10月18日(金)の当直の時に、60歳代後半の女性が呼吸が苦しいということで、救急搬入された。多弁であり、呼吸困難というよりは咳き込みがひどいということのようだ。(住所は県内ではあるが、まったく違う地域で距離にして100km近く離れている)
37℃台前半の発熱があり、コロナとインフルエンザの迅速検査(抗原定性試験)は陰性だった。他の病院で肺炎といわれたが、入院を拒否した、ということだった。
胸部X線・CTで確認すると、胸膜直下に陰影が多発していた。病変の分布からはCOVID-19 と判断される。おそらく当初はすりガラス陰影だったが、次第に浸潤影様に変化したところなのだろう(炎症期の像)。
搬入時から多弁で、処置には拒否的で、何に対してもいわゆる悪態をつくという状態だった。搬入依頼が来た時に、救急隊に血圧を訊くとまだ測定していなかったが、本人が拒否したのだろう。
といって認知障害ではない。大金を持っている、たいそうな商売をしているともいうが、実際は行政の世話になっていた。精神科医に訊かないとわからないが、あるとすれば躁状態か人格の問題なのか。(統合失調症らしくない気はしたが、よくわからない)
少しずつ話を聞いて行くと、10月7日に高熱があり、自分でコロナのキットで検査すると陽性だった。通院している診療所を受診して、やはりコロナの迅速検査で陽性といわれたそうだ。処方はアセトアミノフェンだけだった(薬手帳で確認。当院受診は発症後11日目になる。)
その後、呼吸が苦しいと居住地域の基幹病院に(本人の話では)4回救急搬入された。検査だけして帰されたというが、病院側でも対応に相当困ったのだろう。その後、10月17日夜間の搬入時には肺炎があるといわれたが、入院は拒否した(病院側で拒否?)。
デキサメサゾンと抗菌薬(レボフロキサシン)の内服が処方されたが、本人は飲まなかったという。(個数をみると、1回飲んだ?)
10月18日は何を思ったか、東京の大学病院を受診しようとして新幹線で向かった。商売のために行ったといったりもしたが、それは違うようだ。東京でも救急要請したのかもしれない。
結局新幹線で当県に戻ることにしたが、途中呼吸苦を訴えて、新幹線を降りた(隣県)。そこでも救急要請して、その地域の有名病院に搬入された。肺炎といわれたが、結局トラブルがあり帰宅となった。
また新幹線の乗ったが、呼吸が苦しいとして当地の駅で降りた。駅前のホテルに宿泊することにしたが、また救急要請した。それで当院に搬入されたという経緯だった。(本人の話なので、どこまで本当かわからないが、受診歴はだいたい本当だろう)
採血もすぐにはできず、痛いのはいやだなどと結構揉めた。デキサメサゾンと抗菌薬で治療を開始して入院としたが、すぐにトラブルになった。
個室入院としたが、大音響でテレビをつける、何故か個室内のトイレ掃除をするといって、歯ブラシでこすり始めた。さらにトイレにオムツ(履くパンツタイプ)を詰まらせて、何度も水を流したので、個室内から廊下まで水浸しになった。静止しようとした病棟看護師の胸ぐらをつかんで反抗した。
これは病院では扱えないとなり、警察に連絡した。警察官数名が来たが、病室内を裸で歩き回っていた。器物損壊と暴行にはなるが逮捕には至りませんということだったが、保護扱いとなった。
警察内ですることを訊かれたので、酸素飽和度を測定してもらうことと、デキサメサゾンと抗菌薬内服を持たせたので、それを内服させてもらうことをお願いした。(後で連絡がきて酸素飽和度は酸素なしで94%ということだった)
精神科につなげるのも、肺炎があることから難しいと見込まれた。精神科救急を診られる、綜合病院は県内にもそうはない。一か所だけ病院に連絡してみたが、対応は無理だった。保健所の扱いとなり、対応できる病院があるか、当たってもらうことになった。
救急隊から家族(息子さん。夫は死去。)に連絡がいったが、「縁を切っている」といわれたそうだ。警察では、そうはいっても警察から連絡がいけばしぶしぶ来るものですといっていた。しかしその後、兄弟の連絡先を病院で控えてますかという連絡が入った。警察からの連絡でも息子さんは拒否したのだろう。
外来で内服治療でもいけると思われるが、きちんと内服するかという問題がある。地元ではさまざまなトラブルを起こして有名な人なのかもしれない。精神科の先生ならどう診断するのだろうか。
早朝に病院の設備担当の事務員が呼ばれて、病院内の清掃をお願いしている会社から4~5名派遣したもらって、何とか廊下に溢れた水を回収した。最近治したばかりの廊下の床は木材のフローリングなのでダメージを受けてしまった。請求も難しいかもしれないので、修理は病院持ち出しになる。
外来でデキサメサゾンと抗菌薬を点滴静注して、朝に帰宅として、後は地元の病院で診てもらうようにすればよかったのだろう。