なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

骨髄穿刺は後腸骨稜が第一選択~MDS疑い

2016年10月31日 | Weblog

 10月14日に内科医院から貧血(Hb4.7g/dl)で紹介された貧血の89歳女性は、骨髄異形成症候群(MDS)疑いで入院した。入院後に輸血を施行して、Hb9.8g/dlとなった。ベットサイドでのリハビリをしながら、骨髄穿刺の結果を待っていた。

 骨髄穿刺の結果(外注)は、MDS(RA)疑いとあった。染色体検査では1細胞に染色体異常を認めたが、1個だけなので異常クローンとは確定できず、だった。矛盾はしないが、確定でもないというところか。MDSは難しい。

 もともと医院の先生が血液内科医のいる病院に電話連絡したところ、学会で不在になるので、近くの病院で輸血を受けてから紹介してくださいと言われていた。そろそろ退院にして、紹介状と検査結果を持たせて受診してもらうことにした。輸血だけして、自分で読めないのだから骨髄検査はお任せした方がよかったかもしれない。

 「Hospitalist2015年vol3 No4血液疾患」に治療法いろいろが出ている。年齢と状態(寝て利起きたりの生活)を考慮すると、時々輸血になるのかもしれないが、エリスロポエチン製剤の投与はトライできそうだ。

 骨髄検査の項に、骨髄穿刺は後腸骨稜が第一選択とある。これまでずっと胸骨でしてきたが、確かに危ない部位ではある。次回からは腸骨にしようと思った。

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救急隊さん、こめんなさい

2016年10月30日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。今のところ、81歳女性が急性肺炎・気管支喘息発作入院。76歳女性が良性発作性頭位性めまいで入院した。施設入所中の63歳男性(精神遅滞の方)が嘔吐下痢で外来で点滴していて、入院になるかもしれない。

 59歳女性は数日前からの発熱・咳で受診した。33歳の息子さんがマイコプラズマ肺炎で入院していて、やっと退院したところだという。精神遅滞とてんかんがあり、小児科で継続して診ていた(いわゆる、てんかん患者さんの小児科持越し例)。肺炎の時も小児科扱いだった。ずっと病院で付き添っていて、かなり疲労がある。胸部X線で左下肺に浸潤影があった。マイコプラズマですか、と言う。白血球数増加があり、マイコプラズマ迅速試験は陰性。年齢的にはどうだろうか。酸素飽和度は97%(室内気)。息子さんの世話を夫としていて、入院はできませんという。レボフロキサシン内服で経過をみることにして、改善しない時は入院でと伝えた。

 隣町の救急隊から、2件搬入依頼の連絡があった。ひとりは、野球の審判をしていた中年男性が当然胸痛を訴えたという。症状はいったん軽減しているというが、ACS疑いだ。直接、地域の基幹病院(距離的にも近く循環器科医5名)に搬送したほうがよいと思われた。連絡してみて、ダメだらもう一度連絡をもらうことにした。おそらく心電図で急性心筋梗塞の所見はなく、経過をみてどの時点で心カテをするかという判断になるのだろう。当院はこれまで待機的な心カテはしていたが、循環器科1名となり、それもできなくなった。今週末はその先生も不在。

 次はまた隣町の救急隊から、ゴルフをしていた中年男性が、めまいを訴えた後に意識障害をきたして、意識は戻らないという(刺激で開眼はするが、会話できず)。発症が急激で、血圧が高い以外バイタルは正常域。脳血管障害でも、脳梗塞ではなくて、くも膜下出血か脳出血(小脳脳幹出血も含めて)と思われた。これも当院で頭部CTをとってから脳外科のある施設(当院に脳外科はない)に搬送するよりは、最初から脳外科のある施設に搬入されるのが好ましいと思われた。基幹病院に連絡して、ダメだらもう一度連絡してもらうことにした。幸い、どちらも、受け入れてもらえたようで、その後連絡は来なかった。

 何だか続けて押し付けて、申し訳なかった。当院に来てから、さらに搬送すると時間がかかってしまうので、患者さんのためにはいいと思うが。救急隊は、あの病院はやる気がない、と言っているのだろう。今日内科系入院があれば、全部主治医は私。

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巨細胞性動脈炎でしょう

2016年10月29日 | Weblog

 巨細胞性動脈炎疑い78歳女性のその後(10月19日記載)。

 先々週、発熱と咳で入院した。軽度の肺炎あるいは尿路感染症疑いだった。咳と喘鳴もあったので、気道感染はあったはずだが、肺のわずかな陰影は陳旧性のもののようだ(これまでも感冒罹患時に喘鳴があったそうだ)。尿混濁が改善しても、発熱・炎症反応はまったく変わらず、急性腎盂腎炎ではない(膀胱炎程度)と判断した。入院後の最初の検査で炎症反応が抗菌薬で若干改善したと思ったが、結局誤差範囲で不変だった。

 入院後に頭痛の訴えが続き、てっきり慢性頭痛と思っていた。アセトアミノフェンはまったく効かず、雰囲気から?心因性だと思って、安定剤を処方したりした。よくよく話を聞くと、1か月以内の最近の頭痛ということだった。左側頭動脈に圧痛があり(右にはない)、拍動も弱いように感じられる。急に巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)疑いになった。

 ただ話を聞くたびに、頭痛の発症が数年前~1か月以内~入院してから?と変化する。最近視力が低下してと言われたので、プレドニン投与を開始してしまったが、もともと眼科にかかっていて、急性の症状ではないらしい。抗菌薬なしで、プレドニンだけで1週間経過をみて判断することにした。血沈を検査すると、100mm/時以上と高値だった。

 プレドニン30mg/日で1週間経過をみると、解熱して頭痛を訴えなくなった。本当に側頭動脈の圧痛があるとしていいか自信なかったが、それも軽快した。食事をとる(咀嚼)のが楽になったという。投与前にしつこく顎跛行の有無を訊いてもないとは言っていたが、こうなるとあったと判断したくなる。表情も明るくなり、動きもよくなった(リウマチ性多発筋痛症併発はないと判断していたが?)。正しくは側頭動脈生検だが、なしで経過をみることにした。プレドニンを一定期間維持して、後は漸減する。

 この方はもともと糖尿病があり(DPP4阻害薬とSU薬少量でHbA1c6.8%)、ステロイド糖尿病が加わって悪化してしまった。インスリン強化療法を開始して、現在インスリン量の調整中だ。この方は親族がいることはいるらしいが、折り合いが悪く疎遠だった。入所している施設が生活のすべてだった。

 インスリン注射は自分ではできないので、施設職員に頼むしかないが、看護師さんが常に常駐している施設ではない。看護師常駐の違う施設に依頼するしかないかと思われた。ところが、この方は以前インスリン治療歴があり、施設で介助して行っていたそうだ。インスリンの単位を合わせて、患者さんに持たせる。それをお腹に当てて、注入ボタンを押しこむのは患者さんだが、それもちょっと介助するらしい。なんだかギリギリの「自己注射」だった。今回は強化療法で注射回数が多いので、頼めるかどうか訊いてみないとわからないが。

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胆嚢結石から総胆管結石へ

2016年10月28日 | Weblog

 循環器科に通院している82歳女性は、先月胆嚢結石による急性胆嚢炎で入院した。抗菌薬投与で治癒して退院していた。心臓の病名は、心房細動・うっ血性心不全・僧房弁閉鎖不全症・大動脈弁閉鎖不全症・心臓ペースメーカー植え込み術後だった(AF・CHF・MR・AR・PMIと書くと楽だ)。心不全の治療には通常の利尿薬とサムスカ内服が入っていて、抗凝固薬(NOAC)も入っている。そのまま経過観察となった。

 今週の水曜日に腹痛で受診した。前回と違って肝機能障害が目立った。CTでみると胆嚢内にあったはずの結石が、総胆管末端にあった(胆嚢内にはなくなった)。よくこの大きさの胆石が胆嚢管を通過したものだと感心する。

 治療は内視鏡的乳頭切開からの摘出術だが(当院ではできない)、なにしろ心臓が相当悪い。心臓センターで有名であり、消化器の治療も充実している病院に連絡したが、満床ですぐには転送できなかったそうだ。当院消化器科入院で経過をみながら、再交渉になった。来週はJDDWがあり、消化器科診療がどこの病院でも手薄になるという事情がある。

(先月の胆嚢結石)

(今回の総胆管結石)

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胃癌穿孔のはすだが

2016年10月27日 | Weblog

 2週間前に、90歳男性が腹痛で救急外来を受診した。この方は5月に食欲不振・嘔吐で内科に入院した。重度の貧血があり、胃癌による幽門狭窄と判明した。外科医と相談してバイパス手術を予定していたが、さらに感染巣不明の発熱もあり、結果的には感染性心内膜炎だった。抗菌薬投与して、なんとか胃空腸吻合術にこぎつけた。

 術後経過は良好で退院可能となった。普通はそのまま外科で経過をみるが、心内膜炎の問題があり、内科外来で経過をみることになった。月に1回内科外来に通院していたが、畑仕事をしているという元気さだった。

 早朝に腹痛で受診した時は、外科医(手術した外科医ではない若い先生)が当直だった。腹部X線・CTで腹腔内に大量の空気が漏れていて、胃癌の穿孔と判断された。家族と相談して、保存的に経過をみることになった。手術をした時に、3~6か月くらいもてば、という話になっていたので、家族もその方針に同意したそうだ。

 入院後、経過は良好だった。再検しても腹腔内の空気はあまりかわらなかったが、ガストログラフィンで造影すると、漏れはなかった。穿孔部位は不明ということになる。担当医は何かが(たぶん大網)うまく覆ってくれたのではないかという。全粥食を食べても問題がないので、「退院させますから、また内科外来でお願いします」、と言われた。何で丈夫なんだろう。

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急性間質性肺炎

2016年10月26日 | Weblog

 

 今日は内科再来の予約数が多く、予め次回予約日の検査などを入力して、診察時間を短くできるよう準備していた。やっとあと2名というところで、外科の先生から紹介があった。深部静脈血栓症で通院している82歳男性(ワーファリン内服)だった。

 4~5日前から体調不良が続いていて、その内容は食欲不振・微熱・息切れだった。奥さんが病院受診を勧めたが、いやがっていたそうだ。今日が外科外来予約日だったので、予約日まで待っていたのだろう。外科で血液検査を行うと、白血球数は正常域だが、CRPが9だった。酸素飽和度も86~88%(室内気)と下がっていた。もともとがDVTなので、胸腹部造影CTが行われた。肺血栓塞栓症は否定的で、両側肺にスリガラス様陰影がびまん性にあった。

 外来を済ませて、胸部CTを見ると、確かに両側肺野にびまん性に間質性陰影が広がっている。浸潤影はなかった。DVTの検索として、8月にCTが施行されていた。比べてみたが、肺野条件での記録がなかった。放射線科の技師さんに肺野条件で描出できないか聞いたが、もう残っていないので、縦隔条件をいじって肺野条件っぽく出してもらった。間質性陰影はないようだ。

 聴診すると両側下肺にVelcroラ音が聴取される。検査ではLDHが上昇していた(他の肝機能は正常域)。ご本人は案外元気というか苦痛を訴えず、奥さんに訊かないと良くわからない。

 急性間質性肺炎と判断した。間質性肺炎は呼吸器科のある病院に紹介しているので、さっそく地域の基幹病院呼吸器科の先生に連絡した。すぐに診てもらえることになり、紹介状と画像を入れたCDを持たせて紹介とした。

 

 

 

 

 

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内科学会生涯教育講演会・続き

2016年10月25日 | Weblog

「悪性リンパ腫」 悪性リンパ腫は成熟リンパ球から発生する造血器腫瘍(幼弱なリンパ球から急性リンパ性白血病、成熟リンパ球から悪性リンパ腫、形質細胞から骨髄腫が発生)。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫(今はB細胞性とT/NK細胞性)に大別される。診断は組織診断なので、とにかく生検が需要。WHO分類では形態(組織診断)のみではなく、遺伝子・表面マーカー・染色体・臨床情報などすべての利用可能な情報で分類する(using all available information. no one gold standard.)。

 (古典的)ホジキンリンパ腫の治療は、限局期はABVD療法4コース+放射線療法(30Gray)、進行期はABVD療法6~8コース。新規治療として、ブレンツキシマブベドチン(抗CD30抗体+モノメチルアウリスタチンE)、抗PD-1抗体ニボルマブ(リンパ腫細胞PD-1リガンドとT細胞PD-1との結合をブロック)がある。20歳代と60歳代発症のピークがあり、若年者では二次発癌(25年で27.7%)などの晩期毒性の軽減が重要。

 非ホジキンリンパ腫の治療は、抗CD20キメラモノクローナル抗体リツキシマブが有用。濾胞性リンパ腫は経過が緩徐(年単位)で疾患との共存をはかる。無治療経過観察かリツキシマブ単剤かリツキシマブ併用化学療法。びまん性大細胞性B細胞リンパ腫は最も頻度が高い(30~40%)。リツキシマブ併用CHOP療法(R-CHOP療法)が標準療法で(実施可能な状態であれば)約50%は治癒可能。活性化B細胞由来(予後不良)と胚中心性B細胞由来に大別され、前者にはブルトン型チロシンーゼ阻害薬イブルチニブ、免疫調整薬レナリドミドが開発中。

白血病」 発生頻度は、急性骨髄性白血病(AML)が50%、慢性骨髄性白血病(CML)が20%、急性リンパ性白血病(ALL)が20%、慢性リンパ性白血病(CLL)が10%。経過から、無治療で週の単位で急速に進行する「急性」と年の単位で緩徐に進行する「慢性」に、腫瘍化する細胞の種類から、骨髄球系の「骨髄性」とリンパ球系の「リンパ性」に分類。腫瘍細胞の起源からは、CMLは造血幹細胞由来、AMLとALLは造血前駆細胞由来(骨髄球系とリンパ球系)、CLLは成熟リンパ球由来。(リンパ球系は前駆細胞の段階で骨髄を出てから成熟して、骨髄球系は骨髄内で成熟してから骨髄を出る

 CMLは遺伝子転座で形成されるBCL-ABLが生じて発生する。CML慢性期の第一選択はABLチロシンキナーゼ阻害薬のimatinib、nilotinib、dasatinib。腫瘍細胞量を著減できれば20~40%はABL阻害薬を中止(治癒)できる。AMLは完全緩解率70~80%、5年生存率30~40%で治癒が期待できる。(化学療法からの回復で、白血病細胞の増殖よりも正常細胞の増殖が勝るため、しだいに白血病細胞細胞を減少させることができる

 成人T細胞白血病/リンパ腫ATLLは、HTLV-1キャリアの5%が発症(生涯発症率)。母乳・精液のリンパ球で感染。リンパ腫型・急性型(aggressive type)に多剤併用化学療法。抗CCR-4抗体mogamulizumabは化学療法抵抗例に効果あり。同種造血幹細胞移植で長期生存例も。

「腎と多臓器相関」 8人に1人は慢性腎臓病(CKD)で、75歳以上ではほとんどがCKD相当。CKDは死亡リスク、心血管イベントリスク、入院リスクを高める。透析に至る疾患として、第1位の糖尿病腎症は頭打ち~若干減少、第2位の慢性糸球体腎炎は減少。腎硬化症(原因は高血圧症、加齢)は増加してきて、いずれ第2位になる。日本の維持透析療法の治療成績は世界トップ。透析の最大死因は心不全。

 腎臓はレニンで血圧維持に、エリスロポエチンで貧血に、ビタミンD活性化で骨に関与している。また腎臓はリンの調節臓器で、リン負荷により、血管石灰化から虚血性心疾患・脳血管障害を、心臓弁石灰化から心不全をきたす。線維芽細胞成長因子23(Fibroblast Growth Facter23:FGF23)が生命予後の指標になる。CKDに対するたんぱく制限食はそのままリン制限食であった。(卵白は唯一リンを含まないたんぱく) 腎性貧血でエリスロポエチン正常域は、貧血に対応して増加していないので、異常。

「新興感染症」 新興感染症は1970年以降に新しく認識された感染症。森林開発・動物との濃厚な接触・人口密度の増加・国際的な梗塞大量移動から、局地的な感染症にとどまらず世界的に流行する可能性がある。国際的な旅行者は年10億人。日本人の出国は年1600万人、訪日外国人は1900万人(中国人34%、韓国人20%)。1997年の鳥インフルエンザ(H5N1)、2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年の中東呼吸器症候群(MERS)、2013年の鳥インフルエンザ(H7N9)など。

 鳥インフルエンザ(H5N1)は800人以上が感染して致死率約50%m、鳥インフルエンザ(H7N9)は約800人が感染して致死率約40%。ヒトへの感染はあまり起こらず、ヒトからヒトの感染がないことから終息へ。中東呼吸器症候群(MERS)、中東のアラビア半島(主にサウジアラビア)で流行。MERSコロナウイルス(MERS-CoV)でコウモリからヒトコブラクダを介してヒトへ感染。重篤でワクチンも治療薬もない。MERSのR0(アールノート、基礎再生産数)は0.60~0.69と高くない点ではパンデミックの可能性は低いが、スーパースプレディング現象(1人の患者から多くの感染が起こる現象)も観察され、局地的なアウトブレイクの可能性は高い。

「サルコペニア・フレイル」 加齢とともにしだいに骨格筋量と筋力が低下する。極端に筋肉量・筋力が低下するとサルコペニアと診断され、ふらつき・転倒につながる。フレイルfrailty(加齢に伴う症候群=老年症候群)は、多臓器の生理的機能低下・身体機能低下した状態で、要介護状態に至る前段階。1)体重減少(半年で2~3Kg)、2)疲労感(2週間)、3)活動量低下(1週間以上運動してない)、4)緩慢さ(歩行速度低下0.8~1m/秒以下、5)虚弱(握力低下男性26Kg、助成18Kg以下。ペットボトルのフタが開けられない)、の5項目のうち3つ以上当てはまればフレイルと診断。

 タンパク同化は必須アミノ酸が促進する。高齢者のタンパク推奨量は1g/Kg体重/日。アミノ酸が閾値以上にならないと、タンパク質は合成されない。高齢者は閾値が上がっている。運動すると閾値が下がる(合成されやすくなる)。

 

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内科学会生涯教育講演会

2016年10月24日 | Weblog

 日曜日は、内科学会障害教育講演会Bセッションに出ていた。約30分の講義が9つなので、そのうち3つくらい参考になる講演があればというところだ。

 「心不全」  心不全による死亡は7万人/年で肺癌と同じくらい。65歳以上の10%以上で心不全を認めるので、今後爆発的に増加する見込みという。重症心不全(NYNA Ⅳ)では年間死亡が50~60%。EF50%以上の心不全HFrEF(ヘフレフheart failure with reduced ejection fraction)より、EF40%以下のHFpEF(ヘフペフheart failure with preserved ejection fraction)の方が多い。HFrEFとHFpEFで生命予後に差はない。二次元スペックルトレッキング法で、HFpEFでは健常者に比べて、global longitudinal strain(GLS)が低下していて、EFで判定できない心筋障害を評価できるそうだ。

 HFrEFの治療はACE阻害薬またはARB・β遮断薬にアルドステロン拮抗薬・利尿薬を加えて治療するが、HFpEFは有効な治療法が確立されていない。β遮断薬は同じクラスならどれでも同じではなくて、カルベジロール(アーチスト)とビソプロロール(メインテート)のみ(それも心不全としての用量になるのだろう)。一方ACE阻害薬やARBは、クラスエフェクトであり、どれでも同じ効果がある。新規の心不全治療薬としては、Ifチャネル阻害薬Ivabradine(洞結節の心拍数を低下させる)、ARB・ネプリライシン阻害薬LCZ606(心房利尿ペプチドが増加)がある。

 アルブミン尿は心不全予後不良因子で、心不全患者では糸球体障害のみならず、尿細管障害も高率に合併しており、両者を合併する心不全は著しく予後不良となる(心腎連関)。また心不全に、睡眠時無呼吸や反省閉塞性肺疾患を合併すると予後不良となる(心肺連関)。非薬物療法として、左脚ブロックなど心室同期不全のHFrEFに心臓再同期療法(CRT)(劇的に改善する症例、30~40%に無効例)と、睡眠時呼吸障害にAdaptive servo ventilation(ASVがある。

 心不全の急性増悪(入院)の要因(患者側)として、塩分水分制限の不徹底、治療薬服用の不徹底がある。β遮断薬を降圧薬と思って休薬させるなど、他の科に医師の理解不足で悪化することもある。

 「降圧療法」  高血圧症の治療目標は達成率は、男性30%女性40%で、未達成では心血管イベントリスクは抑制されない。血圧=血流×血管抵抗で、高血圧を、血流増加型か血管抵抗増加型か判断して、それに見合った降圧薬を選ぶ。

 塩分過多では、昼間だけで排泄できず、夜間まで血圧を上げる。 夜間高血圧は血流増加型の高血圧で、降圧利尿薬による塩分排泄塩分摂取制限が降圧に有効。血管リモデリングが起こると、血管抵抗が増加して、血圧の変動が大きくなる。血圧変動増加は血管抵抗型の高血圧で、血管拡張作用のある降圧薬を使用する。それぞれ逆の降圧薬を選択すると、降圧効果が減弱して、副作用が表れる。

 糖尿病の昇圧機序はインスリン抵抗性で、塩分貯留による血流増加と血管リモデリングによる血管抵抗増大をきたす。糖尿病合併高血圧症では、血流増加型(初期から)と血管抵抗増加型(中期以降)の二つの病態が混在する。RA系阻害薬(ACE阻害薬・ARB)を初期から使用して、第二選択としては初期には利尿薬、中期~後期にはCa拮抗薬などの血管拡張型降圧薬を使用する。

 β遮断薬は、心不全リスクを低下させるが、脳卒中にリスクについては、60歳未満では低下させるが60歳以上では増加させるため、降圧薬の第一選択から外された。降圧薬はアドヒアランスが重要で、飲まなければ血圧下がらない。

「COPD」 COPDでは、末梢気道病変(細気管支)により気道抵抗の増大と気腫性病変(肺胞破壊)が起きている。両者により肺過膨張が生じる(気腫化は静的な=安静時の、気道抵抗は動的な=労作時の過膨張をもたらす)。呼吸機能低下は身体活動性の低下につながる。

 LAMA、LABAの使用でそれぞれ1秒量FEV1.0が150ml増加して、併用すると250ml増加する。肺容量が低下して、運動能力が25%改善する。身体活動性も増加する。疾患が進行すると、肺胞破壊・気管支壁肥厚・気道分泌物貯留が増加するので、LAMAで進行を抑える。吸入ステロイドは使用してもしなくてもCOPDの増悪は同じ。ACOS(喘息の要素がある)の時に使用する。

 慢性疾患で通院中の患者さんの中に、未診断のCOPDが多い。、スパイロで1秒量(率)の低下があれば8割はCOPD(その他は喘息など)。個人的にも、喘息に比べてCOPDはちゃんと診断・治療していない。

「肺癌」  分子標的治療薬(EGFR変異)や免疫チェックポイント阻害薬の話。整理できてない。

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肩と肺

2016年10月23日 | Weblog

 左肩痛で整形外科に入院した74歳男性。前週に整形外科医院を受診して、肩関節の局注を受けていた。左肩発赤・腫脹・疼痛が改善しないため、当院の整形外科を受診した。発熱・炎症反応上昇があり、化膿性肩関節炎が疑われて入院した。血液培養2セットが提出された。担当は初期研修で臨床各科をまわった若い整形外科医だった(ナイスな対応)。

 肩関節部の症状は抗菌薬開始で改善した。MRIの結果は関節炎ではなくて、軟部組織の蜂窩織炎相当ということだった。ところが、入院翌日上背部痛を訴えた。翌日には血液培養の中間報告でグラム陽性球菌の報告が来た。化膿性脊椎炎疑いとしてMRIが行われたが、脊椎炎はなく、やぶにらみで右肺病変が指摘された。改めて、胸部CTで確認すると右側に液体貯留を認め、そこから葉間胸膜までつながっていた(vanishing tumorのような形態だった)。ここで内科の先生にコンサルトがきた。

 入院日の胸部X線は一見異常がないように見えたが、昨年撮影された胸部X線と比較すると、右CP angleが若干dullだった。翌日、翌々日と胸部X線で追うと、液体成分は日に日に増加して、炎症反応もいっしょに増加した。胸腔ドレナージが必要な病態(膿胸)と判断され、基幹病院の呼吸器科に依頼したところ、翌日転院で診てもらえることになった。血液培養の結果は2セットからブドウ球菌(MSSA)が検出された。

 蜂窩織炎(肩部)から膿胸ということなのか。蜂窩織炎自体は局注と関連しているのか。

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タバコはやめられない~COPD急性増悪

2016年10月22日 | Weblog

 金曜日の早朝に慢性閉塞性肺疾患(COPD)の71歳女性が救急搬入された。当直の外科医が入院させて、前回入院時の治療(点滴・ステロイド・抗菌薬)をしていた。朝病院に着くと、入院させたので、と申し送りがあった。

 この方は昨年の春と今年の春に、COPDの急性増悪で入院していた。喫煙がやめられない。ひとり暮らしで、近所の方が姿が見えないと心配して自宅を訪問してくれる。今回は搬入の3日前に呼吸苦で外来を受診したが、入院したくないと帰宅していた(ステロイドの抗菌薬の点滴)。自分で運転してきた車で帰るというので、看護師さんがせめてタクシーを呼んで、調子が悪い時は翌日来院するよう勧めたが、無駄だった。

 躁うつ病で精神科病院に通院していて、睡眠薬を飲んでいる。二酸化炭素分圧が高く、入院する時はSpO2を90%前後にしている。入院当初は「酸素をはずし、点滴もはずし」なので、やむなく抑制しているが、体幹ベルトは体格が良すぎて付けられない。NPPVは無理。看護師さんは律儀に吊り上げて入院時の体重測定をしていて、90Kgだった。見たことのない柄の病衣を着せられていたが、この患者さん専用?の大きめサイズだという。

 身寄りは首都圏にいる姉で、前回入院した時は、自分も体調が悪くてとてもすぐには行けません、といっていたが数日後に来てくれた。タバコはやめない。軽度~中等度の悪化では受診しない、入院するとタバコが吸えないので入院拒否がある、などの問題があり、どこかで急変もあると伝えていた。

 入院すると3日後くらいには良くなって、ベットの上にどっかりとすわって退院したいと言い出すが、今回はどうなるか。

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