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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

うっ血性心不全

2025年06月26日 | 循環器疾患

 6月21日(土)の日直の時に、施設の嘱託医をしている市内の内科クリニックの先生から連絡が入った。施設入所中の80歳代後半の女性が、心不全で浮腫が増加して酸素飽和度も低下しているという。入院治療をお願いしたいということだった

 そこの施設は入院治療を要する時は当院が協力病院になっていて、依頼できることになっている。連日利尿薬のラシックスを筋注していても改善しないという点が気になったが、来てもらうことにした。

 手足の浮腫でぎりぎり点滴はできそうだが、同時に採血は無理そうだった。血液ガス分析も行うので、動脈からの採血とした。普通の注射針だと、採血時に針先がずれてしまったりするので、翼状針を刺して三方活栓につけた注射器で引くようにしている。

 低酸素はあるが(酸素吸入2L/分を要する)、高二酸化炭素ガス血症はなかった。炎症反応は陰性で、肺炎の併発はなさそうだ。胸部X線・CTで両側胸水貯留があるが、肺うっ血・水腫は軽度だった。血圧は120~130で、クリニカルシナリオ2になる。

 古典的なフロセミド注・カンレノ酸カリウム(ソルダクトン)注と、カルペリチド(ハンプ)点滴静注で開始した。土日の尿量が1日500mLちょっとで出が悪くて困ったが、6月23日からSGLT2阻害薬内服を追加すると、その後は3000mL~2000mLと良好だった。

 浮腫は漸減して、これまで見えなかった上肢の末梢静脈が浮き上がって見えるようになった。ただ入院時からの喀痰排出が同じだった。胸部X線での心不全所見は改善してこない。

 浮腫が改善しているのに、胸水と肺うっ血・水腫の改善に乏しいのはなんだろうと思っていたが、今日は喀痰が少なくなったという。やっと引けてきたようだ。(食事摂取良好で、認知症もなくしっかり症状を話せる)

 カルペリチド点滴静注と利尿薬静注への反応が今一つで、SGLT2阻害薬が一番効いたような経過だった。点滴・静注は漸減中止して、エンレスト内服・利尿薬内服に切り替えることにした。

 もともと高血圧症・糖尿病もある。 入院後に血圧はしだいに上昇して150~170になったのが、肺所見の改善に乏しさにつながったのだろう。エンレスト400mg分2・Ca拮抗薬で血圧は130程度になった。気管支喘息があり、βブロッカーは使用し難い。

 

 受診時、家族に循環器科のある病院への搬送を相談したが、そこまでしなくてもということになった。23日に診た時は治療薬に対する反応が悪く、搬送した方がよかったかと思われたが、何とかなりそうだ。

 施設でラシックス注を5日間しても良くならないという紹介だったが、2日くらいして反応に乏しければ紹介とした方がいいと思う。

 

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高齢者のSGLT2阻害薬

2025年06月12日 | 循環器疾患

 6月11日(水)に80歳代後半の女性が、泌尿器科(非常勤医)からの紹介で内科外来を受診した。最近食欲不振・嘔気があり、体重減少(3kg)もある。内視鏡検査は受けていないとあったのは、消化管悪性腫瘍の精査をという意味らしい。

 再来が多い日で11時の予約だったが、12時過ぎになった。来院してからは処置室のベットで休んでいたので、診に行った。会話は普通にできて認知症ではないようだ。いっしょに外来診察室まで歩いて来てもらった。

 

 もともとは高血圧症・糖尿病で市内の消化器系のクリニックに通院していた。今年になって、心房細動(発作性だった)になったので、市内の循環器科のクリニックに紹介されていた。

 心不全と糖尿病の治療も兼ねてSGLT2阻害薬(ジャディアンス10mg)が開始された。経口血糖降下薬も、それまでのエクメットHD2錠(エクア50mg+メトホルミン500mgを朝夕2回)にメトホルミン250mg錠朝夕2回が追加されたので、メトホルミンは1500mg/日に増量になっていた。

 SGLT2阻害薬の効果は3か月で3kgくらいの減量にはなるので(1日ブドウ糖約400Kcalが強制的に尿に排出される)、体重減少は効果そのものということになる。

 メトホルミンは初期量の500mg/日から、1000mg/日、1500mg/日と漸増すると嘔気・下痢・食欲不振の副作用が増加する。本来は75歳以上には新規に投与しないことになっていて、それまで投与されていれば継続可だが年齢的には1日500mg/日だろう。

 心電図では心房細動ではなかった(規則的なリズムだが心房調律)。浮腫はなく、減量を反映してお腹の皮膚がたるんでいた。現在SGLT2阻害薬は心不全のほぼファーストチョイスになっているが、高齢者(それも80歳代後半から90歳代)には向かないようだ。

 この患者さんは元々は体重が多めだったが、12日に地域の基幹病院から転院してきた90歳代前半の女性(サルコぺニア。フレイル)は、体重30kgでSGLT2阻害薬(ジャディアンス10mg)が処方されていた。

 体重減少や食欲不振・嘔気は薬剤性の可能性があるので、まず減薬して経過をみてみましょう、ということにした。ジャディアンスは休止して、エクアLD(エクア50mg+メトホルミン250mg)のメトホルミン500mg/日とした。

 

 HbA1cは6.8%だったので、減薬してもその分の血糖上昇は7.5%くらいに留まるのではないか。減薬した分、糖尿病と心不全の治療は弱めたことになるが、そこはバランスの問題だ。

 悪性腫瘍の検査としては、おおざっぱな検査にはなるが負担の少ない胸腹部単純CTで確認することにした。明らかな腫瘍は認めななかった。炎症反応は陰性で、感染症も否定的だった。

 

 泌尿器科医としては、膀胱炎をきたしたので受診時にその旨を伝えるよう指示していたが、SGLT2阻害薬は継続になっていた。ちなみに、現在入院している70歳代前半の女性は急性腎盂腎炎・菌血症で、別の医院からやはりSGLT2阻害薬が処方されていた。

 大規模臨床試験の結果エビデンスが出ていると、それに従わなければならないようになる。しかし、そもそもそういう試験は65歳未満の患者さんで行っていて、高齢者は対象外になっている。(超高齢者の臨床試験なんて、有意差が出せないから絶対にやらないだろう)

 

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発作性上室性頻拍

2025年03月23日 | 循環器疾患

 3月21日(金)の午前中に病院の駐車場にドクターヘリが来ていた。ドクターヘリが来ると、院内にアナウンスが流れる。

 ドクターヘリは大学病院と医療センターのドクターが交代で務めている。救急隊が重症でドクターヘリを要請すると、当院の駐車場を使用して、救急車からヘリに患者さんを移動させて高度医療機関に運ぶことになっている。

 ただし、当院でも対応可能と判断されると、ヘリに乗せないということがある。またヘリに乗せても高度医療機関まで持たないと判断された時も、そのまま当院の救急室に運ばれて来る。

 

 その日は当院で血液透析を受けている50歳代半ばの男性が、前胸部絞扼感を訴えて救急要請した。救急隊は急性心筋梗塞と判断してドクターヘリを要請したそうだ。

 ヘリのドクターは心電図検査と心エコー検査(ヘリに搭載)を行って、急性心筋梗塞は否定された。ヘリで搬送しないことになり、当院受診となった。透析を診ている腎臓内科の若い先生が救急室で対応した。

 心電図では発作性上室性頻拍(PSVT)を認めて、心拍数が180/分だった。ベラパミル注を行って、心拍数は140/分程度になったが、血圧が60mmHgと低下した。透析患者なので急速輸液がし難い。

 腎臓内科医はアデホスLコーワ注を使うことにした。あまり使う機会がなかっため、他の医師に確認したくなったようだ。循環器に詳しい先生がその日はいなかった。当方に連絡が来たが、こちらも2回くらいしか経験はない。(もっぱらベラパミルで治療して大抵は成功)

 その日は新規入院・家族説明複数・勉強会開催と忙しく、その時もちょうど新規入院を診ていた。それでいいと思います、と伝えた。

 アデホスLコーワ注で洞調律に戻り、血圧も回復した、と後から聞いた。急速静注直後に一瞬心静止になってから洞調律になるので、その時は気持ち悪かったといっていた。その日は透析日だったので、そのまま透析室で透析となり、ベラパミル内服で予防的な治療を継続していた。

 ちなみにアデホスLコーワ注を発作性上室性頻拍に使用するのは、保険適応外なのだった。

 

 急性心筋梗塞は地域の基幹病院循環器内科で対応してくれる。救急車で当院から30分以内(道路が混んでなければ20分で)に到着するので、そのまま救急車で搬送でいいのではないかと思ってしまう。

 ドクターヘリは「要請が少ないと実績にならないため、時々飛ばしている」と悪口をいわれることもあるらしい。超高次医療機関に直接つながる貴重な医療資源だと思うが、連れて行かずに残される病院もちょっとつらい。

 

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急性大動脈解離

2025年03月10日 | 循環器疾患

 3月6日(木)は内科の若い先生が当直だった。午後5時半ごろに医局のラウンジに行くと、当直医が夕食を食べていて(午後5時には配膳される)、別の内科医と皮膚科医がいた。

 皮膚科医が、地域の基幹病院では4月から2名いた皮膚科常勤医が移動という話をしていた。大学病院から出張の非常勤医だけになるそうだ。県庁所在地の重点病院に回すことになったという。

 病院のひとり皮膚科だと、皮膚科重症疾患(Stevens-Johnson症候群・TEN・DIHS、広範熱傷)は診られない。今後は大学病院に送ることになると言っていた。

 

 帰りに救急室の前を通ると、救急外来に患者さんが来ていて、画像検査に回ったらしい。救急搬入ではなかったので、急性期病棟は満床だったが、外来治療でいいのだろうと思いながら帰った。

 翌日確認すると、そうではなかった。市内の整形外科クリニックからの紹介だったが、急性大動脈解離だった。

 患者さんは80歳代前半の男性で、3月2日の夜に息子と親子げんかになった。仰向けの倒れたところに、息子が膝で前胸部を押した。

 その後から前胸部痛が続き、翌3月3日に整形外科クリニックを受診した。X線で骨折なしと判断されて、湿布が処方された。6日になって背部痛も出現したために、同クリニックを再度受診して、当院紹介となった。

 胸部単純X線ではわかりにくいが、胸部CTで大動脈起始部から胸部大動脈にかけて解離を認めた。単純CTだけだったが、石灰化が大動脈の内腔側に来ていて、部位によっては解離腔の濃度が違いがわかりやすい。

 点滴や血液検査はしていなかったので、造影検査までするよりは、すぐに搬送した方がよいと判断したのだろう。循環器病センターのある専門病院に救急搬送していた。

 これは外傷性?、親子げんか時にたまたま発症?。

 

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急性心筋梗塞

2025年02月03日 | 循環器疾患

 1月27日(月)、内科外来を診ていた。内科外来担当の看護師さんが、前週の金曜日(1月24日)受診した急性心筋梗塞の患者さんの話をしていた。

 その日、70歳代前半の男性が前日夜から頸部から胸部上部が痛くて眠れなかったという訴えで受診した。症状は持続している。

 高血圧症で当院の内科外来(大学病院の医師)に、膝関節症で整形外科に通院していた。昨年から右肩の痛みもあった。患者さん本人は整形外科を受診するるつもりで来ていた。

 37.5℃の発熱があり、血圧85/51mmHg(脈拍数77/分、酸素飽和度98%)と低下していたこともあり、看護師さんの判断で内科外来に回されていた。

 心電図・胸部X線・胸部CTがオーダーされた。最初に行った心電図で、Ⅱ・Ⅲ・aVFで典型的なST上昇を認めた。そのまま救急室に移動となり、点滴ライン(ソルラクト500mL)を入れて、すぐに地域の基幹病院循環器内科に救急搬送となった。

 (胸部X線とCTは中止になったので、心不全の所見を呈していたかはわからない。下壁梗塞だと右室梗塞を併発する可能性がある。)

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心不全のはず

2025年01月16日 | 循環器疾患

 1月15日(水)に医局のコンピュータの置いてある部屋で、外来受診した患者さんの画像を見ていた。内科の先生が前日に受診した患者さんの画像を出して、声をかけられた。

 患者さんは50歳の男性で、通院している市内の内科医院から肺炎・胸膜炎の疑いとして紹介された。内科医院で高血圧症・糖尿病の治療をしていて、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)で大学病院にも通院していた。

 2019年に胸痛で当院の循環器科(当時はあったが、その後は閉科)を受診した。心エコーで左室の全周性肥厚を認めるが、心電図では左室肥大の所見はない。心臓カテーテル検査では右冠動脈の50%狭窄のみで、βブロッカー内服で経過観察となっていた。

 

 昨年末に胸部痛(胸骨裏面)の痛みがあり、体動時に痛むということで筋骨格系の痛みとしてNSAIDsを処方して軽快したそうだ。1月13日から再度同様の痛みが生じて受診した。ただ今回は、胸部X線で両側胸水と両肺野に透過性低下があった。

 当院を受診した時は、血圧124/85・脈拍数114/分・体温37.1℃で酸素飽和度が80%台と低酸素を呈していた。

 心電図ではほとんど異常なしだった(機械読みでは非特異的T波異常)。胸部CTで確認すると、両側胸水と肺うっ血を認める、ように見える。

 白血球11100・CRP1.5と感染症急性期の所見のような結果だった。BNPは7.6と正常域で、心拡大がなく、むしろ小さめに見えることから心不全とはし難かったそうだ。

 ちょうど当院はその日入院ベットがなかった。基幹病院呼吸器内科に肺炎・胸膜炎として紹介すると、幸いに受けてもらえたそうだ。

 肺炎なのかといわれると、説明し難い。画像所見は心不全にしか見えない。確かに心不全の所見として疑問のところはあるが、もともと肥大型心筋症は間違いなくある。

 心不全ならば、基幹病院内で呼吸器内科から循環器内科に回されるので問題はないか。当院としては「高次医療機関に搬送」でよかったのだろう。

 

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肺血栓塞栓症(その後)

2025年01月14日 | 循環器疾患

 12月11日に記載した、大学病院に救急搬送した肺血栓塞栓症の70歳代後半の女性のその後。

 12月末に腎臓内科の若い先生から、12月9日に大学病循環器内科に救急搬送した患者さんが、年明けに戻ってくると話してくれた。実際に年明けに当院に転院となった。

 多発性嚢胞腎で慢性腎不全があり、大学病院で血液透析を行ったことから、腎臓内科に転院依頼が来ていたのだった。

 

 当院から大学病院に搬送後、大学病院ではヘパリンによる抗凝固療法を開始した。その日の夜間に心室頻拍(VT)が発症して、cardioversionを行っていた。

 翌日に胸部造影CTを行うと、両側肺動脈に血栓塞栓像があり、特に右肺動脈は近位でほぼ完全に詰まっていた。左下肢の静脈に深部静脈血栓症を認める。

 

 肺血栓塞栓症が再発して、抗凝固薬による保存的治療継続の猶予がないと判断されて、心臓血管外科で右肺動脈血栓摘除術(開胸)が行われた。

 胸水増加・無気肺、NPPVの施行など術後も大変だった。CHDF(continuous hemodialysis and filtration:持続血液濾過透析)が行われたが、その後2週間くらいで離脱した。

 ただ血清クレアチニン以前の3mg/dL台から5mg/dLに上昇していた。通常の慢性透析導入は、廃用症候群の寝たきり状態では適応にならない、という問題がある。

 摂食もできず、経管栄養が行われている。どこまで治療するか、家族と相談になるようだ。

 

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肺血栓塞栓症

2024年12月11日 | 循環器疾患

 12月6日(金)の当直の時に、7日午前2時過ぎに70歳代後半の女性が救急搬入された。トイレに行って戻る時に倒れたということだった。救急隊到着時に血圧が70/50mmHgと低下していた。

 搬入中に血圧が170mmHgまで上がったというが、搬入時は107/87mmHgだった。酸素飽和度は92~94%(室内気)。意識は清明で普通に会話ができる。体温36.3℃。手足の冷感があって、寒いと訴えた。

 

 この患者さんは内科医院に高血圧症・慢性腎臓病で通院していた。今年の1月に腎機能の悪化で当院の腎臓内科に紹介されている。多発性嚢胞腎polycystic kidneyがあった。家族(娘2人)の検査も行われていた(なかった)。血清クレアチニンは3mg/dL台でいずれ悪化した時は透析予定となっている。

 胸痛や呼吸苦の訴えはなかった。心電図は洞調律で右脚ブロックだけで虚血性変化はなかった。(以前は右脚ブロックはなかった)血圧低下なので脳血管障害は否定的だが、念のため撮影して異常はなかった。胸腹部CTで心拡大はあるが、肺野に異常はなかった。

 血液検査(試験紙使用の簡易検査)では白血球10300・CRP3.2と軽度の炎症反応上昇を認めた。肝機能は異常なかった。CTで以前から肝臓の左葉を中心に小嚢胞の多発があるが、前回と同様だった。(時間外は凝固検査はできない)

 家族の話では腎盂腎炎を繰り返しているということだった。(入院はしていないので膀胱炎くらいなのか、発熱を伴ったのか詳しくはわからない。

 尿路感染症疑いとして、入院で点滴・抗菌薬で経過をみることにした。入院すると、午前8時に病棟から血圧が80mmHg台と連絡がきた。呼吸苦は訴えないが酸素飽和度も90~92%だった。

 酸素吸入2L/分を開始して、補液1000ml追加で血圧は100~110台になって、通常の持続点滴だけ(1500ml/日)で安定した。尿路感染症からの敗血症性ショックになった可能性を考えていた。

 発熱が見られないのは感染症としての重症度が高いのかもしれない、尿路感染症を繰り返していて起炎菌は通常の菌種ではなく、難治の大腸菌ESBLなどかもしれない。抗菌薬をセフトリアキソンからメロペネムに変更した。

 そのまま週末を過ごして、バイタルは同様だった。12月9日(月)に病棟に診に行った、血圧は100~110mmHgだが、元々高血圧症なので血圧が低下していることになる。手足の冷感はまだあった。

 

 外来で診ている腎臓内科の若い先生と相談していたが、別の内科の若い先生が、CTで肺動脈内に血栓があるようだと指摘してくれた。見直すと右肺動脈と左肺動脈の分枝に血栓を示唆する高濃度物質を認める。血液検査で凝固検査も提出していたが、Dダイマーが18.7と上昇していた。(もっと高値でもいいくらいだが)

 肺血栓塞栓症だった。心エコー検査を検査室に緊急で依頼すると、右房・右室の拡張を認めた。(当院の心エコーは他院の検査技師が月曜日だけ来て行っている)

 多発性嚢胞腎による慢性腎臓病(今回は血清クレアチニン4.4mg/dL)もあり、そこに肺血栓塞栓症が発症している。全身管理になると思われて大学病院救急科に連絡した。

 若い(声で判断)女性医師が出られて、それは循環器内科でしょうといわれた。親切に循環器内科の先生に回してくれた。病状を説明して、地域の基幹病院は受け入れ不可だったことを伝えると、受けてくれた。家族にも連絡して救急搬送となった。

 

 改めて両下肢を確認したが、腫脹・疼痛はなかった。深部静脈血栓症があるはずだが、診察上はわからない。多発性嚢胞腎で下大静脈に影響が出るのか。

 トイレに行って突然倒れたことから、その時に発症した可能性もある。ただその日の昼から体調が悪く、昼食摂取はわずかで、夕食は食べられなかったという。救急車内で急に血圧が上昇したということもある。肺動脈内の血栓が詰まりかけたり、外れたり(あるいは末梢に流れたり)と変化した可能性がある。週末急変しかったのは運が良かった。

 

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急性大動脈解離

2024年12月03日 | 循環器疾患

 12月2日(月)は内科外来に出ていた。再来を診ながら新患も診ている。当院の内科外来は2診体制で、月曜日は大学病院(循環器内科)から来てもらっている先生と2人で診ている。

 外来の看護師さんが「急性大動脈解離の患者さんが」と慌てていた。前日から前胸部痛が続く60歳代後半の男性が、大学病院の先生の方に回されていた。

 前日の午後6時ごろ、「夕食のラーメンを食べていて最後の一口を飲み込んだ時」に突然前胸部痛が出現した。胸痛は続いていたが受診はせず、そのまま月曜日まで我慢して受診した。 (普通に自分で病院まで来て、新患として受け付けをした、いわゆるwalk inの患者さん)

 血圧165/103mmHgと高値だった。市内の内科クリニックに高脂血症で通院していて、高血圧症・糖尿病はないらしい。喫煙者だった。

 診察では有意な所見はなかった。心電図は異常なし。胸部X線でも大動脈弓の拡大が疑われる。最初は単純CTで見ていたが、大動脈内腔に石灰化が見えて、解離を示唆していた。造影CTで大動脈弓の頂部から下行大動脈にかけて解離していた。 

 自分の病院の心臓血管外科に連絡していたが、ICU満床で受け入れができなかった。循環器病センターのある専門病院に連絡すると、受け入れ可能で、そちらの病院に救急搬送となった。

 血圧を120未満にするようにと指示があり、ニカルジピン10mg+生食10mlを2ml/時で開始しての搬送となった。

 

 当方の外来には、いろいろ訳ありの新患患者さん(重症ではない)が回されていた。検査しようとしても、この患者さんのことで外来の看護師さんが出払ってしまっていた。

 

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「ねころんで読める心不全」

2024年12月01日 | 循環器疾患

 メディカ出版から「ねころんで読める」シリーズが出ている。たくさん出ていると、当たりと外れがあるが、とりあえず新刊が出ると購入するかどうか検討することにしている。

 今回「ねころんで読める心不全」が出た。大抵は書店(丸善)で内容を確認して購入を検討するが、面白そうなのでamazonで注文した。心不全治療のFantastic 4の話などが分かりやすく記載されている。

 Fantastic 4の導入は、

 SGLT2阻害薬は、基本的に最初から導入。ARNIは血圧に余裕があれば早期に導入。MRAは電解質に注意して(腎機能・血清カリウム)早めに。βブロッカーはうっ血解除後に少量から導入。となっている。

 なにしろ扱っている患者さんたちが80歳代~90歳代なので、SGLT2阻害薬はサルコべニア・フレイルの(超)高齢者に導入していいのかと思ってしまう。というか、導入を躊躇する(しない)ことが多い。

 高齢者でも体格がよい人(体重の有り余っている人)には出しているが。

  

ねころんで読める心不全:症例を通して病態を理解できる/最前線の実践知を知る

 

 「ねころんで読める緩和ケア」は書店で見てから購入検討とした。「ねころんで読めるてんかん診療」は初版が良かったので、改訂2版もamazonで購入した。てんかんの本がシリーズ中で最も良いといわれているらしい。

 

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