93歳女性が救急搬入された。先週の木曜日(5日前)に転倒して、腰痛を訴えて夜間受診していた。腰椎圧迫骨折はなく、NSAID内服で経過観察となった。もともと介助してやっと立位になるくらいのADLだが、動けなくなって今日救急要請となった。両膝痛を訴えて、整形外科が呼ばれたが、膝関節は変形性の所見があるが、問題になるほどの腫脹はなかった。血液検査で炎症反応上昇があり、内科に診察依頼がきた。炎症反応が上昇しているから内科というのも変だが、まあ何か内科で診るような病気でしょうということだろう。
名前に聞き覚えがあった。自分が診たのは2008年(86歳)で右中葉に小さな帯状の陰影があり、その周囲にスリガラス様の陰影があった。放射線科の読影所見は肺炎に一致するcompatible with pneamoniaとあった。この時の入院では、抗菌薬投与(セフトリアキソン)で解熱軽快して検査値も改善したので、退院とした。抗酸菌の塗抹検査は陰性だが、培養で抗酸菌陽性でMycobacterium aviumだった。退院後に外来で経過をみたが、変化がないので紹介先の医院に報告書を書いて、症状がある時や胸部X線で変化がある時にまた紹介して下さいとした。
2009年、その医院が娘さんに代替わりした時期だと思うが、当院の内科を受診して降圧薬などの処方が継続となった。外来で担当した当時当院内科にいた先生が市内で開業することになり、その患者さんを自分のクリニックに紹介とした(自分宛ての紹介状を書いている)。
2012年にその先生が胸部X線で右下肺(中葉)の腫瘤に気付き、胸部CTを当院放射線科に依頼した。右中葉に3cmの腫瘤があり、放射線科の読影は肺癌疑いだった。その内科クリニックから基幹病院呼吸器科に紹介になったが、この時90歳だったので気管支鏡検査もあえて行わず、肺癌としてそのまま経過を見る方針となった。
今回は7cmの腫瘤になっていた。周囲のスリガラス様の陰影は肺炎(閉塞性ではない)と思われた。入院して抗菌薬投与で経過をみることにした。少量の胸水はあるが、肺炎を治して退院に持っていきたい。結局2008年から肺癌の自然経過をみたことになる。