今日は、「もう怖くない!心房細動の抗凝固療法」小田倉弘典著(文光堂)を読んでいた。
左心耳血栓は、動脈血が流れる左心耳の血流が静脈と同じくらいに低下することで凝固系が異常亢進するために生じる静脈血栓であり、抗凝固薬が効果を発揮する。抗凝固薬は、左心耳血栓の形成を抑えつつ、左心耳以外のところでは出血しない程度に「ほどほどに」凝固系を抑える。
ワルファリンは複数の凝固因子(ビタミンK依存性凝固因子)の産生をビタミンKを介して(ビタミンKに拮抗)間接的に抑える。NOAC(DOAC)は産生された単一の凝固因子の機能を直接抑える。ワルファリンは、遅く効いて、ずっと効く(各凝固因子の半減期が長く、ワルファリンの半減期も約40時間)。NOAC(DOAC)は速く効いて、早く切れる(半減期は約12時間)。
抗凝固薬では2つのリスクを評価する。一つは「薬を飲まない時に脳卒中になるリスク」、もう一つは「薬をのんで出血するリスク」。ネットクリニカルベネフィット=(塞栓症減少効果)-1.5×(頭蓋内出血増加)で、ゼロ以上ならば抗凝固薬の適応あり(Singerら)。(出血の方に1.5をかけるのは、頭蓋内出血の臨床上のインパクトが塞栓症より大きいと考えての数値で、1.5は恣意的なもの。
CHADS2スコアは、心不全(CHF)1点・高血圧(Hypertension)1点・75歳以上(Age)1点・糖尿病(DM)1点・脳卒中/TIAの既往(Stroke)2点。「こ(高血圧)と(糖尿病)し(心不全)の(脳梗塞)七五さん(75歳以上)」と覚える。この点数の約2倍が年間脳梗発症率(1点2%、2点4%、3点6%、4点8%)。2点以上は抗凝固療法の適応。1点や他のリスクがある時も推奨・考慮可。
CHA2DS2-VAScは「65歳以上(65~74歳)」「女性」「血管疾患」もリスクであり(1点)、「75歳以上」は他のリスクより大きい(2点)としたもの。(日本では「女性」は除外)
日本循環器学会 心房細動治療(薬物)ガイドラインでは、僧帽弁狭窄症と人工弁(生体弁・機械弁)はワルファリンを推奨、非弁膜症性心房細動はCHADS2スコアとその他のリスクから、ワルファリンとNOAC(DOAC)を推奨・考慮可としている。
どの国のガイドラインも発作性、持続性(非発作性)で抗凝固療法の適応に差はない。
ワルファリンの使い方。ワルファリン1mg/日で開始、1週間(無理なら2週間)ごとに通院して、PT-INRが1.4未満であれば1mgずつ、1.4以上になったら0.5mgずつ増量する。1.6以上が2回以上継続したらその量で固定する。維持期では0.5mg錠で増減する。高齢者・腎機能低下者・2mg以下で調整中の場合は0.25mg単位で調整する。PT-INRが上昇時は、出血症状があれば入院または専門医へ紹介(ビタミンK静注+新鮮凍結血漿またはプロトロンビン複合体製剤)。症状がない時(小さな皮下出血も)、3~6の時はワルファリン中止して慎重なフォローアップ(ビタミンンK経口投与)、6以上の時はワルファリンを中止して専門医へ紹介。
どのNOAC(DOAC)も2種類の容量設定がある。ダビガトラン(プラザキサ)は150mg×2(110mg×2)、リバーロキサバンン(イグザレルト)は15mg×1(10mg×1)、アピキサバン(エリキュース)は5㎎×2(2.5mg×2)、エドキサバン(リクシアナ)は60mg×1(30mg×1)。
減量基準は、ダビガトラン(CrCL30~50mL/分・P糖蛋白阻害薬・70歳以上・消化管出血の既往の1つ以上)、リバーロキサバン(CrCL15~30mL/分)、アピキサバン(80歳以上・60Kg以下・Cr1.5mg/dl以上のうち2つ以上)、エドキサバン(60Kg以下・CrCL15~50mL/分・P糖蛋白阻害薬のうち1つ以上)。
NOAC(DOAC)の効果判定には使えないが、ダビガトランはAPTTが正常上限の2倍以上、Ⅹa阻害薬はPTが20秒以上の場合は「効きすぎ」。薬剤をモニタリングンするのではなく、全身をモニタリングする(腎機能とHb)。