実は牛丼チェーン店の牛めしを食べたことがなかった。店に入った記憶が皆無なので、間違いなく食べていなかったのだろう。意図して敬遠していたわけではない。主義で四足を喰わなかったわけでもない。偶然にも何十年も食べる機会がなかっただけ。しかし、このところの牛丼の価格戦争に触発されて、テイクアウトで初めて食べることになった。期間限定ながら、松屋、すき家は牛丼並盛り1杯250円、一方吉野家は同じく270円で販売している。各社の営業は、「味を知ってもらい、次の来店につながれば」と口を揃えるが、SPA4月12日号によると牛丼1杯の原価160円で、人件費、固定費を含めるとカツカツのようだ。ところで牛丼の第3次になるであろう今回の価格戦争は、第2次による吉野家一人負けの状態をさらに加速させかねない。今年1月にも松家が価格を下げたことに対抗し、吉野家も追随したが僅かの期間で元に戻してしまった。ところがその余波はあまりに大きかった。価格を戻した吉野家から客が一斉に離れ、今年2月と昨年春と比較すると約20%も客足が落ちて、先日は90億円に迫る赤字になると発表。一方すき家は2カ月連続で前年実績を上回っている。吉野家も新商品で巻き返しを図るがどうなるのか。安値は庶民には嬉しい限りだが、今回は一気に業界再編まで発展しかねない可能性も。