なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

脳梗塞

2024年01月31日 | 脳神経疾患

 1月29日(月)に施設から79歳男性が紹介されてきた。脳梗塞後遺症で、右片麻痺・失語症がある。

 今回は1月27日(土)から急に嚥下障害で経口摂取ができなくなった。地域の基幹病院の救急外来を受診したそうだ。画像検査で異常なしとされて、施設に戻ったが、症状は同じだった。

 

 既往としては、2014年に当院外科(当時)で上行結腸癌の手術を受けている。2015年に早期胃癌の内視鏡治療(ESD)を行った(当時消化器科は2名体制)。心房細動があり、DOACをヘパリン注に切り替えて施行したが、処置翌日に脳梗塞を来した。

 左中大脳動脈領域の広範な梗塞だった。地域の基幹病院に搬送されて、急性期の治療後を受けた。その後当院の回復期リハビリ病棟に戻って、4か月過ごした退院した。退院後は施設入所となった。

 

 まず頭部CTを撮影したが、以前の画像を変わらないように見える。しかし何しろ神経症状が突発しているので、新規梗塞があるはずだった。頭部MRIを入れてと思っていると、地域の基幹病院消化器内科の先生から連絡が入った。

 リハビリや療養の転院は地域医療連携室経由で診療情報提供書が来る。直接連絡が入ったということは、(ベットを空けるために)すぐに転院させたい患者さんがいるのかと思った。

 27日の救急外来でこの患者さんを診察したそうだ。新規病変なしとして帰したが、その後放射線科の読影レポートで右中心前回に新規梗塞を認める、となった。先方の脳神経内科医と相談してほしいという。わかりました、と答えた。

 頭部MRIでは確かに新規病変を認めた。しかし症状はおそらく固定してしまうので、経鼻胃管で当院に戻されるだけになる。家族(妻)と相談して、当院で経過をみることになった。

 急性期が過ぎたら、胃瘻造設を予定することにした。ただし、胃は横胃で確実に造設できるかはわからない。また喀痰吸引を頻回に要し、経口摂取しなくても誤嚥性肺炎を来す可能性がある。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

気胸

2024年01月30日 | 呼吸器疾患

 1月29日に慢性閉塞性肺疾患(COPD)の75歳男性が呼吸困難で受診した。内科再来を診ていたが、施設から脳梗塞の患者さんも紹介されていて忙しかった。

 すぐには対応できないが、酸素飽和度が70%台(室内気)だったので、受付から救急室に移動して酸素吸入を開始してもらうことにした。

 

 昨年9月にCOPDの増悪(喘鳴を伴うACO)で入院したが、入院拒否から妻の説得での入院だった。気管支拡張薬・ステロイド・抗菌薬を開始したが、入院翌日から退院を希望していた。結局喘鳴が続く状態で、5日目に退院になった(暴れる前に帰したということ)。

 労作時には息切れが増悪するので、在宅酸素療法を勧めていたが、それは拒否していた。外来で待たされるのが嫌いで、診察室に入ってもすぐ帰ろうとする(すぐ出ていく)。

 

 点滴と採血を入れて、胸部CTを撮影してもらうことにした。肺炎併発によるCOPDの増悪を想定していた。すぐに放射線科の技師さんから気胸の報告が入った。

 画像を確認すると、確かに気胸だった。2日前からの症状らしいが、週末だったので我慢していたらしい。妻の話では夜間寝られなかったという。救急車を呼ぼうとしたが、それはいやがったのでその日は妻の運転する車で来ていた。

 なんだか肺がぺらぺらで、胸腔ドレナージは当院でもできないことはないが、慣れない吸引すると肺損傷が広がってしまいそうな気がする。吸引だけでは治らず胸膜癒着術を要すると思われる(それも慣れていない)。年に1回やるかやらないかの処置なので自信はない。

 地域の基幹病院の呼吸器内科に連絡すると、昨年肺癌・COPDの患者さんが気胸になった時にお願いした先生が出た。引き受けてもらえることになり、救急搬送した。

 週末よく我慢していたというか、よく(緊張性気胸にならず)肺が保っていたものだ。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

陰嚢腫瘍

2024年01月29日 | 糖尿病

 1月23日(火)の時間外になってすぐに、コンビニで一過性意識消失(眼前暗黒感・失神)をきたした55歳男性が救急搬入された。店員さんがあわててかけよって、救急要請していた。

 当直は小児科医だった。搬入時は意識清明で会話は普通にできた。血糖が380mg/dlと高値だった。健診で高血糖を指摘されていたが放置していたそうだ。尿ケトン体は陰性だった。(時間外は簡易検査しかできない)

 昨年同居していた母親が死去して、一人暮らしをしている(妹さんの話では、生活が乱れているようだと。)そのまま帰宅とし難かった。入院で点滴をして翌日、その日内科当番の先生に引き継ぐ方針となった。

 

 頭部CT・頭部MRIでは両側の大脳・小脳に小梗塞が多発していた。心電図は洞調律で心房細動はなかった(発作性は否定でできず)。会話は普通にできる。

 HbA1cは10.8%だった。(Cペプチドは十分出ていて、抗GAD抗体陰性)通常ならば脳梗塞と糖尿病の治療を開始してとなるが、そうはいかなかった。

 陰嚢に腫瘍があり、自壊していた。これも放置していたのだった。CTで右肺に軽度肺炎様(瘢痕?)があり、肝右葉に腫瘍か膿瘍を疑う低濃度域があった(体温は平熱~微熱で肝膿瘍らしくはない)。

 また入院時から血圧が80~90mmmHg台と低下していた。肺うっ血・水腫や胸水はなく、浮腫もない。心電図では前壁中隔梗塞の既往があるような形だった。食事摂取は進まず、持続点滴を行っていた。

 担当医が皮膚科医に依頼して、陰嚢腫瘍の生検が行われた。睾丸由来なのか、皮膚由来なのか自壊していてわかりにくい。組織診待ちになった。

 問題が多数あり、高次医療機関に紹介するにしても何科になるのかわからない。目につくところから対症的に治療をしていいたが、週末に急変してしまった。

 腫瘍によるトルソー症候群を来したのかなど、可能性を考えてみたが、確定はできなかった。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ラテン語

2024年01月28日 | ほんの話

 SB新書で「世界はラテン語でできている」(著者は「ラテン語さん」)が出ていたので、早速購入した。著者は高校2年生からラテン語の勉強をしているそうだ。

 医学用語も、語源がラテン語というのは多い。ある程度ラテン語がわかると記憶しやすい。

 (以下はこの本による)

 黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusaureusは金aurumから来ている。正確には黄金色ブドウ球菌?。

 ラテン語で熊はursusで、胆汁の成分はウルソデオキシコール酸で、薬もウルソだが、熊の胆汁から発見されてつくられたから。

 ラテン語で冠はcorona。コロナウイルスは電子顕微鏡で見ると、スパイク蛋白が王冠の突起のように見えるのでコロナになった。英語で冠はcrown。ラテン語で小さい冠はcorolla(coronaの小さいものの意)になる。

 トヨタは車名を「冠(かんむり)シリーズ」として、クラウン、コロナ、カローラとつけてきた。(あと冠にちなんだ名前がなくなって、かんむりから日本語でカムリとつけたらしい。)

 その後もラテン語で、プリウス(prius=より優れた)、イプサム(ipsum=それ自身)、スープラ(supra=上に、英語のスーパー)と付けている。

【Amazon.co.jp限定】世界はラテン語でできている(DL特典:書き下ろし原稿) (SB新書 641)

 

 読み方だけでもわかるように、今年は基礎の基礎だけ勉強することにした。無駄知識の勉強は楽しい。

基本から学ぶラテン語

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

非結核性抗酸菌症の疑い

2024年01月27日 | 結核・非結核性抗酸菌症

 1月25日(木)に市内のクリニックからの紹介で86歳女性が受診した。食欲不振があり全体に衰弱しているという内容だった。実際に来て見ると事情は違っていた。

 市の福祉サービスの方たちが連れてきた。娘と二人暮らしだが、介護放棄に近く虐待の可能性もあるという。今回母子を分離して、患者さんは施設入所に持っていきたいという話だった。自宅はいわゆるごみ屋敷になっているそうで、写真をみせてもらった。

 しかしそういう話も一面でしかないようだ。娘さんに会ったが、介護放棄というよりも、どうしていいかわからないのではないか(理解力が低い?)。

 患者さんは小柄でやせていた。会話はできて(頭部CTの著明な脳委縮があったが)、喋り方からみておそらく目の前に食事があれば食べられる。

 

 問題は発熱があり、肺病変があることだった。(紹介状には発熱の話はなく、連れてきた介護の人も認識していなかった)両側肺野にまず気管支拡張像があり、限局性の浸潤影・斑状・粒状影が多発している。

 当院には2014年に左橈骨尺骨開放骨折で整形外科に入院していた。その時に入院時検査として胸部単純X線が撮影されている。両側肺に陰影があり、内科でみればCTで精査となるが、整形外科医は気にしていなかったようだ。

 紹介状に「細気管支炎・肺サルコイドーシスの疑いで経過観察」の記載があった。クリニックでつける病名ではないので、どこかに紹介しているのだろう。

 問い合わせると、地域の基幹病院呼吸器内科に2020年に肺陰影精査で紹介していた。2021年まで通院して、その病名で終診となっていた。たぶんその見立ては違う。

 

 ちょうど受診日は、呼吸器外来があったので、相談した。画像をみて、第一印象は「非結核性抗酸菌症NTMではないでしょうか」といわれた。それそれ、という感じだ。

 ただ喀痰採取は難しそうだ。胃液採取?になるか。NTMだと胃液採取はどうかと思うが、結核との鑑別のためにも必要になるかもしれない。

 発熱と結構な炎症反応上昇があった(白血球24100・CRP11.3)。他の病変の影響下かもしれない。尿路感染症の可能性は低かった。仙骨部と両側転子部の軽度の褥瘡などもあるが、それでは炎症として弱いか。

 あとはNTMがあるとして、細菌性肺炎の併発だが、画像からは区別し難い。呼吸器外来の先生との相談で、まずはスルバシリン(ABPC/SBT)で治療を開始することになった。(血液培養2セット尿培養は提出)

 

 それにしても、いかにも当院向きの患者さんだと思われた。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

インフルエンザ・肺炎

2024年01月26日 | インフルエンザ

 1月23日(火)午前の救急当番の時に、高熱と咳・喘鳴の77歳女性が救急搬入された。一人暮らしだが、1月20日(土)に息子夫婦や娘夫婦と孫が集まったそうだ。その後息子の家族複数がインフルエンザを発症していた。

 COVID-19の入院は難しいベット事情だったが、インフルエンザならば入院予約の部屋を使用できるという。多分インフルエンザだろうということで、来てもらった。

 

 発熱40℃で酸素飽和度が80%台に低下して、酸素吸入をしての搬入だった。救急車を救急外来入り口で待機してもらって検査をすると、インフルエンザA型陽性(コロナは陰性)だった。

 その日の朝に、近所の人が新聞受けから新聞を取っていないこと、カーテンを開けていないことから、家族に連絡したそうだ。家族が訪問すると、患者さんはベットにいて動けけなかった。

 市内の内科医院に関節リウマチで通院している。メソトレキサートとプレドニンを内服しているので、免疫抑制状態だった。

 

 咳込みと喘鳴があった。聴診ではwheezeとcoarse cracklesがある。血液検査では炎症反応の上昇を中等度認めた。胸部X線・CTでは両側肺野に気腫性変化があった。右下葉背側に浸潤影もある。

 後で確認すると喫煙者だった(1日の本数を訊いても答えなかった)。慢性閉塞性肺疾患(COPD)で喘鳴を伴うことから、感染症によって気管支狭窄を来しているか、もともと喘息を合併(ACO)しているということになる。(PaCO2は正常域)

 家族から感染したインフルエンザで、細菌性肺炎を併発して、COPDの増悪を来したということだった。抗インフルエンザ薬(ラピアクタ)と抗菌薬(セフトリアキソン)を開始した。入院後にも喘鳴が目立ち、デキサメサゾン4mgを点滴静注した。

 

 翌日には喘鳴は軽快して、ステロイド投与は見合わせた。解熱して食事もとれる。喫煙はやめる、といっていた。それがいいですねと言ったが、もちろんあまり信用はしていない。(家族が何度も言っても禁煙はしていない)

 

 インフルエンザだと個室管理にはなるが、これまで通りサージカルマスクだけで対応している。コロナでわかったことだが、インフルエンザのエアロゾル感染で、きちんとやるなら本来はN95マスクが好ましい。

 インフルエンザだと最悪うつってもという気持ちがあるのだろう。感染症の先生(感染管理指導に来ている)が言っていた。「コロナはまだN95マスク対応だが、そのうち慣れて、かかってもコロナという雰囲気になれば、サージカルマスク対応になるのでしょう」と。

 

 呼吸器ウイルスは全部エアロゾル感染だろう。ウイルスの種類が減ったということはなく、(人に感染する)ウイルスは人に感染しなければ死滅するので、ふだんからエアロゾルを介して次々にうつしあっているのだった。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大腿骨頸部骨折

2024年01月25日 | 骨折・整形外科疾患

 1月19日(金)の朝、前日の当直だった内科医から救急車を受けたので、と報告があった。午前8時過ぎに隣りの市の救急隊から転倒後の高齢女性の搬入依頼がきていた。

 到着まで40分くらいかかるので、その日の午前中の救急当番の当方に申し送ったということだった。その先生は午前中は内科再来が入っている。大腿骨頸部骨折で、整形外科入院になるかと思った。

 患者さんは92歳女性で、一人暮らしをしている。ADLは完全に自立していた。会話はまったく問題なかった。搬入時、左股関節部に疼痛・圧痛があり、左下肢は短縮・外転して、明らかに大腿骨近位部骨折だった。(救急隊は短縮はないといっていた)

 前日の夕方に自宅の縁側の外で転倒した。下はコンクリートになっているそうだ。左側に尻餅をつくような形で転倒した。その後から左股関節部の痛みがあり、這うようにして室内に入った。一晩我慢して過ごして、翌日朝になっても症状が変わらないので自分で救急要請していた。

 バランスを崩しての転倒で、頭痛や意識消失はない。頭部CTも心電図も問題なかった。X線と胸腹部CTで左大腿骨頸部骨折を認める。

 後は整形外科の問題になるが、そうは簡単にいかなかった。酸素飽和度が88%と低かった。胸腹部CTで肺病変はなかった。ふだんから心肺疾患があるようには見えない。

 血液検査で白血球17900・CRP0.5は骨折でも説明ができるが、Dダイマーが34.2(μg/mL)と異様に上昇している。一晩でできるかわからないが、深部静脈血栓症からの肺血栓塞栓症が疑われる。

 造影CTで確認したが、明らかな肺血栓塞栓症は認めなかった。ただCTだと末梢の肺動脈まではわからない。腹部は問題ないようだ。

 低酸素と凝固異常の説明がつかない。整形外科医も骨折についてはいずれ手術で対応するが、病状安定までは内科でお願いしたい、ということだった。血液培養セットと尿培養も提出しておいて、点滴と抗菌薬で経過をみることにした。抗凝固薬は骨折からの出血が危惧されるので見合わせる。

 22日月曜には酸素吸入も中止となって、食事も4~5割だが摂食できる。23日の検査ではDダイマーが3.4まで低下していた。

 ただし、22日の夕方から不穏があり、何か見えないものが見えるといい、洪水が来るという発言があった。夜間不眠もあり、不穏用・不眠用の必要時指示が使用されていた。

 ふだんはしっかりしていても、92歳で骨折があり動けない状態になっている。せん妄は仕方ないか。向精神薬を定期で使用することにした。

 

 患者さんの話では、搬入の10日くらい前に生牡蠣を食べて、その後から下痢(水様便頻回)・嘔気が続いて、食事摂取量が低下していたそうだ。転倒したことも、それに関係あるのかもしれない。

 酸素飽和度低下と凝固異常がそれに関係あるかはわからない。一晩動けない状態でもありえなくはないか。酸素吸入は中止となって、凝固異常もかなり改善した。

 整形外科では次週の火曜日に手術予定としていた。せん妄の治療も行って、今週末に整形外科転科にしてもらう。(抗精神薬はけっこう増量している)

 

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

敗血症性ショック

2024年01月24日 | 泌尿器科疾患

 1月17日(水)の当直の時に、施設入所中の83歳男性が救急搬入された。

 日中から発熱があり、施設を運営している市内の病院(同じ法人)を受診していた。点滴を受けたそうだが、詳しくはわからない。発熱だけで呼吸器症状はなかった。もっとも認知症の要介護状態なので、訴えは把握しがたいか。そちらの病院は時間外対応はほとんどできない。

 救急隊の搬入依頼の時は、40℃の高熱と血圧低下(70台)ということだった。肺炎というよりは尿路感染症・胆道感染症かもしれないと思った。

 血圧は搬入時にも70台で、急速に輸液を開始した。一時は98mmHgくらいになった。胸腹部CTを行うと、肺炎像はなかった。右腎は水腎症を呈していて、尿管結石があった。両側腎盂内と膀胱内にも結石がある。

 尿管結石による閉塞性腎盂腎炎で、敗血症性ショックと判断される。泌尿器科救急になるので、泌尿器科常勤のいる病院への搬送が好ましい。

 地域の基幹病院に連絡したが、満床でだめだった。だめもとで県庁所在地の県内有数の市立病院にも連絡してみたが、やはり満床でだめだった。他も厳しいのだろう。

 いったん家族に説明することにした。家族といっても、独身で妻子はいないので、甥が責任者になっていた。なんでも患者さんは高齢になって他県から急に戻ってきたのだという。他に頼める親戚もないので、(仕方なく)面倒をみているということだった。

 病状を説明して、当院でできるだけの治療はするが、とお話した。それでいい、ということだった。

 夜間は検査技師がいないので、血液培養はとっておいていいが、他の培養は技師がいる時になる。末梢静脈が虚脱して点滴がやっとだったので、血液培養2セットは動脈から採取した。

 施設入所者なので第4世代セフェムで治療を開始した。多めの輸液(ただし心房細動・心不全あり)とノルアドレナリン持続静注でどれだけ反応するか。

 翌日までは血圧低値が続いて、乏尿にもなったが、翌々日から解熱して血圧が安定してきた(100~120)。輸液の調整とノルアドレナリンの漸減・中止を行い、22日(月)には尿も出始めて小康状態となった。

 胸腹部CTの再検で確認すると、右尿管結石は自然排石していた。それは良かったが、両側肺に胸水貯留があり、浸潤影を伴っているようだ。

 今度は誤嚥性肺炎の治療(抗菌薬をゾシンに変更)と心不全の治療(ループ利尿薬と抗アルダクトン薬の静注)も開始した。(その後、尿培養でProteus mirabilis ESBLが検出されて、メロペネムに変更)

 

 当院の第4世代セフェムは、セフォゾプラン(ファーストシン)が入っている。これの入荷が難しく、今週初めから処方停止となった。(2月は入荷できるらしい)といって、本来の第4世代であるセフェピム(マキシピームのジェネリック)も入荷は困難らしい。

 院内発症や尿カテーテル留置例の尿路感染症など、緑膿菌などのいわゆるSPACEをカバーして嫌気性菌まではカバーしなくていい場合は、セフェム系第4世代を使用する。それがないとなると、代替薬としてはゾシンかカルバペネムになってしまう。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

間質性肺炎

2024年01月23日 | 間質性肺炎・器質化肺炎

 1月18日(木)午前中の救急当番の時に、体動困難・食欲不振の95歳男性が救急搬入された。この患者さんは1月13日に同様の症状で救急搬入されていた。肺炎として入院したが、認知症の不穏がひどく15日に退院になっていた。

 1月13日(土)は日当直が外部のバイトの先生だった。会ったことはなく詳しくは知らないが、内科専門医の専攻医か、それが終わって各分野の専門医コースのはずだ。東京の超有名病院に在籍していて(大学は当地)、月に1回バイトに来ている。

 搬入されたこの患者さんを両側肺炎として入院にした。内科当番は別の先生で、翌14日の日曜日に病棟に診に来ている。抗菌薬(スルバシリンABPC/SBT)が開始されていた。

 認知症の不穏がひどくて、15日月曜には退院にした。炎症反応は搬入時により軽減していて、抗菌薬が効いたような経過だった。退院時の内服抗菌薬は、なぜかオグサワ(AMPC/CVA+AMPC)ではなくてクラリスロマイシンにしていた。

 外注検査でKL-6を提出していたので、間質性肺炎も考慮していたのかもしれない。KL=6は上昇していた。

 18日に再度胸部CTで確認したが、最初に搬入された14日の画像と同じだった。炎症反応もその時の値に戻っている(白血球13400・CRP18.7)。

 画像上は間質性肺炎に見えるので、ちょうど呼吸器科外来に来ていた先生に相談した。間質性肺炎でしょう、といわれた。プレドニン30mg/日で治療開始とした。

 鑑別として薬剤性と非定型肺炎を上げられた。前者は新規薬剤また被疑薬らしい処方がないことから否定的だった。後者は否定できないが、抗菌薬(使用するとすればレボフロキサシン)を併用しないほうが、診断のためにもいいといわれた。(クラリスロマイシンが効かなかったことは参考になるか)

 

 この患者さんは総胆管結石・急性胆管炎で3回当院に搬入されて、その都度搬送している。2回は地域の基幹病院消化器内科で、1回はそちらが受け入れできずに県庁所在地の専門病院になっていた。今回も総胆管結石を認めたが、総胆管上部にあり、肝機能障害がないことから今のところ悪さはしていない。

 その時の胸部CTでは肺病変は下葉背側にわずかな間質性陰影があり、今回は増悪と判断された。

 入院後はさっそく不穏がひどく、体幹抑制はまた行うが、向精神薬を数種類併用することにした。最近、間質性肺炎をよく見る。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

出血性直腸潰瘍

2024年01月22日 | 消化管疾患

 1月5日、1月14日に記載した79歳男性のその後。COVID-19による肺炎だが、隔離期間を過ぎても遷延・増悪していた。デキサメサゾンを1月12日から初期量に戻したが、どうなることかという状態だった。

 

 1月14日(日)に血便が中等量出た。病棟から連絡が入り、バイタルは変化がなかったので、止血剤の点滴静注を行った。

 翌日15日に看護師さんの撮影した血便の写真を見ると、便が赤黒色で、下部消化管出血で間違いなかった。採血では貧血の進行はなかった(Hb値は前回と同じ)。腹痛の訴えはなかったが、虚血性腸炎を疑った。

 その後は普通便の表面に血便がわずかに付着するくらいになり、治まっていくと判断していた。ところが18日にまた同様の血便が中等量あった。

 19日に大学病院から内視鏡検査に来てもらっている先生に相談して、グリセリン浣腸の前処置で直腸~S状結腸を確認してもらうことにした。上手な先生なので、便が残っていてもさらに深部まで診てくれるかもしれないという期待もあった。

 内視鏡を挿入すると、直腸に浅い潰瘍面が散在していて、そのうちのひとつは1/4周くらいだった。潰瘍面に突出はないが、黒色の血管が複数あった。さらにS状結腸から口側に進んで、残便をかき分けて盲腸まで観察してくれた。

 直腸潰瘍の他には小ポリープがあるだけだった。便秘による直腸潰瘍による出血として、潰瘍面の血管を凝固止血してくれた。

 

 肺炎は解熱して、炎症反応が改善した。胸部CT再検で間質性陰影が軽減し始めていた。1月18日に呼吸器外来に来ている先生に診てもらって、デキサメサゾンの漸減は慎重に1週間ずつ行うことになった。(8mg=6.6mg/日から6mg=4.95mg/日)

 認知症(のBPSD)だけでも大変だが、肺炎と消化管出血と、糖尿病のステロイド投与による悪化(インスリン強化療法、点滴への混合など)もあり、対応が難しい。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする