なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

思いがけない部位

2018年07月31日 | Weblog

 昨日の夕方、内科小児科医院から左半身のしびれを訴える72歳男性が紹介された。発症は先週の金曜日だった。暑さのせい(?)と思っていたが、症状が続いてちょうと薬もなくなるころなので、かかりつけの医院を受診したそうだ。ふだんは高血圧症・糖尿病・慢性腎不全で通院している。

 発症は急で、特に頸椎症を示唆する後頸部痛などもなく、脳血管障害と判断された。脱力はまったくなく、年齢の割に素早い動きだった。ラクナ梗塞が出たのだろうと思った。夕方で予定されたMRIも終わっていたので、頭部MRI検査をすぐに行うことができた。

 放射線室から脳幹梗塞と連絡が来た。画像を確認すると、確かに右橋に梗塞巣を認めた。両側被殻部と左視床にラクナ梗塞が多発していて、これまでも無症候性に起きていたが、今回初めて自覚症状が出たのだった。発症時よりしびれは軽減していた。

 患者さんは入院する気は全くなかった。その日も病院に行くよう指示されたので来ただけで、診察した時も午後5時までは帰りたいと言っていた。ラーメン店をしていて、夕方から忙しくなるということらしい。

 神経内科医と相談した。血清クレアチニン1.5mg/dl程度だが腎障害があり、エダラボンは使用しがたい。すでに72時間以上経過していて、入院してオザグレル点滴静注もちょっとということで、外来で抗血小板薬内服を開始とした。

 十分水分はとっているというが、店の調理場は相当に暑いはずだ。脱水傾向になれば脳循環が低下して、脳梗塞につながったかもしれないから、「暑さのせい」というのは当っていなくもないか。脳幹梗塞を外来で診るというのは気が引ける(良い子は真似しないでください)。

 

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術後肺炎

2018年07月30日 | Weblog

 先週木曜日、胃癌・幽門狭窄の患者さんにCVカテーテルを挿入するため放射線科に行った。なかなか患者さんが病棟から降りて来ないので、CT撮影を見ていた。すると見憶えのある患者さんがCT検査を受けに病棟からベットで降りて来た。

 内科に糖尿病で通院している、肝細胞癌と診断された77歳男性で、先週肝切除術(前区切除)を受けた。術後に高熱があり、胸部CTで両側肺背側に浸潤影を認めて、術後肺炎をきたしていた。手術そのものは順調で、誤嚥するような人ではないが、慢性閉塞性肺疾患があった。

 喫煙を続けていて、禁煙を勧めたが、こればかりはやめられませんと言っていた。咳・痰・息切れで困っているわけではないが、風邪をひくと咳が長引くという。手術前の肺機能検査では1秒率64.0%と閉塞性障害があった。

 こんなところで影響が出てくるとは、やはりCOPDは侮れない。これで禁煙する気になるだろうか。術後にセフメタゾールが使用されていたが、肺炎の診断後はゾシンに変更された。幸い解熱軽快して、食事も開始となった。病理組織は間違いなく肝細胞癌だった。

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麻酔科医の手配がつかない

2018年07月29日 | Weblog

 昨日は内科日直で病院に出ていた。循環器科クリニックから心房細動・心不全の70歳男性が紹介された。慢性閉塞性肺疾患(以前はヘビースモーカーで今は禁煙)があり、4日前から咳がひどく食欲もないという。肺炎併発によるCOPDの増悪という紹介だった。

 喘鳴はなかった。酸素飽和度が97~98%(室内気)だが、呼吸数30~40回/分と頻呼吸で飽和度が保たれているのだろう。胸部X線・CTで肺炎像はなく、心拡大・両側胸水があった。ふだん50程度のBNPが1200と上昇していた。ワソラン・βブロッカーで安定しているはずの心拍数は130~140/分と頻拍性心房細動になっている。心電図上ST上昇はないが、トロポニン・CK・AST・LDHが上昇していた。

 レートコントロールと利尿薬の追加(ラシックス静注やハンプ持続静注)で経過をみるのもあるかと思ったが、冠動脈の評価も必要なようだ。最初から循環器科の専門医に診てもらうことにした。地域の基幹病院に連絡すると、ちょうど内科救急は循環器内科の先生で、快く受けてくれた。

 金曜日の当直帯で内科入院が2名あり、土曜日は内科入院が4名あった。金曜日に入院した何らかのウイルス感染と思われる19歳男性はまだ高熱が続いている。

 来月からバイトで土曜日の日当直に来てくれる若い先生が来ていた。事務から当院の電子カルテの使い方の説明があり、その後は外来で2名だけ実際に患者さんを診てもらった。50歳代の男性が左側腹部痛で受診したので、尿管結石かと思ったが違った。CTで結腸憩室炎と判明して、入院の入力もしてもらった。勤務している病院の電子カルテは富士通だった。当院はNECなので操作がちょっと違うと言っていたが、入力はすぐに覚えてしまった。

 

 外科は他院からの紹介があった。ひとりは内科医院から紹介された46歳男性の急性虫垂炎で、まずは保存的に抗菌薬で経過をみるようだ。

 

 もうひとりは近くの病院から紹介された83歳女性の腸閉塞だった。紹介元の病院で撮影したCTで左閉鎖孔ヘルニアを認めた。外科医は当院で手術する気満々だったが、麻酔科医の手配がつかないということで、基幹病院へ転送となった。外部の麻酔科医に頼んでいたが、その日は他の病院で勤務していて来れななかった。ダブルブッキングだった。

 

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好塩基球増加

2018年07月28日 | Weblog

 事務から書類記載の依頼があった。内容は当院受診の証明で、3年前に内科外来で診察したのは大学病院からの診療応援医師(バイト)だった。カルテの記載(電子カルテ導入前)を確認した。

 歯肉出血が続き、舌の点状出血があるという訴えでの受診だった。前年に当院で健診を受けていて、末梢血に異常はない。その日の検査では白血球14400、Hb12.7g/dl、血小板36.7万と微妙な値だったが、LDHが423と上昇している。CRPは0.0とまったくの正常。

 凝固系の検査は出されていないが、血小板減少ではないので、凝固因子の低下があったのだろうか。半年前にも他院泌尿器科を受診(神経因性膀胱)した時に白血球増加は指摘されていたそうだ。

 患者さんの希望もあり、がんセンター血液内科に紹介となった。結果は慢性骨髄性白血病(CML)で、イマチニブ(グリベック)が開始された。

 白血球分画は好塩基球が1.5%(0~1)。CMLでは好塩基球増加が特徴とされるが、微妙な値ながらも当てはまっているのに感心した。その後翌年にも当院の健診を受けていて(会社の契約だろう)、末梢血は正常になっていた。それ以降の受診はないが、受診の証明というのは医療保険で使用するのだろうか。

 

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当直お疲れ様です~脳梗塞

2018年07月27日 | Weblog

 昨日の当直は外科医(年齢は一番若い)だった。準夜帯に4名の患者さんが外科に入院して相当忙しかったようだ。さらに当方が主治医をしている内科入院の認知症の95歳男性が転倒して眉部の切創の縫合を要し、ご迷惑をおかけした。(看護師さんが電話した時、やっと今一息ついたのにと言っていたそうだ。すみません。)

 そのうち一人は血液透析を受けている69歳男性で、両下肢の脱力で受診した。透析中の時々低血圧になり、調整が難しい方らしいが、その日脳波検査が行われて、その時に安定剤も使用していた。

 頭部MRIで主訴とは直接関係ないが、ラクナ梗塞が頭頂部にあった。昨夜は、ありそうだが本当か?ということで、補液のみで経過をみていた。放射線科医に診てもらって、新規脳梗塞と診断された。治療はどうするか、神経内科医に相談すると、既往に多発性の陳旧性脳出血があり、梗塞巣も小さいので、抗血小板薬の投与は見合わせる方がいいと言う。

 透析患者さんでも、経口の抗血小板薬(バイアスピリン、プラビックス、パナルジン、プレタール)は通常量で使用できる。オザグレル(カタクロット)は尿中排泄率が高く、投与量は通常の1/4~1/2になるが使用はできる。

 MRIのT2スターで見ると、両側の視床・基底核・脳幹部の陳旧性脳出血が良くわかる。脳出血>脳梗塞で、確かに抗血小板薬は使用しがたい。今日は血圧が安定して下肢の脱力が消失したので退院となった。

 

 透析患者さんの心房細動で抗凝固薬ワーファリンは使用できるが、循環器科医は調整が難しいので使用しがたいと言う。透析患者さんの治療は難しい。

 

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蜂刺症~アナフィラキシーショック

2018年07月26日 | Weblog

 今日の午前中は救急当番だった。ずっと救急隊から連絡がなかったが、午後0時40分に連絡がきた(午前と午後は1時で交代)。62歳男性が自宅で倒れているのを家族が発見して救急要請した。

 血圧が60台とショック状態だった。意識はぼんやりしているが、話はできるくらいだった。呼吸困難、酸素飽和度の低下はない。救急隊は点滴静注を開始した。最近は熱中症が多いが、今日はそれほど暑くないから違うかと思っていた。

 搬入時時、救急隊員から「蜂に刺されてます」と報告された。左手指に確かに刺された痕があった。全身の紅斑を認めて、血圧は70台だった。

 アドレナリン0.3mg(ml)筋注、ソルメドロール1gの点滴静注、ポララミン点滴静注、ガスター静注を行った。点滴を全開にして500mlが2本入ったところで血圧が100前後になった。3本目の点滴の途中で血圧が140まで上がった。全身の紅斑も薄くなってきた。

 一晩入院して明日まで経過をみることにした。昼食をとっていないので、病棟に上がる午後2時半ごろに空腹を訴えていた。点滴は血管確保の分だけにした。

 スズメバチですかと訊いたが、蜂の種類はわからないと言っていた。散歩していて蜂に手指を刺された。以前刺された時よりも痛みがひどかった。自宅に戻ってガレージで刺された部位に水道水をかけたそうだ。自宅内に入ったが、意識が遠のいて、一時的に気を失ったらしい(便失禁していた)。

 

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若年者の心不全

2018年07月25日 | Weblog

 昨日の当直は、大学病院から来ているバイトの外科医だった。当方は内科の当番で、午前1時過ぎに連絡が入った。

 35歳男性の心不全だという。35歳の心不全はそうそうない。まっさきに浮かんだのは急性心筋炎だった。「肺が真っ白です」と言っていたが、酸素飽和度が90%弱(室内気)なので、まだ持ちこたえそうだと思った。

 当院の循環器科はオンコール体制にはない。救急搬送するしかないが、地域の基幹病院でも受けられないかもしれない。心臓血管センターのある専門病院に直接お願いしてもらうことにした(受け入れOKで救急搬送になった)。

 今日カルテを見て確認した。当直医は相当に慌てていて余裕がなかったらしい。検査の指示と診療情報提供書の記載しかなかった。胸部X線・CTを見ると、急性心不全(肺うっ血・水腫と胸水)そのものだった。心電図は著明な左室肥大を呈している(洞性頻脈で不整脈はない)。血圧は200と高値で、腎機能障害(血清クレアチニン5mg/dl)が目立つ。

 患者さんは精神障害がある方らしい(詳細不明)。また以前から労作時に息切れがあったそうだ。循環器科医に訊いてみたところ、おそらく心臓病に基礎疾患があり、それが血圧上昇などで破綻して急性心不全(CS1)が発症したのだろうという。基礎疾患としては肥大型心筋症が疑われるそうだ。高血圧と腎機能障害がいつからあるのかは当院初診でまったくわからない。

 日中循環器科医がいる時に受診したとしても、初期対応はするが結論は出ないので、結局大学病院などに搬送するようになるそうだ。

  

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「GM 踊れドクター」

2018年07月24日 | Weblog

 外科で大腸癌術後の患者さんに、外来化学療法で使用するPICCカテーテルを挿入した。カテーテル関連血流感染と思われる発熱があり、カテーテルを抜去した。抜去したカテーテル先端を培養に提出したが、血液培養は提出していなかった。カテ先培養からCandidaが検出された。抜去後に発熱はなくなり、抗菌薬(抗真菌薬は使用していない)は中止されて、もう退院予定になっていた。

 AST会議で話題に上がったが、次回同様のことがあれば血液培養を2セットとって下さい、としか言えない。当地域の基幹病院では血液培養2セットとカテ先培養を出しているそうだ。岩田先生は記念のカテ先培養は出さないようにと言っていたはずだ。

 カテーテルからの採血1セットと末梢血管からの採血1セットを提出するが、カテ先培養を提出するのは正しいのか無用なのかよくわからない。当方は昔は出していたが、今は出していない。

 

 アマゾンで安売りしていたので、「GM 踊れドクター」DVDセットを購入した。生坂政臣先生の監修で毎週見ていた。だいぶ前の作品で、放出セールなのだろう。内容はほとんど忘れた。

GM ~踊れドクター DVD-BOX

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肝細胞癌

2018年07月23日 | Weblog

 糖尿病で内科外来に通院している77歳男性に肝細胞癌が発見された。糖尿病はDPP4阻害薬のみでHbA1c6.2%とまったく問題がなかった。消化器科でピロリ菌除菌後のフォローの内視鏡検査が予定された時に、ついでに(?)腹部エコー検査も入れていた。

 思いがけず肝臓内に腫瘍が指摘された。肝炎はなく、肝機能はまったく正常域だった。肝臓自体は正常肝で慢性肝炎~肝硬変はない。他の消化器癌の転移も、胆管細胞癌も否定的だった。AFPとPIVKAⅡが高値で、肝細胞癌で間違いない。

 当院で手術が予定されて、術前検査が行われた。外科に入院して、手術に備えて、CVラインも挿入された。うまく切除できるといいと思う。

 造影CTで肝右葉に5×3.5cmの等~低濃度の腫瘤があり、造影剤で早期造影~早期減衰され、内部は不均一だった。

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DN(A)Rの書類を見直す

2018年07月22日 | Weblog

 金曜日に、診療録を担当している事務の方から相談された。当院のDN(A)Rの書類は現状に合わなくなっているので、見直し変更を考えているという。診療録委員会では、委員の外科医から緩和ケア委員会の扱いなのではという意見も出たそうだ。意見を訊きたいと言われた。

 当院のDNRの書類は腫瘍内科があったころから(今は不在)同意します・同意しませんのみ記載されたものを使用していた(内容は説明書に記載か口頭で説明)。3~4年前に当時の泌尿器科医から、きちんと内容を記載した書類を作成すべきではという意見が出て、急遽他院の書類をそのままもってきて使用していた。

 癌終末期に対応しているので、「近いうちに救命できない病状になります」という文面になっている。記載がきついので、内容を手直しして使用していた。

 高齢者の誤嚥性肺炎・末期心不全・老衰に対しては、治療に反応して軽快する見込みがまったくないわけではないが、治療しても悪化した時にはという文面になる。当院で一番多いのは80歳代後半~90歳代の誤嚥性肺炎で、治療は酸素吸入・抗菌薬・点滴を行うが、気管挿管・人工呼吸まではしない(心臓マッサージはしない)ことにしますというものだ。

 内科の若い先生はどこまで治療するかしないか、もっと細かく具体的に記載した書類に書き直していた。あまり細かくすると、レストランのオーダーのようになってしまうが、その方が正確で後で揉めないのかもしれない。

 当院の緩和ケア委員会はあくまで癌しか扱わない。心不全や慢性呼吸不全などの終末期緩和ケアを扱った書籍を最近見かけるようになったが、需要があるのだろう。現行書類の上の3行を書き直しているだけなので、内科ではそれほど困ってはいない。「癌」用と「がん以外の疾患の終末期あるいは高齢者」用と2つあってもいいのだろう。

 

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