1週間前に入院した80歳台初めの男性。1週間発熱が続いていたが、原因がわからなかった。担当した内科医に相談されたので、まず血液培養・尿培養を提出するよう勧めた。その後忘れていたが、血液培養と尿培養から同じブドウ球菌(MSSA)が検出されたという。心エコーを循環器科に頼んだところ、僧帽弁にvegetationを認めた。心内膜炎だった。循環器科のそろった医療センターへ紹介することになった。昨年皮膚病で治療を受けた既往があるが、他には細菌が体内に入るルートはない。
90歳台後半の男性。発熱と食欲不振が続いて、地元の病院から紹介された。面倒なので紹介したような感じもする。右腎臓内に腫瘍がある。腎細胞癌の発熱の可能性もあるが、腎盂癌のようでもある。前立腺肥大症の治療を受けた既往があるらしいが、前立腺の肥大が目立ち、泌尿器科医のよると前立腺内に低濃度の部位があり、前立腺炎の可能性があるという。脱水症から急性腎前性腎不全になっていた。難聴で頑固な性格で、理解力も低下しているようで、入院生活になじむかどうかと思われたが、老妻との二人暮らしで同居していない息子娘の希望もあり、条件付きで入院とした。ご本人は100歳まで生きるつもりでいるが、さてどうなるか。家族には絶対に良くなるという保証はしませんよと伝えた。
80歳台初めの男性。先月浮腫が続いて内科外来を受診した。糖尿病で内科クリニックに通院していて、血糖コントロールは比較的良好だった。数か月で急激に尿白が出現してネフローゼになっていた。糖尿病腎症だけにしては急すぎる経過なので、原発性糸球体疾患の併発の可能性があり、腎センターのある病院へ紹介していた。
すっかり忘れていたが、今日また受診してきた。3日前に退院していたという。昨日から高熱が続き、家族によると受け答えがいつもと違うという。ふだんは自己血糖測定やインスリン自己注射をちゃんとしていたが、その手技もおかしいという。右肺に広範な湿性ラ音(coarse crackles)を聴取した。胸部X線とCTで右肺の肺門から末梢に広がったすりガラス様陰影を認めた。胸膜直下は正常域が残っていた。左肺にも同様の陰影が散在していた。通常の細菌性肺炎ではないような気がするが、よくわからない。
紹介jした腎センターへ電話にて聞いてみると、診断は膜性腎症でステロイドパルス療法を3クールしたそうだが、糖尿病でインスリン治療をしているのでプレドニン継続投与はしていないという。呼吸器科もある病院で、腎臓内科は免疫抑制による特殊な肺炎に治療に慣れているとも当院ただ一人の腎臓内科医に聞いていたので、肺炎の治療を頼んで診てもらうことにした。
80歳台後半の女性。施設に入所している。寝たきりで他院で行われた胃瘻から経管栄養を受けていた。2か月前に心不全で循環器科に入院したが、心不全の胸水・肺うっ血が改善すると、水の中から右肺癌の腫瘤が現れた。治療の対象にはならないので、経過観察となり、今後悪化した時は内科で診てもらうようにと言われていた。今回は発熱と呼吸苦で施設の嘱託医から連絡があり、救急搬入された。肺炎は軽度にあるようだが、それほどではない。心房細動・心不全も悪化はしていない。肺癌と癌性胸膜炎による胸水があるが、肺炎の治療をして改善しても、全身状態がグット良くなるということはなさそうだ。前回入院時から無呼吸があり、チェーン・ストークス様の呼吸で、酸素飽和度が変動する。もう施設ではみられないということで、入院して抗菌薬を使って経過をみることにした。結局看取りで終わってしまうような気がする。
今年も研修医にまじって青木先生の若手医師セミナーを見に行くことにした。次は山中克郎先生の攻める問診だ。6月初めの化学療法学会主催の抗菌薬適正使用生涯教育セミナーに行く予定だが、当日朝一で行くか前日夜に行って一泊するか迷っている。
30歳台初めの女性。前日の朝から飲酒を続けて、嘔吐が続いていた。朝方3時に友人たち連れてきた、というか運んできた。会話はできるが、ぐっらりとしていて何度も嘔気がこみ上げてくる。外来で点滴して経過をみることにした。姉妹が精神疾患で世話をしているらしい。ストレスから飲酒に走り、以前にはカウンセリングを受けたことがあるという。点滴しているうちに嘔気もおさまり、顔色も良くなった。毎日飲んでいるわけではないが、いったん飲み始めると止まらなくなるのだろう。自殺した母親が飲んでいた睡眠薬や安定剤(の残り)も飲んでいる。500mlの点滴2本で帰宅とした。血液検査では肝機能などは正常域で問題なかった。内科としては、近くの精神科クリニックを受診して相談するよう勧めるくらいしかできない。
今日は内科の当直だが、1日内科の当番になっている。日直は大学病院から個人的に来てもらっている先生で、1年以上来ているので大分慣れたようだ。日直帯でいずれも80歳台女性が3名入院した。
ひとりは認知症があり、神経因性膀胱で尿カテーテルが留置されている。3か月前に急性腎盂腎炎から敗血症性ショックとなったが、なんとか回復していた。今日は右肺に3/4を占める陰影があり、液体化していて肺膿瘍になっていた。白血球20000、CRP30と炎症反応も派手に上がっていた。
次は基幹病院の呼吸器科に通院している在宅酸素の慢性呼吸不全の方だ。3か月前にはそこに入院していた。COPD+喘息のようだ。今日は救急要請したが、基幹病院に救急車が立て続けにないったために、受け入れできないと言われて、当院に搬入された。肥満体型で肺胞低換気(高炭酸ガス血症)があり、大学病院で気管切開を受けているという大変な症例だった。本来は当院の手に余るが、前回も乗り切れるかどうかわからないと言われており、治って退院する時も次回の増悪時は助かるかどうかわからないとも言われていた。人工呼吸はしない方針で(はずせなくなる)、自発呼吸でいけるところまでできるだけの治療をして経過をみることで家族の了解を得た。
3人目は糖尿病・高血圧症で通院している方で、今回は右内包のラクナ梗塞だった。左不全方麻痺と構語障害が軽度にある。リハビリのよい適応だが、ケアハウス入所中で、そこはある程度自立できる人しか入れないところだ。リハビリの結果でどのくらいのADLになるかにかかっている。糖尿病の血糖コントロールも昨年後半から悪化していたので、そこも改善させたい。
本来の当直帯になって、日直帯から外来で点滴をしていた70歳台半ばの女性を診た。左下腹部痛で内科クリニックから紹介されていた。当初は微熱だったが、急に40℃の高熱となった。左下腹部痛も断続的に続いている。左水腎症があり、尿管結石で尿路が閉塞したところに、感染症を併発したらしい。血圧は正常域だが、意識レベルが低下しているようだ。内科クリニックでけいれんがあったとされているのは悪寒戦慄だった。じっとりと汗をかいて、敗血症・DICへと進行しつつあると思われた。泌尿器科常勤医のいる基幹病院へ連絡したところ、外科系当直が幸いに泌尿器科医だった。電話で話をして、あまり重症と理解されないようだったが、診てもらえることになって救急車で搬送した。
80歳台前半の男性。間質性肺炎で呼吸器外来(大学病院から週1回)に通院していた。経過観察のみだった。3月に呼吸器外来を受診した後から左側胸部痛が続いた。同部位に以前帯状疱疹があり、患者さんも、今回発疹は出ていないが同じ痛みと訴えていた。皮膚科外来(大学病院から)を受診したが、発疹がないので何とも言えないといわれ、内科外来を受診していた。帯状疱疹後神経痛としてNSAIDなどを処方されていたが、症状は変わらなかった。今月(5月)呼吸器外来を受診(定期の予約日)して、胸部X線で左肺の陰影が増加していて、胸部CTで胸膜直下に肺癌があり、肋骨に浸潤していた。訴えていたのは癌性疼痛だった。呼吸器外来に通院して、胸部X線もみているので、内科ではあえて検査していなかった。
30歳台前半の男性。健診でHbA1cが3.8%と低値で二次検査となった。外来で診た消化器科医から連絡があった。まったく無症状で元気な方だという。HbA1cの正常域は4.3~5.8%(JDS)となっていて、健診では5.5%以下になっている。3.8%というのは見たことがない様な気かする。というより低い方は気にしたことがない。空腹時血糖は90mg/dlなので、A1cと乖離している。成書にも低い方についてはあまり記載がない。貧血など偽性の低値の原因を確認する必要があるが、それはない。そうなると、インスリノーマを疑わせる低血糖症状などがなければ、問題ないと書いてあった。
以前、健診で血清アミラーゼが低値のため二次検査に来た人もいた。まったく無症状で膵炎・膵癌はない。一応健診でやってなければ、腹部エコーをしていたが、まったく問題なかった。そもそも血清アミラーゼは健診に必要だったのだろうか。
70歳台半ばの男性。間質性肺炎だったが、今年3月に胸部異常陰影を指摘され、県内の基幹病院呼吸器科(スタッフ10名以上)へ紹介された。左肺の扁平上皮癌stageⅣと診断された。間質性肺炎があり、抗がん剤治療は断念され、姑息的放射線療法のみ受けた。あとはbest supportive careとなり、当院へ転院してきた。癌性疼痛対策でオキシコンチン20mg/日内服が処方されていたが、増量を要するようだ。家族と相談して、いったん退院して、できるだけ自宅で過ごすことを目標に経過をみることになった。最期は呼吸苦が進行して、おそらく塩酸モルヒネ持続点滴になると思われるが、なんとか苦痛を少なくして3か月もたせたい。
今日の内科再来は、糖尿病の血糖コントロールか比較的良好な人たちでスムースに終わった。来月の地元医師会主催の講演会で座長をすることになった。テーマは糖尿病。外来の1/3は糖尿病だが、専門ではない。講演会まで糖尿病の本を数冊読んでおくことにした。
30歳台半ばの女性。精神科のクリニックから紹介されてきた。10年以上前に交通事故にあって肋骨骨折があったそうだ(本人の話)。仕事を休めなかったという。その後、交通事故がきっかけかどうかはわからないが、倦怠感や疼痛(部位的に奇異な印象)などがあり、仕事はできなくなっていた。精神科クリニックからは精神安定剤や抗うつ剤が処方されていた。内科の問題ではないと思われたが、紹介なので、一通り診せてもらうことにした。やはり通常の外来検査では異常を認めなかった。これまで脳外科やペインクリニックを受診してきたが、精神的な症状と判断されていた。食欲がないというが、体重減少はない。母親が付いて来ていた。親もいっしょになって、何か重大な病気ではないかなどと興奮されるとこじれてしまうが、どことなく冷静な態度というか、これまでの受診歴で精神的なものとわかっているようで助かった。入院希望であれば、精神科主治医から入院設備のある精神科病院に紹介してもらうしかない。精神病ではないので、入院して良くなるというあてもなく、精神科でも入院はさせないのかもしれないが。