なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肺血栓塞栓症の治療~DOAC

2021年09月30日 | Weblog

 9月1日に記載した肺血栓塞栓症85歳女性のその後。地域の基幹病院循環器内科に搬送していた。入院後は治療により軽快して、9月24日に無事退院した。

 火曜日に当院内科外来を受診したが、診察室には普通に歩いて入ってきた。ふだんと様子は変わらなかった。診療情報提供書の返事をみると、DOACのリバーロキサバン内服で治療されていた。

 

 DOACのうち、急性期に使用できるのはリバーロキサバン(イグザレルト)とアピキサバン(エリキュース)で、通常の倍量を使用する。エドキサバン(リクシアナ)は急性期に非経口抗凝固薬を使用してからの切り替えで使用する。

 リバーロキサバン(イグザレルト)は、急性期に1回15mg1日2回(30mg/日)で3週間使用して、その後1回15mg1日1回に減量する。

 初期3週間の15mg1日2回投与は、特に出血の危険性の高い、腎障害・高齢・低体重・抗血小板薬併用患者の治療は有益性が危険性を上回る場合のみ、になっている。有益性が上回るとして使用するしかない。

 アピキサバン(エリキュース)は、急性期に1回10mg1日2回(20mg/日)で7日間使用して、その後1回5mg1日2回に減量する。

 倍量で使用できる期間が短いので、リバーロキサバンが好まれるのかもしれない。昨年度までいた当院の循環器科医もリバーロキサバンを使用すると言っていた。

 

 今回はイグザレルト15mg錠を1回1錠1日2回で治療していた。退院する時にはイグザレルト15mg錠1日1回に減量された。出血の副作用は特にない。とりあえず同量で継続としたが、どこまでこの量でいくのだろうか。

 イグザレルトは、非弁膜症性(僧帽弁狭窄症以外の)心房細動では15mgを1日1回だが、30≦Ccr≦49では10mg1日1回になる。この患者さんはeGFR47で、通常小柄な高齢者でもあり、心房細動として治療する場合は10mg1日1回にするだろう。

 

 DOAC内服で治療できるのは便利だ。ただしそれは、血行動態が変化(悪化)した時に対応できる病院でというのが前提にあるので、専門医のいる病院で治療してもらう。

 

 

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腫瘍熱?

2021年09月29日 | Weblog

 先週の金曜日の夜間(午後11時半)に84歳男性が高熱で救急搬入された。当直は外部の先生(バイト)だった。

 月曜日に、画面上で週末の受診を確認していて気付いた。当直医は新型コロナの抗原検査(陰性)と血液検査を行って、経過観察として帰宅にしていた。

 

 内科医院とがんセンターに通院していて、既往歴は大腸癌・胃癌・肝細胞癌だった。大腸癌・胃癌は10年以上前だったが、がんセンターで診ている肝細胞癌は詳細がわからなかった。

 もともと慢性C型肝炎があり、2018年に内科医院で腹部エコーで肝内に腫瘤を認めた。当院の放射線科に造影CT検査を依頼していた。

 結果は肝S5に不規則に造影される腫瘤があり、肝細胞癌あるいは肝転移の疑いとしていた。消化管・胆道系膵臓に腫瘤はなく、既往歴の年数からは、肝細胞癌が疑われる。内科医院からがんセンターに紹介したと思われる。

 現在の状態は今回画像がないのでわからない。血液検査の結果は、白血球7900・CRP5.4と炎症反応の軽度上昇があるが、肝機能は正常域だった。肝細胞癌が悪化しているようではない。

 最近時々発熱があり、その時に使用するアセトアミノフェンが内科医院から処方されていた。今回も内服したが、再度高熱が出て、救急要請をした。

 当院搬入後は、少し落ち着いたので、解熱薬で経過をみることとして帰していた。土日に再受診はしていないので、そのまま自宅で経過をみているのか、週明けに医院を受診したのだろうか。

 

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病院総合診療医学会

2021年09月28日 | Weblog

 日本病院総合診療医学会(9月18日・19日Web開催)を視聴した。

 忽那先生の講演が期待通りに面白かった。国立国際医療研究センター病院のCOVID-19診療は、当初は人工呼吸器やECMOのついた重症例も集中治療科で主治医を引き受けないので(管理はしてくれる)、感染症科が担当したそうだ。同院は大学病院にように診療科の垣根が高いという。

 他の病院との共同研究でも威張った教授相手で苦労したと言っていた。具体的に東京医科歯科大学の呼吸器の教授と言っていたが、大丈夫だろうか。

 教育講演はon demandで視聴できるので便利だ。遠藤史郎先生のCOVID-19の話はよくまとまっていてよかった。呼吸器の菊池先生もいつものわかりやすい講演だった。

 

第23回日本病院総合診療医学会学術総会

最新の呼吸器感染症治療

 新潟大学呼吸器・感染症内科教授 菊池利明先生

 ・ラスクフロキサシン(ラスビック)

 ・アミカシン吸入用製剤(アリケイス)

 

ラスクフロキサシン(ラスビック)

2020年1月ラスクフロキサシン(75mg)錠1日1回1錠75mgを経口投与

2021年3月点滴静注用も販売 投与初日に300mgを、投与2日目以降は150mgを1日1回点滴静注

 

ニューキノロン系抗菌薬 一般的な特徴

・経口投与で優れた吸収性と、優れた組織移行性(特に呼吸器)

・DNA複製時に必要なトポイソメラーゼ(DNA鎖の切断と再結合を担う)を阻害

・元来グラム陰性桿菌に抗菌活性(第2世代シプロキサシン)

・第3世代レボフロキサシンはグラム陽性菌(特に肺炎球菌)へ活性が拡大

・第4世代ガレノキサシンでは嫌気性菌にも活性が拡大

 

ラスクフロキサシンのMIC90(μg/mL)

 グラム陽性球菌、嫌気性菌~第4世代と同等〇

 グラム陰性桿菌~第3,4世代よりやや劣る△

 緑膿菌~劣る△(適応菌種にない)

 非定型菌~劣る△

 

市中肺炎のエンピリック治療抗菌薬(成人肺炎診療ガイドライン2017(日本呼吸器学会)

内服薬

・βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン薬 

 注1:細菌性肺炎が疑われる場合 インフルエンザ菌のBLNARに注意

・マクロライド系薬

 注2:非定型肺炎が疑われる場合

・レスピラトリーキノロン

 注3:慢性の呼吸器疾患がある場合には第一選択薬:ガレノキサシン、モキシフロキサシンなど(緑膿菌も起炎菌)

 注4:結核に対する抗菌力を有しており、使用に際しては結核の有無を慎重に判断する

 

COPD増悪の起炎菌

 インフルエンザ菌50%、肺炎球菌26%、モラクセラ21%、黄色ブドウ球菌20%、腸内細菌科19%、緑膿菌13%

緑膿菌がCPOD増悪の起炎菌となるリスク因子

・緑膿菌の慢性的な定着

・Ⅳ期COPD(対標準1秒量<30%)

・気管支拡張の画像所見

・過去3か月の広域抗菌薬使用

・慢性的は全身性ステロイド使用

 

気管支拡張症175例の定着菌(%)

 緑膿菌34%、真菌種31%、インフルエンザ菌21%、非結核性抗酸菌19%、黄色ブドウ球菌12%、肺炎球菌11%

 

結核菌MIC90(μg/mL) キノロンは結核菌に効いてしまう

 トスフロキサシン>100 効果なし

 レボフロキサシン0.4 効果あり

 ガレノキサシン4 効果あり

 ラスクフロキサシン0.3 効果あり

 

初診から抗結核治療開始の日数

 市中肺炎へのエンピリック治療

  未使用 5日

  キノロン薬 21日(キノロン使用で診断が遅くなる)

   13日使用でキノロン耐性になりうる、トスフロキサシン以外処方は10日以内に

 

アミカシン吸入用製剤(アリケイス)

肺MAC症化学療法 わが国成人の標準的用量用法

 クラリスロマイシンCAM 600~800mg/日(15~20mg/kg)分1または2

 エタンブトールEB 15mg/kg(750㎎まで)/日分1

 リファンピシンRFP 10mg/kg(600㎎まで)/日分1

 (必要に応じ)ストレプトマイシンSM(またはKM)15mg/kg以下を週2~3回筋注

 

 2017年改訂された英国ガイドライン

  2000年版「治療期間は2年」だったが、「菌陰性化後最低1年」へ改訂

 ATS/ERS/ESCMID/IDSAガイドライン2020

  治療期間は菌陰性化後最低1年、ただし最適な治療期間は不明

 治療成功率52~61~66%

 

アミカシン吸入療法の可能性

 6か月以上の標準治療に抵抗性の肺MAC症57例

 アミカシンのリポゾーム製剤590㎎の1日1回吸入を上乗せ

 4割が陰性化 3か月で陰性化しないとその後は増えない

 有害事象 発声障害46%、咳嗽37%、呼吸困難22%、喀血18%

 25%が有害事象で吸入中止

 

2021年7月アリケイスが発売

 専用のラミラネブライザシステム 吸入時間は約14分

 ・多剤併用療法を併用すること

 ・喀痰培養陰性化が認められた以降に最大12か月間、本剤の投与を継続

 ・投与開始後12か月以内に喀痰培養陰性化が得られない場合は、本剤の継続投与の必要性を慎重に再考

 

まとめ

・ラスクフロキサシンは第4世代キノロン系薬でグラム陽性菌や嫌気性菌への活性が強化された

・ラスクフロキサシンに抗緑膿菌作用は期待できず、慢性呼吸器疾患の増悪で用いる際は注意が必要

・ラスクフロキサシンには抗結核菌作用もあり、結核を否定できずに使用する際は、10日以内に留める

・アリケイスは吸入用アミカシン製剤で、標準治療無効の肺MAC症への効果が期待される

 

 ラスクフロキサシンは特に既存の第4世代キノロン薬と比べて、残念ながらそれほど利点がなさそうで、使わないような気がする。アミカシン吸入は専門医しか使わないだろう。

 

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COVID-19~もともと労作時低酸素

2021年09月27日 | Weblog

 9月9日にCOVID-19の75歳男性が当院の感染病棟に入院した。無症状という話だったが、肺の病気があるということで入院となったものだ。

 40歳の息子さんがその前にCOVID-19で当院に入院していた。息子さんは介護の仕事をしていたが、訪問先の介護者がCOVID-19に罹患していた(その家族が家庭に持ち込んだ)。濃厚接触者というよりは、すでに高熱が続いていた。保健所指示のPCR検査で陽性と判明した。

 同居家族として両親と兄弟がPCR検査を受けて、両親が陽性と判明した。父親が当院に、そして透析を受けている母親は県内有数の市立病院に入院となった。

 息子さんは重症化のリスク因子をもつ両親に移してしまったことを、かなり気にしていた。

 

 入院時の胸部CTで、右肺は厚い胸膜に被覆された胸水貯留があった。胸膜石灰化があり、肺結核後遺症かじん肺が疑われる。あとでわかったが、地域の基幹病院呼吸器内科で年1回フォローしているそうだ(次回は来年1月)。

 明らかな新型コロナの陰影は指摘し難い。白血球4500(単球13.8%)・CRP8.7と、コロナとしては炎症反応が高かった。

 入院時の酸素飽和度は正常域だったが、トイレ歩行で飽和度が80%に低下した。安静時でも90%前半まで下がっていた。中等症Ⅱ相当として、レムデシビル点滴静注と抗菌薬(セフトリアキソン)を開始していた。その日の夜間から高熱が出た。

 トイレ(個室なので室内にある)まで距離は短いが、酸素を外してしまうので、飽和度が80%台になってしまう。中止しても外していて、それでもベットに戻るとまた付けてくれる。

 数日で解熱して、炎症反応も軽快した。レムデシビルは解熱してので5日で中止したが、抗菌薬は継続して、炎症反応がほぼ陰性化して中止した(9月21日に白血球4200・CRP0.7)。

 酸素2L/分を1L/分に下げていた。安静時は99%で酸素吸入なしでもよさそうだが、安静時でも90%台前半になったりする。トイレ歩行時に酸素を付けていても80%台になる。安静時1L/分・労作時3L/分に設定したいが、自分で調節するのは無理だった。

 

 在宅酸素療法を勧めたが、酸素をふだんからつけるのはいやだと言った。何度か話をしたが、やはりいやだという。家族に事情を説明して、電話で説得してもらったがだめだった。

 これで長年暮らしてきたので、慣れているのかもしれない。これまでも歩行時は息切れがあったそうだ。高血圧症で通院している医院に経過を記載した診療情報提供書を出して、退院予定とした。

 

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転院延期の事情~肝門部胆管癌

2021年09月26日 | Weblog

 専門病院から消化器科に転院してきた肝門部胆管癌の89歳男性の経過。

 

 今年の6月に、市内の医院から肝機能障害・黄疸で紹介されてきた。CTで肝門部胆管の腫瘤を認めて、左右の肝管がいわゆる泣き別れ状態だった。

 すぐに消化器センターのある専門病院に転送となった。左右の肝管にステントが見事に挿入されて、減黄できた。退院して外来通院となっていた。

 8月初めに発熱で救急外来を受診した。当直医(大学病院外科からバイト)がステントを挿入した病院に連絡した。その日は無理だが、翌日に対応可能となり、当院に一晩だけ入院して翌日転院となった。

 先方ではステントの入れ替えを予定したが、十二指腸からも経皮的にもアプローチが困難で、そのまま抗菌薬だけで経過をみることになった。退院させられないので、当院に転院依頼がきた。

 

 ところが先方の病院で新型コロナの患者さんが院内で発生して、転院延期となった。この患者さんもコロナのPCR検査や抗原検査を何度か受けた(いずれも陰性)。先月末の予定が、今月に入ってから2週間くらい遅れて転院してきた。

 地域の基幹病院でも院内で新型コロナの患者さんが発生して、当院への転院予定が延期されたことがあった。今時の病院の事情だなあと思った。

 

 当院に来てからも抗菌薬を投与していたが、その後は中止しても発熱がない状態で過ごせている。食事も摂取できる。血清ビリルビンは7.6mg/dlで少しずつ上昇はしていて、炎症反応の値は横ばいで推移している。

 

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腫瘍よりはdebris

2021年09月25日 | Weblog

 金曜日の早朝に、90歳男性が右季肋部痛で救急外来を受診した。木曜日の当直だった外科医が診察して、急性胆嚢炎・胆嚢癌疑いとして入院になった。この患者さんは大腸癌(盲腸癌)・多発性肝転移で入院している87歳女性の夫だった。

 妻の方は、一般病棟から地域包括ケア病棟に移動していた。深部静脈血栓症でワーファリンを内服していたが、ワーファリン過量(結果的に)による血便で今回施設から入院となった。

 ワーファリンを中止して血便は軽快していたが、誤嚥性肺炎をきたして、その後薬の内服も難しくなった。このまま点滴で経過をみるようになるので、まだわかるうちに家族に面会してもらうようにしていた。

 病棟の看護師さんから、夫が胆嚢癌で入院したらしいと聞いた。夫も癌では大変だと思ったが、胆嚢癌は疑いとなっていただけだった。画像を確認すると、CTで造影されず腹部エコーで血流を認めないので、どちらかといえばdebrisのようだ。

 もともと総胆管結石で地域の基幹病院消化器内科で胆管ステントを挿入していた。年齢が高いので、入れたままになっているようだ。胆嚢炎として抗菌薬投与で治療が開始されたが、保存的に治療できない時に手術適応はなさそうだが、どうなるのだろうか。

 

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胸水増加

2021年09月24日 | Weblog

  糖尿病で内科外来に通院している83歳男性が、発熱・呼吸困難で先々週の金曜日の午後に受診していた。発熱外来担当の外科医が対応して、肺炎として自分が主治医として入院させていた。(当院は外科医1名で、手術はできないので、外科内科のような勤務になっている)

 翌週にこの患者さんが入院しているのに気付いたが、解熱して肺炎は軽快しているので、そのまま退院になるのだろうと思っていた。

 今週外科医から当方の内科外来に紹介がきていた。炎症反応は改善して(白血球8400→6400、CRP5.3→0.8)、BNPも測定していて軽快(524→112)していたが、両側胸水貯留が増加していた。

 心拡大もなく、心不全が悪化してようには見えない。それは肺炎随伴性胸水と見るのか、やはり心不全なのか。血清タンパク6.1g/dl・血清アルブミン1.6g/dlと、γグロブリンが上昇していると思われる低アルブミン血症があるので、その影響なのか。

 すでにアゾセミド15mg/日・スピロノラクトン25mg/日の内服が処方されていたが、ループ利尿薬としては少ないようだ。フロセミド20mg/日を追加して、来週前経過をみることにした。

 その後尿量が増加していい感じだった。来週の月曜日に胸部X線(座位)で胸水量を確認することにした。

 多発性骨髄腫が疑われるので、血清蛋白の免疫電気泳動を追加で提出して、M蛋白を確認することにした。この結果は外注で5~7日かかる。

 

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また肺血栓塞栓症

2021年09月23日 | Weblog

 日曜日の当直は外科医だった。86歳女性が発熱とめまい(ふらつき)で救急搬入された。

 胸部CTで右肺下葉背側に浸潤影を認めて、肺炎として入院になった。内科当番は別の先生だったが、外科医はそのまま自分が主治医として担当していた。

 入院後に酸素吸入2L/分が、3L/分さらに5L/分と増えていった。連休明けの火曜日に、肺血栓塞栓症を疑って胸部造影CTを行うと肺動脈(主に右肺動脈)に血栓を認めた。地域の基幹病院循環器内科に救急搬送となった。

 救急搬入時に、Dダイマーを測定していて2.3と微妙に上昇していた。Dダイマーは高くないという記載があったので、肺血栓塞栓症も考えたらしい。

 発熱で受診して、胸部X線・CTで浸潤影を認めると、当然肺炎の診断になる。(実際は肺血栓塞栓症に伴う陰影の可能性はある?)入院後の酸素飽和度低下で、肺炎像がそれほどでないことから、また肺血栓塞栓症を想起したのは大したものだ。

 通常は肺炎の悪化と考えてしまうだろう。見事な診断なのだった。先日、外科医から呼ばれて救急室で診た女性が造影CT追加で肺血栓塞栓症だった。その時の印象があったのだろうか。

 その患者さんは画像検査でこれといった異常がなく、Dダイマー高値という、いかにも肺血栓塞栓症らしかった。今回の方が難問だったと思う。

(入院時の胸部単純CTの縦隔条件を見返しても、血栓塞栓を疑うのは難しい)

 

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急性大動脈解離

2021年09月22日 | Weblog

 昨日の午前中は内科新患を診ながら、救急当番をしていた。市内の救急隊から、心肺停止の80歳男性の受け入れ要請が来た。ふだん当院に通院しているという。来てもらうことにした。

 認知症の妻とふたり暮らしだった。たまたまケアマネージャーが訪問して、トイレで倒れているのに気付いて、救急要請してくれたそうだ。

 名前に聞き覚えはなかったが、姓が当地でそれほど多くないことから、認知症で通院している患者さんが思い浮かんだ。その方の住所を画面で確認して、搬入される患者の住所を見ると同じだった。

 ふだん当方の外来に通院している高齢女性の夫になる(退職した医師から回ってきた)。妻を連れて来てくれる穏やかそうな方だった。別の内科の先生の外来に高血圧症・高脂血症で通院していたのだった。

 奥さんの方は甲状腺機能低下症・骨粗鬆症の定期処方をしているだけで、難しい治療はしていない。言ってくれれば同じ医師の外来にまとめてもよかったが、律儀に別々の内科医に通院していた。

 

 救急隊が自宅到着に心肺停止を確認している。救急車内で心電図モニターはは心静止だった。蘇生術をして搬入されたが、やはり心肺停止(心静止)で瞳孔散大・対光反射消失を認めた。

 そもそも発症からどのくらいで発見されたかわからない。おそらく倒れてから、30分か1時間くらいは経過しているのだろう。気管挿管をして心肺蘇生術を続けたが、まったく反応はなかった。

 病院にはケアマネージャーが妻を連れて来ていて、連絡を受けた弟夫婦も来ていた。処置をしているとことを弟夫婦に一度見てもらって、状況は厳しいことを伝えた。

 その後も処置を続けたが、やはり反応はなく、弟さんに入ってもらって死亡確認をした。倒れた時にできた皮下出血が顎にあるが、外見上は所見がない。

 Autopsy imagingのCT検査を行った。頭部CTは所見なし。胸腹部CTで少なくとも胸部下行大動脈に解離があり、胸腔内の出血していた。

 急性大動脈解離からの破裂と判断された。おそらく胸痛発症後に短時間で心肺停止になったのだろう。

 

 この夫婦は子供さんがいないので、認知症の妻が残されたことになる。弟夫婦には、しばらくは親族で面倒をみると思うが、早急に施設入所できるようにケアマネージャーと相談してもらうことにした。

 病院では介護者のためのレスパイト入院も行っているので、施設入所が難しければ医療相談室に連絡するようにと伝えた。

 

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膵仮性嚢胞

2021年09月21日 | Weblog

 3連休の最後の月曜日は、保健所の新型コロナPCR検査を当院で行うことになっていた。県内も当地域も新規発生は減少して、検査数は少なかった。入院依頼の待機にもなっていたが、依頼はなかった。

 金土日は別の内科医が当番だったが、意外にも外科の入院が2名あったが、内科の入院はなかった。これは珍しい。(収益的に大丈夫なのかとは思う。今日は2名入院したが。)

 

 連休中の受診者と入院を画面でチェックしていると、消化器科医が日直の時に66歳男性が痔瘻で受診している。ふだんはその先生の消化器科外来に通院しているが、痔瘻に関しては外科医の出番に合わせて紹介としていた。

 ふだんの病気は慢性膵炎だった。2年前に腹痛(上腹部痛)消化器科に入院していた。膵尾部の巨大な仮性嚢胞を形成していて、内科的治療ではどうにもならなかったようだ。

 消化器病センターのある専門病院に紹介・転院としていた。(そこから消化器科外来と内視鏡検査に週1回来てもらっている)胃と膵嚢胞をステントでつないで内瘻化していた。今でもステントの交換に行っているのだった。

 膵仮性嚢胞はあまり見たことはないが、今まで診た数少ない症例の中でも一番大きい。消化器科の専門病院では、胃を経由して肝内胆管にドレナージを入れたり、胃を経由して膵病変とつないだりと、手技がすごいのだった。

 

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