なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

shower emboli

2021年06月30日 | Weblog

 火曜日の内科外来に、肺癌の83歳男性が1週間前からの息切れと食欲不振で受診した。奥さんに今回入院すると(軽快)退院はない可能性が高いとお話して入院にした。

 

 2017年にがんセンター頭頚部外科で硬口蓋腫瘍の手術を受けた。2019年にフォローのCTで右肺門部に腫瘤が発見されて、同センターの呼吸器内科に相談された。

 肺転移か原発性肺癌かという問題になるが、原発性肺癌ということになったらしい。高齢ということでそのまま経過観察となった。

 がんセンターから当院の耳鼻咽喉科にフォロー依頼が来て、半年おきにCTで経過をみていた。(頭頚部外科=鼻時咽喉科なので、内科ではなく耳鼻咽喉科になった)

 2020年になって腫瘍が増大してきたため、呼吸器科の外来に紹介された。呼吸器センターのある専門病院から来ている先生だが、治療適応がないので、常勤医のいる内科に相談された。

 家族は肺癌の進行イコール死亡ということを自覚していなかったようだ。姑息的な治療の適応があるか、地域の基幹病院呼吸器内科に紹介した。

 家族に予後について説明してもらって、緩和ケアのみの方針で経過をみてください、という返事がきた。

 

 2010年の72歳時にめまいで受診して、頭部MRIで多発性脳梗塞を認めた。両側小脳と大脳に5か所の梗塞巣を認めて、放射線科の読影レポートでは「shower emboli疑い・心疾患は?」だった。

 心電図では正常洞調律で心房細動は認めなかった。神経内科で入院になり、心原性の証拠がないので、抗血小板薬(バイアスピリン)が開始された。その後ずっと神経内科外来に通院していたが、脳梗塞の再発はなかった。

 発作性心房細動疑いとして抗凝固薬を使用する場合もあるようだから、ケースバイケースなのだろうか。

 今年の4月に発熱で内科に入院した。内科の若い先生が担当していたが、入院前の心電図では頻脈性心房細動になっていた。治療する前に自然に正常洞調律に戻ったらしい。(経胸壁心エコーで心腔内に血栓なし)

 発作性心房細動ということになる。(結果的にだが)おそらくshower emboli疑いとされた時も、その前に発作性心房細動から心腔内血栓形成、そして脳塞栓という経緯だったのだろう。

 今回も心電図では正常洞調律で、入院後の心電図モニターでも心房細動は(今のところ)認めない。

 

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COVID-19の新規入院

2021年06月29日 | Weblog

 月曜日の午後に保健所から連絡があり、新型コロナウイルス感染症の41歳男性の入院依頼だった。

 日曜日は違和感があったらしいが、月曜日から高熱が出て、会社近くの病院を受診した。新型コロナの抗原定性検査が陽性だった。

 夕方感染病棟に入院となった。胸部CTで両側肺野に淡いすりガラス陰影が散在していた。まだ中等症Ⅰ相当になるが、今回は早めにレムデシビルを使用することにした。

 

 まだ入院している55歳男性は入院したのが発症7日目だったということもあるが、入院日の夜間から酸素飽和度が下がり、発熱が続いた。

 ふだんから肥満で睡眠時無呼吸症候群があるだろう、という問題がある。解熱後もなかなか酸素吸入を止められなかった。日中はいいか、酸素を止めて横臥すると(夜間)飽和度が下がってしまっていた。

 肥満が重症化因子というのがよくわかる患者さんだった。酸素吸入4L/分まで上げたところで、何とか減量に持ち込めたが、気持ち悪い経過だった。

 今回の患者さんも同様の肥満があり、ナースステーションから病室をカメラで見るとほぼ同じ体形だった。横臥しても腹部は膨れている。

 

 住所は地域の基幹病院の近くで、ベットも空いているので本来はそちらに入院になるはずだった。今週、感染管理の相互評価で先方の病院に行くことになっている。

 増床改築したコロナ用病室を見学させてもらう予定になっている。入院があると見学できないので、この患者さんは当院にまわされたのかもしれない。

 県の新型コロナの発生数は減少していて、県内のベットは余裕がある。オリンピックまではこの調子でいけるか。

 

 レムデシビル(商品名ベクルリー)

  生食100ml+注射用水40ml+ベクルリー200mg/2V(投与初日)

  生食100ml+注射用水20ml+ベクルリー100mg/V(投与2日目以降=2~5日目)5日間使用

 投与量は注射用水で溶解した分だけ生食を抜いて、全体で100mlにする。30~120分かけて点滴静注(60分にしている)。 5日間投与と10日間投与では差がないとされているが、5日目まで投与して症状の改善が認められない場合には10日目まで投与できる。

 1人分(5日分)投与すると、もう1人分(5日分)送られてくるのだった。

 

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老衰といわれた

2021年06月28日 | Weblog

 先週金曜日の夕方に施設から82歳女性が紹介されてきた。発熱と食事摂取できないということだった。

 4月に左尿管結石で、地域の基幹病院泌尿器科で尿管ステントが挿入さていた。6月に交換予定だった。

 6月6日(日)に発熱で当院の救急外来を受診した。尿路感染症で左尿管ステントが挿入されていて、右尿管結石もあることから、複雑性(閉塞性も)尿感染症と判断された。

 日当直医は大学病院からバイトできている外科医で、基幹病院に連絡したが、対応困難といわれた。やはり泌尿器科で診てもらいたいので、医療センター泌尿器科に連絡して搬送した。

 医療センターでは右尿管ステントを挿入して、左尿管ステントを入れ替えた。尿培養でProteus mirabilisESBLが検出されて、抗菌薬メロペネムを使用していた。

 

 6月24日に施設に戻ったが、戻った時から肉眼的血尿が続いていた。そして25日また当院に紹介された。若干肺炎もあるようだが、やはり尿路感染症がメインのようだ。

 ダメもとの感じもあったが、基幹病院に連絡すると受けてくれたので、ありがたく搬送させてもらった。

 その後、午後9時すぎに当院に連絡がきた。医療センター入院時も食事摂取は1日1食がやっとだそうだ。全身状態としては老衰と判断されるという。施設に戻って経過をみるように言ったが、施設は断然拒否した(まあそうだろう)。

 当院に戻して入院させたいということだった。点滴で経過みて、急変時はDNRの方針とすることで家族も同意しているそうだ。確かに「骨と皮」という感じのるい痩の目立つ患者さんだった。

 施設にきていた医療センターからの診療情報提供書には尿管ステントのことと、抗菌薬のことしか記載されていなかった。食事摂取については確認していなかった。

 

 当院入院で点滴と抗菌薬(培養結果が出るまで、上記の理由でメロペネム使用)で治療を開始した。入院した日の夜間は不穏で看護師さんが困っていたが、その後落ち着いた。

 このまま落ち着けば、やんとかやれそうかと思われた。今日の午前5時にすうっと心肺停止になった。それまで、特に酸素飽和度や血圧が低下したわけではないが、バイタル測定は間が空く時間帯になる。

 心疾患の発症なども疑われるが、確定はできない。尿路感染症で治療していたことは間違いないので、先方のいうように老衰とはしがたい。亡くなった患者さんを見ると、確かに老衰感はある。

 「これは老衰」としたのは、慧眼というべきか。消化器科医と外科医に、「戻ってきたんだって」と言われた。

 

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病病連携

2021年06月27日 | Weblog

 先月から整形外科の先生が赴任されて、診療を開始している。73歳なのでどういう契約になっているのだろう。(公立病院なので定年があるから)

 当院の小児科の先生は72歳で、65歳から定年延長3年間があり、その後は年間契約の非常勤医扱いと聞いていた。実際は常勤医と同じ勤務になる。整形外科の先生もたぶん同様?。

 病院自体、外科手術はしないことになっているので、外来診療・保存的治療の入院治療・他院での術後患者さんのリハビリを担当する。元気いっぱいで、本当は自分で手術をしたいらしい。

 

 6月18日(金)に80歳女性が転倒後の右股関節部痛で救急搬入された。自宅内でハエを叩こうとして転倒したそうだ。救急当番の外科医が診て、右大腿骨頸部骨折と診断した。

 そのまま地域の基幹病院整形外科に救急搬送となった。搬送後に先方からすぐにFAXがきて、「6月21日(月)に手術予定(人工骨頭置換術)なので、週末には貴院に戻すように調整します」とあった。そして6月25日にリハビリ目的で当院に戻ってきた。

 これまでは整形外科医が不在なので、術後に少し経過してからリハビリ目的で転院してきた(外科医が担当)。専門医がいると、術後すぐに転院となって、手術する病院としては助かるのだろう。すばらしい病病連携?。

 入院患者さんで内科的なことがあったらよろしく、と言われている。病院を経営されていたが(関東)、現在は息子さんが引き継いていて、自分は何か所かの病院で勤務医をしてきたそうだ。

 息子さんとの関係が少し気になるが、この年齢でも元気に勤務できるのは、当方としても励みになる。

 

 昨夜は午後12時直前に、当直の耳鼻咽喉科医から連絡が来た。90歳代の女性が心肺停止で搬入されて、蘇生術で心拍は戻って血圧も測定できるが、自発呼吸はないという。このまま落ち着いたら入院させていいか、ということだった。

 たぶんアドレナリンに一時的に反応しただけなので、心拍が続くかどうかわからないが、と言っていた。朝までの管理はしてくれるので、入院にしてもらうことにした。

 その後連絡が来なかった(午前1時くらいになっていたので遠慮したのだろう)。今朝確認すると、病棟にも入院の連絡をしていたが、外来で心拍数が低下して、お看取りになっていた。

 

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1か月に1回の嘔吐

2021年06月26日 | Weblog

 水曜日は当直だった。準夜帯の受診があったが、深夜帯の受診がなくて助かった。午前7時過ぎに、嘔吐が止まらないという48歳男性が救急外来を受診した。

 トイレに寄ってから外来を行こうとした時、痩せた男性がトイレに入って来て嘔吐していたので、この方だろうと思った。救急外来んも診察室で待っていると、戻ってきた。

 コンビニで夜勤の仕事をしている方だった。勤務は午後10時から午前8時までという。昨夜は午後9時に起きて、コンビニに行ったが、嘔吐が続くので早退というかほとんどそのまま帰宅した。

 自宅で水分をとって様子をみていたが、嘔吐を繰り返して、30回くらい吐いたと言う。嘔吐しているうちに心窩部痛も出てきた。

 2~3年前から同様の症状を1か月に1回繰り返しているそうだ。毎回受診はしていない。自宅で様子をみて治まることが多いので、毎回受診はしていない。

 15年前に十二指腸潰瘍穿孔で当院外科で手術をしていた(穿孔部縫合と大網充填)。ふだんは痛風・高尿酸血症で他院に通院している。

 嘔吐が続いて当院を受診したのは、昨年5月と今回の2回だった。昨年は日曜日の当直医(大学病院外科からきているバイトの先生)が対応して、派手な症状と既往から十二指腸潰瘍穿孔による腹膜炎を疑ってCT検査をしていた(それはなかった)。

 月曜日の朝に消化器科に回して、上部消化管内視鏡検査が行われた。胃潰瘍・十二指腸潰瘍(瘢痕のみ)はなく、胃粘膜が浮腫状で発赤はしていた。PPIが処方されたが、その後は受診していない。消化器科医は遺伝性血管性浮腫など特殊な疾患も考慮したらしい。

 通院している病院で胃薬(たぶんPPI)を処方されていたこともあるが、しばらくはやめていた。

 今回、腹部は平坦・軟で心窩部にごく軽度の圧痛があるくらいで、腹膜炎の所見ではなかった。念のためCT(微小なガスもみるためCTにした)で確認したが、腹腔内の遊離ガスはなかった。

 外来で点滴を2本してPPI静注をした。また嘔吐したので、嘔気止めの注射とちょっと夢中になっている雰囲気もあるのでアタラックスP1Aも点滴静注した。

 2本目の点滴をしていることに行ってみると、症状は治まっていた。入院しますかと訊くと、そのつもりでは来ていないと言う。水分もとれるようになったというので、点滴を追加(3本目)して、終了後帰宅とした。

 上部消化管内視鏡検査を勧めると、受けてみると言う。月曜日に予約を入れて、タケキャブ・ムコスタをそれまでの分処方した。今回も潰瘍はないのかもしれないが、PPI(タケキャブでもいい)を継続して経過をみたい。

 症状もない時は(1か月のうち症状のある1~2日以外)全く何でもないらしい。どういう病態なのだろうか。

 

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脳転移の頭部CT像

2021年06月25日 | Weblog

 午前中に市内の内科医院から、施設入所中の82歳女性が酸素飽和度低下で受診して肺炎を認めるので搬送したいと連絡がきた。

 認知症があるが、自力歩行はできて食事摂取もできていた。1週間前から食事摂取が低下して、医院の指示で経管栄養で使用する栄養剤を飲ませていたそうだ。

 2-3日前から痰が絡んでいた。今朝職員が酸素飽和度を測定すると70%台だったので、受診させたという経緯だった。体温は37.1℃だった。

 救急搬入時は酸素吸入2L/分で、酸素飽和度82%だった。5L/分にしても上がらず、酸素10L/分リザーバー付きにしても93%だった。

 胸部X線で見ると、右肺炎はあるが、それほどでもないように見える。胸部CTで確認すると両側肺野に斑状影というかすりガラス様というか陰影が広がっていた(散らばっていた?)。両側肺野の病変なので、酸素飽和度が低下が目立つのだった。

 

 施設職員も家族(娘さん)も肺炎で入院にはなると思っていたようだが、酸素飽和度では重症と伝えるとびっくりしていた。人工呼吸器管理になる可能性ありで診るようになる。

 どこまで治療するか相談すると、とにかくできるだけの治療をと言われた。地域の基幹基幹病院に連絡すると、地域医療連携室の方から、呼吸器科内科の先生は別の電話で出ているので、少し時間をおいてからかけなおしてほしいと言われた。

 先を越された?と思ったが、10分後にかけなおすと、受け入れてもらえた。ありがたく救急搬送でお願いした。搬送前には酸素飽和度96%と出て、酸素吸入と抗菌薬で何とかなるのかもしれない。

 肺炎は治ったが経口摂取できないということで、戻ってくる可能性が高いか。

 

 昨日、肺癌・脳転移の85歳男性が専門病院から転院してきた。画像のCDは来ていなかったので、今日頭部CTと胸部CTで確認した。

 頭部CTでは右小脳と両側の大脳半球(の白質)に転移巣が描出された。CTで限局性の脳浮腫になるが、MRIでみれば転移とその周囲の浮腫がもっとはっきり描出されるのだろう。

 

 脳転移をみることはあまりないが、転移巣の数ではこれまでみた中で一番多いかもしれない。症候性のてんかん発作をきたさないかが心配だった。

 胸部CTでは、左肺の背側に肺炎様の病変があり、腫瘍なのか炎症なのかわからない。血液検査で軽度の炎症反応上昇はあるが、発熱はない(症状もない)。

 来週紹介してきた先生が、当院の呼吸器外来の診療に来るので、その時に相談することにした。下請け的な診療しかしていないが、これで頑張るしかない。

 

 

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肺癌・脳転移

2021年06月24日 | Weblog

 呼吸器病センターのある専門病院から85歳男性が、リハビリ目的で転院してきた。

 2020年4月に左肺腺癌と診断された(StageⅢA)。放射線療法と免疫チェックポイント阻害剤(イミフィンジ、デュルバルマブ)の点滴静注1年間を受けてきた。

 2021年5月に食欲不振で入院して脳転移と判明した。6月初めに全脳照射を受けて、直後は意識朦朧となったそうだが、その後に回復して食事摂取できるようになった。

 今回の経過で筋力低下(麻痺はないそうだ)が進行して歩行できなくなった。歩行できるようにリハビリをという依頼だった。

 

 専門病院に紹介したのは当地の医師会の内科医院だった。もともと肺気腫がある患者さんで、胸部異常影の精査(胸部CT)は当院放射線科に依頼していた。

 2020年3月の胸部CTでは、当方でもわかる腫瘤影を左上葉に認める。辺縁にspiculaを有していた。これはまず肺癌とわかる。

 その前は2018年3月で、放射線科の読影レポートは炎症性変化が疑われるとなっていた。放射線科なので、その後のフォローの指示はない。後から見ればspiculaといえるかもしれない。

 当院の呼吸器科外来は大学病院の先生と、その専門病院の先生が毎週来ている。CT画像を放射線科に依頼するのではなく、呼吸器科外来に紹介してもらえれば、少なくとも数か月後のフォローになったのではないかと思う。

 

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カテ先だけ出したくなる気持ち

2021年06月23日 | Weblog

 AST会議で、外科で診ている82歳男性が話題に出た。カテーテル関連血流感染症として、培養はカテール先端だけ出しているということだった。(AST=抗菌薬適正使用チーム)

 原則として、カテーテル関連感染症を疑えば、血液培養2セット±カテーテル先端培養を提出する。ASTとしては、「カテーテル関連血流感染症の場合は,、血液培養2セットの提出をお願いします」となる。ただこの患者さんはこれまでの長い経過があった。

 直腸癌術後で癒着性腸閉塞を繰り返している患者さんだった。今年の1月21日にまた癒着性腸閉塞で入院した。そのうちに以前にもあった総胆管結石・急性胆管炎を発症した。

 治療歴のある地域の基幹病院消化器内科へ紹介(転院)となり、内視鏡的に結石除去が行われた。しかし食事摂取が進まず、4月31日に当院に戻ってきた。

 腸閉塞が一進一退で、入院が長期になり、5月27日に右内頚静脈から中心静脈(CV)カテーテル挿入が行われて、高カロリー輸液が開始された。

 5月31日から高熱が続き、血液培養2セットが提出された。しかし培養陰性で、起炎菌は証明されなかった。6月2日にカテーテル関連血流感染症として、CVカテーテルは抜去された。抜去後は解熱して軽快している。

 高いカロリー輸液の継続を要するため、左内頚静脈からまたCVカテーテルが挿入された。(左内頚静脈から入れたことはない)

 6月15日にまた高熱が続き、またカテーテル関連血流感染症が疑われた。今度は血液培養は提出せず、CVカテーテルを抜去してカテーテル先端だけを提出していた。前回培養陰性だったので、出しても証明されないと思ったのだろうか。

 皮肉なことに、今度はカテーテル先端から、いかにもカテーテル関連血流感染症をきたしそうなコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)だった。(Staphylococcus intermedius)当然メチシリン耐性でMRCNSになる。

 もっともこれだけではコンタミの可能性があるので確定はできない。血液培養2セットを提出していれば、同じ菌が出そうではあるが。

 抜去後は解熱して軽快していた。やはり高カロリー輸液が必要なので、大腿静脈からCVカテーテルが挿入された。イレウスチューブが挿入されていて、腸閉塞はまだ解除していない。治療に苦労されているようだ。

 治療としてはいずれもゾシン(PIPC/TAZ)を2日入れてすぐに中止していた。正しくはカテーテル関連血流感染症の場合、起炎菌が証明されればその結果により選択された抗菌薬になるが、証明されなければ、皮膚常在のMRSA・MRCNSを含むグラム陽性球菌を想定してバンコマイシンを2週間以上投与することになる。

 黄色ブドウ球菌では治らない可能性が高いが、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌ではCVカテーテル抜去で案外(大抵?)治ってしまうようだ。

 正しくは、血液培養2セット(カテーテルから1セット+末梢静脈から1セット、または末梢静脈から2セット)±カテーテル先端培養を提出する。培養結果に基づいて抗菌薬を2週間以上点滴静注で投与となる。数日間の抗菌薬投与後に再度血液培養2セットを提出して、陰性確認した日からの計算で抗菌薬投与となる。ちゃんとやると手間がかかるのだった。

 最近AST活動をする症例が少ないので、「カテーテル関連血流感染症では・・・」と、ASTとして控えめにカルテに記載させてもらった。

 

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肺転移

2021年06月22日 | Weblog

 歯肉癌で入院した93歳男性は、2011年に左腎癌の手術を受けていて、泌尿器科外来(大学病院から出張)でまだフォローしていた。

 年に1回泌尿器科で入れていた胸腹部CT検査が今月入っていた。両側肺に結節影が散在して、放射線科のリモート診断で肺転移と読影された。

 今回は4月に大学病院口腔外科で左下顎の歯肉癌とされている。どちらの癌かということになるが、腎癌の転移でいいのだろうか。組織を取れば癌の種類が違うので診断できるが、さすがにそれはしないし適応もない。

 入院時は、外来処方のアセトアミノフェンにトラマール100mg/日になってた。痛みが続き、というか増悪していた。効かないかとは思ったが、いったん200mg/日に増量した。

 結局すぐに、オキシコドン徐放剤を10mg/日で開始した。今週は15mg/日にして、すぐに20mg/日に増量する予定だ。通常は1.5倍にするのを繰り返すが、10mg/日から15mgのところだけ分2(12時間おき)から分3(8時間おき)になる。

 その後は20mg/日分2で、分2で増量していく。10mg/日からの増量は20mg/日にしていいと思うが、型通りにしてしまう。

 医療用麻薬を使用してしまうと、施設入所は難しくなってしまう。少なくとも施設内で嘱託医が処方するところには入所できない。

 入所者がそれぞれ通院している医療機関の外来を受診するような、グループホームならできなくはないかもしれない。まだ癌性疼痛のコントロールはついていないので、まだ見込みは立たないが。

 

 

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膵体尾部癌

2021年06月21日 | Weblog

 先週、産休に入る内科の若い先生が診ていた患者さんの中に、経口摂取困難で内視鏡的胃瘻造設(PEG)を消化器科に依頼している方がいた。

 消化器科医とPEGの予定日を決めていると、こんな患者さんがいて、という話をされた。神経内科の外来に通院している筋強直性ジストロフィーの59歳男性だった。

 内視鏡的胃瘻造設術による経管栄養を受けていた(消化器科は胃瘻の管理だけ担当)。ちょうど6か月おきの胃瘻(器具)交換の時期だったが、血便が続いているという訴えがあった。

 大腸内視鏡検査をすると(とりあえずの無処置のS状結腸までの検査)、直腸(Ra)に半周性の発赤があり、血液のoozingを認めた。それで癌の転移巣と診断したのは流石だった。

 腫瘍マーカーを提出すると、CEA 18.3、CA19-9 26656.9と著明な上昇を認め、膵臓癌が疑われた。腹部造影CTで膵体尾部に造影不良域があり、主膵管の途絶・脾静脈への浸潤を認めた。腹膜播種もあった。診断は膵体尾部癌腹膜播種だった。

 

 明らかな肝転移はないが、以前なかったALP・γ-GTPの上昇があり、肝臓内にも腫瘍は行っているのだろう。Hb9.2g/dlと以前の12.1g/dlから低下している。心房細動でワーファリンが投与されていた。

 糖尿病もあるが、もともと血糖コントロールはあまりよくなかったので、糖尿病の悪化で膵癌に気づくということにはならなかった。

 消化器科に入院したが、治療はどこまでやるのだろうか。

 

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