6月21日(土)の日直の時に、施設の嘱託医をしている市内の内科クリニックの先生から連絡が入った。施設入所中の80歳代後半の女性が、心不全で浮腫が増加して酸素飽和度も低下しているという。入院治療をお願いしたいということだった
そこの施設は入院治療を要する時は当院が協力病院になっていて、依頼できることになっている。連日利尿薬のラシックスを筋注していても改善しないという点が気になったが、来てもらうことにした。
手足の浮腫でぎりぎり点滴はできそうだが、同時に採血は無理そうだった。血液ガス分析も行うので、動脈からの採血とした。普通の注射針だと、採血時に針先がずれてしまったりするので、翼状針を刺して三方活栓につけた注射器で引くようにしている。
低酸素はあるが(酸素吸入2L/分を要する)、高二酸化炭素ガス血症はなかった。炎症反応は陰性で、肺炎の併発はなさそうだ。胸部X線・CTで両側胸水貯留があるが、肺うっ血・水腫は軽度だった。血圧は120~130で、クリニカルシナリオ2になる。
古典的なフロセミド注・カンレノ酸カリウム(ソルダクトン)注と、カルペリチド(ハンプ)点滴静注で開始した。土日の尿量が1日500mLちょっとで出が悪くて困ったが、6月23日からSGLT2阻害薬内服を追加すると、その後は3000mL~2000mLと良好だった。
浮腫は漸減して、これまで見えなかった上肢の末梢静脈が浮き上がって見えるようになった。ただ入院時からの喀痰排出が同じだった。胸部X線での心不全所見は改善してこない。
浮腫が改善しているのに、胸水と肺うっ血・水腫の改善に乏しいのはなんだろうと思っていたが、今日は喀痰が少なくなったという。やっと引けてきたようだ。(食事摂取良好で、認知症もなくしっかり症状を話せる)
カルペリチド点滴静注と利尿薬静注への反応が今一つで、SGLT2阻害薬が一番効いたような経過だった。点滴・静注は漸減中止して、エンレスト内服・利尿薬内服に切り替えることにした。
もともと高血圧症・糖尿病もある。 入院後に血圧はしだいに上昇して150~170になったのが、肺所見の改善に乏しさにつながったのだろう。エンレスト400mg分2・Ca拮抗薬で血圧は130程度になった。気管支喘息があり、βブロッカーは使用し難い。
受診時、家族に循環器科のある病院への搬送を相談したが、そこまでしなくてもということになった。23日に診た時は治療薬に対する反応が悪く、搬送した方がよかったかと思われたが、何とかなりそうだ。
施設でラシックス注を5日間しても良くならないという紹介だったが、2日くらいして反応に乏しければ紹介とした方がいいと思う。