晴れ、ときどき映画三昧

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『十三人の刺客』 80点

2010-10-13 14:17:07 | 日本映画 2010~15(平成23~27)

十三人の刺客

2010年/日本

本格的時代劇のリアルさとエンタテインメントの融合

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

東映時代劇が絶頂期を過ぎ、名画「七人の侍」をお手本に「集団抗争時代劇」なるものをジャンルとして確立したのが、’63の「十三人の刺客」。工藤栄一監督、片岡千恵蔵主演で里見浩太郎、嵐寛寿郎、丹波哲郎など錚々たるメンバーが揃い、終盤30分ものリアルな集団乱闘劇を展開して評判となった。
その池宮彰一郎の脚本を、三池崇史監督・天願大介脚色でリメイクしている。前作に劣らない豪華キャストで、カラー化してよりリアルに、スケールアップしてよりエンタテインメント性を増したつくりとなった。ヴェネチア映画祭では無冠となったが試写会では拍手が鳴り止まなかったとか。
江戸末期、明石藩江戸家老・間宮図書(内野聖陽)の割腹自害によって、明石藩主・松平斉韶(稲垣吾郎)の暴君ぶりが筆頭家老・土井大炊頭利位(平幹二朗)の知るところとなる。
原作の良さは、史実にもとづくリアルなタッチ。11代将軍家斉の25男明石藩8代藩主松平斉宣が参勤交代中、尾張藩で行列を横切った3歳の幼児を切り捨てご免にしたことから、明石藩の領内通行を禁じている。組織対組織の確執とそれを束ねる組織の長の裁きが背景にしっかりとあっての争いである。
リメイク版としてはかなり良くできているものの、その背景の描き方は極めて浅い。土井大炊頭利位が御目付・島田新左衛門(役所広司)に命じるまでで役割は終わってしまう。
そのかわり、斉韶が如何に傍若無人であったかをかなりショッキングに描き、刺客の正当性を強調している。手足を切られ舌まで抜かれた女を出すなどは三池監督得意のサイコ調で、正視できないシーンも。
刺客のなかでは新左衛門人物を慕う目付組頭倉永(松方弘樹)浪人平山(伊原剛志)佐原(古田新太)甥の新六郎(山田孝之)らが主要人物だがそのほかは目立たない。道中山の民・小弥太(伊勢谷友介)が加わり七人の侍の菊千代的な役割をするが、ちょっと遊び過ぎ。もっぱら明石藩の忠君・鬼頭半兵衛(市村正親)と新左衛門の知恵比べと落合宿の決選へと向かう。
その乱闘劇は前作よりさらに20分長い50分。カラー化され壮絶さは増すが、明石藩が200人を超えるのはやり過ぎでは?
本格的時代劇のテイストでありながらエンタテインメント性の融合を図りながら終盤はバランスを失ってしまったのが惜しい。