水曜日に糖尿病・高血圧症で通院している78歳女性が、夫に付き添われて予約外で受診した。家族(別居の息子)が書いた手紙を持ってきた。
この患者さんは市内の他院に通院していたが、一昨年に担当医が入院したことから(その後、亡くなられた)、夫が通院している当院に通院するようになった。
普段は2か月に1回、夫と同じ日に受診している。血糖と血圧はコントロール良好で、特に訴えがなければ、家庭血圧の確認と血液尿検査の結果を確認するだけになる。認知症とは把握していなかった。
息子さんの手紙によれば、1年半くらい前から物忘れや同じ事を繰り返して話すことがあった。加齢によるもの(生理的物忘れ)かと思っていたそうだ。
最近になって、買い物をした直後に買い物をしたことを忘れていることから、おかしいと思ったそうだ。ちょっと複雑なことを説明すると理解できないという。認知症の診察・検査と、場合によっては他の医療機関への紹介をお願いします、という内容だった。
同居の夫も、物忘れが多いとは思っていたようだが、家事で問題になることはなかったようで、病的とは認識していないようだ(認知症と思いたくない?)。
頭部MRI検査を入れて(お昼前に空きがあった)、聴覚言語療法士に認知症などの検査を依頼した。幸いお昼には外来診察が終わったので、結果を確認した。
頭部MRIでは脳委縮があり、VSRADのSeverity of VOI atrophyは1.59で「関心領域の萎縮がやや見られる」だった。明らかい萎縮があると思うが。(後日結果がきた放射線科の読影レポートは「軽度脳委縮」とシンプルだった。)
MMSE(mini-mental state examination)は22点でぎりぎり「認知症の疑い(22~26点)」になる。うつの検査でうつはなく、身体機能はまったく問題なかった。
HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール Hasegawa Dementia Scale-Revised)はしていなかったので、自分で行った。しばらくやってなかったので、用紙が外来のどこに置いたかわからなかったが、看護師さんが見つけてくれた。
年月日・曜日のところから問題があった。月は分かるが、それ以外は出てこないか、違っている。アルツハイマーに特徴的な行動として、「取り繕い」はなかったが、分からないとすぐに夫の方を振り向く「振り向き徴候」が見られた。
長谷川式の結果は、17点で認知症相当だった。長谷川式は遅延再生の項目の評価が高いので(長谷川式は2点×3で6点、MMSEは1点×3で3点)、これができないとMMSEより点数が3点低くなる(桜・猫・電車を、他の検査後に後で聞くと覚えていない)。
夫に認知症の治療で希望する病院があるか訊いてみた。運転免許証も返納して遠くの病院には行きにくいので、当院で診てもらいたいという。ドネペジルで治療を開始するが、希望する病院があれば紹介するので、息子さんに訊いてもらうことにした。
(院内の脳神経内科外来はあるが、脳梗塞後遺症やパーキンソン病の治療で忙しいので、この処方で経過をみて下さいで、終わってしまう。ADはcommon diseaseなので。)