのは同じだった。心不全に準じた治療をして経過をみるしかない。専門医がしなかった胸腔ドレーン挿入をすると、それこそ急変する可能性がある。

 家族には正直に、確定診断はつかないこと(中皮腫とは本来そういうものか)、できる範囲で対応するが実際には効果は見込めそうもないこと、をお話した。家族は苦しまないようにお願いします、と言われた。

  

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総胆管結石3例

2019年03月22日 | Weblog

 昨日の春分の日は内科日直で病院に出ていた。偶然だが、3例の総胆管結石の患者さんが受診した。

 93歳男性は上腹部痛で救急搬入された。腹部エコー・CTで胆嚢の結石・腫大を認めたが、総胆管拡張はなかった。胆道系酵素が軽度に上昇していた。急性胆嚢炎として外科医に相談すると、エコーで見える胆嚢のある右季肋部ではなく、心窩部痛であることから、総胆管結石が疑われた。外科医が3時間の経過で血液検査を再検すると、搬入時よりも胆道系酵素が上昇していた。

 総胆管結石の治療ができる消化器内科のある病院で診てもらう、と判断された。地域の基幹病院に相談すると、相変わらず消化器内科は入院満床らしく受け入れはできないと言われた。ちょっと遠方になるが、消化器病センターのある病院と交渉して、こちらは受け入れ可能となった。

 もうひとり総胆管結石の91歳男性も受診していた。腹部CTで明らかに総胆管結石があり、そのうち1個が乳頭部に陥頓して、鎮痛薬を点滴静注しても腹痛が続いていた。外科医が搬送を決めてすっきりした顔をしていた横で、こちらの患者さんはどうしようかと思った。

 以前よくお願いしていた、かなりの遠方だがこちらも消化器病センターのある病院に連絡すると、快く引き受けてくれた。患者さんは当地の施設に入所しているが、息子さんは搬送先の病院に行く方が圧倒的に近い。家族にとってはむしろ幸いだった。ただこの患者さんは認知症もなくしっかりしているが、COPDで在宅酸素療法を受けていて心不全・腎不全もある。搬送先で驚かれるかもしれない。

 もうひとりは、統合失調症で精神科病院に通院している74歳女性だった。以前に意識障害で受診して、頭部MRIでウェルニッケ脳症と診断され、さらに甲状腺機能亢進症と糖尿病もあった。現在は安定して、当方の内科外来に通院していた。

 突然の嘔吐・腹痛で受診して、受診時も症状は続いていた。肝機能障害を認めて、腹部エコー・CTで明らかな総胆管拡張(肝内胆管拡張も)を認めた。総胆管結石が疑われたが、CTでは指摘できない。幸いに症状が軽減して、バイタルも安定していたので、一晩当院で経過をみることにした。

 今朝病室に診に行くと、腹痛・嘔気もなく、ふだん通りの表情だった。ただ検査室から昨日よりも肝機能障害が悪化していると連絡が入った。予定通り、MRCP・腹部エコー再検を行うと、総胆管拡張が軽減していて、総胆管結石を認めなかった。これは自然排石したようだ。総胆管結石を確認したら、どこの病院と相談しようかと思っていたが、患者さんにとっても当方(病院)にとっても幸いな結果になった。

 週明けまで経過をみて、肝機能検査を月曜日に再検することにした。そこで軽快していれば、総胆管結石の嵌頓から自然排石が確定する。胆嚢結石もないので、これで治れば完治になる。

 昨日の午前中は97歳女性の心不全を地域の基幹病院で引き受けてもらった。超高齢だが、歩行できて普通の会話もできる方だった。1週間から両側下腿浮腫が始まっていて、心筋原性酵素が上昇していた。無痛性に心筋梗塞は発症して、心不全症状で顕在化したものと判断した。息子さんが薬剤師でそのお嫁さんが検査技師という、家族が医療関係者ということもあり、急性期は専門医に送らせてもらった。自前で対応できる症例が限られるのはけっこう情けない。

 

 

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