なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

嘔吐が続く

2023年11月30日 | 消化器疾患

 11月28日(火)に他の町の精神科病院から、5日間嘔吐が続く79歳女性が搬送されてきた。

 アルツハイマー型認知症で入院してるが、寝たきり状態で発語もなかった。11月初めから食事をとらせようとしても、口を開かなかったという。

 腹部は少し膨満しているが、割と柔らかい。圧痛としてはとれなかった(表情が変わらない)。下痢はなく、むしろ便秘だった。癌による腸閉塞だと当院では(外科手術ができないので)対応できない。

 CT(当初は単純で、造影も追加)で見ると、胃液が貯留して十二指腸下降脚までガスで拡張している。小腸はほとんど拡張していなかった。大腸はガスで拡張していて、上行結腸の限局性壁肥厚(浮腫状)とS状結腸のある程度長さをもった壁肥厚を認めた。(読影に来ていた非常勤の放射線科の先生に診てもらったが、癌ではありまえせん、と)

 腸閉塞とはいえなかった。上腸間膜動脈症候群も考えたが、有意な十二指腸の締め付けはない。

 経鼻胃管を入れようとしたが、ある程度入ったところで口側がたわんでしまう。めったにないが、透視下で挿入した。すると、黄色の便臭のある消化液が吸引されてきた。これだけ見れば、第腸閉塞による腸閉塞だが、画像上はいえない。

 両側肺に嘔吐の誤嚥による誤嚥性肺炎もある。基幹病院外科に依頼するわけにもいかないので、当院で経過をみることにした。

 その後、経鼻胃管からの吸引液は胃液らしいものになってきた。運よく軽快しても経口摂取はできない病状になっていると思わるが、できる範囲で治療するしかない。

 

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COVID-19

2023年11月29日 | COVID-19

 11月26日(日)の日直の時に、地域包括ケア病棟から連絡がきた。

 発熱の患者さんがいて、担当医の指示でコロナの迅速検査をして陽性と出ていた。日直の先生に治療を開始しておいてほしいと言われました、という。

 患者さんはじん肺・慢性呼吸不全の71歳男性だった。2日前の11月24日に地域の基幹病院呼吸器内科から、入院治療継続のために転院していた。

 地域包括ケア病棟は病棟看護師3名と入院患者4名がCOVID-19 に罹患している。しかしこの患者さんは24日に転院してきて、静養中の罹患した看護師さんとは接触がなく、罹患した入院患者さんとも接触がない。

 24日に転院して、25日には微熱があった。そして26日に高熱となった。転院してきた24日に血液検査が行われていて、血清フェリチン(何故か入っていた)・LDH・Dダイマーの上昇を認めている。先方の病院で感染した疑いがある。

 腎機能に問題がないので、レムデシビル通常量の点滴と、食欲低下で500mlの点滴を入れた。翌日には解熱していた。レムデシビルは3日ではなく、5日継続をお勧めした。(抗菌薬併用も勧めた)

 送られてきた胸部CTを見ると、両側肺に陰影があり、左気胸もあった(1か月以上前から同程度で推移)。

 

 当院の病棟(入院患者、病棟看護師)でCOVID-19が複数出ていることを、基幹病院にお伝えした。すると、転院予定の患者が転院をいやがるので伝えないでほしいといわれた。病院に連絡すると、その旨を患者さんに伝えないわけにはいかない、ということだろう。

 確かに同じ5類のインフルエンザでは、いちいち何人入院しているとは伝えたりはしない。コロナも同じ扱いでということになる。

 

 

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インフルエンザ

2023年11月28日 | インフルエンザ

 11月26日(日)は日直をしていた。救急搬入は2名で、そのうち1名は外来で診ていた93歳男性だった。BPSD(暴言と暴力も)で抗精神薬(セロクエル、デジレル)を処方していた。

 長女が高齢の両親(妻は90歳)の世話をしている。精神科病院を受診したが、すぐの入院は難しかった。よく在宅でみていると感心していた。

 その日は暴れて手に負えない、ということで救急要請していた。数日間食事も手で払ってしまい、受け付けないという。

 外来で検査(ちょっと治まったところで、CT撮影。3人がかりで採血も)すると、炎症反応が高かった。誤嚥性肺炎があるかもしれないが、はっきりしない。前立腺癌の治療歴(ホルモン療法)もあり、前立腺炎も疑われた。体幹抑制、両手の抑制で点滴継続として入院となった。

 もう一人は40歳代の女性で、2日前に消費期限が過ぎた牛乳で作った寒天を食べて、急な腹痛・下痢(泥状便)が出現した。こちらは外来治療(点滴、鎮痛薬)で軽快して帰宅した。

 

 11月25日(土)の日直では発熱の受診が多かったようだ(日直は消化器科医)。それに比べると、発熱での受診は少なかった。

 午後の早い時間に、発熱で3名が受診した。外来看護師さんが検査してくれたが、3名ともインフルエンザA型陽性だった。

 17歳男性は高校の友人がインフルエンザだったそうだ。その日の午前中から38.9℃の高熱と咳・関節痛・倦怠感があった。インフルエンザだろうから検査陰性でも治療するつもりだった。

 8歳女児は11月24日が37.5℃で、25日から38℃台の高熱になっていた。上気道症状もある。24日、25日と市内の小児科クリニックを受診して検査したが陰性だった。

 26日から腹痛もあるという。腹部は平坦・軟で圧痛もなかった。2日続けてインフルエンザ迅速検査で陰性だったので、アデノウイルスの方かと思ったが、3日目にインフルエンザ陽性となったのだった。(27日食欲不振で当院小児科を受診して、外来で1本点滴していた)

 76歳女性は11月25日から咳・鼻汁があるが、発熱はなかった。症状が上気道症状なので、発熱外来として検査をするとインフルエンザ陽性と出た。1か月前にインフルエンザワクチンを接種していて、効果が出たのだろう。

 3名にタミフル(オセルタミビル)を処方した。永田理希先生の本には、リスクがない人では抗インフルエンザ薬を処方しても1日症状が短縮するだけなので必須でない、という感じで記載されている。

 國松淳和先生はCareNeTVで、1日でも短縮するなら処方する、といっていた。症状がある1日の差は大きく、治療しなければ「俺の1日を返してくれ」といいたい、という。まあ自分も罹れば、すぐ内服する。

 

 午後5時前に障害者施設から連絡があり、22日から発熱が続く32歳男性(脳性麻痺、精神遅滞)を受診させたいという。24日に内科医院を受診して尿路感染症疑いで抗菌薬内服(レボフロキサシン)が処方されていた。

 尿路感染症でキノロン耐性大腸菌?とも一瞬思ったが、右肺にcoaese cracklesが聴取されて、胸部X線・CTで、右中葉肺炎が確認された。

 

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高浸透圧高血糖症候群

2023年11月27日 | 糖尿病

 11月24日(金)のお昼に意識障害の87歳女性が救急搬入された。救急当番は非常勤の外科医(大学病院から応援)だった。

 病棟はCOVID-19の患者と、感染した職員の自宅静養で新規入院は難しい状況だったが、連絡はいっていなかったようだ。その日3件の救急搬入があり、2つの病棟に分けて入れたが、もう無理ですといわれて気づいたようだ。

 

 糖尿病で市内の内科医院に通院している。処方はグリクラジド40mg/日とDDP4阻害薬(サキサグリプチン5mg/日)だった。認知症があり、室内は歩行できるが、横臥している時間が長いそうだ。前日までは食事もとっていたが、その日は朝食をごく少量とっただけだった。午前10時半に家族が自室を見に行くと、反応が悪かった。

 血糖が885mg/dlで、HbA1cは10.5%だった。ふだんも血糖コントロールは悪いのだろうが、さらに急性に悪化している。

 末梢血も濃縮していて、BUN 117.3mg/dl・血清クレアチニン2.16mg/dlと腎前性腎不全を呈していた。血清Na 157・血清K 4.2だった。尿ケトン体は陰性。

 高浸透圧高血糖症候群として、生理食塩水の点滴とインスリン点滴静注が開始された。生食は80ml/時(2000ml/日)で、生食50ml+速効型インスリン50単位(0.5ml)が3ml/時(血糖測定で減量調整)だった。(カリウムの補充はなかった)

 その日の当番(救急外来からの入院を診る)は内科の年配の先生で、内分泌の得意な先生だった。ちょうど翌日の土曜日は日直になっているので、その時に指示を出す(変更する)としていた。

 

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肺胞出血?

2023年11月26日 | 呼吸器疾患

 透析で通院している66歳男性の胸部CTを見て、腎臓内科の若い先生が首をひねっていた。血痰が断続的にあるそうだ。

 胸部CTで両側肺、特に右肺の背側(上葉~下葉)にすりガラス様陰影が広がっている。発熱・炎症反応の上昇はなく、貧血の進行もなかった。

 「心不全の陰影?」とも言っていたが、肺うっ血(臥位で強調される)の陰影とも言い難い。症状が血痰なので肺胞出血かどうかになるが、そうなのか?。

 この患者さんは2019年にシャント拡張で入院した際に、肺血栓塞栓症が疑われて、さらにその後脳梗塞(脳幹部の右延髄)が発症していた。そこからワーファリンが処方されて、継続している。

 さらにサルポグレラート(アンプラーグ)も処方されている。肺胞出血をきたしてもおかしくない条件はある。しかし貧血の進行もなく、もっと症状も強く出ると思われる。違うのだろうか。

 

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急性肺炎

2023年11月25日 | 呼吸器疾患

 11月21日の午後に76歳男性が発熱外来を受診した。症状はその日からの発熱(38℃台)・咽頭痛・咳だった。息苦しさも訴えていた。

 発熱外来担当は腎臓内科の若い先生(大学病院から半年交代で来ている)だった。コロナ(SARS-CoV-2)とインフルエンザウイルスの迅速検査を行って、両者とも陰性だった。対症療法の処方で帰宅としていた。

 11月22日の夜間に再受診した。当直は内科の年配の先生だった。体温39.7℃と高熱があった。妻がインフルエンザA型に罹患したという話があった。

 再度迅速検査をしたが、やはり両者とも陰性だった。肩で息をしていることと高熱であることから、画像検査・血液検査を行っていた。(酸素飽和度は酸素吸入するほどの低下はなかった)

 白血球3100・CRP17.2と炎症反応の上昇を認めた(時間外は簡易検査)。胸部X線で左下肺野に陰影を認めた。胸部CTでは両側肺野にすりガラス陰影が散在している。左肺下葉には浸潤影を認めた。

 両側肺に散在しているふわふわしたすりガラス陰影は、ウイルス性肺炎の陰影のようにもとれる。インフルエンザとそれに伴う細菌性肺炎として、個室入院としていた。

 11月24日にまた迅速検査を行ったが、やはり両者陰性だった。さすがにここまで陰性だとインフルエンザは否定的となる。それにしても、両側肺のふわふわしたすりガラス様陰影も細菌性肺炎としての陰影なのだろうか。

 上気道症状がそろっていて、その点は最初にウイルス感染が起きたと判断される。どうみてもインフルエンザなのに、なぜか迅速検査が何度も陰性ということはたまにある。

 担当の先生は大部屋でもといっていたが、病棟では週末ということもあり、そのまま週明けまで個室でとなった。(インフルエンザとしての隔離期間が過ぎてからの方が無難だと思う)

 

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誤嚥性肺炎再発

2023年11月24日 | 呼吸器疾患

 11月14日に記載した85歳女性は、入院後に抗菌薬(スルバシリンABPC/SBT)を開始して、順調に軽快した。

 画像からは誤嚥性肺炎と思われた。聴覚言語療法士(ST)に嚥下評価をしてもらうと、「いけます」ということだった。嚥下調整食3(ソフト食、ムース状)から開始したが、すぐに嚥下調整食4(全粥刻み、とろみ付き)に上げていた。

 抗菌薬投与も1週間ちょっとで中止して、後は退院をどうするかとなった。最初は認知症はそれほどでもないのでは、と思われたが、やはり点滴抜去や不穏があり、体幹抑制は継続されていた。

 それをうまくすり抜けて、ベットから起き上がっているところを発見されて、戻されたりしていた。日中は歩行訓練を行っているが、案外ADLは低下していないのはむしろ幸いだった。

 自宅退院になるが、家族(同居していない家族)が施設入所を希望しているという話が出ていた。同居家族は本人が歩行できるのを確認している。問題はそこだけになっていた。

 

 11月21日の午後に発熱があり、酸素飽和度が低下した。そこで、実は前夜はなかなか寝なかったという報告があった。不眠としてブロチゾラムを内服させていたが、あまり効かなかったそうだ。不眠時指示は、デジレル(トラゾドン)になっていたが、習慣で?ブロチゾラムを内服させたようだ。

 朝に覚醒が悪く、セッテイングすると自分で食べているが、口の中に食物がたまっている状態でぼんやりしているのに気づいてそこでやめさせていた。要は誤嚥したのだった。

 聴診すると、右肺にcoarse cracklesが聴取される。胸部X線(ポータブル)で確認すると、右肺野に浸潤影を認めた。食事を止めて、酸素吸入・点滴・抗菌薬を開始した。

 すでに昼は食事を半分くらい摂取していたが、その時の嚥下もあやしい。いろいろと対応がまずかったことになる。

 

 

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血糖コントロールのその後

2023年11月23日 | 糖尿病

 11月15日(水)に記載した整形外科から血糖コントロールを依頼された82歳女性のその後。

 2週間で血糖コントロールをつけて、大腿骨頸部骨折の手術をすることになっていた。内科医院の処方のDPP4阻害薬(リナグリプチン=トラゼンタ)とメトグルコは継続とした。(レパグリニド=シュアポストは休止)

 インスリン強化療法を開始したが、思ったほど血糖は下がらなかった。入院後は空腹時血糖250~260mg/dlで、昼前・夕前の血糖が289~397mg/dlなので、測定していないが食後は300~400mg/dl以上になっているはずだ。

 1週間やってみて、空腹時血糖220mg/dl、昼前・夕前の血糖が250~300mg/dlだった。インスリンの量を漸増して、やっと空腹時血糖145~150mg/dl、昼前・夕前の血糖が180~225mg/dlになってきた。

 現在、持効型のトレシーバが10単位、食前の超速効型のヒューマログが8単位ずつにしている。さらに増量を要する。思ったより下がりが悪くて、ちょっとあせっている。

 空腹時の血中Cペプチドが4.11ng/mLと十分出ていて、もっと少量のインスリンでいけるのかと思ったが、当てが外れた。大腿骨頸部骨折があることで、ふだんよりさらに高血糖になっているということか。

 

 日本医事新報社の記事で下記の「周術期の血糖管理」があった。著者は田村貴彦先生(高知大学医学部麻酔科学・集中治療医学講座講師)。

 術前のHbA1cが高い患者では、高めの血糖コントロールでよいともある。整形外科医に納得してもらう必要があるが、多少高めでもいいのかもしれない。

 

術前血糖管理

 糖尿病患者では,良好な血糖コントロールを施行すれば,長期予後の改善が期待できる。糖尿病網膜症や腎症といった細小血管合併症を抑制するためには,空腹時血糖とHbA1cのコントロールが必要である。また,脳血管病変,虚血性心疾患といった大血管合併症を抑制するためには,食後血糖のコントロールが必要である4)5)

 術前の血糖コントロールとしては,空腹時血糖値が130mg/dL未満食後2時間血糖値が180mg/dL未満HbA1cが6.5%未満となっていることが望ましいとされている6)

 AAGBI(the Association of Anaesthetists of Great Britain and Ireland)のガイドライン7)によると,HbA1c>8.5%の患者または低血糖意識消失の既往がある患者は,手術前に糖尿病専門医にコンサルトを行うこと,HbA1c>8.5%患者は血糖コントロールが改善するまで待機手術を延期することを推奨している。また糖尿病罹患患者の緊急手術では,血糖値を適宜測定し,高血糖を呈する際には血中・尿中ケトン体を測定し,糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)の発症に留意する。DKAを合併した患者の手術は死亡率が高いため,可能な限り手術を延期する。

 SAMBA(Society for Ambulatory Anesthesia)の日帰り手術患者に対する周術期の血糖コントロールの提言8)では,HbA1c 7.0%未満空腹時血糖値90~130mg/dLならびに食後血糖値180mg/dL未満が望ましいとしている。AAGBIの提言と同様,DKAや高浸透圧性高血糖症候群などを合併している場合は手術を延期するべきである(表1)。

 以上より,私案ではあるが, 空腹時血糖値が130mg/dL未満, 食後2時間血糖値が180mg/dL未満HbA1cが8.0%未満となっていることが望ましいと考えられる。

 欧米先進国では,日本の現状とは異なり,図19)に示すように,術前から糖尿病治療チームにより集学的な血糖管理を行う。手術予定患者に随時血糖値を測定し,200mg/dL以上またはHbA1cが8.0%以上であれば,糖尿病治療チームが術前,術中,術後の血糖管理に介入する。したがって,外来の早期の段階から専門チームが介入できるという点で日本とはシステムが異なる。

コントロール不良糖尿病患者の周術期管理

 Diabetes Mellitus,Insulin Glucose Infusion in Acute Myocardial Infarction(DIGAMI)studyによると,HbA1cが高値の糖尿病患者の場合,目標血糖値が126~196mg/dLで管理した群が,インスリンを使用しないで血糖管理(平均277mg/dL)した群と比較して1年後死亡率が低かった10)。また,Duke大学の後方視研究の結果,周術期の平均血糖値は30日死亡率の予測因子であったが,術前のHbA1cは30日死亡率とは関連がなかった。術前HbA1cが周術期の血糖値と強い相関があるにもかかわらず,術後死亡率とは相関がないという結果は,周術期の血糖管理により術前HbA1c高値による死亡率の増加を打ち消す効果があることを示唆している11)。これらの結果から,HbA1cが高値であるような糖尿病患者では,周術期の血糖コントロールを実施することで患者アウトカムを改善することが可能である。

 しかし一方で,The Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes(ACCORD)studyによると,HbA1c値により2群にわけて血糖降下療法の効果を検討した結果,血糖管理が不良な患者群(HbA1c>8%)では,血糖降下療法で死亡率が上昇し,血糖管理が良好な患者群(HbA1c<8%)における血糖降下療法の効果と比較して有意な差が存在した12)。Krinsleyらによると,ICU入室前のHbA1cが8%以上である糖尿病患者においては,血糖値を140~180mg/dLで管理するよりも180mg/dL以上で管理するほうが死亡率を抑制するとしている。これらの結果より血糖管理が不良な患者では,厳格な血糖降下療法が患者予後を悪化させる可能性がある13)

 以上より,HbA1cが高値の患者では,正常血糖を目標とするのではなく血糖値が180mg/dLを超えるまではインスリンを投与せずに,非糖尿病患者よりも高めの血糖値を目標にコントロールすることが望ましい可能性がある。

糖尿病薬の術前管理

 糖尿病患者では既に施されている治療方法やコントロールの良し悪しを確認し,手術直前まで良好な血糖コントロールを継続し,血糖値の乱高下を抑制することが求められる。近年では長時間作用性を有する糖尿病薬が使用されているため確認が必要である。

 表2が示すように,術前日まではほとんどの糖尿病薬は継続され,術当日はほぼすべての糖尿病薬は中止されている17)。ただし,SGLT2阻害薬は手術2日前から中止することが推奨されている。中間型・持効型インスリンは前日には80%の投与とし,当日は50%の投与とする。速効型は中止する。

 スルホニル尿素薬は心筋のATP感受性カリウムチャネルを抑制するので,麻酔薬によるプレコンディショニングを阻害する可能性がある。DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬などは消化管運動を低下させるため,留意が必要である。

 

 

 COVID-19の患者が急性期病棟に2名、地域包括病棟に4名いて、病棟看護師もそれぞれ罹患して休んでいるので、現在新規の受け入れが難しくなってしまった。

 救急搬入させた肺炎・心不全の高齢男性は、救急当番の先生が事情を話して市内の別の病院にお願いすることになった。今週はこの状況が続くので、来週にならないと平常に戻らない。

 COVID-19 はサージカルマスクでは防げない。地域包括ケア病棟の看護師長さんに、どうしたらいいでしょうかと訊かれたので、治まるまでN95マスクを使用するのもある、とお話した。看護師の不安をとるのにも役立つかもしれない。

 

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インフルエンザ診療ガイド

2023年11月22日 | インフルエンザ

 「インフルエンザ診療ガイド2023-2024」を繰り返し読んでいる。(2回読んで、これから3回目)感染管理の勉強会の準備で、この本を基本にしてその他のインフルエンザの本を加えた内容にする予定だ。

 

 多数の著者によるので、項目によって内容の役立ち具合や面白味は違う。

 この中では、西村秀一先生(仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長)の「マスク・手洗い・うがい、室内空気を対象とした種々の空間除菌製品、のインフルエンザやCOVID-19に対する予防効果について」が断然面白い。「西村節」で書かれている。

1 マスク

 「COVID-19のエアロゾル感染/空気感染を疑う人はもういないと思うが、インフルエンザも昔から空気感染である。インフルエンザの伝染予防で注意を払うべきは、鼻粘膜への接触や”飛沫大液滴の衝突”(=接触感染や飛沫感染)ではなくエアロゾルの吸入である。」

 「これに対するマスクによる防御の期待度は、マスクの性能による。だが、高性能のN95マスクでも装着の仕方を誤れば意味がない。そのため、マスクに完璧な防御は期待できない。特にエアロゾルに対するサージカルマスクの防御効果は限定的であり、リスクの大幅低減でよしとすべきである。」

 「感染管理上の誤った常識がある。使用したマスクの表面はウイルスに汚染されており、マスク表面に手を触れてはならない、であるこれはデータの裏づけがまったくない話であるまことしやかにその話をする人がいたら素人と思えばよい。マスク表面に生きた(活性)をもつウイルスが接触感染を起こすほどの量で存在することを、データで示したものはない。」

2 手洗い

 「インフルエンザの感染防御で、手洗いや手の消毒が協調される傾向はいまだに続いているが、どこかのマニュアルの受け売りである。だが、それが真に役立っているというまともな証拠はなく、・・・恐れる必要はない。環境表面に散らばった微細な分泌物中のウイルス感染価は、その乾燥とともに分単位で激減する。」

 「手洗いが感染症対策の基本のひとつとして推奨されても、”インフルエンザ”に対しては科学的ではない。インフルエンザの予防に、手洗いを念仏のように唱える「専門家」がいたら、これも素人だと思ってよい。」

3 うがい

 「うがいの感染予防効果については、理屈で考えれば非常に心もとない。鼻腔粘膜や喉頭より奥の気道など、解剖学的にうがいでは届かない場所での防御は期待できない。患者と無防備で接したら、すぐに(うがいを)実行しなければ効果はないため、人ごみの中では常にうがいをしていなければならなくなる。」

http://web.tohoku.ac.jp/hondou/stat/

 

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コロナの肺炎

2023年11月21日 | COVID-19

 11月20日(月)の午後に、市内の施設からCOVID-19の87歳女性が紹介されてきた。

 11月18日から発熱があり、38℃台の発熱が続いて、食事がとれなくなっていた。施設の嘱託医がちゃんと診察したらしい。肺炎を疑う呼吸音が聴取されて、入院治療をお願いします、という内容だった。

 胸部CTを撮影する時に、放射線技師さんから、その施設でコロナの患者さんが出ていると聞いた。11月18日に当院に問い合わせが来たそうだが、日直の腎臓内科の若い先生が時間外はコロナの入院はとれないと断っていた。

 施設ではコロナの入所者2名を地域の基幹病院に連れて行ったようだ。先方の病院ではCOVID-19 は呼吸器内科の担当なので、その日の当番の先生が呼ばれたということだった。

 胸部CTで両側肺野にコロナらしいすりガラス陰影が広がっていた。ちょっと久しぶりに見るコロナ肺炎だった。レムデシビル点滴静注を開始した。

 

 先週から院内で看護師さん、入院患者さんのCOVID-19罹患が続いている。ひとつの病棟は、先々週病棟看護師が罹患して、先週その病棟の患者さんでも出た。

 もうひとつの病棟でも病棟看護師が罹患して、週末(土曜日)に入院患者2名も罹患していた。週明けに看護師2名もコロナと判明した。

 さらに別の病棟でも入院患者1名が罹患していた。感冒症状があった看護師がコロナの検査をして陰性だったので、そのまま勤務をしていたようだ。偽陰性だったのかもしれない。

 当院は時間外は検査技師不在で迅速PCR検査はできないので、抗原定性検査になる。平日であれば、職員はPCR検査に回した方がいいのだろう。

 

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