なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

高熱が10日続いたCOVID-19

2022年10月31日 | Weblog

 10月25日にCOVID-19の69歳男性が感染病棟に入院した。1週間高熱が続いていた。

 10月17日に他院でCOVID-19と診断された。抗ウイルス薬の処方はなかった。自宅静養していたが、高熱が続いて、10月24日に保健所の依頼で、地域の基幹病院で外来アセスメントが行われた。

 右肺に肺炎像を認めて、高熱も続くことから要入院と判断された。ただ基幹病院ではCOVID-19の院内発生があり、規定以上のCOVID-19患者の入院を診ていた。新規の受け入れができず、当院に入院依頼が来たという経緯だった。

 胸部CTで右中葉と下葉にすりガラス陰影と浸潤影を認めた。発症してからずっと高熱が続いているという点では、ウイルス感染が遷延していると判断される。

 しかし肺炎像は片側だけで、その点では細菌感染併発と判断される。最初がウイルス感染で、すぐに細菌感染を併発したという経過なのだろうか。

 肝機能障害(AST 158・ALT 168・ALP 288・γ-GTP 317・ LDH 280)と血清フェリチン3159とかなりの上昇を呈していて、これはCOVID-19らしい異常だ。

 

 発症8日目だがレムデシビル点滴静注も入れて、抗菌薬(スルバシリンABPC/SBT)を開始した。入院3日目(発症10日目)まで高熱が続いたが、4日目に解熱した。

 食欲はないと言っていたが、高熱がある時でも食事はある程度摂取できていた。解熱してからは完食となった。今週末には退院にできそうだ。

 

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祈りのカルテ

2022年10月30日 | Weblog

 日本テレビ系列で土曜日午後10時から放映中の、「祈りのカルテ」が面白くて毎週見ている。

 研修医の諏訪野良太を演じる玉森裕太さんが、病院内を走りまわっている。誠実だが気弱な青年をうまく演じている(たぶん)と思う。

 副題が「研修医の謎解き診察記録」となっている。病気そのものの診断というより、その病気にまるわる患者さんの秘密(思い)を主人公が見事に突き止めて解決に導いている。「カルテがすべてを教えてくれた」が決め台詞。

 

 ドラマでは実際の小説の内容を膨らましているようだ。池田エライザさん演じる立石聡美などの研修医仲間とのやりとりが、青春群像としていい感じだ。母親が離婚後に再婚して、義理の父親と父親の違う妹がいる設定にして、義理の父親に子供の時から気を使ってきたことなども描かれている。

 指導医を演じるベテラン俳優さんたちが、気持ちよさそうに演じている。なかでもタロットカードを持ち出す精神科医役の松雪泰子さんが面白い。

 原作は、文庫本が出ている第1巻と単行本の第2巻しかない。1クール10回をどう作っていくのだろうかと、ちょっと心配になったりする。

 作者の知念実希人さんは沖縄出身(この姓はいかにも)で、現役の内科医だそうだ。他の小説も読んでみることにした。

 

 祈りのカルテは初回視聴率が6.6%で、この秋の医療系ドラマとしては、ザ・トラベルナース11.9%、PICU10.3%に負けている。期待のドラマにも選ばれていなかった。個人的にはいいと思うけど。

 

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エドルミズ

2022年10月29日 | Weblog

 10月27日からJDDWが開催されていて、webでところどころ見ていた。28日朝(モーニングセミナー)に、癌性悪液質に対する、グレリン様作用のエドルミズ(アナモレリン塩酸塩)の講演があった。

 この薬のことは知らなかった。適応となる癌(非小細胞性肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌)はふだん扱っている癌腫になる。通常は、癌性悪液質の諸症状に対しては、ステロイド(デキサメサゾン)を使用している。ステロイドとの使い分けはどうするのだろう。ステロイドより先になるか。

 癌性悪液質というのは臨床診断だから、そう判断すればそういう診断になる。癌の経過が長い患者さんだと、最近になって全身状態が悪化してきた時に、原疾患は癌だがその時の病状を表す病名として使用している。

 

 エドルミズ ®錠50mg(一般名:アナモレリン塩酸塩)

 がん悪液質*に対して,2021年1月に製造販売承認を取得しました. *非小細胞肺癌,胃癌,膵癌,大腸癌に限る
 本剤はグレリン様作用薬であり,グレリン受容体であるGHS-R1a(成長ホルモン放出促進因子受容体タイプ1a)を活性化することで,成長ホルモンの分泌促進及び食欲の亢進に関与すると考えられています.
 一方,本剤では,刺激伝導系抑制,高血糖,糖尿病の悪化,肝機能障害といった重大な副作用が報告されています.本資材でご紹介する副作用管理に関する対処法に基づいて適切な治療を行っていただくことは,これらのリスクを最小限にするために極めて重要となります.また,治療に先立ち,患者又はその家族に有効性及び安全性を十分説明してください

4. 効能又は効果
下記の悪性腫瘍におけるがん悪液質
⾮⼩細胞肺癌、胃癌、膵癌、⼤腸癌
5. 効能又は効果に関連する注意
5. 1 切除不能な進⾏・再発の⾮⼩細胞肺癌、胃癌、膵癌、⼤腸癌のがん悪液質患者に使⽤すること。
5. 2 栄養療法等で効果不⼗分ながん悪液質の患者に使⽤すること。
5. 3 6ヵ⽉以内に5%以上の体重減少と⾷欲不振があり、かつ以下の①〜③のうち2つ以上を認める
患者に使⽤すること。
① 疲労⼜は倦怠感
② 全⾝の筋⼒低下
③ CRP値0.5mg/dL超、ヘモグロビン値12g/dL未満⼜はアルブミン値3.2g/dL未満のいず
れか1つ以上
5. 4 ⾷事の経⼝摂取が困難⼜は⾷事の消化吸収不良の患者には使⽤しないこと。
5. 5 「17. 臨床成績」 の項の内容を熟知し、臨床試験で対象とされた患者背景、本剤の有効性及び
安全性を⼗分に理解した上で、適応患者の選択を⾏うこと。

 

 妹から、乳癌で治療を受けていた親友が亡くなったと連絡がきた。妹が新体操でインターハイに出た時の仲間で、その後もずっと親しくていていて、家族の冠婚葬祭にも来ていた。大学病院の乳腺外科で診ていたので、可能な限りの治療はしていたはずだ。

 先日妹の娘(姪)の結婚式にも無理して参加してくれていた。それまでの半分になったような痩せ方で、まさに癌性悪液質だった。

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トホグリフロジン

2022年10月28日 | Weblog

 今年も製薬メーカーの社内研修会に呼ばれた。社内研修会というのは、MRさんのプレゼンテーションを聴いて、感想を述べるというものだ。

 当院に循環器科があった時に、フレンドリーな循環器科医が呼ばれていたが、県内有数の市立病院に転勤になった。その後、当方に声がかかって昨年出席してきた。

 今年また呼ばれたので、「違う先生に見てもらったほうが、いろいろな意見が聞けていいのでは」と伝えた。「いやいやぜひ先生に」というのは、あまり引き受ける人がいないらしい。

 興和で出しているデベルザ(トホグリフロジン)とパルモディア(ペマフィブラート)のプレゼンだった。デベルザは欧米では販売されていないので、大規模臨床試験はできない。適応症は2型糖尿病だけに留まっていて、SGLT2阻害薬の中では売り上げは伸びていない(はず)。

 

 利点は約5時間とSGLT2阻害薬の中では一番半減期が短いことで、朝に服用すると夜間には効いていないので夜間頻尿が少ない。1日尿糖排泄量は他のSGLT2阻害薬とかわらないので、日中に集中して尿糖を排泄することになる。夜間低血糖も起きにくい。

 昨年と比べて今回のプレゼンは、SGLT2阻害薬の一般的な特徴はさらっと流して、夜間頻尿が少ないことを中心にしていて改善(進歩?)していた。

 エビデンスのあるフォシーガやジャディアンスを投与するが、夜間頻尿があると、デベルザに変更したりしている。夜間頻尿がある患者さんでは、最初からデベルザを使用している。忍容性が高い。

 心不全などに対する効果などは、臨床試験で証明できないので、「そこはクラスエフェクトです(共通です)」で逃げる作戦でいけばいいのではと伝えた。

 

SGLT2 阻害薬の半減期
薬剤名 T1/2(h)
トホグリフロジン  5.40
ダパグリフロジン  13.8
カナグリフロジン  13.1
イプラグリフロジン  14.97
エンパグリフロジン  10.2
ルセオグリフロジン  11.2

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腫瘍熱

2022年10月27日 | Weblog

 10月20日に記載したS状結腸癌術後再発・多発性肝転移・多発性肺転移の85歳男性のその後。

 地域の基幹病院消化器内科では、左尿管が大動脈周囲の下腸間膜動脈根部の腫瘍(リンパ節転移が一塊)で閉塞していることから、閉塞性腎盂腎炎として抗菌薬を投与していた(最初はスルペラゾンでその後にメロペネム)。

 転院時にも発熱が続いていたので、血液培養2セット・尿培養を提出して、そのままメロペネムを継続した。しかし発熱は続き、培養が陰性だった。

 腫瘍熱を疑って、ナイキサン(ナプロキセン)を開始すると、翌日から解熱した。数日抗菌薬も継続していたが、中止しても発熱はみられなかった。現在はナイキサンを継続して、食事摂取も良好となっている。

 腫瘍熱だとナイキサンを使用することになっているが、他のNSAIDsと何が違うのだろうか。

 

腫瘍熱:がん患者の腫瘍熱は 5-27%と報告され、転移巣が多いほど腫瘍熱をきたしやすい。


腫瘍熱診断のゴールドスタンダードはないが,診断基準案として以下の項目を参考にする。
1)37.8℃以上の発熱が 1 日 1 回以上ある。
2)発熱の期間が 長期間である(おおよそ 2 週間以上)。
3)身体診察・検査所見 (培養検査を含む)・画像検査などにおいて感染症の根拠を認めない。
4)アレルギーによる発熱は否定的である。
5)感染が疑わしい場合、7 日以上の経験的な抗菌薬治療に対する解熱反応がない。
6)ナプロキセンテストによって速やかに完全に解熱し, ナプロキセンを使用中平熱が持続する。
また、画像検査で腫瘍の壊死像が認められる場合、悪寒戦慄を伴わない場合、解熱剤を用いない場合でも自然に解熱する場合は腫瘍熱の可能性を加味する。

対症療法
●腫瘍熱と考える場合、定型的にはナプロキセン(ナイキサン🄬)400~600mg 分 2~3 を定期投与することが勧められている。これで 12~24 時間後から丸 1 日を通して解熱すれば腫瘍熱と診断する。ナプロキセンが有効でない場合、他の解熱作用のあるNSAIDs(フルルビプロフェンアキセチル(ロピオン🄬)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン🄬)、ロキソプロフェン(ロキソニン🄬))に変更することが有効な時がある。セレコキシブ(セレコックス🄬)といった COX-2 選択阻害薬は解熱効果が弱いた
め使用しない。またアセトアミノフェン 2.4~4.0g 分 3~4 を使用・併用することも可能である。
●上記の対応で症状緩和が困難である場合や食思不振・倦怠感など悪液質による症状がある場合は、少量のステロイド(デキサメサゾン・ベタメタゾン 2~4mg/回、ハイドロコルチゾン 100mg/回)を投与する事も検討できる。しかし、感染が完全に否定できない場合や 1 カ月以上の投与になる場合には、消化性潰瘍、血糖異常、ムーンフェイス、精神症状(不眠、せん妄、抑うつ)、易感染、ミオパチーなどの合併症を生じるリスクがある。またステロイド投与中に発熱が再発した場合、不顕性
の感染が顕性化した可能性が高いので、感染の再検索が必要と思われる。
(東北大学病院緩和医療科のマニュアル)

 

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酸素8L/分から無事に退院~COVID-19

2022年10月26日 | Weblog

 昨日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院していた86歳女性が無事に退院した。最大で酸素吸入8L/分まで要して、どうなるかと思ったが何とか回復した。

 10月12日に発熱で別の病院を受診して、COVID-19 と診断された。保健所に発生届けが提出されて、当院に入院依頼がきた。酸素飽和度の低下もあるが、基礎疾患もあった。

 高血圧症・糖尿病で内科医院に通院していて、さらに類天疱瘡で地域の基幹病院皮膚科からプレドニン(9mg/日)が処方されていた。大分リスクが高い。

 通院している基幹病院に入院にしてもらいたいと思ったが、先方はコロナに入院数が7名になっていた(最大9名まで)。当院はコロナの患者さんが次々に退院して、その時の入院は1名だけになっていて、断りにくかった。

 入院の時点で酸素吸入5L/分を要した。胸部CTでは両側肺の下肺野背側にすりガラス陰影があるかもしれないが、左肺の浸潤影が目立った。コロナといわれなければ、通常の肺炎と判断されるような陰影だった。

 

 白血球15100・CRP7.4と炎症反応が上昇している。コロナの感染単独とすれば、白血球増加はかなりまずい。ただ陰影から判断すると、コロナに罹患してある程度経過したところに細菌感染を併発した可能性がある。レムデシビル点滴静注と抗菌薬を開始した。

 入院後も発熱が続き、一時は酸素吸入8L/分まで要した(夜間で目標酸素飽和度の指示に従って、看護師さんが調整)。どうなるかと思ったが、案外患者さんは普通に話もできていた。1日で酸素5L/分まで戻せたので、痰が詰まったりしての低下かもしれない。

 4日目には解熱して、そこから酸素投与量は漸減できて、1週間経過して酸素吸入中止となった。介助は要するが、食事摂取できるようになった。

 

 最近入院してくるコロナの高齢者は、細菌感染併発と思われる陰影を呈することが多い。従来のコロナと違って、オミクロンはインフルエンザのように二次性細菌性肺炎が問題になるそうだ。

 岡秀昭先生は、当初コロナは中等症までは細菌感染を併発しないので抗菌薬は不要といっていた。しかし、最近は最初から細菌感染症併発で抗菌薬を要するようになったと、COVID-19特講で述べられている。

 

 基幹病院では何度目かの院内発生(たぶんクラスター相当)で、コロナの入院が13名になっていた。5~6名は院内で発生した患者さんを感染病棟に移動させたと思われる。職員の家族(ドクターの奥さん)が当院にいるので訊いてみた。職員の院内持ち込みからの発生らしいということだった。

 当院で手に負えない重症患者さんを受け入れてもらえなくなるので、かなり困る。病状軽快したが退院にできない患者さん(自宅で介護できない、リハビリを要するなど)を当院で引き受けて(転院)協力していくしかない。

 

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確定できない発熱

2022年10月25日 | Weblog

 月曜日に内科救急を診ていた先生(大学病院総合診療科からバイト)から、発熱の19歳男性を入院させてたい、と連絡がきた。

 咳があるが、胸部X線・CTでは陰影を認めない。気管支肺炎だと思うということだった。肝機能障害があり、解熱薬としてロキソプロフェンを飲んだ影響ではないかという。

 

 患者さんは9月初めに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していた。咽頭痛は軽快したが、咳が続いて10月7日に当院の呼吸器科外来を受診していた。

 小児喘息の既往はあるが、寛解していた。今回喘鳴は聴取されなかった。自覚もしていないようだ。短期間(といってもデキサメサゾン4mg/日を1週間)と吸入ステロイド(ICS/LABA)で治療が開始されていた。

 呼吸器科としては、初診で1回診ただけで、次回の予約は1か月後になっている。アレルギー検査が提出されていて、IgEと総量とダニ(ハウスダスト)とネコ(のフケ)の反応が高かった(クラス6)。

 

 2日前の土曜日から高熱が出ていて、受診したのは3日目になる。咳は出るが、COVID-19後の遷延している咳と同じ程度だという。喘鳴はない。胸部CTで陰影はないので、今回の発熱が気道感染かどうか確定できない。

 白血球12100、CRP5.0と炎症反応の上昇がある。異形リンパ球はなかったが、単球は8.9%と軽度に上昇しているか。肝機能障害があり、CTで脾腫もある。咽頭痛はなく、咽頭の発赤・腫脹はなかった。リンパ節腫脹もない。

 彼女さんと同棲しているそうだが、お付き合いが長いそうだ。EBウイルス感染症を疑う年齢だが、ぴたっと合うような所見ではない。

 肺炎球菌、マイコプラズマ(レジオネラも提出されていた)の迅速検査は陰性だった。気道感染症の線と、肝機能障害を来すウイルス性疾患の線で、診ていくしかないようだ。

 

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CareNeTV「困った人たちとの遭遇」

2022年10月24日 | Weblog

 久しぶりにCareNeTVの春日武彦先生の講義を聴いた。第1回の「困った人たちとの遭遇」が最も面白い。何だか随分な内容にはなっているが、これが真実ということだろう。

 

CareNeTV
カスガ先生の精神科入門 負けるが勝ち!
 精神科医 春日武彦先生

①「困った人たち」との遭遇
②うつ秒に関する必要最小限の知識
③自殺患者がは運ばれてきたら
④一般科医が、精神疾患を併せ持つ患者を診るとき

本番組の基本方針
‣非専門医でも最低限知っておくべき知識と考え方を身につける
不可能なことは不可能と明確化する(いい方法はないと認識する)

第1回 困った人たちとの遭遇

よくいる患者さんFILE
研修医を見くだす患者
►「研修医なんかに私は診れない」と、まったく聞く耳を持たない
►「○○薬を出せ!」の一点張り
☞彼らは権威に弱いので、専門医を名乗る者が診るのが早道(ウソではなく一種の「演出」)
☞説得しても効果薄
☞ある程度妥当性のある危険度の少ない薬であれば、堂々と処方

 

「困った人たち」とは・・・
いわゆる(境界型)人格障害

意識が清明である
幻覚や突飛な妄想がない
・ただし被害妄想的である
「バカにしやがって!」など
責任能力が十全である
・知能・思考障害によるものではない
理性的な対応を受け付けない
トラブルを繰り返す
☞その多くは「人格障害」と名付けるしかない!

 

「人格障害」の定義・特徴
現実を理解する能力が貧弱
人格(感じ方、考え方、反応の仕方)に顕著な偏りがある
・被害妄想的である
・自己評価が異様に高い
・著しく常識を逸脱した印象
特に対人関係において日常生活が円滑に営めない
・敵か味方か、と極端な認識
・裏切られたと感じると攻撃する
彼らは体験から学習していくことがない!
・高学歴な人格障害は珍しくない
・同じようなトラブルを繰り返す
「理解困難な人々である」という事実を受け入れて割り切って対応するしかない!

 

「人格障害」について押さえておきたいポイント
極端に「個性的」な人々
狭い意味での病気には該当せず
・投薬、入院、カウンセリング等では解決しない
・通常、患者には病名を告げない
法的には正常と見なされる
・心神喪失や心神耗弱には該当せず
・本人に責任を取らせる対応が適当
☞状況によっては、躊躇せずに警備員、警察へ通報するべき
人格障害は相対的な概念である
・環境によっては問題にならない
☞職業によっては許される!?
風俗、芸能界、アートの世界
 某女流棋士、某国プリンセス(故人)、某カリスマ男性歌手(故人)、某女流芥川作家、某アイドル歌手(春日先生は実名をあげているが、そこはピーが入っている)

美貌も、才能もない人格障害はかわいそうだ
国によっては人格障害の概念があまりない?
フランス、中国(国民全員が個性的?)
・”個性的な人”との線引きは曖昧
・にもかかわらず、まぎれもなく量が質に転化した印象を放つ
☞正常からグラデーションではあるが「まぎれもない人格障害」は存在する!

よくいる患者さんFile
屈折したある種の魅力
►思わせぶりな言動で自分のペースに引き込むのに長ける

ボーダーライン=「境界性人格障害(BPD)
‣「情緒不安定性人格障害」「境界性パーソナリティ障害」とも称す
‣正常と異常の「境界」に位置する障害と考えている人が多く、病像的にはあながち間違いではない側面もある(実際は「神経症」と「精神病」の境界と考えられていたことに由来)
‣特に思春期に顕著で、激しい衝動性や攻撃性、見捨てられることに対する強い不安、敵か味方か(=理想化とこき下ろし)という極端な人間関係などが特徴

よくいる患者さんFile
行動化する患者
►行動化としての過食、自殺未遂
►見捨てられることへの強い恐怖から”試し”たり”当てつけ”たりする
►特有の慢性的空虚感による行動

よくいる患者さんFile
過度に敏感な患者
►「1を聞いて1万を知る」?
・処方箋のわずかな位置の違いにすらネガティブなサインを読む
►意外と本心を見抜いているのかも?
►人格障害者全般に「特別扱いされたい」という思いがある
►人格障害者全般にコントロール願望が顕著なことが多い
☞ドライかつソフトは対応が基本
☞感謝を期待しても報われぬものである
☞人格障害者にひどい目にあわされるのは医療者としての通過儀礼…
絶望するにはあたらない!

 

人格障害の理解のために留意すべきポイント①
(参考:犯罪の要因は、色・金・怨恨)
人間の精神がけつまずく要因は、
プライド・こだわり・被害者意識
彼らはプライドが高い
・どんな人間でもプライドはある
(たとえ認知症であっても)
・意図せず傷つけるケースが多い
・傷つけると一生恨まれることも
☞相手のプライドを尊重せよ!
こだわりが強い
・意固地、精神的な視野狭窄状態
・視野の狭さが人生を楽にもする
 
神経症はひとつの症状にこだわる
→他のことはかかわらないくていい→人生が楽になる
→治ろうとしない

☞結果を急ぐのは逆効果
☞ダメな医者を演じて「待つ」

被害者意識が強い
・人は基本的に被害者意識を持つもの
・人格障害では顕著になる

 

人格障害の理解のために留意すべきポイント②
クレーム・攻撃性
クレームだけがコミュニケーションの手段という人もいる
・「裏切られた」と受け取りがち
・そのことの不毛さを学習しない
攻撃的かつ猜疑的
・被害妄想的な言いがかり
・理不尽な権利意識
☞のらりくらりでかわすべし
☞最長2時間と腹をくくろう
・ただし、実際の暴力に及ぶことは少ない
☞暴力に及んだら、躊躇せずに警備員、警察に通報するべき

 

人格障害の理解のために留意すべきポイント③
時間の概念が希薄
昔の恨みを生々しく持ち続ける
・まあいいやという感覚に欠ける
・イヤな経験を何度も頭の中で反芻しているものと思われる
・周囲に気味の悪い印象を与える
基本的にくどくてシツコイ
・彼らにとっては人生の一大事

 

粘る患者の話を切り上げるコツ
これができれば開業OK!?
▸自分のキャラに会ったスタイルで
・医師のキャラクター次第では「じゃあ3分だけね」でも通用する
・あらゆる患者に万能の医師はいない
☞得意とする患者のタイプを見つけよ
☞完璧でなくても料金分の満足を
▸手の内をさらし、謝罪と懇願
☞「時間が許せば今日は最後まで聞くべきでしょうけど、今日は次の患者さんが待っていますので…」
▸メモを取って区切りの演出
・演出=手間暇をかけるのは重要

 

人格障害への対応のポイント①
共感とけじめ
相手の言葉を繰り返す
・特に感情の部分への共感的態度
患者「むかついたんです!」
医師「むかついたんですか、なるほど」
・聞いてますよというメッセージ
☞必要に応じてメモを取ってみせる
相手の顔を立てよ
・彼らは権威主義的
「責任者を出せ!」
☞肩書が有効なことは多い
(責任者を出した方が早い)
彼らは諺が好き
コンパクトな中に真実を盛り込んでいる?
☞「出る杭は打たれますからね~」
曖昧な態度を取らない
「時間外でもなんでも自分を診ろ」と要求
・特例を作らない=ぶれをなくす
・患者の邪推を先回りで制する
・うろたえない
「もしかしたら、あなたは、〇〇〇〇と思ってるかもしれませんが、例外は無いんです」
☞ゴネ甲斐がなければあきらめる
☞線を引くべきところは譲るな!医療者が揺れると患者も揺れる

 

人格障害への対応のポイント②
つかず離れず、割り切って
仲間と情報交換を
・一人で抱え込むを疲弊してしまう
・楽しむ余裕を持って心を軽く
魔法の方法はないと腹をくくれ
・割り切って対応するしかない
・熱血的な義侠心は逆効果
・つかず離れずの距離感が重要

 

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飲酒の理由

2022年10月23日 | Weblog

 先週金曜日に入院した非代償性アルコール性肝硬変の73歳女性は、翌週には食事もとれて、顔つきもぐっと良くなっていた。若干記憶力に問題があるかもしれないが、長い会話も可能だった。

 

 最初夫との関係が分かりにくかったが、現在の夫とは再婚だった。県庁所在地にある放送局に勤務していたそうだ。(父親は長年当市の市会議員をしていた方だった)

 結婚して、当時なので仕事を辞めた。長男が生まれたが、3年くらいで離婚に至った。親権の問題があり、収入を得る必要があった。ちょうどその頃に、スナックを経営していた従兄弟(いとこ)が引っ越して店をたたむことになった。そのスナックを引き継いだそうだ。

 スナックなので当然飲酒する。ビールと焼酎を飲むが、ウイスキーは匂い(香り)がいやで飲まないそうだ。その後、現在の夫と付き合うようになり、子供(二男)ができたので結婚した。結婚を機に、スナック経営はやめた。

 スナック経営はやめたものの、飲酒の習慣は続いたようだ。飲酒量としては男性の2/3くらいで肝硬変になるはずだが、日本酒換算4~5合/日以上は飲んできたのだろう。

 

 当方は飲めないので、何とも言えない。たぶん父親も飲めなかったはずだが、昔の人なので、酒を飲めないのは恥ずかしいということで無理して飲んでいた。頑張ればアルコールの別の代謝経路が発達するので、ある程度は飲めるようになるが、飲める人のようにはいかない。

 亡くなったおじ(母親の姉の夫)はもっぱらビールだけを飲む人で、毎日のように大瓶5本以上飲んでいた。水分量として随分飲めるものだと感心するが、ビールなら飲めるのだった。

 県庁職員で農業指導をしていたが、自分で作ると発育の悪い野菜ができて揶揄されていた。手をかけるのが面倒で、畑はほったらかしにしていたのだろう。時間があればスナックに行くのが好きで、相当お金をつぎ込んでいた。

 

 アルコールの単位について、厚生労働省のホームページにわかりやすい記載がある。

飲酒の単位

 酒を飲んで「酔い」などの効果をもたらすのはアルコールですが、酒に含まれるアルコールの濃さ(強さ)は千差万別です。アルコールの体や精神に対する影響は、飲んだ酒の量ではなく、摂取した純アルコール量が基準となります。酒に含まれる純アルコール量(ドリンク数)を知っていれば、飲んだ酒の影響や分解時間などが推定できます。

 酒類とは酒税法で、アルコール(エチルアルコール)分1度以上の飲料(薄めてアルコール分1度以上の飲料とすることができるもの、または溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む)と定義されています。ご存知の通り、酒は様々な原料から様々な製法で作られ、無数とも言えるほどの種類があります。また、それぞれが、異なった特有の濃度のアルコールを含んでいます。
 酒を飲んで「酔い」などの効果をもたらすのは、このアルコールです。従って、アルコールの体や精神に対する影響は、飲んだ酒の量ではなく、摂取した純アルコール量が基準となります。純アルコール量で比較すれば、酒の種類や強さを考えずに、影響が推定できます。

1. 純アルコールの計算

 酒のラベルには、中に含まれるアルコールの度数が書かれています。この度数は、体積パーセント(%)を意味します。
度数5または5%のビールとは、100ミリリッター(mL)に、純アルコールが5mL含まれているビールということです。
通常、純アルコール量は、グラム(g)で表わされます。5%のビールの中ビンまたはロング缶1本(500mL)に含まれている純アルコール量は、アルコールの比重も考慮して、以下のように計算します。

500(mL) × 0.05 × 0.8 = 20(g)

酒の量(mL) × 度数または% / 100 × 比重 (0.8)= 純アルコール量(g)

2. 基準飲酒量(ドリンク)

 飲酒量を純アルコールに換算して分かりやすく表示する方法が多くの国で行われています。その基準となるのが、「standard drink(基準飲酒量またはドリンク)」で、各国で定められています[1]。例えば、米国では1ドリンクは14gのアルコールで、これはビール小ビン1本の量です。オーストラリア、ニュージーランドは10g、デンマークは12g、英国は8gです。

 わが国では基準飲酒量として「単位」を使用してきました。1単位はおよそ日本酒1合に相当し、約20gのアルコール量です。しかし、基準飲酒量は飲酒の最小単位と捉えられることが多く、この量は関連問題の予防の観点から多すぎると考えられます。また、国際的にも、わが国の「単位」は突出して高いため、近年、1ドリンク = 10gという基準量が提案され、使用されています。

3. 各種類の1ドリンク

 基準飲酒量は、飲んだ真のアルコール量を把握できるため非常に便利です。1ドリンクに相当する酒の量を表にまとめました。この量は飲んだアルコールの分解時間の推定などにも役に立ちます。

酒類の1ドリンク量
酒の種類(基準%) 酒の量 だいたいの目安
ビール・発泡酒(5%) 250mL 中ビン・ロング缶の半分
チュウハイ(7%) 180mL コップ1杯または350mL缶の半分
焼酎(25%) 50mL
日本酒(15%) 80mL 0.5合
ウィスキー・ジンなど(40%) 30mL シングル1杯
ワイン(12%) 100mL ワイングラス1杯弱

 

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COVID-19~炎症の遷延

2022年10月22日 | Weblog

 9月28日に鼻汁・咽頭痛・咳で発症した87歳女性は、翌日発熱もあって通院している内科医院を受診した。検査でCOVID-19 と診断された。食欲不振もあり、保健所の指示で同日当院の感染病棟に入院した。

 入院時は38℃台の発熱があり、酸素吸入2L/分を要した。胸部CTで淡いすりガラス陰影を軽度に認めた。レムデシビル点滴静注・抗菌薬・点滴を開始した。

 5日目には解熱傾向となり、酸素吸入も中止できた。隔離期間を過ぎて退院にできるだろうと思われた。 

 ところが、37℃台の発熱が断続的に続いて、退院にできなかった。炎症反応はいったん軽快したが、また上がってまた下がってと上下に変動していた。

 食事摂取は良好で、酸素飽和度の低下もなかった。他の感染症を併発したようでもない。隔離病棟で生活が続き、うつ状態になってしきりに退院を希望した。

 胸部CTを再検すると(感染病棟からいったん外に出して、放射線科に入れる)、肺野に索状影を認めた。COVID-19 としては治まった時の陰影だった。炎症が遷延しているのだろう、と思われた。

 3週間過ぎて、もう精神的に入院継続は困難だろうと判断した。家族に事情(発熱の継続)を説明して、退院して外来通院とした。呼吸器科外来に来てもらっている大学感染症科の先生に相談して診てもらうことにした。

 コロナはこういう経過になることがあります、といわれた。抗炎症としてステロイド(プレドニン20mg/日)が開始された。外来で経過をみて、漸減~中止になる予定だ。

 

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