なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

慢性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎

2024年06月03日 | 内分泌疾患

 5月24日(金)に48歳女性が数日前からの両下腿浮腫(軽度)で受診した。体温は36.6℃で正常域だったが、脈拍数が101/分と頻脈傾向だった。

 担当した先生が末梢血検査と生化学検査(甲状腺機能を含む)を提出すると、TSH 0.2・FT3 4.09・FT4 1.67と甲状腺機能亢進を認めた。甲状腺の外注検査を提出して、翌週内分泌に詳しい先生の外来に回した。

 両下腿浮腫は軽快していた。甲状腺の外注検査の結果は、TSHレセプター抗体陰性で、抗TPO抗体と抗サイログロブリン抗体が陽性だった。

 橋本病(慢性甲状腺炎)がベースにあり、無痛性甲状腺炎を来したのだろうと判断された。そのまま経過をみて、翌月に甲状腺機能を再検となった。

 

 内分泌に詳しい先生がいると、特に甲状腺疾患の患者さんが集まって来て、いろいろなパターンが見られて勉強になるのだった。男性の橋本病もいて、当然比率は低くても当然男性もいるわけだが、改めて「いるんだ」とちょっと感動。

 糖尿病についても、きちんと75gGTTを行ったり、HOMA-IRを計算されたりしていて、ふだんの対応を反省させられて刺激になる。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バセドウ病の術後

2024年05月16日 | 内分泌疾患

 昨年から大学病院から週1回来てもらって内分泌の外来が始まった。また内分泌に詳しい先生も常勤で来られた。多いのは甲状腺疾患だが、外来に来ている患者さんのバリエーションが増えて興味深い。

 

 24歳男性は5年前から甲状腺の専門クリニックにバセドウ病で通院していた。していたが、何度か中断・再開を繰り返していたらしい。

 昨年11月にそちらのクリニックから居住地に近いということで、当院(内分泌外来)に紹介になった。甲状腺ホルモンはFT3、FT4ともに値が振り切れていた。チアマゾール(メルカゾール)とヨウ化カリウム丸で治療が開始された。

 白血球(顆粒球)が次第に減少して、白血球1700(顆粒球900弱)まで低下した。その時点で大学病院に手術目的で紹介された。

 大学病院耳鼻咽喉科で甲状腺全摘術を無事に受けて、今度は甲状腺機能低下症と副甲状腺機能低下症(低カルシウム血症)の治療が開始された。

 5月15日(水)に術後初めて当院の外来を受診した。処方はチラーヂンS75μg/日に、アルファカルシドール0.5μg/日とカルシウム製剤(アスパラCA200mg)になっている。(大学病院の処方をまずは継続にしていた)

 副甲状腺機能低下症は低カルシウム血症の治療になる。活性化ビタミンD製剤で、血清カルシウム濃度を低カルシウム血症の症状が出ない程度(異所性石灰化や尿路結石をきたさないよう)の低めに維持するのだった。血清カルシウム値は9.2mg/dLだった。

 

 バセドウ病の手術は甲状腺亜全摘術で副甲状腺も1個残すのものだと思っていた。あと、副甲状腺機能低下の管理をしたことはこれまでなかった。

 甲状腺エコーの件数も増えてきている。甲状腺エコーの本は持っていないが、基本的なことはわからないとまずいかもしれない。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

内科医が増えました

2024年05月06日 | 内分泌疾患

 今年は新任の先生が増えて、それぞれ専門分野をもっている。しかし当院としては専門分野は標榜しないで、内科としてまとめている。専門医が診るのが好ましい患者さんを回したり、相談できるのでとても助かる。

 整形外科で手術中の患者さんが急変した時は、循環器科が専門の先生が呼ばれて、適切な対応で主治医に感謝されていた。

 

 内分泌が専門の先生には、亜急性甲状腺炎の患者さんを相談することができた。その時、FT3/FT4比について教えてもらった。FT3/FT4比が2.5以上でバセドウ病の確率が高い

 確かに亜急性甲状腺炎の患者さんではFT4の上昇が目立っていて、バセドウ病とは違っていた。別の日に、バセドウ病の患者さんの甲状腺機能を見せてくれて、ほらFT3が目立って高いでしょうといわれた。

 

 その先生が担当している88歳女性は著しい低ナトリウム血症だった。4月9日に食べられない・動けないとして内科外来を受診していた。発語はあるが、意識低下もあった。

 血清ナトリウムが100で、このような値は始めて見る。その先生も、当院では精査・治療困難と判断して、大学病院に搬送していた。

 大学病院到着時は血清ナトリウムが93で、翌日も98だった。そこから1日ごとに109→110→114→119→124→127→133と順調に改善している。

 内分泌代謝に異常は認めず、通院している内科医院処方の降圧利尿薬(ヒドロクロロチアジド12.5mg、ARBテルミサルタン40mgとの合剤)に影響とされた。低下から食欲低下に陥ってさらに悪化したのだろう。(この前当方が担当したループ利尿薬で低カリウム血症1.4になった患者さんも同じ医院に通院していた)

 4月23日に当院にリハビリ目的で転院してきた時は、血清ナトリウム141で正常域だった。大学病院の診療情報提供書には治療により軽快という簡単な記載のみで、具体的な治療は記載されていなかった(残念)。

 普通に高張食塩水の点滴静注だったとは思う。高張食塩水(3%NaCl)は、10%NaCl30mL+5%グルコース70mL、または生理食塩水500mLから100mLを抜いて10%NaClを120ml(20mLを6A)加える。浸透圧性脱髄症候群を避けるために24時間で10mEq/L未満、48時間では18mEq/L未満のNa濃度の補正に留める。

 高張食塩水の輸液スピードや、食べられない時のそれ以外の輸液(高張食塩水は基本側管からなのでメインの方)についての記載はないが、ケースバイケースなのだろう。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

亜急性甲状腺炎

2024年04月26日 | 内分泌疾患

 4月22日(月)にふだん高血圧症で通院している87歳女性が、1週間前からののどの痛みと食欲不振・体重減少(3kg)で受診した。

 のどといっても前頸部を指さした。触診しても指さしたところに圧痛はなく、鎖骨直上の左右に少し圧痛があるかどうかというくらいだった。

 嚥下痛はなく、咽頭の発赤はなかった。鼻汁・咳はない。発熱は体温測定していないというので、わからないが、その日は36.9℃だった。微熱が続いていたかもしれない。前日は寝汗をかいて、着替えたという。

 

 3日前から声がかすれてきたともいう。会話には支障がないが、確かに少しかすれているように聞こえる。通院している時は、もう癌健診はしませんといっていたが、その日はのどの癌が心配という。

 耳鼻咽喉科外来に回すことにして、コロナとインフルエンザの迅速試験を行って(耳鼻咽喉科受診前には必須、両者陰性)、点滴・血液検査も提出した。

 耳鼻咽喉科外来受診は、午後になった。血液検査で白血球5800・CRP9.8と思いがけなく、CRP高値を認めた。ウイルス性喉頭炎を想定していたので意外だった。喉頭炎はkiller sore throat以外ではあまり細菌感染はないはずだ。

 耳鼻咽喉科で喉頭ファイバー検査が行われたが、有意な所見はなかった。頸部痛(甲状腺部痛)なので亜急性甲状腺炎ではないですか、といわれた。診察時に、年齢で否定的かと思ってしまっていた。採血分で甲状腺機能も追加した。

 甲状腺機能は、TSH0.03(↓)・FT3 16.9・FT4 >5.00と甲状腺機能亢進だった。甲状腺エコーを行うと、内部実質は不均一で、まだらに低エコー域があった。

 亜急性甲状腺炎だった。上気道感染が先行することになっているが、軽度の声のかすれはそうなのか、甲状腺炎の影響なのか。改めて甲状腺の触診をしたが、痛みがあるといえばあるというくらいだった(数日前からは軽快してきたそうだ)。

 内分泌に詳しい内科の先生に訊いてみると、FT3とFT4の比率のことをいわれた。確かにBasedow病のようなFT3メインではなく、FT4の上昇が目立つ。それは破壊性甲状腺炎を示唆するそうだ。

 NSAIDsではなく、プレドニゾロンを使用することになった。高齢なので30mg/日ではなく、20mg/日での開始を勧められた。國松淳和先生の30mg/日から5日おきに漸減ではなく、20mg/日から1週間おきに漸減して1か月の使用を予定した。

 「発症年齢は30~60歳に多く、男女比は1:10と女性に多い」となっているが、87歳でも起きるのだった。

 鑑別のためもあり、甲状腺もマーカーを一通り提出した。抗TSH受容体抗体(TRAb)・抗サイログロブリン抗体・抗TPO抗体を提出して、念のため可溶性IL-2受容体抗体もといわれたので、それも提出した。

 わかってみると、最初から亜急性甲状腺炎の症状・経過なのだった。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甲状腺機能亢進症

2024年04月21日 | 内分泌疾患

 高血圧症で腎臓内科の外来に通院している68歳男性は、2か月で11㎏の体重減少があった。さらに1月から少しずつ貧血を呈していた。もともとHb14~15g//dLだったが、1月から漸減して、4月にはHb11.8g/dL(MCV90.6→82.7と小球性側に変化)だった。

 貧血以外の血液検査や尿検査は異常を認めなかった。担当医は悪性腫瘍を疑って、胸腹部造影CTを行ったが、腫瘍は指摘できなかった。

 さらに上部・下部の内視鏡検査を行うため、消化器科の外来に紹介として予約をとった。(担当は大学病院から来てもらっている先生)

 消化器科を受診した日には、CTの放射線科読影レポートが出ていた。検査目的である消化管悪性腫瘍は指摘できないことの他に、「びまん性甲状腺腫」の記載があった。消化器科医が甲状腺機能検査も提出すると、甲状腺機能亢進症だった(TSH<0.01、FT3 15.75、FT4 >5.00)。

 内分泌に詳しい先生の外来に回されて、甲状腺のマーカーが提出されて、機能亢進症の治療が開始された。

 消化管悪性腫瘍の有無を気にかけてのCTオーダーだったので、自分で見た時はそれ以外は抜けてしまったのだろう。放射線科の読影レポートは遠隔診断なので、数日遅れて出る。さすがに放射線科医は、検査目的以外のところも、撮影された範囲は全部確認するのだった。

 

 この年齢の男性だと甲状腺機能亢進症は想起しにくいかもしれない。この場合(甲状腺機能亢進症)の体重減少は、「食欲旺盛(少なくとも普通)なのに代謝亢進で体重が減少する」、ということになる。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甲状腺機能亢進症

2024年04月14日 | 内分泌疾患

 ふだんは逆流性食道炎・慢性胃炎で消化器科に通院している62歳女性が、両下腿浮腫で内科外来を受診した。

 最初は3月7日に受診した。担当の先生は血液・尿検査を行ったが、有意な異常を認めなかった。(胸部X線・心電図は行っていない)

 3月14日に症状が続いて再受診した時は内科の別の先生が担当した。血液検査に甲状腺機能も入れていて、甲状腺機能亢進症だった。(TSH 0.00・FT3 19.03・FT4 3.22)

 この患者さんは2015年に一過性の甲状腺機能亢進があり、無治療で短期間で正常域に戻っていた。抗TPO抗体・抗TG抗体が陽性で抗TSH受容体抗体は陰性だった。当時外科に甲状腺に詳しい先生がいて、橋本病・無痛性甲状腺炎とされた。

 その後、2019年に期外収縮が多発して、循環器科(当時)で甲状腺機能も検査したが正常域だった。

 今回は抗TPO抗体・抗TG抗体だけでなく、抗TSH受容体抗体も陽性だった。甲状腺に詳しい内科の先生に回されて、Basedow病として治療が開始された。

 最初ヨウ化カリウム丸で開始して、抗TSH受容体抗体の外注検査結果が陽性と判明して、メルカゾールも追加された。甲状腺機能は改善してきた。

 担当の先生に訊いたところ、病名は橋本病+Basedow病になります、といわれた。甲状腺ホルモンを抑えるのはヨウ化カリウム丸で、メルカゾールはBasedow病自体を抑えるのに使用します、ということだった。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

甲状腺機能低下症

2023年11月09日 | 内分泌疾患

 若い腎臓内科医から相談された。入院患者さんの肝機能障害の原因は何でしょうか、ということだった。

 画像上、肝胆道系に異常はない。食欲不振があり、高カロリー輸液(フルカリック2号1003ml/日)が継続されているが、食事摂取できるようになっていた。薬剤性も否定できないが、栄養過多が疑われた。

 

 ちょっと訊いてみたという感じで、むしろ治療の成果を話したかったようだ。入院からの経過を説明してくれた。

 患者さんは、9月12日に市内の内科クリニックから腎不全・心不全で紹介された89歳男性だった。2019年に当院循環器科(当時はあった)に心房細動・心不全で入院した既往がある。

 退院後はクリニックに通院していた。今回紹介の時点でBUN 99.0mg/dl・血清クレアチニン13.23mg/dlと著明な腎機能障害があった。(2019年はBUN17.1mg/dl・血清クレアチニン1.02mg/dl)

 胸水貯留・心嚢液貯留・腹水貯留を認めていた。

 心不全・腎不全の悪化としてできる範囲で治療するが、透析導入の適応はなく、病状悪化時はDNRの方針でいいでしょうかということで入院になった。

 2019年に心房細動なので循環器科で甲状腺機能をみており、正常域だった。入院時にはみていなかったが、10月2日になって検査すると甲状腺機能低下があった。FT4<0.40(0.70~1.48・FT3<1.50(1.68~3.67)・TSH 108.57(0.35~4.94)。

 チラーヂンSを12.5μg/日から慎重に漸増して、腎不全・心不全はしだいに改善していった。現在はチラーヂンS 75μg/日で甲状腺機能は正常域に近い。

 腎機能がBUN 110.9mg/dl・血清クレアチニン2.84mg/dlと改善している。BUNが高いのは消化管出血が疑われるのか、栄養過多が影響している?。

 

 甲状腺関連の抗体検査は提出していなかったが、こんな年齢の男性が、急に甲状腺機能低下になるのだろうか(なっているが)。ACTH・コルチゾールは正常域で副腎皮質機能低下はない。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする