なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

内視鏡がいやならば

2019年12月31日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。そのまま病院に泊まるのもここ数年の恒例行事になっている。

 今年は病院の経営問題でもめた1年だった。市が病院に出している予算が2年連続で減額されて、半額以下になった。病院経営のコンサルト会社が出してきた方針は、1番が廃業で、2番が民間売却、3番が立て直し。取り合えず銀行からの借金で賄うことになったが、来年からの運営は厳しい。

 どの自治体病院も経営は大変なのだろう。医師確保の問題もあるが、お金の問題の方が大きい。

 県の方針で、当院はベット数を削減(2/3)して慢性期病院となった。ほとんど手術のない病院になるので、麻酔科・外科系医が相次いで退職する見込みだ。

 4月以降はどうしようか、という年の暮れになった。

 

 12月27日金曜日に、内科クリニックから消化器科に貧血・体重減少の68歳男性が紹介されてきた。検査を受けるつもりで絶食で来院したので、その日はまず上部消化管内視鏡検査と造影CTが行われた。

 上部消化管内視鏡検査では異常を認めなかったが、造影CTで上行結腸に腫瘤(癌)を認めた。年明けに下部消化管内視鏡検査が予定された。

 この患者さんは8月に内科クリニックを胸やけ・腹部膨満感で受診した。春ごろと比べて3Kgの体重減少もあった。そのクリニックは上部・下部内視鏡検査も行っている。検査を勧めたが患者さんは希望せず(拒否して)、PPIで経過をみることになった。

 次に受診したのは10月で、腹鳴を訴えていた。血液検査でHb9g/dlと貧血(小球性)を認めた。癌の可能性があるとはっきり告げて、内視鏡検査を勧めたが、どれでも同意しなかったそうだ。

 そして12月25日に三度目の受診をした。嘔気と食事をとれなくなるという訴えになっていた。体重はさらに3kg弱減少。Hb7g/dlと貧血も進んでいた。これはもう病院での検査として、当院消化器科に紹介になった。結局最後は内視鏡検査に同意した。

 はからずも、4か月間癌の自然経過をみたことになる。肺転移・肝転移はないので、下部消化管内視鏡検査の後に手術になるのだろう。この方は腫瘍マーカー(CEA/CA19-9)が陰性だった。

 

 80歳代後半から90歳代の高齢者が体重減少・食欲不振で紹介されることがあり、見るからに内視鏡検査をするのも躊躇われるような虚弱な患者さんの場合、単純CTと腫瘍マーカーを含む血液検査だけして、家族とその後の検査をするかどうか相談するというパターンがある。

 消化管の精査としてCTでは不十分だが、上部はともかく下部の内視鏡検査まではというような患者さんでは、そのまでの検査でいいかと思っている。

 今回の患者さんでは、内視鏡はいやでも、CT検査ならば同意したかもしれない。CTで当たりをつけて、ここに癌が疑われるとお話すれば、内視鏡検査に同意したかもしれない(しないかもしれないが)。

 

 

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「ギラン・モラレ三角」

2019年12月30日 | Weblog

 振戦と認知力低下をきたして、頭部MRIで中脳に病変を認めた65歳男性のその後。

 先週の月曜日に地域の基幹病院脳神経内科に搬送していたが、火曜日の午後には担当の先生から連絡が来た。中脳の脳梗塞と判断したそうだ。ついては、抗血小板薬を継続するだけなので、後は慢性腎不全の治療をそちらでお願いしたいという。

 患者さんは木曜日に戻ってきた。

 診療情報提供書によれば、

 中脳の正中にかかる脳梗塞はかなりまれだが、同様の症例は報告されている。いわゆる「ギラン・モラレ三角」の障害で、振戦・口蓋ミオクローヌス・運動失調を呈している、ということだ。

 もともと僧房弁置換術後で、心臓血管外科からバイアスピリンが処方されていたので、継続するだけになる。

 慢性腎不全は、低カルシウム血症・高リン血症(高カリウム血症は今のところない)の治療をして経過をみることになる。

 ギラン・モラレ三角は、初めて聞く用語だった。部位は頭部MRI拡散強調画像だとよくわかるが。

 慢性腎不全による低カルシウム血症・高リン血症の治療は、透析で来てもらっている腎臓内科医に相談した。ビタミンD製剤とカルシウム製剤(沈降炭酸カルシウム3g/日)の内服を開始して、数日血清カルシウム値がある程度正常域に近づくまで、カルシウム製剤の点滴静注併用も勧められた。

 

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癒着性腸閉塞

2019年12月29日 | Weblog

 火曜日に糖尿病・高血圧症の68歳男性が、内科医院から腹痛・嘔吐で紹介された。感染性腸炎疑いとあったが、排便は泥状便が少量のみで、腸炎ではない。医院からの救急搬送だったので、救急隊の搬入記録には急性腹症と記載した。

 前日夕方から軽度の腹痛があって、その後嘔気が続いて、何度か嘔吐した。軽度の腹痛(右下腹部痛)は持続して、間欠的に腹痛が増強していた。腸閉塞らしい症状だった。

 2年前に右鼠径ヘルニアに手術を当院外科で行っていた。右鼠径部に小さな手術痕があり、腹痛の部位とは合うが、この手術ではたして癒着性腸閉塞をきたすのだろうかと思った。しかし虫垂炎や憩室炎では間欠的な腹痛の増悪はない。

 「痛いので何とかしろ」というので、アセリオ1000mg点滴静注を行った。痛みが和らいだところで、頑張って立位になってもらい、胸腹部単純X線を撮影した。ニボーを認めて、腸閉塞らしかった。

 血液検査で腎機能に問題ないのを確認して、腹部造影CTを行った。右下腹部の小腸に狭窄部とそれにつながる拡張部を認めた。癒着性腸閉塞として、外科医に連絡した。

 外科入院後に、イレウスチューブを入れて保存的にみていたが改善がみられず、木曜日に手術になっていた。

 急性腹症では基本的に腹部造影CTを行うが、血液検査の結果が出る前に単純X線を撮影しておくと、疾患の見当がつく(ことがある)。

 

 

 

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胆嚢炎?

2019年12月28日 | Weblog

 水曜日に内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が当直の時に診た、93歳女性の胆嚢炎の症例。病院に来た時に相談されたが、その前に外科医にも相談していて、胆嚢捻転?と言われたそうだ。

 右季肋部痛ではなく右側腹部痛なのは胆嚢の位置の問題だろう。もともと肝床部から遊離しているようだ。CTで胆嚢と思われる嚢胞状構造が描出されて、壁肥厚がある。炎症反応は上昇しているが、肝機能検査の異常はなかった。総胆管結石はなさそうだ。

 緊急でMRCPを行うことになった。胆嚢が二房性になっているのか、胆嚢から瘻孔でつながって膿瘍を形成しているのかよくわからない。

 外科で診てもらえることになったが、緊急手術はリスクが大きいので保存的にみるようだ。

 

 年末年始は1日おきに病院に行くようになる。29日病棟、31日日直(病院泊)、1日日中内科当番と病棟、3日日直(病院泊)、4日病棟の予定。

 

 

 

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舌癌

2019年12月27日 | Weblog

 月曜日に受診した94歳女性が、口内炎の薬をつけた時はよかったが、薬がなくなってまだ痛いと訴えた。前回、口内炎の薬を薬を下さいといわれて口内炎の軟膏を処方していた。

 心気症的な訴えと、最近はそうでもないが、予約外の受診が多い。様々な症状を気にすることが、長生きにつながっているような方だ。

 前回は、口を開けてここが、というところにアフタはなく、口腔内の違和感で訴えているのかと、判断したらしい。

 ライトで照らして、きちんと診察すると、舌に奥の方の側面に小さいが潰瘍形成があった。口内炎のアフタではない。

 耳鼻咽喉科は、外部の先生の診察日だった。その日は休診で、常勤医がどうしても見る必要がある患者さんだけを診ていたが、すでに昼近くで外来は終わっていた。外来看護師さんから連絡がいって、診てもらえることになった。

 お昼に話を訊くと、舌癌でしょうという。生検をしていた。付き添いの家族に専門病院紹介を勧めたところ、考えさせてくださいと言われたそうだ。94歳でも治療できるのだろうか。

 それにしても、ちゃんと診察しましょう、だ。

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この肺炎は何だろう

2019年12月26日 | Weblog

 昨日は内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が当直だった。病院に来た時に、朝方救急搬入された62歳男性のことで相談された。朝職場に着いたものの、発熱があって、ふらついて会話もうまくできなかった。

 胸部CTで両側肺の胸膜下から広がるスリガラス影を認めて、通常の細菌性肺炎とは思えない。間質性肺炎かということだった。

 

 1週間前から咳があり、何日前からかは不明だが、体温40℃と高熱だった。いっしょに診察した時には、ほとんど普通に会話できていたので、点滴(水分補充)が効いたのかもしれない。タバコ40本/日の喫煙者で、肺気腫もある。血圧は安定しているが、酸素飽和度は90~91%(室内気)と軽度だが低下していた。

 血液検査では白血球1600、血小板8.3万と減少していた(貧血はない)。CRP4.6とあまり上がっていないのが、細菌性肺炎とはちがうのかもしれない。低ナトリウム血症(125)、CK3112(AST173、LDH921)と異常値を呈していた。

 感染症とすれば、レジオネラ肺炎を疑うような検査値だった。下痢をしている点も合うが、それはふだんからだった。尿中抗原検査を追加すると、意外にも肺炎球菌が陽性と出て、レジオネラは陰性だった(リボテストレジオネラ)。(患者さんはMSMではない)

 呼吸器外来の先生(大学病院からバイト)に相談すると、非定型肺炎像ということだった。呼吸器内科のある病院へ紹介する予定と伝えると、その方がよいという。

 若い先生が地域の基幹病院呼吸器内科に連絡すると、診てもらえることになって、救急搬送した。向こうの若い呼吸器内科医は、肺炎球菌でそのような陰影になることもあるが、と言っていたそうだ。

 放射線科の読影レポートは間質性肺炎疑いとなっていた。この肺炎は何だろうか。

 

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たぶん前庭神経炎

2019年12月25日 | Weblog

 昨日18歳女性(高校3年生)がクリニックの紹介で受診した。先週末に外来予約の依頼が来て、来週でいいということだった。緊急性はないのだろうと思ったが、忙しくて内容まで確認していなかった。

 母親と一緒に受診した。今月初め(3週間前)に回転性めまいが生じるようになった。発症はこの時からと特定できず、いつの間にか起きていた(突発性ではない)。安静時も動作時もあった。難聴・耳鳴はなかった。

 1日だけ学校を休んだだけだったので、歩行はできていた。クリニックを受診して、めまいの薬が処方された。その後もめまいは続き、嘔気が続くようになった(嘔吐は1回だけ)。クリニックを再受診して、五苓散が、その後にナウゼリン(ドンペリドン)が処方された。血液検査で血小板が8万と低下していた(CRP陰性)。

 めまいというより、血小板減少が自己免疫性(免疫性)血小板減少性紫斑病?、という紹介だった。嘔気と体調不良については、精神科へも紹介する予定らしい。

 幸いなことに、先週末から嘔気がなくなりはしないが、軽快していた。食事はとれる。診察室の中を歩いてもらうと、ほとんど普通だった。つぎ足も片足立ちもできる。血液検査をすると、血小板は26万と正常範囲だった。

 めまいの前にウイルス感染らしい上気道症状はないそうだが、経過からはめまいは前庭神経炎が疑われる。すでに回復していて耳鼻咽喉科受診は意味がなさそうなのでしなかった。血小板減少もウイルス感染によるのだろうか。

 ほとんど治ってきているので、そのまま経過をみてもらうことにした。1~2週間の経過で症状が残れば、再受診とした。精神的なものではなく、身体的な病気そのものによる症状なので、精神科受診は不要だろう。

 

 

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やはり、できるだけ生きてほしい

2019年12月24日 | Weblog

 今日は、地域の基幹病院脳神経内科から85歳女性が転院してきた。パーキンソン病で大学病院脳神経内科に通院していて、その後は基幹病院の外来に大学病院から出張でくる専門医にかかっていた。

 今回は誤嚥性肺炎で入院して、肺炎は軽快したが、嚥下訓練の結果経口摂取は不可と判断された。転院依頼の連絡がきた時に、経口摂取ができなければ高カロリー輸液ですか、それとも胃瘻造設による経管栄養ですか、と訊いた。今の末梢の点滴(1000ml/日)だけでいいということだった。お看取りでいいということらしいが。

 やせた患者さんで、意識は傾眠傾向と記載されていた通りだった。到底経口摂取は不可能だ。車いすでの座位保持もできないだろう。末梢血管がよく見えて点滴しやすい方で、その点は看護師さんに喜ばれる。

 今日家族と話をすると、できるだけ生きていてほしいということだった。前医では遠慮してあまり先生と話ができなかったと言っていた(おとなしい夫ではある)。胃瘻造設でトラブルが起きそうで、高カロリー輸液で経過をみるしかないと判断された。

 経口摂取できることも期待していたが、実際は入院前から薬の内服もできなくなっていたとので、無理だろう。聴覚言語療法士にみせても、「そもそも覚醒が悪く訓練になりません」と評価されそうだ。覚醒がよくなれば、家族の希望もあるので一度はやらないとまずいかもしれない。

 嚥下訓練継続は肺炎のリスクを伴うこと、肺炎発症時はできる範囲(酸素吸入・抗菌薬など)で治療するが、それでも悪化する場合はDNARという前医と同じ方針で同意していただいた。

 当院としては、何とか形をつけて、療養型病床(のある病院)を目指すことになる。当院の内科は、急性期病院から療養型病床のある病院への中間地点という役割だ。

 

 

 

 

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今日は搬送の日

2019年12月23日 | Weblog

 今日は振戦と認知力低下の65歳男性が、地域の基幹病院脳神経内科に転院することになっていた。付き添いは妹さんだけなので、介護タクシーを頼んでいた。

 朝病院に来ると、病棟から連絡が来た。意識レベル300ですということで、すぐに病棟に向かった。昨日の昼までは変わりなかったらしい。朝昼食はとっていたが、夕食をとらず(点滴は1000ml/日していた)、夜間は不穏が目立った。

 準夜帯でハロペリドール注も行っていた。夜間は寝ていたようだが、朝にはベットにすわってカーテンや床頭台をいじっていた(引き出しを壊していた)。そうこうしているうちに、頻呼吸になって呼びかけに答えなくなった。

 病棟に上がって病室に行った。開眼はしているが、興奮した様子だった。呼びかけると、返事はするが、会話は成り立たない。酸素飽和度低下もあったが、何度か測りなおすと正常域だった。両手を動かしていて、下肢はあまり動かさなかった。

 すぐに転院先の病院に連絡して、主治医になる予定の先生に事情をお話して、救急搬送になると伝えた。救急室に言っておきます、ということだった。

 精査依頼のはずが、救急搬送になって申し訳なかった。専門医が診ても、軽快退院になることはないと思われ、当院に戻って来るのは間違いない。ただ戻る時期はどうなるのだろうか。

 

 今月初めに基幹病院呼吸器内科から転院してきた72歳男性は先週末から左肺炎になった。39℃の高熱があったがが、ゾシン(PIPC/TAZ)を開始して、解熱傾向にあった。ところが、今日胸部X線を見ると、左肺がほとんど無気肺になってつぶれていた。

 

 看護師さんたちが、頻回に喀痰吸引をして、相当な量の喀痰が吸引していたが、気管支まではとりきれない。医療センターで右上葉部分切除術をしているので、右肺で何とかしている状態だが、炎症が右に及ぶと急変してしまう。

 呼吸器内科医に連絡すると、今からでも送っていいと言われた。満床で受け入れできないことが多いので、ベットが空くまで数日待つかと思ってた。ありがたく、今日救急搬送させてもらった。

 気管支鏡で気管支に詰まった喀痰を吸引するかと思うが、この患者さんは気管切開しないと、維持できないのではないか。ただ喉頭癌・下咽頭癌で放射線療法を受けた既往もあるので、気管切開自体リスクがあるが。(この患者さんもいずれ戻って来るので、気管切開後にしてほしい)

 

 今日の午前中に当院の外科からも救急搬送したので、当院から3名の患者さんを搬送したことになる。明日は脳神経内科の今回主治医になる先生の紹介でパーキンソン病の患者さんが(看取りということだ)、木曜日には呼吸器内科の別の先生からの紹介で膿胸の治療中の患者さんが(廃用症候群のリハビリ)、当院に転院してくる。一応病病連携としてはうまくやっている?。

 

 

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一発診断 第14回~単純性紫斑、腹部片頭痛

2019年12月22日 | Weblog
CareNeTV
一発診断
第14回 右膝に思い当たらないあざができた30歳女性
 
Illness Script 27 30歳女性
現病歴:
2日前に右膝下内側にあざができていることに気づいたため受診 あざができる理由に思いあたることはない 長時間の立位なし 外傷歴なし 家族歴なし 内服薬なし
 
身体所見・検査所見:
バイタルサイン 異常なし
血液検査 血小板、凝固系に異常なし 右膝内側に浸潤を触れない紫斑
 
一発診断:単純性紫斑
 
単純性紫斑
定義:
・とくに誘因なく、四肢(主に下肢)や臀部に好発する
・上肢・胸部にみられることもある
病因:
・血管の脆弱性が原因と言われているが、はっきりわかっていない
疫学:
・基礎疾患のない若年~中年女性に多い
・家族性にみられることもある
・春や秋の季節の変わり目に多い
・月経時や疲労時にみられる
症状:
・軽度圧痛を伴うことがあるが、紫斑の周囲には炎症所見を認めない
・色素沈着を残すこともある
・そのほかの症状(発熱、関節痛、出血など)はみられない
血液検査:
・異常は認めない
治療・予後:
・良好で、1~2週間で自然消褪する
・血管強化薬(ビタミンCを含む)をしようすることもあるが、効果は一定ではない
紫斑を主訴に受診した患者の約3割が単純性紫斑
鑑別疾患:
1.心因性紫斑病
・四肢や顔面に多くみられる有痛性の紫斑
・紫斑の出現前に、焼けるような、針でさされるような知覚異常があり、続いて熱感・腫脹・紅斑、かゆみなどの症状が現れる
・外傷、手術、ストレスなどが契機となる
・ほとんどの症例で女性である(男性は約5%のみ)
2.起立性紫斑病
・長時間の立位で血流がうっ滞し、血管内圧が上昇することでかしに出現する紫斑
3.特発性血小板減少性紫斑病
・血小板減少を来す自己免疫性疾患んで、浸潤を触れない紫斑が出現
・PA-IgGは感度91%、特異度27%
→除外診断にはある程度役立つが、確定診断には使えない
4.アレルギー性紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病)
・関節痛、腹痛、腎炎を伴う、浸潤を触れる紫斑を来す 血管炎によって生じる
・溶連菌の先行感染の有無を確認する
5.怒責性紫斑
・激しい咳き込み、嘔吐、排便などの力みにより血管内圧が上昇することで生じる
・顔面、頚部に多い
 
一発セオリー:
とくに誘因なく、若年女性の下肢に触知しない紫斑を認め、ほかに症状がなく、検査所見で異常がなければ
・・・単純性紫斑
 
これは診たことがある。血小板・凝固検査で異常がないので、経過観察としただけだった。自然消退するので、それでも問題なかったと思うが、患者さんにそういうことがあることを説明して、安心させられればよかった。
 
Illness Script 28 26歳女性
 
現病歴:
・腹痛、嘔気・嘔吐を訴えて受診
・同様のエピソードを数か月前から週2~3回の頻度で繰り返しており、ここ数週はさらに頻度が増えている
・前医での採血、上部・下部消化管内視鏡検査、腹部CTでは異常なし
・腹痛はいつも6時間ほどで改善
・痛みがない時はまったく症状がない
 
身体所見・検査所見:腹痛のためうずくまっている、発熱なし 腹部じは平坦・軟、臍周囲に軽度圧痛を認める、反跳痛なし
 
経過:嘔気・嘔吐に対して制吐薬を使用し、外来で経過をみているうちに、いつもより早く腹痛が改善したようであるが、明らかではない
 
追加問診:
・片頭痛の家族歴あり
・発作時にトリプタン製剤をしようしたところ速やかに改善
予防投与:カルシウム拮抗薬→腹痛発作はみられなくなる
 
一発診断:
腹部片頭痛
 
腹部片頭痛
概念:
・機能性腹痛の1つで、中等度以上の腹部正中の痛みを繰り返すもの
・小児に起こることが多いが、せいじんでも発症することがある
病因:
・はっきりわかっていない
疫学:
・女性に多い
・90%で片頭痛の家族歴がある
誘因:
・ストレス、食物、睡眠不足など
・はっきりしないこともある
診断基準:
A:腹痛発作は5回以上あり、B~Dを満たす
B:痛みは以下の3つの特徴の少なくとも2項目を満たす
1.正中部、臍周囲もしくは局在性に乏しい
2.鈍痛もしくは漠然とした腹痛
3.中等度~重度の痛み
C:発作中、以下の少なくとも2項目を満たす
1.食欲不振 2.悪心 3.嘔吐 4.顔面蒼白
D:発作は、未治療もしくは治療が無効の場合、2~72時間持続する
E:発作間欠期には完全に無症状
 
治療:
・確立した治療法はない
・発作時にトリプタン製剤を用いて診断的治療を行う
急性期
・トリプタン製剤を用いる
・メトクロプラミドが有効なこともある
予防投与
・発作回数が多い場合(カルシウム拮抗薬・三環状系抗うつ薬・抗てんかん薬・Β遮断薬など)
 
機能性胃腸症、過敏性腸症候群、食物アレルギーなどと誤診されている可能性があるので、片頭痛の既往・家族歴を確認する
 
一発セオリー:
片頭痛の既往もしくは家族歴のある患者で繰り返す腹痛、悪心・嘔吐がみられたら・・・
腹部片頭痛

これは診たことがあるかどうか、わからない(思い出せない)。診ていれば、機能性胃腸症、過敏性腸症候群として対処していたのかもしれない。
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