なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「プライマリケアのためのインフルエンザ診療2015-2016」

2016年01月31日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。金曜日の夕方から新規システム導入にため機器の入れ替えが行われていた。その間は紙伝票で処理していたが、今日の午後から試運転で再開となった。2月からはこれまでと同様にオーダリングのみだが、4月から紙カルテはなくなり、電子カルテになる。救急対応は基本的に断っているのと、市民に対する掲示もあり、外来受診も少なかった。明日からはへ通常営業になる。

 朝から「プライマリケアのためのインフルエンザ診療2015-2016」を読んでいた。2015~2016年シーズンからインフルエンザワクチンがそれまでの3価ワクチンから4価ワクチンとなった。A型株2株(H1N1pdm09とH3N2)とB型株2株(ビクトリア株と山形株)からなる。

 B型はこれまでビクトリア株か山形株のどちらか一方しか入ってなかったので、流行株に当たる確率は半分だった。今年からはB型インフルエンザに有効になるはずだ。

 A型インフルエンザのうち、A(H1N1)pdm09は高い有効性が期待できるが、A(H3N2)はワクチン製造の際の「鶏卵内での抗原変異」のため、効果が低い。2014~2015年シーズンはほとんどがA(H3N2)だったが、(もともと有効性の低い)高齢者はもとより健康成人でも効果がみられなかったそうだ。

 今シーズンは幸いにインフルエンザの患者さんが少なくて助かっている。まだ抗インフルエンザ薬を処方していない。周辺では増えてきているようだが、2月はどうなるか。副反応として注射部位の発赤腫脹が多かった印象がある。

 

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臨床微生物学会2日目

2016年01月30日 | Weblog

 「微生物検査の新技術」 1)培養検査自動化(塗布・培養・感受性検査) これはすでに広く(当院でも)導入されている。間違いもあるので、チェックは必要。検体培養を行わないCulture-Free Microbiologyも始まっている。2)質量分析 MALDI-TOF MSで菌が生えれば、そのまま自動的に同定・感受性検査までできる。これは今のところ高額すぎていったん病院での導入は無理。ただし、地域の一か所に導入してそこに検体を集中させる連携の可能性がある。3)遺伝子検査 培養困難な菌の検出・特殊な培地を要する菌の検出・発育に長期間かかる菌の検出に適応がある。重症感染症での同定を迅速にすることができる(結核は4時間で同定)。欠点はターゲットとして微生物しか検出できず、感度が高すぎてコンタミを拾ってしまう。

 「小児4種ウイルスのワクチン」 1)麻疹 2015年に日本は麻疹排除状態にあると認定された(WHO)。2015年に麻疹に罹患したのは35人で、小児はワクチン未接種で成人は接種不明。診断のIgM抗体は発疹が出て4~5日で提出する。海外で感染して日本に戻って発症する。海外に行く時はMRワクチンを接種する。2)風疹 (ワクチン接種の問題で)今は成人男性の病気になっている。先天性風疹症候群は中学生女子のみへの接種では予防できず、1995年の幼児と中学生の男女に接種してから減少した。3)水痘 2014年10月1日から定期接種になってから減少した。1~2歳時に3か月以上空けて2回接種する。成人がかかると重症化する。4)ムンプス 定期接種になっていない。

 「ヒトメタニュウーモウイルスとボカ(パルボ)ウイルス」 2001年に発見されたが、昔からあったウイルス。上気道感染から重症の細気管支炎・肺炎まで起こす。5歳までにすべての小児が感染する。RSウイルスは秋から冬にかけて0~2歳で発症。その後インフルエンザウイルスが冬の年末から年明けまで幅広い年齢でかかる。。hMPVは冬から春にかけて0~2・3歳が発症するが、少し大きくなってからもある。症状は発熱・咳・鼻汁で、細気管支炎になると喘鳴も。4~5日の潜伏期を経て、発熱が4~5日、咳と鼻汁は1~2週間続く、発熱が5日以上続く時は下気道感染を来たしている。迅速診断キットは発症から4日以内で90%検出する(ウイルス量が多い)が、その後は50%になる。ボカ(パルボ)ウイルスは4~5歳までにかかる。キットはない。

 「感染症のバイオマーカー」 プロカルシトニンは全身の臓器から産生され、重症の細菌感染症で増加する。敗血症では2ng/ml以上になる。0.5~2ng/mlの時は12~24時間後に再検して確認する。プロカルシトニンはウイルス・真菌・抗酸菌・寄生虫ではあまり上がらない。また健常者と敗血症患者の値が重ならない。プレセプシンは1000以上で予後が悪い。健常者と敗血症患者で値がかぶってしまう。プロカルシトニンはその日に(すぐに上がるので)測定する。プレセプシンは長く異常が続く。CRPは半日で上昇してくる。プロカルシトニンとプレセプシンは末梢白血球数・腎機能障害の影響を受ける。

 胸部画像の診かた(講師の診断力がすごかった)、統計学の基礎、βラクタマーゼ、微生物の分類学などもあった。細川先生や上原先生が近くにすわっていた。ここ2年、夏にあるこの学会のセミナー(東京で開催)に日帰りで行っている。今年も東京開催なら行きたい。学会は明日まであるが、病院の日直なので行けない。

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臨床微生物学会

2016年01月29日 | Weblog

 臨床微生物学会のICD講習会に申し込んでいて、それだけに行くのもあったが、せっかくなので学会にも参加することにした。

 「臨床における適正な抗菌薬治療とは」 感染症専門医を含むICTチームがかかわると、耐性菌が減少して最適な抗菌薬治療の比率が増加するが、ちょっと間が空いたりすると、少し後退してしまうそうだ。ICTといえども、主治医(治療医)に気を使って介入しているというのが印象的だった。治療の責任は主治医がとるのだから当然ではあるが。

 「新型インフルエンザと危機管理」 A型とB型は季節性に変異する。C型は数年おきに変異するが臨床的にそれほど問題にならない。パンデミックを引き起こすのはA型。(H)16×(N)9の亜型がある。インフルエンザの本来の宿主はトリ。種に固有のインフルエンザがあり、本来は他種にうつらないが、新型インフルエンザはトリ・ブタからヒトにうつり、それがヒトからヒトへうつるようになってパンデミックとなる。2009年の新型インフルエンザである、インフルエンザA(H1N1)pandemic2009は、トリ・ブタ・ヒトの混じった複雑なウイルスだった。幸い、それは病原性が低かったが(高齢者が免疫を持っていた)、新型インフルエンザに対する危機意識を低下させた。新型インフルエンザのパンデミックは歴史上繰り返し起きている。いつ起きるか、どんなタイプかはわからない。スペイン風邪は致死率2%だった。これを基準にして、インフルエンザ対策でどれだけ下げられるか。基本戦略は、1)ワクチン2)公衆衛生3)医療体制4)個人防御。新型には多くの人が免疫がない。免疫を得るには、ワクチンを接種するか、実際に感染するかしかない。ワクチンは製造に6カ月かかり、できたころにはインフルエンザのピークが過ぎている。抗インフルよエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)の効果は、重症化阻害にある程度はある。インフルエンザの病原性が高ければ対策を講じても効果は低い。

 「生物学的製剤投与で増えている結核・NTM症」 関節リウマチなどの免疫性炎症性疾患に対する生物学的製剤の投与が増加している。特にTNFα阻害薬はTNFαが結核免疫のキーとなるものなので、潜在性結核からの二次性結核症を引き起こす。数100万年前からNTM症はあった。それは土壌からヒトに感染するが、ヒトからヒトへは感染しない。3万年前にその中からヒトからヒトにうつる結核が誕生したそうだ。マクロファージは結核菌を死滅させようとするが、完全にはできない。マクロファージはアポトーシスにより結核菌を肉芽腫の中に閉じ込める。これにもTNFαが作用する。インフリキシマブ(レミケード)を投与する前に、問診・胸部X線・胸部CT・IGRand/orツ反を行う。活動性結核があれば当然結核の治療をする。結核の既感染があれば結核薬INHを予防投与する。予防効果は70%くらい。生物学的製剤による結核の再燃での死亡率は4%(通常の結核の死亡率は10%)。結核が発症して、生物学的製剤を中止して結核の治療した時に、結核自体は改善しても、急激に病状が悪化することがある。これは免疫再構築症候群で、ステロイド投与例では2~3倍に増量して、ダメなら生物学的製剤を再投与する。生物学的製剤によりNTM症も起きるが、発症しても予後不良ではない。

 ICD講習会はハンコをもらうのが目的なので、内容は問わない(すっかり休んでいる)。聖マリアンナ大総合診療科の國島先生は、相変わらずよく通る声で(DJの赤坂さんそっくり)講演していた。國島先生には以前当院でCDIの講演をしてもらったことがある。

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大動脈解離

2016年01月28日 | Weblog

 今日の午後は救急当番だった。救急隊から連絡が来て。79歳男性が背部痛を訴えた後に、意識消失したという。左半身麻痺がある、ということは、大動脈解離が発症して、頸動脈にも解離が波及したと判断された。救急隊が到着する前から、心臓血管外科への搬送は決まっていた。

 搬入依頼を受けた時、消化器科の先生と胃瘻造設をしていた。午前中の予定が遅れてしまっていた。チューブを挿入したところで、後はやっておきますと言われたので、急いで救急室に行った。呼名に開眼せず、右上肢を動かしていた。心電図はほとんど異常がなかった。大動脈造影CTをとると、大動脈起始部から解離が両側の総腸骨動脈まで広がっていた。さらに両側の頸動脈も解離していた。心嚢腔にも血液がたまっている。今までみた大動脈解離のうちで、最もひどいかった。

 血圧は搬入時に110くらいで、その後に70に低下した。点滴を開始するとまた110~120になった。早速、心臓血管センターのある病院へ電話した。担当の看護師さんが出て、いつもならベットがあれば受けれくれるが、先生と相談して折り返し電話しますと言われた。そこは脳外科はないので、頸動脈に及ぶとどうなのかと思いながら待っていると、受け入れOKの電話が来た。

 いったん帰った救急隊を呼んで、搬送しようとした時に、呼吸が停止して脈拍が触知できなくなった。また救急室のストレッチャーに戻して、心肺蘇生を開始したが、なにしろ大動脈解離で、おそらく破裂したと思われる。結局、反応はなく、奥さんに事情をお話して、それからも心肺蘇生をした。また奥さんを読んで蘇生術を中止した。

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困っていることいろいろ

2016年01月27日 | Weblog

 昨日内科の若い先生(女性)から、29歳女性(当院看護師)の喘息とじんましん症状について相談された。名前を聞いて思い出した。昨年末のインフルエンザ予防接種で、気道狭窄と膨疹が出現した方だった。ステロイド注で対応して何とか軽快したので、来年ば予防接種はさけることにした。

 以前にも喘息症状とじんましんの治療歴があったそうだ。先週末から吸入ステロイドとテオフィリン徐放薬・シングレア内服で治療を開始していたが、喘鳴が続いている。酸素飽和度は正常域で、発熱はない。風邪気味だったというが、喘息症状そのものかウイルス性気道感染か区別しにくい。小さな子供がいるので、入院はしたくない(絶対入院の病状ではない)。日曜日に救急外来を受診して、ステロイドの点滴を受けていた。注射はしたくないので、内服希望という。胸部X線は異常がなかった。採血もしていて、白血球数はステロイド注の影響かどうか、12000でCRP3.2だった。

 プレドニン30mg/日内服を3日行って、経過をみることにした。抗菌薬なしでステロイドのみも不安(医師側が)ということで、レボフロキサシン内服併用とした。ステロイドの漸減の仕方は今週末の病状で決めることにした。喘鳴などが悪化すれば、今日また相談のはずだったが、何も言ってこなかったので、たぶん悪化はしてないのだろう(忙しくて訊くのを忘れた)。

 今日の内科再来に来た34歳女性は糖尿病で通院している(脂質異常症と脂肪肝も)。統合失調症で精神科病院に通院している。ジプレキサ投与でHbA1c15%になって紹介されたところから治療が始まった。入院治療後にHbA1cが6.4%まで低下したが、その後の外来通院では着々と上がって、10%を越えてきた。今日は13%。入院は今職業訓練校に言っているのでできないという。自覚的には症状がない(多尿はあるはずだが)。

 入院中はインスリン強化療法だったが、途中から内服のみで改善したので、自己注射はしてなかった。今回外来でGLP1受容体作動薬と持効型インスリンを開始していた。まず持効型を増量して経過をみることにした(他にメトホルミンとSU薬のグリミクロンが少量入っている。昼に超速効型を注射しにくいが、強化療法に戻さないとだめかもしれない。(現在精神薬はリスパダール)

 消化器科の先生が左上肢のしびれ・感覚鈍磨が出て困っている。他の医師から強制的に頸椎MRI受けるようにいわれて撮影した。整形外科医と相談して、おそらく脊椎外科専門の病院に紹介になる。消化器科2名のうち1名が開業で辞める予定なので、長期に休暇を取るようになると病院としては大変だ。

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タケキャブ(ボノプラザン)Web講演会

2016年01月26日 | Weblog

 今日のお昼にWeb講演会(お弁当付き)があった。武田製薬のタケキャブ(ボノプラザン)で、3月1月から長期処方ができるのに合わせての講演会だった。PPIは酸性環境下で不安定なため、壁細胞の分泌細管内に長く留まれず、血中濃度が低下するとプロトンポンプを阻害できなくなる。一方タケキャブは酸性環境下で安定なため、分泌細管内に高濃度で集積して長時間残存してプロトンポンプを阻害し続ける。

 PPI抵抗性の逆流性食道炎では、PPIを倍量にする(パリエットのみ)、PPI内服を夕~就寝前にする、就寝前にH2ブロッカーを追加する、消化管運動薬など他の薬剤を追加する、などで対応していた。今後は、PPIをタケキャブに変更で対応して下さい、重症例では最初からタケキャブを投与して下さいという講演だった。

 長期投与できるまでは、よほど使いたい患者さん以外は長期投与解禁を待つことにしている。タケキャブはピロリ菌除菌療法でだけ使用していた。他のPPIの成功率70%に対して、タケキャブを使って除菌すると90%以上成功するそうだ。実際、処方数が少ないが、タケキャブを入れた除菌では、全例除菌に成功している。

 消化器科医に、GERDや消化性潰瘍は全例タケキャブになるかと訊くと、PPIで治療できていれば当然変更はしないし、PPI抵抗性はそんなに多くないしという、もっともな話だった。ただ、タケキャブは効果の立ち上げりが速く、投与数時間で効くので(PPIは何と数日かかる)、入院ではまずタケキャブを使用することになりそうだ。来月、島根大学の木下芳一先生のタケキャブ講演会があるので、都合がつけば行ってみたい。

 内科の若い先生のひとりが家庭の事情で辞めるので、内科再来で診ていた患者さんを振り分けている。今日も不在だったので、代わりに診ていた。糖尿病薬の使い方が違ったり、朝より夕の内服が多いなど、個性が出るなあと思った。1年前にCOPDの増悪で死にかけた65歳男性(高炭酸ガス血症)がまだ喫煙していた。同じく65歳男性は緩徐進行型1型糖尿病でインスリン量が1日60単位くらい使っていた(血糖コントロール不良)。いかにも心気症という52歳男性もいた。今日はまだ数が少ないので、これまでの経過を見ながらいろいろいるなあと思ってゆっくり診察していた。

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嚥下障害は続く

2016年01月25日 | Weblog

 昨年10月に誤嚥性肺炎で入院した87歳男性は、何度も治っては再発を繰り返して、高カロリー輸液にしていた。経口摂取なしでも、口腔ケアを頑張っても、発熱が断続的にあり、胸部X線で新たに陰性が生じていた。結局、高熱で酸素飽和度低下の時に一定期間抗菌薬を使用して、また一定期間休んではまた投与しての繰り返しだった。この週末から発熱と酸素飽和度低下があり、今日は血圧も低下してきた。個室に移動して治療を継続するが、今回は乗り切れずに終わりそうだ。

 同じ病室の93歳男性も誤嚥性肺炎で入院して、治癒後に食事再開した。誤嚥性肺炎で何度も入院しているが、ご本人と家族の希望は、ムセってもいいからとにかく食べたいだった。経口摂取は順調に見えたが、また肺炎になり、入院時よりひどかった。家族にお話しして、人工呼吸は行わず、通常の治療で経過を見ていた。ダメだろうと思っていたが、軽快してきた。末梢の点滴を高カロリー輸液にして、療養型病床にお願いする方針とした。この方は経口摂取を中止して、喀痰吸引でみていると病状は安定していた。週末からとにかく食べたいという要求が続き、ゼリー食くらいは出すことになった。

 明日は、認知症の進行により経口摂取困難になった81歳男性の家族に、胃瘻造設術による経管栄養の話をする予定だ。嚥下障害・誤嚥性肺炎との戦いは、限りなく続いていく。

 「ねころんで読めるてんかん診療」を読み終わって、「てんかんが苦手な医師のための問診・治療ガイドブック」を読み始めた。簡単な脳波の本も読んで、てんかんシリーズはいったん休止しよう。

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緩和ケア講習会2日目、イーケプラ静注薬

2016年01月24日 | Weblog

 今日は県の緩和ケア講習会2日目。午前は消化器症状・呼吸器症状・倦怠感の治療の後に、八千代病院精神科の三浦信義先生がせん妄などの精神症状の話をされた。精神科以外の医師にわかりやすい話で、こんなすばらしい講義があるとは思っていなかったので驚いた。

 せん妄は身体疾患の(単なる)一症状で、心因性の病態ではない。軽度の意識混濁(脳機能低下)を反映して、さまざまな症状(見当識機・幻覚・妄想・焦燥・興奮・傾眠覚醒リズム障害)が起こる。種々の身体疾患・薬剤などによる急性脳機能不全。

 基本的に身体疾患によるので、一般的に精神科医は興味がないそうだ。前の病院の上司は、他科からの依頼に、「身体疾患を治してください」とのみ返事したので、講師の先生が「慌てて尻拭いに行きました」と言っていた。

 入院している高齢者では、10~40%で起きる。もっと少ないという印象があれば、それは見逃しているだけという。講師オリジナルの意識混濁(脳機能障害)と精神症状の図が分かりやすかった。脳機能が10%程度低下するとうつ病類似の自発性低下・反応速度の低下に、20~30%低下すると認知症類似の健忘症状・話がちぐはくに、40%低下でせん妄の幻覚・妄想が起こる。50%低下すると昏睡になり、70%低下すると麻酔にかかっているのと同じ状態になる。

 驚くほどのわかりやすい話だったので、ぜひ病院に講演に来てほしいと思った。講習会終了後に、講演にお呼びしたら来ていただけるか確認したが、OKとのこと。三浦先生の講演を聴けたのが、一番の収穫だった。

 午後は、悪い知らせを伝えるロールプレイがあった。stageⅣの進行癌で手術不能のため、抗癌剤の治療を開始するという設定。治癒するかという問いには、根治はない(進行を遅らせる、腫瘍を縮小させるのみ)と答えなければならない。

 金曜日に小児科医から、てんかん重積発作にイーケプラの点滴静注を使用したという話を聞いた。小児期からのてんかんで、別の小児科医(神経専門)が20歳代の今もそのまま小児科で診ている患者さんだった。なかなか発作が治まらず、年齢的には成人なので神経内科医に相談したところ、イーケプラの静注薬を入れたので使用を勧められたそうだ。イーケプラだけの効果でもないのだろうが、発作はうまく治まった。

 「ねころんで読めるてんかん診療」には、「海外では、てんかん重積への治療にレベチラセタム(イーケプラ)が使われます。静注薬は近いうちに日本でも使用可能になる予定です。」とあるが、昨年11月に販売されていた。

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緩和ケア講習会

2016年01月23日 | Weblog

  今日明日と県の緩和ケア講習会に参加する。午前中はオピオイドを中心としたがん性疼痛の治療法、放射線治療、在宅緩和ケアの講義があった。がん性疼痛の講師は弘前大学で緩和ケアをされている佐藤哲観先生で、ユーモアを交えて分かりやすく解説された。ご自身はタペンタドールを使用しているという(会場内に使用している方はいなかった)。タペンタドールはμオピオイド受容体への結合とノルアドレナリンの再取り込み阻害作用の相乗効果で鎮痛効果を発揮する。モルヒネやオキシコドンと比較して消化器系副作用(便秘や悪心・嘔吐)を生じにくいそうだ(制吐薬や便秘薬併用なしもあり)。もともと麻酔科の先生で、神経ブロックが得意。内臓神経ブロックや腹腔神経叢ブロックでオピオイドが不要になったり、少量で済んだりするという(この辺にブロックの先生はいたかな)。

 放射線治療(緩和照射)では、癌性疼痛に対してだけではなく、癌(消化管・肺・婦人科)からの出血の止血にも適応があるというのは初めて知った。放射線照射による出血もありうるので、適応は慎重になる必要があるが。肺扁平上皮癌で空洞を伴うと、照射により出血(喀血)を来たすこともあり、これは避ける。研修医のころに、進行胃癌(手術不能)からの出血が止まらず、輸血を毎日していたが、最終的に輸血を断念したことがあった。

 午後は癌性疼痛の症例にどう対応するか、癌性疼痛への治療、患者家族への予後告知とその後のケアと目標設定などをグループに分かれて話し合った。その後に医師・患者に分かれてのロールプレイングがあった(初めての経験)。

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久しぶりに胃瘻かな

2016年01月22日 | Weblog

 病棟では81歳男性の食事摂取で困っていた。昨年発熱で入院して、足趾の化膿巣から菌血症(血液培養2セット陽性)になっていた。抗菌薬で治癒したが、腰痛下肢痛で動くのが大変だった。化膿性脊椎炎を疑ってMRI検査をしたり、心内膜炎を疑って心エコーをしたが、所見はなかった。

 もともと、前立腺癌で県立がんセンター泌尿器科に通院していて、軽度ながら骨転移があった。整形外科的には腰部脊柱管狭窄症がある。NSAIDなどの鎮痛薬を複数組み合わせて、何とか車いす移乗ができるようになって退院した。今回は肺炎で入院して、抗菌薬投与で順調に軽快していた。問題は飲み込みが悪くて、摂取量が少なかった。前回入院時から認知力が低下していたが、今回はさらに進行していた。

 昨年9月の頭部CTでは脳萎縮があるが、脳梗塞は(CTで見る限り)なかった。頭部CTを今日再検すると、少なくとも脳外科の治療対象になる病変はなく、脳梗塞もなかった。昨年の画像と比べてよくよく見ると、脳萎縮が少し進んでいた。

 このまま嚥下訓練を継続しても、嚥下が進まなければ、経管栄養にするしかないと思われる。経口摂取と併用の形になるので、むしろ本来の適応なのかのしれない。来週家族と胃瘻について相談することにした。

 院内治療薬のジェネリック化がどんどん進んでいる(比率を上げる必要がある)。今日も変更の一覧票が院内メールで配信されていた。価格が、リスパダールは1/3に、アレジオンは1/4に、テノーミンは何と1/12になる。

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