なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

高齢者の虫垂炎

2012年09月29日 | Weblog

 昨日の午前10時ごろ内科医院から電話がかかってきた。89歳男性で2日前の夜から腹痛があり、その医院は今時珍しい有床診療所なので、入院させて点滴をしていたそうだ。腹痛が続き、検査結果で白血球増加があるので、診てほしいという。腹痛の部位は右上腹部だが、右下腹部にも痛みがあるという。胸部X線でありそうだが、と言われた。救急車で送られてくることになった。

 その日は外来がなかったが、経過をみるために受診の予約を入れていた患者さんが2名いた。ひとりは後頸部痛と発熱で先週の土曜日の夕方に受診した高齢の女性だった。日中整形外科を受診したが、湿布だけ出されたが、痛みが続くために当院の救急外来を受診した。意識は清明で、神経症状はない。頸椎のCTを撮影すると、第二頸椎の歯突起周囲に石灰化を認めた。頸椎の偽痛風、いわゆるCrowned dens syndromeだった。NSAID(セレコックス)を1週間分処方して経過をみることにしていた。その日は頸部痛が軽快して回らなかった首が回るようになっていた。セレコックスを2週間分追加した。もうひとりは心臓血管外科で右側大動脈弓で経過をみている中年男性で、高血圧症の治療を内科に依頼されて受診していた。高血圧症の程度としては軽度だった。二次性高血圧症を鑑別するための検査をしたが、二次性高血圧症は否定的だった。血圧自体はARBのミカルディス20mgで正常域になっていた。自宅近くの内科医院(上記の患者さんを紹介してきた医院)がかかりつけなので、そこへ紹介状を書いて治療継続を依頼した。

 救急車が到着した。意識は清明でバイタルサインは問題なかった。右腹部の上から下まで硬かった。どちらかというと下腹部だメインだと判断された。さて、この腹部所見をそう表現するかだ。当然圧痛はある、軽く指で叩くとひびくという。percussion tennderness陽性で、これ反跳痛ありと同じことになる。慎重に少しずつ押していくと、デファンスありとしてよい判断してよいと思われた。発症から1日半以上経過していて、熱も38℃となると、虫垂炎が穿孔をきたして、限局性腹膜炎を起こしている可能性がある。白血球数12000、CRP17と炎症反応も上昇していた。ただし。胸部X線で両側下肺野に肺炎が疑われるので、腹部だけの炎症をそのまま表しているわけではない。腹部造影CT検査を行うと、虫垂が腫大して壁肥厚もあり、内腔に糞石を3個認めた。意外に腹水はなく、穿孔はしていなかった。回盲部が通常より上にあり、虫垂も臍の高さから右側腹部に出ていて、右上腹部から下腹部にかけての症状となったことと一致する。さっそく新患担当の外科医に連絡して診てもらった。急性虫垂炎として緊急手術となった。腹腔鏡の得意な外科医で、腹腔鏡下で行うという。手術開始が午後1時半なので、終了が勤務時間内にきっちりおさまるちょうどいい時間の手術になった。

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急性心筋梗塞か

2012年09月28日 | Weblog

 昨日の午後は救急当番だった。救急隊から胸痛の53歳女性の救急受け入れ要請がきた。昼前に夫と車で温泉の日帰り入浴に向かっていたそうだ。急に胸痛が出現して、一時は背部痛もあった。そのままホテルまで行ったが、過換気症候群を呈して手指と下肢のこわばりが出現して、救急要請した。午後3時過ぎに当院に搬入された時、胸痛は当初より弱くなっていた。過換気の症状が思い切り前面に出ていた。少し過換気が治まっても、またすぐにハーハーと大きな呼吸を頻回にしている。手足が痛くてもう夢中になっていた。

 心電図でST-T変化はなかった。胸部X線も異常がない。血液検査で白血球数が軽度に上昇していたが、CK-MBは発症6時間後で正常域さった。トロポニンTは陰性で、ラピチェックはわずかに陽性に出た。心筋梗塞が始まっているのかもしれない。とにかく過換気症状が治まらず、何とかしてくれという。ゆっくり呼吸をするように指導してもダメで、話続けるようにして呼吸を早くできないようにするのもダメだった。やむなく安定剤を静注して、多少落ち着いたがまた過換気が始まる。2回目の安定剤投与で落ち着いた時には搬入時から3時間近く経っていた。胸痛について聞くと、胸の奥が少し痛いような気がするという。心電図を再検すると下壁誘導と胸部誘導に一部だけでSTが少し低下しているように見える。循環器科医に診てもらうと回旋枝かもしれないという。すぐに心臓カテーテル検査(病変があればPCI)をすべきだが、当地の方ではない。自宅近くのPCIの得意な救急病院へ搬送することにした。ふだん過換気の既往はなく、胸痛で二次的になったものと思うが、過換気は無視して、さっさとPCIの手配をするのが正解だったのだろう。

(その後の経過)紹介先の病院から返事がきた。たこつぼ型心筋症だったそうだ。心エコーで左室心尖部に全周性壁運動低下があり、左室造影で運動低下が確認された。冠動脈造影では正常冠動脈だった。

 

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今日は普通の腎盂腎炎

2012年09月26日 | Weblog

 90歳女性。施設に入所している。大腿骨頸部骨折の既往があり、移動は介助で車いす。午前中に高熱が出て、昼に病院を受診した。肺炎はなかった。最近、残尿が多くなり、尿が混濁してきていた。画像で尿路閉塞はなかった。尿培養を提出して、急性腎盂腎炎の診断で入院した。先月感染性腸炎それも大腸菌O-157の感染で入院して、治癒退院している。起炎菌は単純な大腸菌ではない可能性がある。病院感染に準じて想定した細菌をカバーする抗菌薬(ファーストシン)で開始した。ナースステーションでは「気の強そうな患者さんなので、あっさり治りそう」と予想されていた。

 

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外来診療も診断はむずかしい

2012年09月25日 | Weblog

 44歳女性。一昨日、横になって休んでいて、食事の用意をしようを起き上がってから、めまいがするようになった。明らかな回転性めまいではなかった。じっとしていて浮遊感がするという。嘔気もあり、一昨日と昨日は嘔吐した。頭痛や耳鳴・難聴はなかった。今日脳神経外科外来を受診したが、頭部CTは異常なしで、神経症状もないことと、3週間前から咳が続いているということで内科新患外来に紹介された。

 3週間前から咳が続き、しだいに痰もからむようになった。痰を出すと黄色っぽいという。発熱はなかった。咳は日中活動している時に出て、夜はそれほど出ないという。副鼻腔炎の既往はあるが、最近は安定しているという(治療はしてない)。明らかな後鼻漏(鼻からのどへ感染した鼻汁が流れる)はない。ウイルス性のいわゆるか風邪にしては期間が3週間は長い。ただ、マイコプラズマやクラミジアだと1か月くらい続いてもおかしくはない。胸部X線であきらかな肺炎の新人影はなかった。抗菌薬を処方すべきかどうか迷う。出さないで経過をみるのが正しいのだろう。患者さんは介護の仕事が忙しくて咳とめまいが続いているが仕事を続けていた。悪化してもと思って、クラビットを数日処方してしまったが、好ましくない対応かなあと思う。咳が続くという訴えも、鑑別はむずかしい。

 めまいの原因は何だろう。神経症状は平衡機能障害含めてないようだ。めまいの検査は耳鼻咽喉科で行っていて、大学からの応援で午後んから外来があるが、待っている時間はないと言われた。治療はどうかと聞かれたので、めまいの処方はほとんどl決まっていると答えたら、内科で処方してほしいという。通常の頭位変換性めまいではないようだし、気道感染が先行していることからは前庭神経炎だが、発症が急で平衡機能障害がなさすぎる。何とも言えない。

 あまり考えずに、対症療法で経過をみていいのだろうが、そこをいろいろ(無駄なことも?)考えるのが内科の診療ではある。

 

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穿孔性腹膜炎でした

2012年09月24日 | Weblog

 57歳女性。今日の午前8時半ごろ左下腹部痛が出現して、内科新患外来を受診した。排便直後に発症していた(問診で聞いていたが、この大事なヒントを最初は重視していなかった)。一度嘔吐した。5日前に胃癌健診でバリウムを飲んだが、全部出ていない気がするという。確かに腹部単純X線でS状結腸にバリウムがかなり残っていた。ただし、検査後も毎日ちゃんと排便はあった。腸閉塞ではない。左下腹部に圧痛を認めたが、発熱はなく、血液検査でも全く異常はなかった(これは発症早期のため)。

 患者さんは検査の時のバリウムが残っているから痛んだという解釈だったが、バリウムが残っただけにしてはおかしい。バリウムと関係なく、腸管・尿路・婦人科疾患が起きているかもしれない。バリウムが残っていると腹部CTを撮影してもアーチファクトで読影は困難になると予想されたが、放射線科医と相談して、まずは撮ってみることにした。S状結腸の壁だけではなく、内腔全体にバリウムが溜まっているところもあった。

 さらにバリウムは結腸の外側にも溜まっていた。子宮の背側表面もバリウムが薄く付着している。つまりS状結腸のどこかが破れている。放射線科医に診てもらうと、腹腔内にぽつぽつと遊離ガスがあることをを指摘された。排便時に力んでS状結腸穿孔が起きて、腹膜炎になっていた。放射線科でCT画像を診ている時に外科医が来たので、さっそく相談した。外科医が患者さんを診察して、そこからはスムーズに手術が手配された。いつもの、診断はCTと放射線科医の読影で、治療は外科医というパターンになった。腹部を触診して、すぐに「これは腹膜炎だ」と診断したいものだが、板状硬でもないし、デファンスがあるとも言えなかったしで、画像検査に頼った診断だった。

 (後日談) 翌日外科医に聞くと、S状結腸の真ん中あたりが穿孔していて穴は意外に大きかったという。ダグラス窩にバリウムの塊があったそうだ。腸管内のバリウムと便を切開した腸管から取り出したので、翌日の腹部X線にバリウムはなかった。腸管の炎症・浮腫がひどいと一時的に人工肛門にするということだったが、そうならなくてよかった。

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旅行中の救急搬入

2012年09月23日 | Weblog

 昨夜は病院で内科系の当直をしていた。午前3時に70歳女性が温泉のホテルから救急搬送されてきた。。遠くの県からツアーで当地に来て、昨晩はホテルに宿泊していた。深夜に下腹部痛が出現して、悪寒と動悸もあり、救急要請した。下腹部痛は排便した後に軽快したそうで、搬入時はかなり落ち着いていた。腹部は平坦で柔らかく、圧痛もなかった。血液と尿の検査は異常なかった。もともと排便回数の多い方で、食事をすると排便したくなるそうだ。ホテルの豪華な食事が悪かったのかもしれない。重大な病気でなくてよかった。

 バスで何か所かを回ってから、JRで帰路につくが、地元に帰るのは午後11時になる予定だという。症状は消失したので午前6時過ぎにホテルから車で迎えが来て、戻って行った。観光をやめて一緒に来ている友人と直接地元に帰るか、ツアーを続けるかはご本人の判断に任せることにした。

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入院と退院と

2012年09月22日 | Weblog

 90歳女性。数年前から肺炎で入退院を繰り返していたが、家庭に喀痰の吸引器を備え付けて、家族が吸引するようになってからは、1年以上入院していなかった。昨日おはぎをのどに詰まらせて、家族がすぐに取り出したというが、今日の早朝から呼吸困難となって救急外来を受診した。酸素飽和度が70%台だったが、救急車ではなく、家族の車で受診していた。当直医の外科医が、酸素吸入と抗菌薬を投与して入院させた。酸喀痰吸引の効果があり、素飽和度は90%台となった。午前中にに連絡が来て、病院に早目に行った(もともと当直だった)。病室にいくと、会話もできて回復していた。

 入院の指示を書いていると、隣の病室に入院していた脳梗塞後遺症・誤嚥性肺炎で入院していた81歳女性が呼吸停止となり、心拍も停止した。今週の日曜日に入院して1週間目だった。悪化時はDNRの方針としていたので、そのまま静かに看取った。もともと独身で、責任者は兄弟の子供(甥)になっている。その甥にしてみれば、両親はまだ健在なので、葬儀をい出すのは初めになる。手続きはどうするのでしょうと言っていた。葬儀社に連絡して、すっかりまかせることになったようだ。

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妄想ですか

2012年09月21日 | Weblog

 83歳男性。以前に「胸に曇りがあるといわれたが、その後検査していない」という訴えで内科新患外来を受診した。当院で胸部X線を撮影した履歴はなかった。どこで言われたのかわからないらしい。検査すると胸部X線・CTには気腫性変化があり、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫)だった。長年の喫煙歴があるが、今は禁煙している。スパイロは正常域だった。

 泌尿器科から前立腺肥大症で処方を受けていた。カルテをみると被害妄想的な発言が続いて、聞いているときりがないので義務職員を読んで対応してもらったようだ。今日は内科外来でも、毒をもられた・国からいじめをうけていると繰り返し訴える。そのうち首相や市長が犯罪者だと言い出した。具体的なことは言わず、ただ毒を盛られた、いじめを受けているというのを繰り返した。精神科受診を勧められたこともあるが、行く気はないようだ。精神科ではどのような病名をつけるのだろうか。認知症はなさそうだ。おそらく高齢になってからのことなのだろう。といって、数か月の経過ではなく数年以上なので、脳の器質的な疾患(前頭葉の脳腫瘍など)が起きているのも考えにくい。妄想性障害ということになるのか。

 とりあえず内科には胸部疾患の検索で来たはずなので、タバコの病気を認めるが、今は禁煙しているので問題はない、このまま禁煙を続けて下さいとお話しした。今日は泌尿器科外来の予約が入っていたので、では泌尿器科に行きましょうかというと、案外にあっさりと腰を上げてそちらの外来へ歩いて行った。腰は少し曲がっているが、年齢の割にスタスタと歩いている。抗精神薬を少量使うと良くなるのかもしれないが、初めて診て正確な診断もつかないのに処方するのはためらわれる。また何度も受診するようなら処方を考慮しよう。承諾すれば、念のため頭部CTかMRIをみておくのがよいだろう。

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もう経管栄養しかないが

2012年09月20日 | Weblog

 71歳男性。パーキンソン病で神経内科外来に通院していた。移動は車椅子で、嚥下障害のため食事摂取はかなりむずかしくなっていた。この前の日曜日、日直をしている時に救急搬入された、妻の話では、何日も食事がとれず(飲み込めず)、次回の外来予約まで待っていると死んでしまうと思ったという(受診の遅れで死亡すると自分の責任になると思ったそうだ)。胸部X線・CTでは誤嚥性肺炎があった。入院後、抗菌薬投与して肺炎は軽快した。聴覚言語療法士にみてもらうと(みてもらうまでもないが、形として)、嚥下は無理だろうという。

 寝たきり状態で生活全般に全介助とはいえ、71歳だとまだまだ生きてもらわなければならない。妻に話をして内視鏡的胃瘻造設術を行う予定とした。パーキンソン病でずっと診てきた神経内科医に胃瘻にすることを話すと、「患者さんがそれでよければと」不満そうに言われた。パーキンソン病で使える薬を全部使ってがんばってきただけに、残念な気持ちがあるのだろう。うちの父親もパーキンソン症状が続いて、嚥下障害で胃瘻も作ったが、最期は誤嚥性肺炎を繰り返して亡くなった。この患者さんはどうなるだろうか。

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高血糖高浸透圧症候群

2012年09月19日 | Weblog

 81歳女性。認知症で施設に入所していた。寝たきり状態で全介助の状態だった。先月から発熱があり、基幹病院の外来を受診して、処方された抗菌薬を施設に持ち帰って点滴していた。通常は入院治療だが、このような高齢者だと治療のゴールがなく、長期入院になるので、入院させたくなかったのだろう。

 発熱が続き、施設から当院内科外来を受診させたいと昨日連絡がきていた。今日になって救急車で搬送すると連絡が入った。外来を診ていると救急車が到着した。糖尿病で治療(SU剤+ランラス注)している。血糖は714mg/dlと著しい高血糖だった。血液ガスでケトアシドーシスはなく、高血糖高浸透圧症候群だった。腎機能障害もあったが、もともとの腎障害+脱水症による腎前性腎不全だろう。点滴をして、生食50ml+ヒューマリンR50単位を2ml/時で開始した。頭部CTではかなりの脳萎縮と多発性脳梗塞を認めた。尿は混濁濃縮していた。

 病棟に上がって、血糖は500mg/dl、さらに300mg/dlになった。もう1回血糖を測定して、ソルデム3A500mlにヒューマリンR混合の点滴に変更することにした。あとは血糖値によってヒューマリンR皮下注で補正していけば何とかなる。ただし、脱水症と高血糖が改善しても経口摂取ができるかどうかはわからない。家族にはその旨の見込みを伝えておいた。

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