4月19日~21日は消化器病学会(京王プラザホテル)に行っていた。「慢性便秘症診療ガイドライン」が出たことで、便秘症のシンポジウムやセミナーが目立った。今回は主に「便秘」と「肝疾患(自己免疫性肝疾患と薬剤性肝障害)」を聴いてきた。
自己免疫性肝疾患(AIH・PBC・PSC)
急性肝不全の原因は、ウイルス性が減少傾向にあり、自己免疫性と原因不明が増加している。自己免疫性急性肝不全では、ステロイド(副腎皮質ホルモン)使用までの日数が長いほど予後が悪い(PT低下を待ちすぎる)。
自己免疫性肝炎(AIH)の診断はsimplified AIHG scoreで行うが、できるだけ肝生検を行って診断を確定する(肝臓専門医へ紹介になる)。AIHとPBCのoverlapやAIHと薬剤性との鑑別のあるので肝生検が必要で、肝障害の悪化や肝障害の遷延時は経時的肝生検が必要(やはり紹介になる)。治療にとして、亜鉛は線維化を抑制する(鉄は線維化を促進。フェリチン/亜鉛比が上昇すると線維化抑制)。
AIHの17%にNAFLDが併発する。その場合、治療はステロイド投与が少なく、ウルソ使用が多くなる傾向がある。肝酵素の上昇は少ないが、線維化が多い。
原発性硬化性胆管炎(PSC)は4割に潰瘍性大腸炎(UC)が合併する(PSC-UC)。若年者に多く、肝内胆管狭窄が強く胆道癌の合併が多いが、UCの活動性は低く右側結腸難型・全結腸型が多い。
薬剤性肝障害(DILI)
薬剤性肝障害は、ウイルス性よりトランスアミナーゼ価は低い傾向がある。劇症型は2.5%でウイルス性より高い。(国際的にはトランスアミナーゼが正常値の5倍以上を薬剤性肝障害とする)原因薬剤としては、抗菌薬・NSAIDが多いが、最近は抗癌剤や分子標的薬の比率が増加している(原因薬剤の変化)。抗核抗体陽性薬物性肝障害があり、最近は34%で抗核抗体陽性。AIHとの鑑別としては、組織学的にAIHの特徴に乏しく、無治療で軽快する。また経過をみると、抗核抗体値・IgG価が低下してくる。鑑別は肝生検。
肝疾患それぞれにガイド(ライン)があって全部揃えるのも大変だ。研修医向けの本だが、これ一冊あれば、肝疾患に関しては充分なのでお勧めだ。
慢性便秘
ROMEⅣが発表されて、機能性便秘症の定義がわかりやすくなった。排便時のいきみ・残便感・便が固いなどもあるが、実臨床としては排便回数が週3回以下というのが理解しやすい。排便障害に腹痛と伴うのが過敏性腸症候群(IBS)になるので、過敏性腸症候群便秘型は便秘+腹痛になる。逆に腹痛がほとんどないのが機能性便秘症。全人口の10%が便秘(実際はもっと多い?)。便秘は、排便回数減少型(大腸通過遅延型と大腸通過正常型)と排便困難型(硬便と軟便)に分類される。
便秘薬としては、大腸刺激性はなるべく使用しないで頓用で用いる。日本でよく処方される酸化マグネシウムは高齢者・腎障害者で高マグネシウム血症に注意を要する。新規の便秘薬としては、すでによく処方されているアミティーザと、現在は過敏性腸症候群便秘型のみの適応だが近日中に機能性便秘症にも適応が広がるリンゼスがある。さらにPEGやラクツロースも形態を変更して便秘に適応が広がるそうだ。
「慢性便秘症診療ガイドライン」は面白みがないので、臨床消化器内科2018年4月号「慢性便秘」の方がいいようだ。
学会期間中、病院から全く連絡が来なかった。それなりの指示は出していたが、全く来ないのは珍しい。5月の糖尿病学会に行くのはやめたので、今年は10月の化学療法学会と来年2月の臨床微生物学会に行く予定。