ブロンド少女は過激に美しく
2009年/ポルトガル=フランス=スペイン
みずみずしいオリヴェイラ監督の味わい深い小品
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 85点
ビジュアル 85点
音楽 80点
ポルトガルの現役最古参監督マノエル・デ・オリヴェイラが、エキゾチックな扇を持った少女に恋した男の経緯を描いた味わい深い小品。19世紀の作家エサ・デ・ケイロスの小説を現代に置き換えて、想像力溢れる語り口はみずみずしく、とても撮影時100歳とは思えないほど若々しい。
「妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし」という設定は「夜顔」などでお馴染みの監督得意なパターン。今回は主役の会計士・マカリオ(リカルド・トレパ)が列車で偶然居合わせた見知らぬ女性(レオノール・シルヴェイラ)に身の上話を始める。
道路越しにベランダで見染めた謎の少女。パーティでキッカケを掴むが、厳格な叔父に反対される。長めのフィックス・カメラで繰り広げられるマカリオの古典的な恋物語は、意外な結末を迎える。夕方に鳴る鐘の音やリスボンの風景が挿入されるたびに振幅があり浮き沈みがある。
観客は、列車の婦人と同じ気分でマカリアの恋を列車の音と流れゆく風景とともにウィットに富んだ小噺を聴いた気分になる。
マカリオを演じたリカルド・トレパは監督の実の孫で初主演ながら歳の離れた少女に恋する純情な男を好演している。ペソアの詩を朗読するルイス=ミゲル・シントラや叔父のディオゴ・ドリアなどベテランが脇を固め揺るぎがない。ただ謎の少女・ルイザ役カタリナ・ヴァレンシュタインに魅力を感じなかった。個人差があるので何とも言えないが、いい年をした男が一目惚れするタイプとは思えない。
若々しい語り口で健在ぶりを見せ、100歳を超えても衰えを知らないオリヴェイラ。次回作も完成して来年公開されるという。楽しみだ。
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